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IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》

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【第511話】

 
前書き
後半

久々に出ます、あの二人( ´艸`) 

 
 甘味処での休憩を終えた俺と美春。


「んんッ、凄く美味しかったー。 ……へへ、ヒルト、ありがとね?」

「ん、満足したなら良かったよ」


 ジャンボミックスパフェ二つをぺろりと食べた美春、女の子は甘いものは別腹とは聞くが――。


「んと、これからどうするの、ヒルト?」

「……そうだな」


 腕時計で時間を確認する、時間は四時前――まだまだ時間に余裕はある。


「んじゃ、次は軽く本でも見に行くか」

「本? わかったー」


 頷く美春、さっきとは違い今度は後ろから美春は着いてきた。

 エレベーターを使い、目的地である書店へと訪れる。


「おぉ……広いねー、ここ」


 美春は感慨深くそう言った、学園にある図書館より広いからだろう――まあ、学園のは基本的にIS関連が主で、他は並み程度にしか置いていないのだが。

 書店へと足を踏み入れる、店内は明るく、落ち着いたBGMが流れていた。

 店内には本を求めて様々な人達が居た――と、ここで見知った子が居た。

 熱心に本を読む彼女に近付く――。


「静寐、何読んでるんだ?」

「え?」


 熱心に本を読んでいたのは静寐だった、何度か瞼をぱちくりさせる静寐――。


「ひ、ひ、ヒルトくん……!?」

「おっす」



 驚き、狼狽する静寐に、俺は笑顔で挨拶した。


「ぐ、ぐぐ、偶然、だね、ひ、ヒルト、くん!」

「あぁ、そうだな。 何を熱心に読んでたんだ?」


 そう言って覗きこむ俺だが、静寐は慌てて本を後ろ手で隠す。


「な、何でもないよ? ち、ちょっと気になっ――」

「ふむふむ、【気になる男の子の気を引くテクニック十選】――って書いてあるよ、ヒルト?」

「!?」


 後ろ手に隠してあった本を、いつの間にか背後に回って表紙を読む美春、それに驚き、目をぐるぐる回し始めた静寐。


「こ、これはその、ね。 と、友達の為に、ち、ちょっと調べてただけで……」


 何故か俺にそう説明する静寐、美春はそんな静寐のコロコロ変わる表情が珍しく映った。


「そうなんだな。 ……そういや、静寐って好きな男とか居ないのか?」

「え――えぇっ!? そ、それは、その……え、えっと……」


 視線が泳ぐ静寐、普段はしっかりものなのにこんな表情を見せる静寐は新鮮だった。


「はは、そんなに狼狽えなくていいよ。 少し興味があったから訊いてみたんだ、悪いな静寐」

「う、ううん、大丈夫」

「……じぃー」


 俺と静寐のやり取りを見る美春――静寐は軽く落ち着かせる様に呼吸すると俺と美春を見て――。


「ヒルトくんと美春ちゃんは何か探し物してるの?」

「ん? いや、まだ学園に帰るのも早いから二人でレゾナンスを散策中ってわけ」

「そ、そうなんだね」

「へへ……今日は私がヒルトを独占しちゃってるんだ」

「……いいなぁ……」


 ぽつりとそう呟く静寐、だが慌てて首を横に振るや――。


「な、何でもないよ、ヒルトくんっ。 じ、じゃあ私、ちょっと見たいものあるからまた寮でね?」


 またも狼狽しつつ、書店を後にした静寐。

 静寐が本棚へと収めた本を手に取る美春は俺を見ながらタイトルを言った。


「『気になる男の子の気を引くテクニック十選』……誰の気を惹こうとしてるのかな、ヒルト?」

「さぁ、な」

「……気にならないの?」

「…………秘密だ」


 俺はそれだけを言う、美春もふーんと返事して本を棚へと戻した。

 暫く書店で様々な本を見ていく俺と美春。

 IS関連の書籍コーナーを見る――。


「ねえヒルト、この表紙の人って生徒会長の楯無さんじゃない?」

「ん?」


 そう言って美春が手に取った本は『ISモデルショット』だった、九月号が未だにあるのは売れ残り――という訳ではなく、張り紙が書籍の所に貼ってあった。

『九月号好評につき再入荷致しました、まだ手に入れてないあなた、今すぐ九月号を持ってレジへ(b^ー゜)』


 張り紙はとりあえずそのままに美春が見せてきた表紙を見ると、確かに楯無さんが表紙に写っていた、流行りの秋物コーディネートを可愛く着こなすその姿は流石の一言。

 パラパラと中を捲る――前半部分は楯無さんが様々な秋物の服を着てそれを紹介している。

 後半も二年生や三年生の女子が写っていた――これは、IS学園の子限定雑誌なのだろう。


「あ、ヒルト、これ織斑先生じゃない?」

「ん、そうだな」


 織斑千冬特集と全面的に記載された雑誌『戦女神』――ルビにブリュンヒルデと書かれていた雑誌にでかでかと織斑先生が写っている、スーツ姿の為、多分教職についた時のだろう。

