IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》
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【第525話】
前書き
ヒルト対女
IS学園、格納庫へと通じる大きな通路。
防御隔壁を破壊し、突き進む一機のIS――。
「……ISの反応」
隔壁を殴っていた女は接近するISの反応を捉えた――そして、振り向いた先に居たのは。
「あの機体は……それに、ランクEの男……」
現れたのはヒルトだった、その身には先日の襲撃事件で受領したイザナギが纏っている。
「あの機体、アメリカの第三世代……?」
「………………」
ヒルトの言葉に、何も語らない女――だが、邪魔をしようとするヒルトに対して障害を排除しようとライフルを粒子化させ、トリガーに指をかける。
「……まあ分かってたことだが、やはり戦うしかないってことか……」
ヒルトは粒子化されたライフルを見て悲しそうに呟く。
刹那、トリガーが引かれ、通路に響き渡る発砲音。
ガンスモークが立ち込め、銃口から無数の弾丸がヒルトへと突き進む。
『マスター、迎撃モードに切り替えますよぉ('◇')』
ヒルトの返事を待たず、勝手にシステムを切り替えるイザナギ――各種装甲がスライドして開き、中から無数の『レーザー砲口』が現れる。
無数に迫る弾丸を関知したレーザー砲口は光を放ち、正面の弾丸を迎撃して灰塵に帰した。
「……なっ!?」
「これ……村雲・弐式の……」
迎撃された事に驚く女、ヒルトも、村雲・弐式に備わった八式・天乃御柱による迎撃機能が内蔵されているのに驚いた。
「……まだ学園内だし、此方も射撃は使えない以上は――」
「……格闘戦」
先に動いたのは女だった――その手にはショートブレイドが握られていて機体のスラスターを点火し加速、一気に迫る。
ヒルトも直ぐ様北落師門・真打ちを展開、格闘戦を仕掛けてきた女相手に何度も切り結ぶ。
「…………!?」
「ちぃっ……」
女は驚いた、事前で知っていた有坂ヒルトの実力が違うことに――ランクE、学園の落ちこぼれ――仮に現れても障害にすらならない道端の石ころ――作戦に入る前の隊長が客観的に捉えていた内容だ。
――とはいえ、その情報も四月当初の入学時点、そこから推測された戦闘力を計算してもやはり道端の石ころという評価は変わらず、自分もその評価は正しいと思っていた。
だが事実は違った、何度も切り結ぶヒルト、距離を離してから中距離戦を仕掛けると今度はヒルトの持つ刀が大きく円を描いて迫り、それを切り払っても気付くと刀が握られ二刀目、三刀目と襲い掛かる。
居合い抜きの様に腰だめに構え、前方に振り切り、刀を放つ一連の動作。
単純明快だが、ヒルトの能力も相まって絶大な効果を引き出されていた。
まずい――そう過った時には後の祭り。
有坂ヒルトの怒涛の武装ラッシュが始まる。
「うぉぉおおっっ!! 食らえぇぇええっ!!」
轟く轟音と共に放たれる巨大な拳、広い通路の中、自由が効く空中へと逃れるも、今度は北落師門の投擲――その刃に備わったシールド無効化攻撃は絶大で、リミットの掛かっていない軍用機相手でも大きくシールドエネルギーを削り取った。
迂闊に距離を離すんじゃなかった――後悔する女は、ヒルトの放つ武装ラッシュをダメージ覚悟で突き進み、再度接近戦を試みる。
一瞬の間――肉薄する女はすかさずショートブレイドによる一撃を放つ――だが。
「……!?」
ヒルトの反応はそれを更に上回り、後方への瞬時加速で一撃を避け、直ぐ様全身のスラスターによる瞬時加速で肉薄、慣性を殺さず加速のついた掌打による一撃が女の機体【ファング・クエイク】の肩部装甲を砕いた。
「ば、馬鹿、な……!?」
あり得ない――何故私が一方的にやられている……?
だがその問いに誰も答えない、破壊されたアーマーの破片が空を舞う中、吹き飛ばされた女は体勢を整えるべく直ぐ様スラスターを点火。
「……!?」
だが、その隙すら見逃さなかったヒルトによる攻撃。
胴を両断しかねない程の加速力がついた一文字斬りは、圧倒的なシールドエネルギー量を更に大幅に失わせた。
左手にショートブレイドを構え、右手にライフルを持ち発砲――背後を向いているのなら、先程の迎撃は使えない筈――だが、これも女の誤算だった。
一部装甲がスライドして開くとその弾丸をレーザー迎撃によって完全に消された。
閉鎖空間での戦いではファング・クエイクに分がある――その筈なのに全く通用しないどころか、リミットの掛かった機体に手も足も出ない状況は女にとっては悪夢でしかなかった。
「まだっ……!」
まだ諦めるわけにはいかなかった――目標のコアの奪取すら出来ず、危険を犯してまでIS学園に潜入した意味が無くなってしまう。
女にも意地があった、例え名前の無い部隊で、他の部隊に居場所が無く、全てを捨てて、名も無く――それでも、その部隊にある貴重なIS一機を任された自負が。
「……ハァァアアアアッ!!」
女の渾身の一撃――左手のショートブレイドを振るい、右手のライフルは残弾が無くなるまで放つ。
だがその弾丸は全てが迎撃され、左手のショートブレイドもヒルトに腕を掴まれて阻まれた。
「クッ……離せッ!!」
「勝負はもう決した。 ……このまま退けば、問題にはならない筈だ」
「何を甘いことを……!!」
じたばたと足掻き、暴れる女を取り押さえるヒルト――じゃじゃ馬の様に暴れる女は、今まで通らなかった攻撃がじたばたすることによって微々たる量のシールドダメージを与えていた。
「甘くても構わない! 俺は……ただ学園を守りたいだけだ。 君を傷付けたい訳じゃない!!」
「……!?」
その言葉に、暴れるのを止めた女――バイザーで隠れた表情は、ヒルトでも伺うことは出来なかった。
だが、ヒルトに敵わないという事実と、ヒルトの傷付けたくないという想いを知り、力無くその場に座り込み、戦意を失う。
軍人として失格――そんな思いが過る中、ヒルトは手を差し伸べる。
「……出会いは最悪でも、俺は君とは分かり合えるって感じた。 ……戦いを通じて分かりあうっていったらおかしいかもしれないがな」
「………………」
有坂ヒルトのそんな言葉に、何故か心の靄が晴れていく気分だった。
名前がなく、居場所も無い――だけど、この男なら私の居場所を作ってくれるのでは――何故かそう思う自分がいた。
「……私の負けだ。 ……君の好きにするといい」
「……そっか。 ……悪いようにはしない。 その身柄は一応織斑先生に預ける。 それでいいか?」
「……わかった」
そう言ってISを解除した女――エメラルドグリーンの長髪が下ろされ、ヒルトと同じ様な真っ赤な瞳に、割と童顔な顔。
スタイルも俗に言うトランジスターグラマーと呼ばれる体型だった、出るところは出て引っ込むところは引っ込む。
そして年齢もヒルトと同い年ぐらいにしか見えなかった。
「……拘束はしないのか」
「する気はないな」
「逃げるかもしれないぞ?」
「……逃げるつもりなら、何も言わずに逃げてるよ。 ……だが君は逃げてない、その事実が今目の前示してるじゃないか」
「………………」
面白い男だと思った女は僅かに微笑を溢す。
それから暫くしてその身柄は織斑先生に預けるため、ヒルト達はオペレーションルームへと向かった。
後書き
お兄ちゃん!今回めちゃくちゃ強かったね!
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(○ ´ω` ○)
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