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IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》

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【第514話】

 
前書き
後半、映画の中の話も書いてみた

後半は遊覧船がちょい 

 
 昼食後、俺達は直ぐにレゾナンス屋上の映画館へと行き、中に入る。

 テレビとは違う大迫力の大型空中投影型ディスプレイによる予告映像が流されていた。

 指定された席へと座る俺とシャル、勿論席は隣だ。

 スクリーンによる映画館もあるのだが、ここレゾナンスは最新型の投影ディスプレイを売りにしているらしい。

 様々な予告映像が流れるなか、隣のシャルがトントンと俺の肩を叩く。


「えへへ、何でもないよ♪」


 ニコッと笑うシャルに釣られて笑う俺、館内は徐々に賑わいを見せ始める。

 ――と、上映時間になったらしく、ブザー音が鳴り響いた、ここだけは昔のままなんだなと思いつつ映画が始まる。

 冒頭、主人公である女の子とその親友らしき女友達が一緒に歩いて登校する様子が映し出された。

 そのまま暫く映画を見ていると、パンフレットに写っていた一人の男が主人公の子に意地悪っぽくからかっていた、多分幼なじみなんだろう。

 何と無く俺個人が未来にしてたことを思い出したのは内緒だ。

 そんなやり取りが続き、放課後の場面、主人公が帰り道を歩いて曲がり角を曲がる。

 ドンッ――と誰かにぶつかる主人公、尻餅をつき、鞄が道端に落ちる。

『大丈夫、ですか?』


 そう言って心配そうに覗き込むパンフレットに写っていたもう一人の男の方――勿論イケメンである。

 昔ながらのベタな展開だが、こういった王道はわりと好きだったりする俺。

 ぶつかった二人、尻餅をついた主人公に手を差し伸べ、その手を取り立ち上がる主人公――そして、そんな場面を偶然見てしまった幼なじみの男。

 そして漸くタイトルロゴが表示された――。

 場面は変わり、主人公の自室。

 朝目覚めた主人公は学校へ行く支度をし、朝食も食べずに学校へと向かおうとしていた。

 玄関を出る主人公――と、玄関を出た先に待っていたのは幼なじみの男。


『よぉ沙希、お前も今から出るのか』

『そうだよ! どうしたの、真也君?』

『いや、その、だな……』


 歯切れの悪い幼なじみに、首を傾げる主人公である沙希――だが、急いでる事に気づいた沙希は。


『ご、ごめん! あたし急いでるから、何か用があるなら学校で! それじゃ!』

『あっ、お、おい――』


 脱兎の如く駆けていく沙希を呼び止めようとする真也。

 残された真也は呟く。


『……ったく、何でこんなに意識してるんだよ、俺。 沙希は……ただの幼なじみだってのに……』


 頭を掻き、沙希を追うように真也も走っていった。

 また場面は変わる――先に学校へと着いた沙希は、日直用の日誌を取りに職員室へ――其処で、昨日ぶつかった男と再会した。

 二人がやり取りするなか、転校生という事と自分のクラスに転入してくることを知る――この辺りは何かパターンが違うなと俺は思った。

 ふと隣のシャルを見る、展開が気になるのか集中して見ていたのだが俺の視線に気が付くと。


