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IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》

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【第519話】

 
前書き
EOSでの模擬戦編 

 
 何とかEOSに乗り込み、指示された起動シークエンスを作動させる、そして――作動させた結果が今の現状だ。


「くっ、このっ……!」

「こ、これは……」

「お、重い……ですわ……」

「うへえ、何よこの重さ……嘘でしょ……」

「う、こ、腰が痛いのに……」

「うご、けない……」


 一夏に篠ノ之、セシリア、鈴音にシャル、簪とEOSを動かすのに四苦八苦していた、更にシャルは腰が痛いらしく、顔を赤くしながら俺を見た――まあ昨日、あれだけしたんだから仕方ないとは思う。

 確かにこのEOSは重い上に四肢に自由が効きにくい。

 機体総重量ならISの方が遥かに上だ、勿論PPSも同様に重い。

 ISにはPICシステムが搭載されているのと、各部には補助駆動装置にパワーアシストと、操縦者に優しい補助機能が満載されている。

 PPSに関しても、ほぼほぼISに近い各種補助機能がついてると母さんから一度説明を受けている。

 一方のEOSに関してはというと、THE金属――それも塊みたいな物だ。

 補助駆動装置はあるものの、その装置はレベルが低く、低価品でも積んでるのかと言わざるをえない。

 更に……エネルギー運用関係上、補助駆動装置を常にonにしていると直ぐに枯渇するという白式仕様。

 他にも多々あるが、出せば出すほど嫌になるので止めておく。

 後、背中に搭載された巨大なバッテリー――これも重量増加に拍手をかける。

 何でも次世代型PPB(ポータブル・プラズマ・バッテリー)と呼ばれるものらしく、これだけで三十キロだとか――まあこれ単独なら大した重さではないのだが、総重量で動きが鈍くなる。

 そして最大の問題が稼働時間がフル稼働で十数分程度、エネルギー節約しても長くて三十分ほどという――。


「……これ作ったやつ、誰だよ。 ポンコツじゃないか……」


 ごちる俺、とりあえず軽く動かして機動を確かめる。

 一方のラウラも黙々とEOSの感触を確かめていた、そして――。

「……よし」


 そう小さく頷くラウラ――と、機動を確かめている俺に、母さんが近付く。


「ヒルト、それの乗り心地はどうかしらぁ?」

「……気分は鉄の棺桶に入った感じだな」

「うふふ。 稼働時間の問題もあるもの、これを運用する=棺桶って感じかしらねぇ、お母さんの見立てでは」


 事実そうかも、災害救助や平和維持活動が主らしいが、活動時間が短い上にわりかし生身を――特に頭部にヘルメット等の防護用が無いのはどういう訳なのだろうか。

 ほぼ全員が操縦に苦戦するなか、ラウラは鮮やかにも乗りこなしていた――そして、満足な練習時間もなく無情にも織斑先生に告げられる。


「それではEOSによる模擬戦を開始する。 因みにルールはバトルロイヤル形式、装備も有るものを全て使用して構わない。 そして、最後まで残ったものの勝ちだ。 なお、EOSの防御能力は装甲のみのため、基本的に生身は攻撃するな。 射撃はペイント弾だが、当たるとそれなりには痛いぞ」


