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『外伝:紫』崩壊した世界で紫式部が来てくれたけどなにか違う

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黒い未亡人は、背中を合わせる

 
前書き
こんにちは、クソ作者です。
昨日は投稿したお話が反映されないというトラブルに見舞われたけどなんとかなったみたいです。
なので今日も投稿しますね。
満を持しての水着お披露目回です。
それではどうぞ。 

 
「たかが水着に着替えただけじゃん…!!」

モレーが美遊ちゃんを無視して、水着となった香子に突っ込んでくる。

確かに、水着に着替えただけにみえるかもしれない。

だが、今の香子は何もかもが違う。

「…。」

ガラスのペンから手を離すと、それはひとりでに宙に浮く。

香子の指の動きに追従するように、その場に文字を綴ると、書かれた文字列が紫色に怪しく光った。


「あ…っ!!」

瞬間、モレーの動きが止まる。

「…!?身体が…!!」

膝をつき、剣を突き立てて立つのもやっとの状態みたいだ。

「呪いか…!魔女のあたしを呪うとか…喧嘩売ってんの…?」
「なれば返してみればよいではありませんか。確か…〝呪っ殺す〟のでしょう?」
「んの…クサレババァ!!」

お決まりのセリフなんだろう。
煽るように呪っ殺すを真似られモレーは明らかにキレている。

「筆がノってる?だからライダー?ふざけるのも大概にしなよ。どう足掻いたってアンタはごくありふれた一般クラス!あたしはエクストラのフォーリナーなんだからさァ!!」

「……。」
「……。」

それでも身体に鞭打ち、モレーは剣を振るって強引に駆ける。
しかしその前に、対処すべき相手がいる。

背後。
見なくともわかる。そこに迫る奴目掛け、

「「そこッ!!」」

背後からタックルでもぶちかます予定だったんだろう。

走ってきたサウザンの顔面めがけ、香子と一緒にハイキックをおみまいした。

「ぐ…お…」

両側面にすさまじい蹴りをくらい、存分に脳が揺さぶられる。
よろけるサウザン、ガラ空きになった胴体。

「鍛えたとしても、内蔵(ナカ)まではどうかな!!」

服の上からでも分かるほどのガチガチの腹筋。
そこ目掛け、あたしは気を集中させて必殺の一撃を叩き込んだ。

発勁。
筋肉の鎧を通り越し、その衝撃は中まで伝わっていく。

「ごほ…っ!?」

次の瞬間、大量の吐血。
そうしてサウザンはその場に膝を着き、何が起こっているのかわかっていない様子。

「俺の身体に…何を…ッ!!」

顔を上げ、疑問を口にする彼。
お返しするのは香子。
ただし言葉ではなく、

「ぐぼっ…」

踵落としで。

やつが最後に見た光景は、御御足を高く上げた彼女の姿だった。

「バリバリ動けんじゃん…水着(ソレ)。」
「えぇ、賢士様には感謝しないといけませんね。やはりこの霊基、とても動きやすいです。」

そうしてあたしは駆ける。
それに合わせて香子も駆け、やってくるモレーとぶつかり合う。

「…!!」

振るわれた剣は香子がペンで受け止め、鍔迫り合いの状態に。
しかし、

「こん…のぉ…っ!!」

押されている。
モレーが。
フォーリナーがなんだのキャスターは弱いだのと散々言っておきながらこのザマだ。

「!!」

そんな必死な彼女の頭上を飛び越え、あたしは身を捻って無防備な背中へと着地する。

「お留守だよッ!!」

続けてかます発勁。
サーヴァントに通用するかどうか、
そこが心配だったが

「ぐっ…げほっ…!!」

吹っ飛んだモレーは崩れた本の山に突っ込む。
すかさず起き上がるも、その口からは血が滴っていた。

「ムカつく…ムカつくムカつくムカつくムカつくムカつく…!!ああもうマジで許さない!!!」

苛立ち、八つ当たり気味に持っていた剣と盾を床に叩き付ける。

「お前ら全員だ…!ここにいる奴ら全員、必ず呪ッ殺してやる…!!」

歯ぎしりをし、いらだちを隠せておらず、モレーは魔力を迸らせた。

肌の色が浅黒く変わり、服が焼け落ち新しい装いへと変わる。
頭からは禍々しいツノが生え、十字軍総長の名を持つ彼女は〝魔女〟へと変貌した。
あれはおそらく、霊基再臨だ。