 見たい気もするが、敢えてこの場は放置してみる。

 他にも様々な書籍――主にモデル雑誌が見つかる中、一夏の写っていた雑誌もあった。

 『IS学園期待の星、織斑千冬の弟である織斑一夏の何気ない日常』と書かれていた。


「……ヒルト、興味あるの、それ?」

「……いや」


 そっと棚へと戻す――と、今直した雑誌を手に取り、一人の女性がそれを購入するためにレジへと向かっていった。


「……アイツのどこが良いんだか。 ……それはそうと、ヒルトの載った雑誌は無いんだね」

「まあ断ってるしな、俺を特集するよりかは一夏の方が話題性あるんだろ」

「……ふぅん、まあ私は織斑一夏に興味ないからどうでもいいかな」


 興味無さそうにそう言った美春。

 とりあえず欲しい本とかは見当たらず、俺は――。


「店、出ようか?」

「そうだね」


 小さく頷いた美春、俺達二人は書店を出る――夕方でもレゾナンス内は人で賑わっている、一階の方を見下ろすと主婦らしき人達が地下一階へと降りていくのが見えた。

 美春と地下街散策ってのも悪くはないが、基本惣菜関連がメインに思える。

 ――いや、もしかすると洋菓子関連はあるかもしれないが。


「ヒルト、どうする?」

「そうだな……」


 そう思いながらベンチに腰掛ける、美春も同様に隣へ腰掛けた。

 他に見ても良いんだが――そう思っていると突然誰かに呼ばれた。


「おーい、ヒルトー」

「何そんなところで黄昏てるんだよー」


 そう言って近付いてきたのはたっくんと信二の二人だった、美春は小さく首を傾げて誰だろうといった表情を浮かべている。


「たっくん、信二、久しぶりだな」


 そう声を掛けると二人は笑顔で応えた。


「だな! 学園祭以来だな、ヒルト」

「バカだな、俺達キャノンボールでも会っただろ?」

「そうだっけ? キャノンボールじゃ、挨拶しなかった気がするが」

「んー、まあいっか」


 何かわからないが二人の間で自己解決した様だ。


「それはそうと、ヒルトは何でこんなところで黄昏てるんだ?」

「てか隣の子、誰だ? ……この子もめっちゃ可愛いじゃん、やっぱIS学園レベルたけぇッ!!」


 興味が美春に移った二人、美春はきょとんとした表情を浮かべながら二人を見ていた。


「……美春は俺の義理の妹だよ」

「義理の妹? この子が?」

「……何でヒルトの周りばっかりこんなに可愛い子が集まるんだよぉ……!」


 たっくんは義理の妹と紹介された美春をまじまじと見、信二は俺の女性環境の羨ましさに涙した。


「は、初めまして……ヒル――え、えっと、義兄の義妹の美春、です」


 とまどいを見せつつ、美春は挨拶するや、たっくんが真っ先に食い付く。


「はっじめましてー♪ 俺、ヒルトの超親友でマブダチの成河拓斗です♪ 義兄さんとは昔からつるんでるんだ! ねっ、義兄さん♪」

「誰が義兄さんだよ、バカ」


 義兄さん呼ばわりするたっくんを一蹴する俺だがたっくんはめげない。


「な、何を言ってるんっすか義兄さん。 俺と義兄さんの仲じゃないっすか!?」

「義理でもたっくんに美春はやらん。 てか親父が許さん筈だし」

「ぐあぁ、美春ちゃんにも美冬ちゃんにも、ヒルトの親父さんっていうSPが付いてるのかよぉ……」