 織斑先生は手を叩き、仕切ると各自可能な限り距離を取る――。

 ラウラの動きを見る限り、彼女はあれを扱った事があるのは明白だ。

 ……先に俺に来なければ、その時間を操縦に慣れる為の練習ができるはず――。

 そう思い、久しく高鳴る鼓動を抑える俺――そして。


「はじめ!」


 模擬戦開始の合図が飛ぶ――それと同時にラウラは脚部ランドローラーを使い、真っ先に操縦に手こずる一夏目掛けて突撃をかけた。

 ランドローラー――もしかすると村雲に乗っていた時の経験が役に立つのではと思い、一夏が狙われている隙にスラロームを試す。


「げっ!?」

「ふっ。 遅いぞ、織斑!」


 真っ先に狙われた一夏を他所に、スラロームする俺――その感覚はまさに村雲・弐式に備わったランド・ホイールと感覚が似ていて直ぐ様機動面は慣れる。

 その間一夏のへろへろパンチを回転運動で巧みにかわし、一夏の懐へと潜り込むや、直ぐ様腰を落としてランドローラーを巧みに使った足払いを放つ。


「ぐえ!」


 その一連のラウラの動作を真似、俺もランドローラーを使っての足払い――挙動もラウラのそれに近い一撃を放てた。

 一方の一夏は、転倒して隙を晒す――。


「いてて……え?」


 眼前に向けられる銃口、そしてラウラは呟く。


「チェックメイトだ」


 EOSの装備であるサブマシンガンをセミオートで三発撃ち込むラウラ、無慈悲な一撃に一夏は。


「い、いたっ! ラウラ! 顔――」

「うるさい」


 更にフルオートでサブマシンガンを撃ちきるラウラ、ペイントまみれの一夏のEOSからサブマシンガンを奪い取り、離脱後狙いをセシリアへと切り替える。

 その間も俺は今度はサブマシンガンの試し撃ちを始める。


「もらったぞ、セシリア!」

「わたくしは織斑さんのように簡単にはやられませんわよ、ラウラさん!!」


 セシリアはその場でサブマシンガンを構え、フルオート射撃をするのだが照準が合っていなく、全弾グラウンドをカラフルに染めた。


「くっ! なんという反動ですの……!」


 定まらない照準を何とか制御しようとするセシリア、その間も俺は試し撃ちで反動を身体に覚えさせる。


「ああもう! 火薬銃は慣れていませんのよ!!」


 憤るセシリアだが、徐々に反動制御に慣れ始める。

 だがラウラの機動はそれを上回り、セシリアの火線をスラローム機動で潜り抜け、接近する。


「速いですわね! ……ですが、この距離ならサブマシンガンの射程内ですわよ!」

「フッ、甘いな……!」


 ラウラはスラローム回避から一直線の特攻に切り替える。

 咄嗟にセシリアも狙いを定めて射撃するも、ペイント弾は左腕に備わった物理シールドで受けきり、間合いを詰める。


「抜けられた……!?」

「ふっ……」


 咄嗟に防御行動を取るセシリアだが、ラウラは慣性を殺さず、セシリアの肩アーマーに掌による掌打の一撃。


「きゃあっ!?」


 バランスを崩したセシリアは、背中から倒れる。

 何とか立ち上がろうとし、背部起立アームを稼働させるも明らかにラウラの方が速く、銃口を向ける――。


「……これで二機!」


 一夏の時とは違い、装甲に向けて放つラウラ――そしてその隙をつく一機の機影。


「隙だらけよ!」


 側面から突撃をする鈴音、ランドローラーの出力を全開にし、突っ込む。

 鈴音のランドローラーの出力全開を見て、俺は凡その速度を何とか目で覚える間、背部起立アームの稼働域を調べた。


「うりゃあ!」


 気合いの入れた正拳突きを放つ――だがラウラはその単調な機動を見切り、攻撃を受け流すように身をひねって回避した。


「あれ?」


 あっさり避けられた鈴音、加速慣性を相殺しようとするも、途中で体勢を崩し、転ぶ。

 怪我は無いようだが立ち上がろうにも転び方が悪かったらしく、アームを稼働させても立ち上がれず、戦闘不能とみなされた。


「これで残りは……」


 ラウラの見つめる先に居たのは、篠ノ之とシャル、そして簪の三人、一方の俺はその後ろという形だった。


「ふっ……誰からだ、私の相手は?」


 自信満々のラウラに、三人は――。


「わ、私は後でいい!」

「ぼ、僕も……」

「わ、わた、しも……」


 三人共に拒否する――って事はつまり俺しかいない訳だ。

 覚悟を決めた俺を他所に、三人は互いに譲り合っていた。


「わ、私より更識、せっかくの機会だし……」

「わ、わたしは……。 しゃ、シャルロット……」

「えぇ!? ぼ、僕!?」


 互いが遠慮しあう三人――ランドローラーを稼働させ、グラウンドを滑走する俺が叫ぶ。


「なら……俺の出番って訳だな、これが!!」


 三人の間を疾走し、駆け抜けていく俺――驚きの表情を見せた三人とラウラ――。

「有坂……!?」

「えっ? ヒルト!?」

「ヒルト、くん……!?」


 背中に俺は自分の名前を呼ぶ三人の声を受け、真っ直ぐとラウラ単独に狙いを定めた。


「嫁が相手か。 ……悪いが、嫁であろうと手加減はしない!」


 サブマシンガンを構えるラウラ――狙いを定めてフルオート射撃を行う。

 ランドローラーを最大稼働させ、スラローム回避を行うと――。


「……!? この回避機動……!」

「ああ! 良い手本がいたからな!」


 更にそこから刻むようなスラローム機動、小刻みかつ大胆に大きく刻み、距離を詰めて突き進んでいく俺――ラウラは俺の狙いがわかったのか、その機動を見切るためか、左目の眼帯を取り外すと金色の眼が姿を現す。


