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『外伝:紫』崩壊した世界で紫式部が来てくれたけどなにか違う

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守るあたしは、窮地に陥る

「バトルじゃああああああああああああああああああああああああ!!!!!」

雄叫びをあげるミッツと呼ばれた男。
地を蹴り、それに続くようにサウザンとモレーも駆けた。

「フォーリナーのサーヴァントか...多少厄介だが...!!」

あたし達も戦闘態勢をとる。

「相手が相手だ!出し惜しみなく全部使うつもりでやるからな!!」

賢士が両腕をジャケットの裏側に突っ込み、何かを取り出す。

両手の指の間には宝石があり、彼はそれをやってくる3人めがけ投げつけた。

「とっておきだ!!爆ぜとけッ!!」

投げつけた宝石は奴らの前で眩く輝き、宣言通り爆発。

爆炎を巻き上げ、付近のものを吹き飛ばした。

しかし、

「!!」

両腕をクロスさせた状態で、サウザンがそのまま突っ込んできた。

「フンッ!!」
「が...っ!!」

予想外の自体に賢士は困惑。
サウザンの接近を許してしまい、その鳩尾に強烈なボディブローをくらった。

「ほっせぇ身体だ。ちゃんと鍛えてんのか?えぇ?」

腹部のダメージで疼くまろうとする賢士の目の前に飛び込んできたのは膝。
やつはそのまま顔面を膝蹴りで蹴り上げ、無防備になった顔面にパンチを叩き込む。

その両手には、ゴツゴツとしたメリケンサックを付けており、殴打のダメージをより高めている。

「マスター!!」

ニトクリスが杖をかざす。

「触れないで頂きましょうか…!!」
「ん?oh!!」

床がめくれ、包帯だらけの下僕が這い出てサウザンの動きを阻む。

「くそっ!なんだこいつ!!」

ニトクリスの援護で賢士はすぐさま後ろに下がって距離を取る。

「ナイスだニトちゃん…!」

鼻血をぬぐい、にんまりと笑うと彼はサウザンの足元にあるものを転がした。

「俺からのお返しだ。ありがたく受け取っとけ!!」

転がしたのは宝石。
魔力の込められた特殊な宝石だ。
指を鳴らすと同時に火柱が上がり、サウザンを包み込む。

ここからでもじんわりと伝わってくる灼熱の温度。
生身の人間ならおそらく黒焦げだろう。

さて、

「やってくれたなボケコラコノヤロォ!!俺のイケメンヘアーがチリチリアフロじゃねーかァ!!」

あたしもぼうっとしてられない。
あのイカれた男、ミッツがこちらにまっすぐ突っ込んでくる。

「…っ!!」
「させませーん。あんたの相手は私。モレーちゃんでーす。」

香子がすかさず援護をしようとするも、敵のサーヴァントであるジャック・ド・モレーが立ちはだかった。

ということは援護は期待できない。
この頭のおかしい奴は…

あたしが相手するしかない…!!


「!!」

飛びかかる彼をハイキックで迎撃。
無防備な脇腹にモロに入ったかに見えたが。

「おっと」
「!?」

身体が、ぐにゃりと曲がった。
蹴りの当たる部分、そこだけが粘土細工かのように曲がったのだ。

そうしてハイキックは空振り。
なんとか体制を整えるも、やつは既に懐に入り込んでいる。

「ふぅ。こんなこともあろうかとヨガ教室に通ってて正解だったぜ。」
「こいつ…!」

しゃがんでいる奴はその手にナイフを持っている。
そうして舌なめずりすると、足を〝文字通り〟バネにして思い切り跳ねた。

「ホワチョー!!」

身体をそらすも、ナイフの切っ先が腹部を掠る。
バネのように跳ねた奴はそのままあたしを通り過ぎ

「と、止まらねぇ〜!!このままじゃ天井にぶつかぐわァァァーっ!!!!」

勢いを殺しきれぬまま天井へ激突。
頭を貫通させぷらぷらと身体を揺らしていた。

「おいミッツ!真面目にやれや!!」
「……!…!!」

と、注意されている彼はバタバタと足を動かし、なんとか天井から抜けた。

「ミッツ!!何しとんねん!!」
「いや〜すまんこすまんこ。何せ2億年ぶりに女の子と目ぇ合わすからさぁ。緊張しちゃって。」
「なんやねんお前三畳紀から生きとんのか。」