 ガックリするたっくん、本気でうちの妹たちを狙ってるのだろうか……。

 美春もたっくんを見ながら困ったように眉根を下げる。


「あ、美春ちゃん、俺は佐々木信二、よろしくねー」

「あっ、はい、よろしくです」


 復活した信二は挨拶を返す――と。


「なあなあヒルト、今日はシャルロットちゃんは来てないの?」

「シャル?」


 シャルの名前が出た事に、美春は小さく反応した――と、たっくんが信二に。


「ったく、信二のやつ、キャノンボールでのシャルロットちゃんの激走ぶりにすっかりファンになっちゃってさ」

「良いだろ!? あんなに礼儀正しく、女尊男卑な昨今でも俺に優しく微笑みかけた彼女は――紛れもなく天使だよ!」


 ――等と力説する信二、周囲は何事かと俺達を注視した。


「わ、わかったから落ちつけって信二」


 たっくんがそう言うのだが、力説する信二は止まらない、まるで瞬時加速をかける一夏の様に――。

 そんな天使に、俺はエロいことをしてるのだからそれを知ったら――言わないが、とりあえずシャルの所在は一応知ってるので教えることにした。


「シャルなら学園だぞ、代表候補生の彼女は先日入ってきたISのパーツ確認で忙しいって言ってたし」

「な、何ですと……。 し、シャルロットちゃんいないのか……」


 項垂れる信二、魂が抜けたように膝から崩れ落ちた。


「……てか、たっくん等は買い物じゃなかったのか?」

「ん? いや、俺達は出逢いを求めてナンパしてただけだぜ」

「……ナンパ?」


 美春が首を傾げる、ナンパの意味がまだわからないのだろう。


「美春ちゃん! ナンパってのは男の子と女の子が出逢い、親睦を持つための儀式みたいなものなんだよ! って訳で美春ちゃん、俺と甘いものでも食べに行こうぜ!」


 そう言って俺の目の前でナンパを始めたたっくん、俺はこめかみを抑えていると美春は――。


「ん、今ヒルト義兄さんとお出掛け中だからダメかな」

「ガーン……」


 あっさり断られて信二同様に膝から崩れ落ちたたっくん、子供から指差される彼等二人が哀れに思った。


「……てか用が無いなら俺達は行くからな」

「あ、ま、待ってよ。 ……じゃ、じゃあね二人とも」


 俺と美春の二人はその場を離れる、後ろから聞こえてくるたっくんと信二の悲しい叫びを背中に受けて微妙な気持ちのままレゾナンスを出た。

 お互い何だか気が削がれたのもあり、俺と美春は学園へ戻る為、駅舎へ向かった。

 夕方五時過ぎ、学園駅に着いた美春は――。


「へへっ、ヒルト、楽しかったよ?」

「そうか。 ……まあ最後、あの二人が何か余計な気を削いだ気もしなくはないが」

「あはは、でも……改めて色んな人間がいるんだなぁって、勉強になったよ!」


 満面の笑みを浮かべた美春、グッと小さくガッツポーズを見せた。


「ねえヒルト、また良かったら一緒に行こうね? 私、もっと色々な場所や景色、見たいから!」

「ああ、構わないぞ」


 俺の返事に、パァッと花開く笑顔を見せると、美春は俺に抱き着いてきた。

 そんな美春の頭を撫で、俺達二人は他愛ない話をしながら寮へと戻るのだった。 
 

 
後書き
まだ暫く休日編続く 
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