「フォーリナーなんだよあたしは。そんじょそこらのしょっぼい一般クラスとは格が違うワケ!」
「そのしょっぼい一般くらすに負けるあなたは、フォーリナーの顔に泥を塗っているのに気付きませんか?」
「……ッ!!」

舌打ち。
しかし香子は口撃を続ける

「フォーリナークラス。存じております。現にご友人の中におりますので。しかしそちらの方はあなたと違い随分と強かったような気がしたのですが……?」
地獄に落ちろ(Va au diable)…!!アバズレ女ァ!!!」

彼女の周囲に炎が灯る。
両手を振るうとそれらは香子めがけ一気に突っ込んできた。

「……。」

対する香子は、駆ける。
ガラスのペンを降るって数本を叩き落とし、さらには棒高跳びの要領で空中へと躍り出る。
かわされる炎、さらにそこからも身を捻って全てかわし、

「…!」

彼女の懐へ着地。
突き出されるガラスのペン。
土手っ腹にくらったモレーはそのまま吹っ飛んでいく。

「…!!」

背中に来る衝撃に備えた。
しかし、来ない。
それどころかなにか柔らかなものにぶつかり、痛みすら来ない。
なんだと思い振り返ろうとするも、

「…な、なに…これ…!!」

動けない。
それどころか指一本動かせない。
とりあえず視線をあちこちに向け、何が起きたのか確認してみると、

「蜘蛛の巣…!?」

モレーがぶつかったのは、巨大な蜘蛛の巣。
図書館には巨大蜘蛛が住んでいる?
それは違う。

「…!」

香子の足元を這う、複数の蜘蛛。
そう、蜘蛛の巣の正体は香子が使役した蜘蛛によるものだ。

「しばらくそこで大人しくしていてください。いいですね?」
「この…離せ!!」

モレーはとりあえず戦闘不能にはさせた。
そうして香子は次の標的に視線を向ける。

「俺だってな!幼女に守られっぱなしなのは、癪に障るんだよッ!!」

いつの間にかバットを手にし、宝石をミッツめがけ飛ばす賢士。

やつの眼前まで宝石は迫ると爆発するも、やはりまるで効いていない。

「幼女幼女幼女ォ!!そんな君らに俺は欲情!しかしここは戦場!!友情キャバ嬢情状酌量余地無し実験場!!」
「よくわかんない!!」

美遊ちゃんもイリヤちゃんの加勢に加わり共に戦ってくれている。

ニトクリスだって援護をしているものの、やはり誰の攻撃もまるで効いていない。

いや、効いていないんじゃない。
効いているが、治ってしまう。

「……。」

それを香子は、冷静に見据えている。


「あたしが何してもあいつは完全に倒せなかった。何か、策があったりする?」

それに対し香子は、

「はい。」

と頷いた。


「では…詠み上げます。」

ガラスのペンを地面に突き立てる。
するとそこから放射状に蜘蛛の糸が広がり、図書館の床一面を覆い尽くした。


「やべぇぞこれ…動けない的な…!!」
「キモ過ぎんだろ…。」

それだけじゃない。
その蜘蛛の巣は、敵の足元を絡めとって動くことを阻む。
カメラを構えていただけだったリーダーとその隣にいた黒マスクの男は1歩も動けなくなった。

「瀬戸ォ!車出せ!!」
「もうやってる!!」

リーダーはずっと車の中にいたもう1人のメンバーらしき男にそう叫ぶも、車も例外じゃない。
エンジンのついた車のタイヤに絡まった蜘蛛の糸は、進むことを許さない。

「ぐわぁっ!!なんだこれ!?」

ミッツも、無事拘束に成功した。
しかしあたしやほかの味方は無事に動ける。
どうやらこの糸、味方には作用しないらしい。

「我が夫子が 来べき夕なり 小竹が根の」

香子が詠を詠み上げる
かつて衣通郎姫(そとおりひめ)が詠んだ一首。
それを通して喚び出されたのは…

「えっ!?く、蜘蛛!?」

蜘蛛。それも並の大きさじゃない。
真っ黒で巨大な蜘蛛が現れ、香子は難なくその上に騎乗。

ただの蜘蛛じゃない。
あとから知ったけど、それはあの陰陽師、安倍晴明が封じた土蜘蛛の一種だ。