……、

こいつらは、何を話しているんだろうか。

「さてと、お前の名前なんだっけ?花子?」

そうして身体に着いたほこりをはたき、ミッツと呼ばれた頭のおかしい男はあたしにそう話しかけた。

「……。」
「無視ってことは肯定か?マジで花子って呼ぶぞ。」

1人だけギャグ漫画から飛び出してきたような男にむかっ腹が立つ。
話なんかしていられない。

「まぁいいや、ボッコボコにしてレズにチンポの良さ教えたらァ!!」

そうして今度は、拳銃を取りだした。

「タイトルはこうだ!『チンポの良さを知らないレズにチンポぶち込んでみた!!』竿役は勿論オレ!それとshoot!!最後にサウザンさん!!」

撃ってくる。
それを避け、身を低くしてダッシュ。

がむしゃらに撃ちまくるせいでやつは直ぐに弾切れを起こすも、それを直ぐに投げ捨て

「oh!弾切れ!?しかし俺の対物ライフルは無限大!!」

手を頭の後ろへ回し、腰を突き出す。
すると突き出した彼の股間から、何かが伸びた。

「!」

とっさに避けるあたし。
それはまるで血のように赤い、棘のようなもの。
さらに

「なっ…!?」

伸びたそれは、横に避けたあたし目掛けて〝枝分かれ〟した。

伸びゆく棘が頬を掠める。
蹴飛ばして砕くも、既にやつは次の攻撃を始めようとしていた。

「俺はアイアム串刺し公。その上愛ある直滑降ゥ!!」

こちらに向ける手のひら。
そこからもまた赤い棘が伸びてくる。

けど、

「それ…〝血〟だな…!!」

やられるままじゃない…!

音速にも近い速度で迫る棘に対してあたしは拳を握る。
気を操作し、全神経を集中させ、

「なら、〝流せる〟!!」

棘に向かい、拳を連続でぶつけた。
砕ける棘。
そして

「ぐおぉ!?」

パン!という破裂音

離れているミッツが突然しゃがみこむ。
そうして彼を中心に、血溜まりがじわじわと広がっていった

「ち、ちんこ…いてぇっ。俺のFIM-92、スティンガーが…っ!!」
「気を流した。もうアンタのソレ、使い物になんないよ。」

あたしの方に伸びた赤い棘は二本。
腕から生やしたものと、股間から生やしたもの。

赤い棘の正体は血だと推測したあたしは賭けに出て、その伸びゆく棘を殴りつけた。
気を操作して倍増された衝撃は液体、もとい血液を伝わる。
そうしてダメージが本体へと伝播したんだ。
棘の根元、つまり腕と股間は勿論無事じゃ済まない。

「くそ…くそぉ…これじゃ血尿漏らしたみてぇじゃねぇか…!」

パンという破裂音はダメージが伝わり、血管が丸ごと破裂したもの。
腕からは血がしたたり、ズボンも血で真っ赤に染まっていた。

それでも彼は腕を抑えながらヨロヨロと立ち上がる。
でも、

「…!!」

次の手なんて出させない。
いや、考えさせもしない。
隙だらけの懐に飛び込み、今度こそその鳩尾に拳を食い込ませる。

「ぐげ…ぇっ!?」

空気が無理矢理絞り出され、さらに隙が生まれる。
顔、腹、次々にラッシュを叩き込む。

当然、全ての一撃に気を乗せて威力は強化してある。
殴り、殴り、殴りつける。
よろりと倒れそうになろうものなら胸ぐらを掴んで強引に引き寄せ、また殴る。

早いとこコイツを倒して、香子の援護に行かないと…!