「ちぃっ! 今日初めて乗る相手にわざわざ本気を出すのかよ、ラウラ」

「ふっ……悪いが嫁の動きでわかった。 ……本気でいく!」

「上等! 真っ向勝負だッ!!」


 見切られているのなら余計な機動はせず、俺は真っ直ぐと突き進む。

 唇の端をつり上げるラウラ――慣性を殺さない拳による一撃を放つ。


「ふっ……その単調な機動では!」


 鈴音同様、身をひねって避けるラウラ――だが、ここからが俺の意外性による一手だった。

 ランドローラーを巧みに使い、背部起立アームを地面に突き刺しての直角ターン――ミシミシと軋む骨、凄まじいGを全身に感じ、背部起立アームも掛かった加重に耐えきれず折れ曲がる。


「……なっ!?」


 驚きの表情を見せるラウラ――ターンの慣性を利用し、ランドローラーを使った足払いでラウラを足下から体勢を崩させる。


「ぐぅ……、これは!?」

「っ……! へへっ、あのターン……意外性あるだろ、ラウラ?」


 激しく尻餅をついたラウラに銃口を向ける俺。

 ラウラは観念したように諦め、撃たれるのを覚悟してキュッと瞼を閉じた。


「……バァンッ!」

「……!? ……あ、あれ……」


 向けた銃口を外すと、ラウラは間抜けな表情を見せた。


「……撃つわけないだろ。 とりあえず、俺の勝ちって事で、な?」

「あ、あぁ……。 ……まさか、私が負けるとは、な……。 ……ヒルト、改めて惚れ直した……ぞ?」


 そう告げるラウラ――授業中だというのに相変わらず素直にいうラウラに照れつつも。


「はいはい、また後で聞くから。 ……さて、とりあえずこれで残りは俺たち四人って事だな」


 既にやられている一夏、鈴音、セシリア、ラウラの四人――そして、残りは俺と篠ノ之、シャルに簪――あれ、確か九機あった筈なのに一機余ってるのか?

