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虐め

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前書き
フィクションである。
ここでの【私】は私ではなく【私】である。 

 
あるところに、いじめられている少女が居ました。
顔など見える部分は綺麗でしたが、見えない部分はボロボロでした。
少女は死のうと思いました。
そして、決行しようとした日でした。
少女は水の入ったバケツの中に顔を突っ込まされました。
数秒毎に顔をあげて、またすぐに水に突っ込む。
これなら殺人未遂で逮捕できるだろうな。
そんなことを考えていると、先生が入ってきました。
顔が水から解放されました。
先生が何かを言おうとしました。
少女は、殺人未遂で逮捕できますよね?
そう聞きました。
その瞬間、先生は豹変しました。
私の髪を掴んで、
「そんなことしたら学校の評判が落ちるじゃないか!」
そう言って、私の顔を水の入ったバケツの中に突っ込みました。
いじめをするやつらとは違う、圧倒的な大人の力。
苦しくなっても顔をあげられない。
誰かが先生と口論していた。
何て言っていたのかは分からない。
ただ、その人のお陰で少女は水の中から顔を出せました。
先生が教壇に戻ろうとする。
振り返って私に言う。
「あぁ──────
今度評判傷つけようとしたら、本当に殺すからな」
本心なのかはわかりません。
でも、少女は恐怖してしまいました。
死の恐怖を、知覚してしまいました。
結局、自殺はできませんでした。
私がしようとした自殺方法は、溺死。
一番綺麗な死体で発見される死に方。
一番、他人に迷惑をかけない死に方。
そして、一番見つかりづらい死に方。
自殺場所にはいきました。
水の中に入ろうともしました。
ですが、入れませんでした。
入ろうとしても、足が楠みました。
水の方から私の中に入ってくる。
そんなことが起きるのではないかと言う恐怖で、その場から離れました。
早足で、駆け足で、駆け出した。
頭の中で、声がこだまする。
「殺すからな」
「殺すか「殺す「殺「殺すから」な「殺」らな」す「殺すか」からな」すからな」
何十にも、何重にも、聞こえました。
…たった千字足らず。
思い出せないところもあるけれど、たったこれだけの文字数で収まる体験で、私の心には、傷がつけられた。



たった一杯の水でさえ、今でも怖い。

 
 

 
後書き
同情なんて要らない。
私は【私】ではないのだから。 
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