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IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》

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【第516話】

 
前書き
ちょいとイルミナーティ編 

 
 硝煙の臭いが漂う戦場――周囲には破壊された次世代の戦車と無数の模造コアを抜かれたISの装甲を纏った屍、そして――バラバラになった無人ISの装甲が散乱している。

 その中心に居る漆黒の装甲を纏った男――返り血を浴び、白銀の髪の半分は真っ赤に染まり、血が滴り落ち、装甲を濡らしていた。


「……残りのコアは後八十二……か。 ――いや、篠ノ之束が極秘に製造していたのを考えれば――まだまだありそうだな」


 手にしたコアは鈍い輝きを放つ――そして、粒子となって虚空へと消え去り、男の機体は淡い輝きを放つ。

 だが、男は終わりなき戦争に暗い影を落としていた。


「……戦争は終わらない……。 そして……大本の篠ノ之束を殺しても終わることは……」


 ぽつり……空は陰り、次第に雨が降り始め、血で染まった銀髪は雨で洗い流されていく。

 天を仰ぐ男――そして、周囲に新たに現れる無人機。


「……模造コアかオリジナルかはわからんが――潰させてもらう……!!」


 一斉に襲い掛かる無人機――終わりの見えない男の戦い――そこで意識が覚醒した。


 日本のとある場所、ドアをノックする白銀の髪の女性――普段は下ろしているその髪を、今は一纏めにして結っていた。

 ノックをしても返答が無く、埒があかないと思った女性は――。


「ボス、入るわよ?」


 そう言って室内に入る女性――コードネーム【シルバー】。

 本人は気に入っておらず、もう少し可愛いコードネームが良かったとボスに愚痴を溢すも取り合ってもらえなかった。

 室内は調度品で彩られていて、その中央には疲れからか転た寝をする仮面の男――【ウィステリア・ミスト】が居た。


「……私が暗殺者だったら、兄さん殺されてるわよ……」


 思わず口に出す【兄さん】という呼び方――誰が訊いてるかもわからない状況で自身の迂闊さを呪いつつ、ウィステリアへと近付く。

 気配を察したのか、或いは意識の覚醒が近かったのかウィステリアは――。


「……シルバー、迂闊だ。 ……ここではボス、或いはウィステリアと呼ぶように」

「……分かってるわよ」


 小さく唇を尖らせるシルバー――自身が纏めた報告書を提出し、それに目を通すウィステリア。


「ヨーロッパ各方面の方は順調です。 向こうの支部は暫く私が居なくても滞りなく運営は可能です」

「……その様だな。 ……シルバー、フランスの方はどうだ?」

「えぇ、現在も出資は続けています。 ……まだ、あの会社を潰させるわけにはいかない――そうでしょ?」

「あぁ。 ……来年度になれば【彼女の腹違いの妹】も入学してくる。 それに……会社の威信にかけて、シェア第三位というプライドもあるだろうしな」


 そう告げ、仮面を外す男――赤い眼が露になり、眼光鋭く一枚の書類をチェックした。


「……シルバー、念のためだ。 この男も消しておくように」


 一枚の書類にプリントされ映っている男性――恰幅がよく、趣味の悪いスーツを着て葉巻を咥わえていた。


「えぇ、じゃあ早速手配するわね」


 専用の個人端末を使い、自身が受け持つ支部へと連絡をとるシルバー。

 その間も書類に目を通すウィステリア――誰かの気配を察したのか、仮面を被るとドアをノックする音が聞こえてきた。


「ウィステリア様、【スレート】です」

「あぁ、入って構わないぞ」


 書類に目を通しながらそう言うと、ドアが開かれた。

 眼鏡を掛けた若い男――年齢は凡そ二十歳程、室内に入ってきた【スレート】と呼ばれた男は一礼して挨拶した。


「ウィステリア様、報告書です」

「すまないな、スレート」

「いえ……僕は貴方やシルバーに拾われていなければ、いつ命を落としていたか」


 そう言ってシルバーにも一礼するスレートに手を振るシルバー、指示を終えると端末機をしまい――。


「気にしなくて良いのよ、スレート。 【君は彼処で命を落とす】様な子じゃないんだし、ね?」

「ありがとうございます、シルバー」

「フフッ」


 小さく笑みを返すシルバー、ウィステリアは先に受け取った報告書を読み終わり、今度はスレートの持ってきた報告書に目を通す。