「ど、どうしたの?」

「ん、いや。 真剣に見てるなーって思って」

「う、うん。 だ、だって気になっちゃうもん」


 そう言ってまた映画を見るシャル――俺も画面を注視してると気付いたら場面は変わっていて、沙希が転校生の男を案内していた。

 既にホームルームでの自己紹介が終わっていたらしい――名前を聞くのを逃したと思っていたら。


『ここが音楽室だよ、ヒルト君♪』

「……!?」


 突然下の名前を呼ばれて狼狽する俺、てか何でヒルトなんだよ……と思いつつ映画を見ていく。

 二人のやり取りが映し出され、仲が深まっていく――そして、幼なじみである真也はそんな二人を見てやっと自分が主人公である沙希の事が好きだと気づく。

 場面はさらに変わり、沙希と真也の二人の帰宅――何故夜なのかはわからないが、多分学校に用事でもあったのだろうと勝手に解釈した。

 そして――沙希がバイバイって手を振り、後ろを振り向いた瞬間――突然、後ろから真也に抱き締められた沙希。


『真也、君……?』

 戸惑う沙希、何で抱き締められたのかがわからない彼女に、真也は想いを告げた。


『俺は、お前が好きだ!』


 その瞬間、巻き起こるキャァッと言う声――ストレートな告白がうけたのだろう――嫌いじゃないが、俺も。

 そしてまた場面は変わる――沙希は熱が出たのか、おでこに熱冷まし用のシートが貼られていた。

 熱が出た原因――それを回想するシーン。

 ディスプレイいっぱいに広がる真也の顔――そして。


『俺はお前が好きだ!』


 またもキャァッという黄色い声援が上がり、場面は変わって沙希は寝返りをうって此処で独白――。

 ――真也君が、私の事が好きって――。

 その言葉が反芻してるのか、沙希は更に赤くなる、告白されたのが初めてでそれも今まで幼なじみだと思っていた真也――だがそれと同時に、沙希の心にはヒルトの存在も在った。

 まだ好きかどうかもわからない――だけど、沙希の心に確りと二人の男が半分半分で支配されていた。

 場面はまたも変わり夕方、母親が帰ってきたのか沙希に桃を剥いていると、呼び鈴が鳴り響く。

 濡れた手を拭き、玄関を開ける母親――そこに居たのはヒルトだった。

 ヒルトは母親に挨拶し、見舞いという事で家へと上がる。

 部屋へと案内されたヒルト――だが、沙希は眠っていて、母親が――。


『あら、寝ちゃってるわあの子。 うふふ、良かったらゆっくりしていってね?』


 そう言って二人きりにする母親、俺は若干母親に突っ込みを入れつつ見ていると、寝息を立てる沙希が映し出される。

 暫く様子を見るヒルト、無理言って沙希の親友から預かったプリントを机へと置くとヒルトは語り出す。


『沙希ちゃん……君が居てくれて、僕は良かったって思ってる。 君がいなければ、僕はいまだに友人が出来ていなかったかもしれない……』


 そう告げるヒルトだが、多分原作で色々あったのを映画用に省いたのだろう――正直、ちんぷんかんぷんになってしまった俺。

 眠っている沙希の額を拭うヒルト――そして、そっと額に口付けを落とした――またその瞬間、キャァッという声が館内に響く。

 そして――。


『……僕は、君が好きだ』


 眠っている沙希にそう告げ、部屋を出るヒルト――そして、沙希は狸寝入りしていたらしく、口付けを落とされた頬を撫で、告白されたヒルトの言葉で顔を赤くした――所でエンドロールが流れる。


