IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》
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【第527話】
前書き
今回からワールドパージ内部、クロスオーバーしてるかも
後、久々に彼女が来ます
瞼を開くと、目の前には一面草原が広がり、その向こうには森が見えた。
「……まるで美春や雅、ツバキの様に世界が広がってる……。 ……もしかして、ここは――」
そんな俺の呟きを遮るように簪の声が頭に響いた。
『ヒルトくん、森の中に急いで。 森の奥、そこにあるドアの先に皆が居るはずだから』
「簪――わかった」
今は考えるのを後にして、俺は草原を駆けていく――だが、その途中、草原の真ん中で異形の怪物が突如現れた。
「オォォォォッ!!」
「な、何だ!?」
まるで空想の産物である怪物――そう、ゲームの中に出てくるような牛男が現れた。
「簪、何だこれは!?」
『待って、今調べる……』
そう言う合間に、牛男は手に持つ長大な斧を横に構えた。
「……おいおい、まさか――」
振りかぶる横一線による一撃、すかさず屈むと身体の上を斧が通過、その衝撃風が巻き起こる。
「ちっ……まるでファンタジーだな、これが!!」
振りかぶった一撃で大きく尻餅をついた牛男、間合いを詰め、全力で足の脛を蹴りあげた。
「グォォッ……!」
「……効いてるのか?」
僅かに痛む仕草を見せた牛男――そして、簪の声が聞こえてきた。
『ヒルト、今からヒルトの制服データを書き換える』
「データを?」
そうこうしてる内に制服が光を放つ――その光が収束するや、その身には軽装の鎧と幅広いロングソードが腰に鞘と一緒に備わっていた。
『ヒルト、まずはその牛男を倒して』
「ま、マジかよ……」
『……それと、その世界で死ぬと、現実世界の貴方も死んじゃうから気をつけて』
簪の説明に血の気が引く――刹那、立ち上がった牛男の拳が地面を抉った。
「っ!?」
バックステップで避け、一旦間合いを取る。
牛男は長大な斧を構え、無差別に振り回し始める。
「無差別攻撃かよ……だが、お前に構ってる暇は無いんだッ!!」
無差別攻撃を掻い潜り、鞘から抜いたロングソードで牛男の軸足を執拗に切りつける。
血飛沫が緑の草原を赤く染め、痛みで咆哮を上げる牛男。
体勢を崩した牛男の首にロングソードを突き刺し、喉を切り裂くと、背中から倒れ、摩擦しながらその体は粒子となって消えていった。
「……簪、これらの原因はわかったのか?」
『多分、ハッキングしてきた何者かによる妨害工作……』
「……にしてはえらくファンタジーな内容にしたな、その何者さんは」
『ヒルト、油断は駄目……』
「……了解、新しく出てくる前にさっさと行くかな」
鞘にロングソードを納めると、新手が出ない内に森へと入る。
鬱蒼とした森の中、光さえ遮るほどの木々の群生、パキッと小枝を折り、道なき道を進む。
「……サカサ」
ふと何かが聞こえた――足を止め、周囲を見渡す――。
「サカサ、サカサ……」
「…………ッ!?!?」
血の気が引き、俺は一気に青ざめる。
ブリッジし、口や目、鼻の穴からは血を流し、ギョロギョロと周囲を見渡す異形の死体――そう、屍人とも呼べる存在が無数に現れた。
「サカサ、サカサ……」
「……!?」
何が逆さだと思いつつも、足の震えが止まらなかった。
ホラー関連が苦手な俺には強烈な嫌悪感と恐怖を与える存在だった。
ガチガチと奥歯が自分の意思とは関係無くカスタネットを叩くように重なりあった。
「く、来るな……来るなァッ!!!!」
『ヒルト、大丈夫!?』
「だ、大丈夫じゃねぇッ!! チクショー、悪夢じゃねぇかッ!!」
みっともなく喚く俺の声が森の中へ消えていく。
鬱蒼とした森の中で叫ぶ俺、迫る屍人、ロングソードを抜き、追い払おうとしても無駄な足掻きだった。
『え……これって』
簪の言葉が頭に響くが、俺はそれを聞いてる余裕がなかった。
過呼吸になりながらも必死にロングソードを振り回す俺――と。
「主君ーッ!!」
「え――」
森を駆け抜ける一陣の紅い風、紅蓮の髪を靡かせ、手にした蒼白い炎を纏った刀で異形の屍人を切り伏せていった。
「……主君、待たせたな」
「……みや、び……?」
そう囁くような声で呟く俺に、雅は力強く頷いた。
「ああ! 主君、私は……また貴方に逢えると、信じていた!」
電脳世界にダイブし、まさか雅に逢えるとは思わなかった――と、簪が話す。
『ヒルト、彼女はこの学園の何処かからか電脳世界へダイブしてきたみたい。 ……でも、あの子、学園の子じゃ……』
多分だが、母さんの整備室に保管されてるって聞いたから電源か何かしらが接続されてそこからコア・ネットワーク経由で――無論眉唾な話だが、事実……彼女は其処に居た。
「フクラハギッ」
変な断末魔を上げ、粒子となって消えていく異形の屍人。
恐怖から解放され、ホッと安堵の溜め息を吐くと共に先に簪に謝る。
「わ、悪い簪……怒鳴ったりして」
『ううん。 ……ヒルト、ホラー苦手?』
「……情けない話だが、苦手だな」
『そうなんだ。 ……ふふっ、ヒルトの事、一つ知れて良かった』
特に怒ってないらしく、そういう意味でも安堵していると――。
「主君、これから向かう先までは私が護衛しよう。 ――というよりも、目的の場所までは私は行くことが出来ないのだ」
「そうなのか? ――というか、眠ってたんじゃ……」