 そう思い、コンテナの方に一瞬視界を向けると余った一機は母さんが再度調べているようだった。

 ――乗り手居なかったら構わないかと思い、意識を三人に向ける。

 現状一番不利なのは俺だ、ラウラとの一騎討ち、フル稼働による消耗率と起立アーム損傷による不具合。

 不具合といっても起立アームの稼働が出来ないだけで、問題としては些末だろう。

 さて――単純に俺を三機で掛かるか或いは……。


「……有坂、まずは私が相手になろう」

「篠ノ之?」


 慣れない操縦の中、俺に一騎討ちを挑む篠ノ之――意図を理解できず、疑問に思うのだが――。


「……紅椿の力ではなく、純粋に有坂に挑みたい。 この勝負、承けてくれるな」

「……OK」


 純粋に挑みたい――自分の力量を測りたいのだろう、俺は篠ノ之じゃないから本心はわからないが。

 ランドローラーを稼働させ、グラウンドを滑走――。


「な、慣れない武器だが……く、食らえ! ――きゃあっ!!」


 サブマシンガンを構え、発砲する篠ノ之だが反動制御が出来ず、尻餅を着いた。

 その隙にまたもランドローラーを最大稼働させ、間合いを詰める――。


「ま、まだ……!」


 背部起立アームを稼動させ、それを支えにしてサブマシンガンをフルオートで射撃――だがそれでも慣れてない射撃に四苦八苦し、ペイント弾は明後日の方向に飛ぶ――と。


「ぶえっ!?」


 ……一夏の断末魔が聞こえた、多分流れ弾が当たったのだろう。

 流れ弾だから篠ノ之が特に悪いという事はない、親父に言わせれば「運が無かったんだな、ワハハハハッ」って所だろう。

 スラローム回避しつつ、弾幕を掻い潜る俺――。


「……!? た、弾が……」


 引き金を引いても弾が出ず、焦りを見せる篠ノ之――目前まで俺が迫るなか、起立アームによってギリギリの所で立ち上がる――だが。


「……!?」

「俺の勝ち……だな?」


 銃口を目の前に向けた俺、目を見開き、観念したように両手を上げてサブマシンガンを地面に落とした。


「……く、悔しいが……参った」

「……うん。 とはいえ……諦めずに立ち上がったのは悪くないぞ、俺はそういうの好きだな」

「そ、そう……か。 ……あ、あまり軽々しく好きとか言うな、有坂……」


 何故か僅かに狼狽してるように見える篠ノ之――とりあえず残りは後シャルと簪だった。


「ここは、共同戦線……」

「わ、わかったよ。 ごめんね、ヒルト!」


 意見が一致した二人は、サブマシンガンを構えて発砲する。

 直ぐ様横への回避運動を取り、二人の周りを回転しながら間合いを詰めていく。


「っ……緩急つけて来てる……」

 一定の速度での回避ではなく、強弱つけての緩急――当たったと思っても左腕の物理シールドに阻まれ、二人は有効打は与えられなかった。

 一方の俺も、時折反時計回りで間合いを詰める――だがそろそろエネルギーが少なくなってきて、若干焦り始める。


「……!? 弾、切れ!」


 思わずそう呟く簪の言葉を聞き、間合いを一気に詰める。


「させないよ!」


 シャルは今が好機とばかりフルオートで射撃、だがこの時ばかりは俺も一発だけ発砲した――当たるかもわからない、シャルのサブマシンガン目掛けて――。


「きゃっ!?」


 だが本当に運が良かったのか、ペイント弾がサブマシンガン本体に当たるとその衝撃でシャルは意図せず手放し、丸腰になる――空を舞うサブマシンガン、地面に落ちる頃には俺は二人に対して銃口を向けていた。

 とは言っても実際に銃口は一つしか無く、いつでも狙えるという意図を狙って交互に向けただけだが。


「……はぁ……参ったよ、ヒルト……」

「わたし、も……」


 その言葉に俺はやっと肩の荷が下りる――それと同時にEOS自体のエネルギーが完全枯渇、機能も完全停止し、その場に鎮座する形になった。


「よし、そこまで!」


 決着が着き、織斑先生が模擬戦終了の声を掛けた。


「まさかボーデヴィッヒを倒すとはな。 大判狂わせだな、有坂」

「は、はは……とはいえ、起立アームを一本壊しましたが」


 事実、壊れる自体のない模擬戦で壊したのだから問題になるだろうと思っていたのだが――。


「いや、稼働データとしては貴重なデータだ。 壊したとしてもアーム一本、直ぐに修復も可能だろう。 だから気にやむなよ、有坂」

「わかりました、ありがとうございます」


 頭を下げて、俺はただの鉄の塊に成り下がったEOSを即刻装備解除し、降りる。

 改めてEOSを見るのだが、わりと肌を晒す箇所が多く、やはり頭部が丸出しなのが個人的に欠陥にしか思えない。

 活動時間に関してもだ、仮に救助災害中にエネルギーが切れたら邪魔にしかならない、平和維持活動にしてもだ、暴徒鎮圧の為にこれを用意するならまだジェラルミンシールドを用意する方がコストパフォーマンスも高い。

 母さんが何故ため息を吐いたのかを何となく理解した所で装備を解除した面々が集った。


「ヒルト、何で初めて使うEOSをそんなに上手く使えたんだ?」


 顔から下がペイントまみれの一夏が現れる、ぶっちゃけ一夏だけペイントまみれという結果だ。


「……いい手本が居たのと、ランドローラーの使い方が村雲・弐式のランド・ホイールと挙動が似てたからな。 まあ俺としてはラウラが苦なく扱えた時点でアドバンテージがありまくりなのが気になったがな」


 そう俺がいうと、罰の悪そうな表情を浮かべ、頬を掻くラウラ。


「……黙っていた訳ではないが。 ドイツに似たような物が存在していて、な。 用途としてはインストールされる前のISの装備や他にも実験装備の運用試験などに用いられていたのだ」