「…っ!」
「やっぱりキャスタークラスだもんねぇ。こういう真正面からの戦いはめっぽう弱いカンジ?」

ちらりと横に目をやれば明らかに劣勢の香子。
ジャック・ド・モレーを名乗る女性サーヴァントはあたかも余裕そうに香子を追い詰めていた。

「!!」

不意に何かを感じ、身をかがめる。
直後、空気を裂いて頭上を通り抜けていく何か。
弾丸だ。

「あおうっ!?」

あたしに当たるはずだった弾丸はミッツに命中。
後ろを見るとそこには、やつの仲間の黒マスクの姿が。

「きんもっ……よけんなよ。」

その手には硝煙の立ち上る銃。
続けざまに撃つが、咄嗟にあたしはミッツを引き寄せ、盾にする。

「ぐ、ぐわーッ!!リキヤ!やめてくれ!!俺人質に取られてる!!撃たれてる!!死ぬ!!死んじゃうゥ!!」

味方を盾にしているも、リキヤと呼ばれた黒マスクの男はそれでも銃を撃ち続ける。

「た、たすけてリキヤーッ!!」

至近距離まで近付いた。

そのままこいつごと蹴り抜き、2人まとめて吹き飛ばす。

「おっと、そこまでだぜ嬢ちゃん」

その時だった。

「サウザンさん…!俺の事助けに来……」

黒マスクとミッツの間に割って入ってきたのは筋骨隆々のサウザンと名乗った男。
彼はそのまま太い腕を伸ばし、

「吹っ飛びなァ!!」

ラリアットでミッツごとあたしを吹き飛ばした。

「かは…っ!?」

本棚を貫通し、壁に思い切り叩きつけられる。

なんだこれ…人間が出せる力じゃない…!

「いてて……サウザンさん!!何してくれてんだボケェ!!」
「ちょっとやそっとじゃ死なないだろ、お前。」
「ちょっとやそっと!?ミサイルがぶつかったのかと思ったっつーの!!」


吹っ飛ばされたミッツは何事も無かったかのように瓦礫の中から起き上がった。


「雑魚2人は片付けた。残りはそこの金髪と紫式部だけだ。」

そう言われ、視線を移す。


「クソ…バカみてぇに強ぇ…!」
「なんですか…あの男は…!!」

視線の先にはサウザンの相手をしていたはずの賢士とニトクリス。
口の端の血を拭い、フラフラと立ち上がるももう戦える状態では無い。
ニトクリスだってそうだ。
呪いのせいで思うように動けておらず、やはり時折痛むらしくその腕を抑えて苦痛に顔を歪めている。


「葵様!!」

そんなあたしに香子は振り向き、いち早く駆けつけようとする。

「アンタの相手はあたし!って言ったでしょうよ!!」

しかしモレーがそれを許さない。
その手に持った剣。
それで無防備な香子の背中を切り付けた。

「うぅ…!!」

そのまま抵抗も出来ず、香子は膝をついてしまう。

「何ぃ?もしかしてマスターがいなきゃロクに戦えないってやつぅ?サーヴァント失格じゃーん。」
「そのような…ことなど…っ!」

歯を食いしばり、負けてたまるかと香子は立ち上がろうとするが

「ね〜え?リーダー?」

その背中を踏みつけ、振り返ってリーダーに話を振る。

「こういうのってぇ、適度に辱めた方が視聴者的にはいいんだっけぇ〜?」

悪寒が走る。
嫌な予感がする。

リーダーはただ腕を組み、頷く。

「あぁ、後でマスター共々サウザンさんにぶち犯されるのを収録してサブチャンネルで投稿する予定だったが…まぁいいだろう的な。乳の一つや二つ露出して辱めさせるのもいいかもな。」
「ふ〜ん。りょうか〜い(D'accord)