「蜘蛛の行ひ 今宵著しも」

ひたひたと不気味な足音を立てて動けないミッツに近寄る。

「ぎゃあああああ!?くもぉ!!!!」

何事かと振り向いたイリヤちゃんはその土蜘蛛に対して本気で怯えていた。

「な、なんだァ!?噛むのか!?俺を噛むのか!!やめろよ!!俺スパイダーマンになっちま…」

騒がしいミッツ。
しかし土蜘蛛はそんなことなど気にせず、


大口を開けると、
がぶり、
と一口で彼を平らげた。

「『衣通郎姫(そとおりひめ)蜘蛛行(くものおこない)』……。」

宝具の詠唱を終え、静まり返った周囲に響くのはグロテスクな咀嚼音。
バリバリ、ゴリゴリと骨を砕く音。
ぐちゃぐちゃと肉を噛む音。

「……。」

土蜘蛛を撫でると、香子は静かに降りる。

「土蜘蛛さんは、まだ満たされていないと仰ってます。」

振り返り、まだ動けていないモレーや満身創痍のサウザンに目を向け、そう言った。

「まだやりますか?あなた方が良ければ、土蜘蛛さんは喜んで喰らうと申しております。」

じっとりとした視線で睨み付け、それからカメラを持つリーダーを睨みつける。

戦えるものは皆潰した。
銃は使えるらしいもののこちらにサーヴァントは計四騎。挑むのは無謀だ。

しかし、

「!!」

ここで土蜘蛛は、べしゃりと吐き出した。

「う、うぅ…おぇぇ…。」

咀嚼され、ぐちゃぐちゃになったミッツ。
身体は再生し始めているものの、今までより明らかに遅い。

ともかく非常にグロテスクだ。

「見ちゃダメ。」

駆け寄り、小学生二人の目を隠すことにする。

「その様子ですと不味い、らしかったですね。」
「へへ…そうだろうな。俺超不味いぜ。こんなこともあろうかと毎日くさやとドリアン、おまけにフグとカツオノエボシおやつで食ってるからな…。」

ふざけたことなど一切無視し、香子は話を始めた。

「この宝具、愛ある者や愛を知る者、そういったモノには特に効果を発揮します。」
「ハハーン…愛を知らない孤独なロンリーウルフな俺には全く通用しねぇってことかァ?」

そんなさっきからふざけたことしか話さないミッツに対し、香子は、


「いいえ、その逆です。」

首を、横に振った。

「あなたには効いている。いえ、効き過ぎている。」
「!?」
「最早叶わぬ恋を、未だ諦め切れぬあなたに、この宝具は良く効いていたのです。」

叶わぬ恋、諦めきれない恋。
香子はなんのことを話しているのか、
しかしその説明は本人ではなく

「そうか、そうだもんな…!!」

賢士の口から話された。

「何?なんかあんの?」
「こいつ…ある意味恋に敗れた負け男だからな。」

そうして賢士が理由を話そうとすると、

「やめろォ!!!!話すんじゃねぇ!!!そんなクソみてぇな話!誰が聞きてぇんだボケコラァ!!!!」

今まで大人しかったミッツが目をカッと見開き、大真面目に叫び出した。

「クリスって、いるだろ?」
「ああうん。色んな人が知ってる有名人。」
「そのクリスのサーヴァント、バーゲストについてだ。」

話を続ける中、それでもミッツは叫び続ける。

「代わりと言ったらなんだが俺の魂のリリック聞きやがれ!!yoyo俺はミッツ好物はRits、九州生まれの優秀boy」

話を聞こえづらくする為につまらないラップもどきを披露するも、

「うるさいのでルビーちゃんが黙らせちゃいますね。えい!」
「ありがと。」

ルビーによって不思議な魔術で黙らされた。

「……!!…!…!!!……!!」
「そのバーゲストな…」

そうして賢士の話に戻る。
彼から語られる、バーゲストの話。
それは、

「元はと言うとコイツのなんだよ。」


バーゲストは本来クリスのものではなく、この男ミッツのものだったこと。

「まさか奪ったのですか…?」
「そんなまさか。アイツはそんなこと出来るやつじゃない。詳細は省くが、偶然に偶然が重なり、訳あってクリスの元にバーゲストは召喚されちまった。」