「あ、それなら私が起こしたんだよ♪」
がさがさと草むらが揺れ、現れたのは美春だった。
「美春!?」
「あはは。 簪、ごめんね、連絡取れなくて」
『……無事なら安心。 でも、連絡しなかったのは……?』
「よくわかんないんだけど。 たまに連絡不可能な場所があるんだよね。 ……それに、私も森の奥にはいけないっぽいし」
原因不明――といいたいが美春と雅の共通点はISコアという事だ。
何かしらの要因があるのかもしれない。
「それよりも主君、急ごう。 ここに止まっていてはまた異形の者が訪れるやもしれない」
「そ、それは嫌だな……。 二人とも、行こう」
「うん」
「うむ」
美春、雅共に頷き、俺達は更に森の奥へと進んでいく。
土の臭いに草の質感等、妙にリアルなこの世界――暫く進むと、明らかに森には不釣り合いな洋館が見えた、硬い鉄格子の大きな門で封印されてる様に見える。
まるでジェイルハウスの様だ。
『……さっきまであんなのは無かった筈』
簪のその言葉に疑問を抱く。
俺が来たことでその何者かはこの電脳世界を弄ったのだろうか――そう思った矢先、耳をつんざく様な咆哮が洋館から聞こえてきた。
「主君、何かがくる……」
「うん。 ……美春も感じる、殺意を持った何かが……!!」
二人は警戒し、雅はしゅらんっと刀を抜いて構え、美春は村雲・弐式を身に纏う。
俺もそれを見てイザナギを纏おうとするのだが――。
『ヒルト、電脳世界ではISは使えない』
簪の言葉通り、呼び出しても反応は無かった。
美春が使えるのはやはりコアというのもある上にイレギュラーなのだろう。
雅は逆に今コアのみの存在だ、呼び出せないのも頷ける。
額から流れる汗を拭う、吠える咆哮は僅かに地面を揺らした刹那、洋館のドアが力任せに吹き飛んだ。
「アアアアアアアアアッッッッッッ!!」
咆哮と共に現れたのは異形の青い巨人、歪な頭部に顔の半分以上の大きな目、鷲のような大きな鼻――。
「ひ、ヒルト! あ、あんな生き物初めて見たよッ!! 何て生き物なの!?」
美春は初めて見る異形の生物に興奮したようだった、ぶっちゃけ俺にはあの生物の正体がわからない。
……だが、最近見たゲームの動画に出てきた化け物に近いイメージだった。
ドアを吹き飛ばした青い怪物――ズンッズンッと歩く度小さく地面を揺らした。
鉄格子を力任せに揺らす怪物――徐々にひしゃげていく門、そして――、その門が完全に破壊されると素早い動きで雅を捉えようとした。
「遅いッ!!」
ひらりと空を舞う雅、俺も鞘からロングソードを抜き、空ぶった腕を力任せに切りつけた。
青い液体が飛沫の様に散り、更に空を舞う雅はそのままの体勢で背中を大きく切りつけた。
痛みによる叫びにも似た咆哮――ギザギザの歯を剥き出しにして俺を睨む大きな目――だが。
「ヒルトの敵は私の敵でもあるからね。 ……串刺しにしてあげるッ!!」
八式・天乃御柱の矛が青い怪物の全身に突き刺さる。
白目を剥き、ぐらりと前のめりに倒れた怪物は紫の舌を出し、粒子となってさっきの屍人同様に粒子となって消えた。
「……余程主君を先へと行かせたくないようだな」
「だね。 ……それにしても、世界には色んな生き物がいるんだね。 さっきの逆さ人間とかさ」
……あんなのや今みたいなのが居て堪るかと正直思う。
洋館は気になるも、驚異を退けた俺達は更に奥へと進む――そして。
「……すまない主君、どうやら私たちはここまでのようだ」
「え?」
振り向くと美春と雅の二人は見えない壁に阻まれてこれ以上進めなかった。
既に目的地であるドアが並ぶ区域は目と鼻の先だが――。
「……雅、美春、ありがとうな。 助けてくれて」
「ううん。 美春達こそごめんね?」
「すまない主君。 ……短い時間だったが、共に居れた事、嬉しく思う」
二人はそう言って頭を下げるが、俺は首を振り――。
「いや、本当に助かったよ。 ……後は俺が皆を救出するだけだな」
「うむ。 ……主君、ご武運を」
「ヒルト、雅ちゃん送ったら私も元の世界に戻るね」
一礼する雅、手を振り見送る美春、短い時間だがまた雅に会えた事を胸に秘め、俺は目の前のドアが立ち並ぶ異様な場所へと足を運ぶ。
「……ここには異形の生物とか現れないよな?」
『この空間は平気。 ヒルト、順番は任せる、から……』
とりあえず出ないのなら安心――既に雅達は居なく、風に靡く木々の葉音だけが聞こえてきた。
ぽっかりと空いたこの空間に射し込む太陽の光――ここが電脳世界であることを、さっきまでの異形の生物との戦いさえも忘れさせる感じさえした。
「……簪、とりあえず今の服装じゃなく、制服に戻してくれるか?」
『了解、ちょっと待って……』
暫くして光が俺の身体を包み込み、ここへと来たときと同様の制服姿に戻った。
「……さて、先ずはここからだ」
そう独り言を呟き、一番端のドアノブに手を掛け、捻るとドアが開く。
そして、目映い閃光が周囲一帯を飲み込んでいった。
後書き
モッピー知ってるよ。
異形の生物は皆クロスオーバーって事。
_/⌒⌒ヽ_
/ヘ>―<ヘヽ
((/ ̄ ̄ ̄\))
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/ | | //ヽ ヘ
| ハ | /イ | |
レ |/ レ| N\|||
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