 そう説明するラウラに、腰を擦りながらシャルは含みのある眼差しでラウラを見――。


「へぇ、だからあんなに上手かったんだね?」

「う……」

「何てね、少し意地悪だったね、ラウラ、ごめんね?」

「い、いや、構わない。 ……結局、そういったアドバンテージを隠していた私は、嫁に敗れたのだ。 天は誰かを見てる――という事だろう」


 多分そのアドバンテージがラウラの中で小さな慢心を生んだのだろう――まあ気に止む事でもないのだが――と。


「てかラウラ、わざと顔面狙っただろ」

「無論だ。 戦場では相手の命を確実に奪うのは脳天に一発の弾丸を撃てばいい。 だが――うっかり私はフルオートで撃ってしまった、ただそれだけだ」


 まあ明らかにわざとなのは明白なのだが突っ込むのは野暮だろう――そもそも、ラウラは一夏を嫌っているのには変わらないのだから。


「そんなことよりも、このEOSとやらは、本当に使い物になりますの、織斑先生?」

「……使ってみた身としては、非常に扱いにくい印象だったのですが」


 セシリアが先に言い、篠ノ之自身も操縦してみて疑問を感じたのだろう、織斑先生へと視線を向けた。


「一応ISの数に限りがある以上、国連や学園上層部の連中は救助活動等では大きなシェアを獲得するだろう――と、思っているようだが。 ……有坂先生はどう見ますか?」


 俺の乗っていたEOSを調べていた母さん、織斑先生の言葉に立ち上がって振り向くと。


「……現状、この機体で災害救助を行うというのは技術者視点から見ても落第点です。 課題点が山程ある欠陥機……勿論、完璧な機種というものを目指すのは難しいのです。 だからこそ試作機を作って、欠陥を見直して製品として量産――何ですけどねぇ。 ……とりあえず、これを設計、製作した人のマスターベーションにしか、私には感じられないわねぇ」


 実際に乗った俺からしても、こんなので災害救助するならば重機購入か救助隊の育成に金を掛ける方が建設的な気がする。

 正直、学園上層部が何故こんなものを今更此方でテストさせるかの意図がわからない。

 身体測定同様、頭にうじでも湧いてるのではと思う。


「………………」


 黙り込んだままの織斑先生に、皆の視線が集中する。


「ん、すまない。 それでは全員、これを第二格納庫まで運べ。 カートは元々乗っていたものを使うように。 有坂先生、第二格納庫搬入後、今回のEOSのテスト結果のデータ、纏めてください」

「えぇ。 問題点もブラッシュアップして後で報告書に纏めるわねぇ」

「お願いします。 では、以上だ」


 織斑先生が手を叩くと専用機持ち皆がカートを用意し始め、俺はイザナギを展開して一機一機カートに乗せていく。


 訓練機の模擬戦も終わったのか、未来たちもカートにEOSを乗せるのを手伝ってくれた。

 グラウンドに残されたコンテナは山田先生が片付け、乗せ終えたカートは各人生身で第二格納庫に運ぶ――のだが、鈴音は。


「な、何で生身のあたしたちが運ばなきゃならないのよ、うえー……」

「これも専用機を託された宿命って奴だろ。 ……とりあえず運ぼうぜ、鈴音」

「わ、分かってるわよ。 ……うぉっしゃーッッ!!」


 気合い入れてカートを押し始める鈴音――一方、シャルがカートを押すのに苦労している様だった。


「シャル、どうした?」

「こ、腰が痛くて力が入らないの……。 ……き、昨日ヒルトといっぱい……しちゃったせいだからね?」


 顔を真っ赤にするシャル、俺の責任という事で俺は――。


「わかったよ。 なら俺も手伝うから。 ……美春、悪いけど俺の押すやつ運んでくれるか?」

「うん、いいよー。 美春なら楽勝ってね♪」


 俺が指示すると、美春は苦なくカートを押していく――というのも元々がコアだ、纏わなくてもアシスト機能が働いてるのだろう。

 俺はシャルと共に第二格納庫へとEOSを搬入――これで全ての搬入が終わり、今日の実習全て終了した。 
 

 
後書き
さて、次回はどうするか――というよりも八巻はヒルトが倉持行く理由が無さすぎるからかなりはしょらないといけないんだよねー

後、原作で織斑千冬がEOSが「救助活動等では大きなシェアを獲得するだろうな」とか書いてるのを上層部or国連って改変してます

てかこれをマジで採用って考えたらTHEポンコツも良いところ

理由に関してははっきり言えば産廃レベルの活動時間、てかコンテナやカートに積まないと運ぶのがままならないのに何処から出撃するのやら

仮にトラックにコンテナ乗っけて現地入り出撃→現地で機体放棄という使い捨てでもするのならわからなくもないが、それなら別ので事が足りそう

リアル考察でもなく、創作物でもツッコミ待ちにしか見えん 
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