葛城財団じみた強奪が浮かび、気になって香子が尋ねるも賢士はそれを否定。

「バーゲストが惚れちまったのさ。クリスの自己犠牲精神に、弱い存在ながら、必死に生き抜き、さらには己より他人を優先する彼の本当の強さに。」

ミッツの目がこれでもかと見開いている。
何かを訴えようとしている。

「なるほど…泰山解説祭で強い愛の後悔が見えたのは、それだったのですね。」

どうやら香子は、泰山解説祭でミッツの心情を垣間見、愛ある者、愛に対して強い感情があると見抜いた。

「つまりあなたは、今でもバーゲスト様を欲している。自分の元から離れた彼女に、今も恋い焦がれている。そしてそれを奪った親友に、嫉妬している。
そうですね?」

と、香子がミッツの額に触れる。
そうすると黙らされる魔術が解除され、


「勝手なことぶちまけてんじゃねーぞ!!痰壺以下のクソゲスアバズレ淫売カス女共がアァーッ!!!!!」

と、たっぷりの怨嗟を叫ぶ。

「俺が未練タラタラァ!?んなわけねーだろ!!あんな犬臭ぇ尻軽クソビッチなんぞこちらからお断りだ!!」
「でも喚び出されるサーヴァントは皆マスターに大切にされてきたサーヴァントであって」
「屁理屈をこねるなーッ!!!!こねんなら小麦粉でもこねて俺に高級ナマ食パンでも作りやがれェ!!!!」

治りが遅いのだから、宝具は存分に効いている。
それが何よりの証拠だ。

つまりだ。

親友にサーヴァントを取られ、未だに未練タラタラなわけだ。

そんなショボイ理由で負けたと思うと、少し笑えてくる。

「笑ってんじゃねぇぞ激薄女ァ!!!そんなパイズリできねぇ胸で生きてる方が恥ずかしくねーのかアァン!?」
「……。」

子供がいるのに、
さっきから汚い口だ。

足をゆっくりあげ、踏み潰してやろうとしたその時、

「ヴッ……!?」

ミッツの動きが止まる。
そして……


「あっぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!」

先程よりも大きな声で、あたし達の鼓膜が破れそうなほどの声量で叫び出した。


「な、なんだこいつ!?」
「いだいぃぃぃ!!!いだいいだいいだいいだいいだいいだいいだいいだいいだいいだぁぁぁぁぁいいいいいい!!!!!?!?!!!?!」

虫のようにバタバタと暴れだし、のたうち回る。
その顔はニンマリとした顔ではなく、すっかり青ざめ、まるで何かに怯えた表情だ。

「どけや!!」
「うわっ!」

後ろから突き飛ばされる。
走ってきたのは仲間のうちの一人、関西弁の男。

「ミッツゥ!!しっかりせぇ!!おい!!!」
「やだ…やだやだやだ!!!ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!!!!!」
「アホゥ!誰もおらん!!!死んだやつは死んだやつや!!謝らんでええ!!!」

関西弁の男はミッツを取り押さえ、何かを必死に語りかける。

「みんながぁ…!みんなが見てるぅ…!!死ね死ねって…指さしながら言ってんだよぉぉぉ…!!」
「幻覚やンなもん!!気にしたら負けや!!」


うるさく、やかましかった男が、今では打って変わってその身を縮こませ震えて何かに怯えている

なんだ…?

「ちっ…薬の持続時間が目に見えて短くなっとる…こんなんじゃ使えんくなるのも時間の問題やな…!」

周りのあたし達のことなど一切気にもとめず、奴はミッツは抱えて車へと乗り込んでいった。

「リーダー!!」
「撤退風退却だ。サウザンさんもモレーももうどうしようもない感じだからな。」

リーダーの男がそう指示し、皆が装甲車へと乗り込む。
重傷を負ったサウザンもなんとか立ち上がって走り去る。

「いくぞモレー。」
「…あんたのせいだ。」
「はぁ?」

向かう中、彼は蜘蛛の巣のモレーを強引に引き剥がして抱えるも、モレーが不満を吐露する。

「もっといいマスターだったら…!あたしはあんなしょっぼい奴らに負けなかったって言うの!!」
「何言ってんだ。帰ったらベッドで気の済むまで愛してやるよ。」
「ハァ?寝言は寝てから言うから寝言なの?アンタのテクってただデカさと勢いに任せただけのただ痛いだけのやつじゃん。」