「スレート……IS委員会の方はどうなの?」

「ええ、そちらは特に問題はありません。 ……とはいえ、委員会の人間は未だに篠ノ之束博士の行方を探すのに躍起になっていますが」


 指で眼鏡を直すスレート――報告書を読みながら、ウィステリアは答える。


「フフッ……委員会の人間ではあの人を探すのは困難さ、これがな」

「そうなのですか、ウィステリア様」

「ああ。 ……とはいえ、そろそろ亡国機業側が接触する頃だがな」


 目を通すウィステリア、そして――。


「スレート。 【有坂緋琉人】の代表候補生の件はどうだ?」

「そちらは難色を示しています。 頭の硬い役人は、ブリュンヒルデの弟である織斑一夏だけを仮の代表候補生にしようとしています」

「成る程。 ……スレート、委員会に対して圧力を強めるように指示をするんだ」

「わかりました」


 改めて報告書を見るウィステリア。

 そして報告書の一部を抜き出すと、やはり其所には人が映っている書類をスレートに見せる。


「スレート。 この女は下部組織に命じて誘拐させるんだ」

「わかりました。 ……ですがウィステリア様、この女性は我々イルミナーティに対して何かしたのでしょうか?」


 ふとした疑問を抱くスレート――ウィステリアはそんなスレートを見ながら答えた。


「……彼女は何れ世界に対して悪影響を与える存在になる。 その芽を摘まなければ何れ……な」

「……わかりました。 早速手配します」


 端末機を取り出し、彼自身も指令を出す。


「すまないなスレート。 ……世の中必要悪というものがある。 それを時には私達が担わないといけない」

「いえ、僕もそれは分かっています。 ……すみませんウィステリア様、懐疑的な言い方をして」

「いや、私も全てをスレートやカーマインに告げる事が出来ないのが心苦しい。 すまない」


 頭を下げるウィステリアに、慌てるスレート。


「あ、頭を上げてくださいウィステリア様。 僕は、貴方に忠誠を誓っています。 それは絶対に揺らぐことはありません」

「……ありがとう、スレート」


 報告書に目を通し終えたウィステリア――。


「……シルバー、他の幹部はまだ帰還していないな?」

「えぇ。 特に【コーラル】の方は手間取っているようね」

「……仕方ない、彼には無茶をさせているからな。 麻薬組織の壊滅……やはりそう簡単には上手くいかないか」

「……一応、私が行けば解決するけど」

「いや、シルバーには暫く此方に滞在してもらう。 ……もしも彼が兵器を必要だと言った場合は次世代の戦車を何両か手配できるように。 スレート、頼めるか?」

「わかりました。 仰せのままに。 ……ではウィステリア様、失礼します」


 そう言って部屋を後にしたスレート――残されたシルバーは。


「幹部会……全員の召集は難しそうね」

「仕方ない。 ……そういえばカーマインは?」

「カーマインなら自室で寝てるわよ」


 成る程――と小さく呟く。


「了解した。 ……君ももう休むんだ」

「えぇ。 ――兄さんも、無理はしないでね」

「分かってる。 ……ふぅ、あまり心配しすぎるなよ」


 そう告げるとまた仮面を外すウィステリア――それを見たシルバーは。


「……兄さんは、その仮面をしてるよりは素顔の方が素敵よ?」


 そう指摘し、部屋を出ていくシルバー。

 残されたウィステリアは天井を見上げてさっきまで見ていた夢を思い出していた。

 既に汚れたこの手――だが、最悪の結末にするぐらいならと、進んでその手を世界の理想の為に汚す。


「既に一石は投じた。 ……世界はどう答える」


 誰も居ない室内――その問いに答えられる人間はいなかった。 
 

 
後書き
モッピー知ってるよ。
ウィステリア様ってイケメンだって事。

    _/⌒⌒ヽ_
   /ヘ>―<ヘヽ
   ((/ ̄ ̄ ̄\))
   /    ) \
  /  | | //ヽ ヘ
  |  ハ | /イ | |
  レ |/ レ| N\|||
  /| |≧ ヽ|≦ |||
 / ヽ|゛    ゛|/ /
 \_(ヽ  ̄ /⌒)ヽ
  / | T ̄ ̄| ヽ |
 / /ヽノ   \_ノ|
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 
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