「え? 終わったの?」


 そう呟く俺を他所に流れるエンドロールと立ち上がり、館内を後にするお客さん。

 何か良いところで終わりすぎてモヤモヤするなか、後編の上映が来年の春と表示された。


「ぬあぁ、モヤモヤするー」


 そんな俺を見たシャルはクスクスと笑う。


「そうだね。 でも……今後どうなるか、来年の上映が楽しみだよ、僕♪」


 笑顔のシャル――映画は終わり、また他の映画の予告編が流れ始める。


「じゃあ、出よっか?」

「……だな」


 モヤモヤしつつ、俺とシャルは映画館を後にする。

 正直、ヒルトって映画で呼ばれるのはびっくりするから心臓に悪かったが、内容自体は悪くなかった。

 というか、終わらせ方が明らかに後編ありきだから気になってしまう。

 それはさておき時間は三時十分――。


「シャル、まだ時間に余裕あるか?」
「え? も、勿論だよ。 僕も、まだ帰りたくないし……ヒルトとこんなに長い時間二人きりって、そうそう無いから……」

「ん、ありがとうシャル。 ……じゃあ、レゾナンス出ようか?」

「え? ど、何処に行くの、ヒルト?」


 シャル自身、期待に胸が膨らむ。

 もしかしたら、ヒルトの家にまたお邪魔できるかもという思いが過るなか――。


「あぁ、遊覧船乗りにいこうぜ?」

「あ……」


 朝の電車内での何気無い会話――それを覚えていてくれたヒルトに、シャルは嬉しく思う。


「……うん!」


 力強く返事をすると、二人はレゾナンスを出て遊覧船乗り場へと歩いて向かった。


――遊覧船甲板――


 遊覧船は出港し、緩やかな速度で運航を開始した。


「わぁ……! IS学園って、遊覧船からだとこんな感じに見えるんだね!?」

「そうだな、普段とは違って見えるのは新鮮だな」


 遊覧船から眺めるIS学園は、いつもと違って見える。

 穏やかな海の上を航行する遊覧船――乗客は思い思いにIS学園を観覧したり、街の風景を写真に納めたりしている。

 風と共に乗る潮の香り、夕日に染まる海――乗る時間によっては様々な表情を見せる自然に心を打たれていると――。

 風に靡くシャルの金髪が夕日に当たり、輝きを増していた。

 普段とは違って髪を下ろしているのも相まって、人によっては本当に天使に見えるかもしれない――。


「……ヒルト、ありがとう」

「ん? 何だよ、改まって」

「ふふっ、改まってって訳じゃないよ? ……僕、ヒルトにはいっぱい感謝してるんだ。 ……そりゃ、ヒルト……ちょっと女の子にだらしない所あるけど……」

「ぅぐっ……!」


 実際そうなのだから反論出来なかった、シャル自身の指摘通り、正直だらしないと俺も思う――だがシャルは。


「ヤキモチもいっぱい妬いちゃうけど。 ……僕はそれでも、ヒルトの事が大好きだよ? 良いところも悪いところも、全て含めて……大好きだから」

「シャル……」


 シャルの素直な気持ちが嬉しかった、だからこそ、シャルや他の皆にちゃんと答えを出さないとと思っているのだが――。

 思い悩む俺を見たシャルは、手をとると――。


「ヒルトが……僕達の事で悩んでるのは知ってるよ? ……本当は皆が、ヒルトと付き合っても問題にならない世界になれば――そうなれば、良いのにって思うことがあるんだ、僕」

「シャル……」

「えへへ……。 ……ヒルト、ありがとうね?」


 そう言ってギュッと手を繋ぐシャル――。

 遊覧船はIS学園を繋ぐ連絡橋へと差し掛かる、その圧倒的な橋の迫力と普段は見ることが難しい橋の下を通る瞬間、一部から歓声が湧いた。


「あ……もう遊覧船終わるんだ……。 何だか、一時間ってあっという間だったね、ヒルト」

「……そうだな」


 本当にそう思う、遊覧船に一時間も乗っていないような感覚――楽しい時間はあっという間に過ぎていった。

 遊覧船を降りた俺とシャル、時間を見ると五時を回っていた。


「シャル、また明日から学校だし……そろそろ戻ろうか?」

「あっ……うん」


 何処か名残惜しそうなシャル、勿論――俺も同じ気持ちだった。


「……なあシャル、寮に戻ったら……俺の部屋に来ないか?」

「え? う、うん、良いよ。 でも、ヒルトから誘ってくれるって珍しいよね?」

「ま、まあ、その……だな」


 言葉を濁す俺に、首を傾げていたシャルだが、俺の態度がいつもと違うのに気付いたのか、近付いて小声で訊いてきた。


「も、もしかして……その……。 ……ぼ、僕と……したい、の……?」

「……あ、あぁ。 ……シャルが……ほしい……」


 そう告げると、シャルは真っ赤になった。

 俺も正直、心臓がバクバクと鼓動していた。


「ぅ、ぅん……。 いぃ、よ……? ……優しく、して、ね……?」


 そう言うと両手を顔で覆う、恥ずかしさが勝ったようだ――大胆な所はあるけど、やっぱりこうして恥じらう彼女も可愛いと思う。


「ひ、ヒルト……か、帰ろ……?」

「ぅ、うん」

「……ん……七時ぐらいに、部屋に行くから、ね……?」

「あ、あぁ……待ってる」


 恥じらいのある笑顔を見せたシャル――遊覧船乗り場から、そのまま俺達は駅へと向かい、学園へと戻る。

 この後のシャルとの有意義な一時を心待にしながら――。 
 

 
後書き
遊覧船の方はちょい描写が少なかったかもと思いつつ……

次回はシャルと……( ´艸`) 
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