と、敗因を責任転嫁し負け惜しみするモレー。
ベッド上のテクすらディスられたサウザンはそんなこと気にせず、抱えたまま装甲車へと乗り込む。

「あばよ。二度とこんなとこ来るか。さっさと潰れろバーカ」

と、捨て台詞を残してすぐに発進し、入ってきたところとはまた別の壁に穴を作ってどこかへと去っていった。






夕日が、壁に空いた大穴から差し込んでくる。



「……。」
「……。」

静寂が、辺りを包み込む。

「葵様…。」

肩に置かれる手。
振り返るとそこには、いつものドレスへと戻り、心配そうな面持ちでこちらの様子を伺う香子が。

まぁ、そんなふうに見るのも無理は無い。

「……。」
「滅茶苦茶に…なっちゃいましたね。」

イリヤちゃんの言う通り、図書館は滅茶苦茶だ。

ボロボロの天井、床、使い物にならなくなった家具や本棚。
戦闘の二次被害で、焼けたり破れたりした本は十冊や二十冊程度では済まない。


戦いには勝てた。
けど、何も残らなかった。

「いいよ。また直せばいい。 」

積み上げたものが、何もかも壊されてしまった。
ため息をつこうにも出てこないし、ここまで来ると一周回って涙すら出てこない。


「……かたそっか。」
「はい…そうですね。」

途方に暮れてても仕方がない。
とりあえず瓦礫の撤去から始めないと…。

日は西に傾きつつある。
暗くなる前に終わればいいけど…

「わ、わたしもやります!!」
「わたしも…。」

と、そんなあたしの姿を見てイリヤちゃんと美遊ちゃんも動き出す。

「何かあるよねルビー!こう…すぐに綺麗に掃除できるみたいなのとか!」
「うーん…そういう魔法みたいなのはちょっと…。」
「ラクはできないってことね……。」

と、途方も無い作業を手作業でやらなければならないことを予想し、ため息を着くイリヤちゃん

「まぁ俺とニトちゃんも手伝う。」
「不調の為戦闘では少々遅れを取りましたが、ここはお任せ下さい。下僕を呼びましょう。」

と、ニトクリスが杖で床を突くと、わらわらとミイラやら死霊やらが湧いてくる。

「あとそうだ。この辺りでゴーレム売ってるやつがいるの知ってるか?」
「あぁ、あたしの知り合い。」
「話が早くて助かる。そこから何機かレンタルしよう。」

と、携帯を取り出す賢士だが「あたしが連絡するよ」と言って止めた。

あたしがした方が、いくらかおまけしてくれそうだし。

さて、

まだ無事な本、損傷した本と分けていく香子。
下僕を用い、壁の修理作業に入るニトクリス、
それぞれに的確な指示を出していく賢士。
ならば自分はと台所へ向かい、皆の為におにぎりを作りに行く美遊ちゃん。
と付き添いでついて行くイリヤちゃん。

これから宮本とアヴィケブロンも来る。

「……。」

始まりは2人だけだったのに、図書館もいつの間にか賑やかになったものだと感傷に浸る。

「葵様ー!!少しよろしいでしょうかー!!」
「あー今行くー!」


途方に暮れる作業だと予想していたけど早く終わりそうだなと、安堵のため息をつき、あたしは香子に呼ばれ向かうのだった。 
 

 
後書き
かいせつ

●水着紫式部
筆がノっている。なのでライダー。
これまでのお淑やかな立ち振る舞いとは違い、動く。とにかく動く。
どれくらい動けるかと言えば葵ちゃんについていけるくらい動ける。
しかし探偵の刑部姫のように全身筋肉痛になるなどの副作用は無い。
ずるい。

●CH-Zに関して
彼らはこれからも動画投稿者としての活動を続けていくよ。
次はどこに現れるだろうね?
例えば…姫路町のはなれにある家とか…? 
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