髪を掴み、強引に立ち上がらせられる香子。

「だってさ。じゃあ裸にひん剥いちゃおっか♡きっと毎晩おかず探しにネットを奔走してる哀れな視聴者(子羊)ちゃん達もそれをお望みだし〜?」
「やめろ!!!」

叫ぶ。
そうはさせないと、足が動く。

「紫式部は…あたしのサーヴァントだ…!!」
「だから何?」

よろめく足。
焦点が定まらない。視界がぐらりと揺れる。

ダメだ。意識が持ってかれる。
ダメだ。変わっちゃダメだ。
意識を明け渡すな。
これは…あたしが解決するんだ。

【変わりなよ。】

嫌だ。

【変わんなよ。】

嫌だ。

【変われ。弱いお前じゃ話にならない。】

「嫌だ!!!!」

消えそうな意識を踏ん張って戻し、叫ぶ。
(アイツ)の意識は掻き消え、あたしはなんとか自我を保った。

しかし、

「なーにがいやなんだよ。」

敵に隙を与えすぎた。
トドメを刺さんとあの男が腕を振り上げすぐそこにまで迫っていた。

「ちょっと寝てろ。なぁに、次起きた時にはサーヴァントと仲良くキメセクさせてやっからよ。」

巨木のような腕があたしに迫る。
攻撃を受けるにあたって、今のあたしはあまりにも無防備だ。

「……!!」

今度こそ本当に意識が持っていかれる。
そう、思った時だ。

「おぉっと!!」

あたしとサウザンの間を、〝斬撃〟が通り抜けていく。

文字通りの斬撃。魔力から生成されたそれは、

「そんなこと、させない!!」
「なんだ、ガキいるじゃねぇか。」

イリヤちゃんだ。

『うわぁ……いかにもなチャラ男集団ですねぇ…図書館に何の用ですか?』
「そんなこと聞かなくていいよ!この人達は悪者!だったら追い払う!!」

隠れていたと思ったけど、出てきてしまったみたいだ。

ダメだ。あいつらはイリヤちゃんを狙ってる。
戦ったらダメだ。

「なんや。ロリっ子おるやんけ。」

案の定関西弁の男、そしてミッツがイリヤちゃんの方へ視線を向ける。

「おいおいいるねぇいるねぇ!年端もいかねぇ魔法少女がよォ!」
「ダメだイリヤちゃん!!逃げて!!」

ピョンピョン飛び跳ねながら、ミッツはニヤニヤ笑うと一目散に駆けた。

「ぷにまん一番乗りィ!もーらいッ!!」
「散弾!!」

奴がイリヤちゃんのすぐそこにまで迫る。
しかしそこには杖を振るう彼女。

「ぎゃあああ!!!!」

思い切り振るわれた杖からは文字通り、散弾のように魔力の弾が拡散。放射状に放たれた。

「ここはわたし達の新しい居場所…だから、隠れてないで正々堂々戦う!守ってもらってちゃダメだから!!」
「……!」

当然、何の防御もしていないミッツは至近距離でモロにくらい、蜂の巣にされる。
1発1発が身体を抉り、彼をぼろ雑巾のようにしていく。

「ぐえぇ。」

ブスブスと煙を上げ、大の字に倒れるミッツ。
もはや必殺の威力。
アレをモロにくらってしまえば、最早息の根は止められたと思えたが

「た、倒せた……?」
「うっそ〜〜ん!!死んでねぇよ〜〜ん!!!」
「きゃあああああああ!!!!!」

しかし、死なない。
あれだけの攻撃を食らっても、奴は簡単に起き上がり舌を出して挑発した。

驚くイリヤちゃん。
しかしもう一度散弾を放つが。

「同じ手が効くかよぷにまんがよォ!!」

穴だらけの身体は一瞬で完治。
身体を人体ではありえない角度に折り曲げ、散弾の間を掻い潜る。

あたしの攻撃の時もそうだ。体をぐにゃりと曲げて避けたり、発勁を受けて内部から破壊されようが次の瞬間には何事もなかったかのようにピンピンしている。
なんだあいつは…化け物か?

おっと(oops)…!」

その時、香子の方にも動きがあった。

「これ以上……手出しはさせない…!!」

劣勢の中割り込み、モレーに槍を降るって立ち塞がったのは美遊ちゃんだ。

「美遊さん……!」
「紫式部さんは早く葵さんのところへ…!こっちは私に任せてください!」
「ですが…!」
「そう簡単にやられたりしません!!ですから早く!!」

頭を下げ、香子は急ぎ足であたしの方へと駆ける。

「行かせないってーの!!」

モレーがトンと足を鳴らす。
彼女の背後から出てきたのはイソギンチャクの様な巨大な軟体生物。
それが何か弾の様なものを連続して吐き出し、放物線を描いて走る香子に命中しそうになるが…

「…ッ!!」

そうはさせまいと美遊ちゃんが飛ぶ。
赤い槍を回転させ、襲い来る攻撃を全て弾き、いなす。

そうして攻撃を無効化し着地。再び槍をかまえてモレーを睨み付けた。

「…。」
「へー。ガキの上にキャスタークラスってのに、随分とやるじゃん?」

メガネを押し上げ、モレーはにんまりと笑う。
対する美遊ちゃんはあたしの方へ振り向くと、

「……。」

少しだけ笑って頷き、すぐに視線をモレーに戻した。
任せてください。そう言いたいんだろう。

「葵様!」

そうして香子が駆け寄ってくる。
ひび割れ、足元が悪くなった床に足を取られながらも必死で走ってきている。

「葵!!」
「!」

別方向から、またあたしを呼ぶ声。
呼んだのは賢士。

「アレ使え!!まだ逆転のチャンスはある!! 」
「……アレ、アレって……っ!!」


アレだのなんだのいって伝わるか。
そう言いたいが思い当たるのは〝アレ〟しかない。

「コレしか、ないよね…!!」

ポケットから取り出したのは数日前賢士からもらった聖晶片。

「使い方は……わかってる。」


魔力リソースとなる聖晶片。
ブーストをかけたり、魔力の回復にはもってこいの代物だ。

けど、あたしの場合は違う。
聖晶片(こいつ)には一部のマスターにのみ許された使い方がある。

この数日間の間に学習したし実践済みだ。
やれる。

「あいつ…なにかする系だな?」
「させねぇよ。」

何かを察知するリーダー。
それに応えるようにサウザンが走り出す。

「その石も高値で売れる。お前達をブチ犯して動画に上げりゃイイ再生数も取れる、そんでロリ鯖二騎もまとめてゲット。一石三鳥だ。」

すさまじい速さで走り出すサウザン。
そして地を蹴って飛び上がり、殴りかからんと拳を振り上げる。

狙いは香子。
あたしを狙えば蹴りなりなんなりで迎撃されると思ったのだろうし、サーヴァントとはいえ満身創痍で反撃しづらい香子に狙いを定めた。
その判断は正解だ。間違ってない。
でももう遅い。

「面白いモン、見せてやるよ…!!」

握った聖晶片を砕く。
すると呼応するかのように手の甲の令呪が眩く光り出す。

「なっ、閃光弾かァ!?」

それと同時に光に包まれる香子。
そのまばゆさにサウザンは目をやられ、バランスを崩してその場に落下した。


「なにあれ、キモ…。」
「自爆的な?」

呆気にとられる奴ら。
動画配信者なんだから、こっちにきちんとカメラを合わせてもらいたい。

「キャスタークラスが何したって、勝てるワケ……!」
「そこまで仰るのなら、装い(くらす)を改めさせていただきます。」


光から、モレー目掛けて何かが飛んでくる。
剣を降るってはらい落とそうとするも、そのうち二、三本は見事に腕に突き刺さった。

「いったぁ!?な、何これ!?ペン!?」

刺さったのはペン。
何の変哲もない、ものを書く時に用いるペンだ。

「今の私はキャスタークラスに非ず。」

お披露目の時間だ。
光がやみ、〝霊基の転換〟を済ませた香子がゆっくりと歩いていく。

少しの間、あのお上品なドレスとはおさらばだ。

いつもとは違い肌を露出した装い。 開放的なその装いは、普段は隠している彼女の身体の魅力をこれでもかと引き立てている。
長い髪はかきあげられ、後ろに一纏めにされ普段とは違う印象を受ける
そしてその手には、身の丈ほどもあろうガラスのペン。

「筆がノっているので『ライダー』となります。」


そうして霊基の転換もとい、黒い未亡人の水着に着替えた香子。
今だけはあたしと一緒に、仲良く羽目を外してもらうとしよう。 
 

 
後書き
かいせつ

●ミッツは何者なのか?
死なない人間。
というより、最早人間かどうかも怪しい存在。
財団の実験手術にてあらゆるサーヴァントの霊基を組み込まれ、もはや人間ともサーヴァントとも呼べない存在となってしまった。

人間にしては逸脱し過ぎており、サーヴァントとしてはあまりにも曖昧すぎる。
どっちつかずの彼だが、彼のこの実験は後の擬似サーヴァント計画に活かされていたりする。
それこそ、人間同盟の教祖に最強のサーヴァントを組み込む計画、『メアリー・スー計画』である。
 
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