藤村士郎が征く
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第19話 川神学園ネット掲示板にて緊急速報! あの武神が変態の橋で寝取られたって本当か!?
前書き
漸く、武士道プラン発動日までこぎつけました。
長かった。
ライダー・・メデューサは、本来は神に運命を弄ばれた被害者なんですけどね。
「それじゃあ、行ってきます。士郎、雫、ラ・・メリッサ」
「俺たちしかここにはいないんだし無理にそう呼ばなくてもいいんじゃないか?」
ジャンヌと士郎の話題の根幹は、ライダーのこの世界での偽名についてである。
ジャンヌの方は、偶然か何かの力が働いてこの名前である。フランスでのこの名前は、有名な英雄すぎて、ファンの人などが女の子が生まれた時に、この名前にすること自体は珍しくもない。
しかし、ライダーは違う。
ライダーのこの世界における偽名が、《ライダー》のままで良い筈も無いし、かと言って本人には悪いが、《メデューサ》では蛇女や女怪、怪物などのイメージが先行しすぎて、自分の娘にその名をつけたがる親など皆無だからだ。いや、探せばいる可能性もあるであろうが、あまりに目立ちすぎる。
そこで、ライダー自身に決めてもらった名前が、メリッサ・デュカキスであった。
今後彼女は、この名前でこの世界を征くことだろう。
「いえ、何時までもこの名前では何時か、ボロが出てしまうかもしれないでしょう?だから普段からこの名で呼んだほうがいいんじゃないかしら?」
「ふむ、確かに一理ある」
「お嬢様の言う通りかと」
ジャンヌの考えに同意する士郎と雫。
「すいませんね、3人とも。御厄介になっているだけではなく、気まで使わせてしまい・・」
「何言ってるんだよ。俺たちはもう、《家族》みたいなものだろう?だからいちいち謝るな、ライダー」
「若、戻ってますよ。呼び名が」
「あっ!」
「フフ♪」
思わず呼んでしまった慣れ親しみすぎた名について、雫にツッコまれる士郎。
素で言ったセリフが笑いを誘い、4人のいる玄関が穏やかな空気で満ちる。
「フフ、では今度こそ行ってきますね」
「ああ、俺は少々遅れていくと思うぞ。今回の依頼でのことについて、マープルさんと最終確認する事があるからな」
「私も少ししたら、出ますので、その時にお会いしましょう。お嬢様」
「いってらっしゃい、ジャンヌ。家のことは任せてくださいね」
「はい、行ってきます。メリッサ!」
3人の言葉を受け止めて、今日もジャンヌは川上学園に向かっていった。
-Interlude-
あの後、宣言通り。雫も出発して、今は士郎も出かけるところだった。
「じゃあ、行って来るよ。メリッサ」
「はい。いってらっしゃい、シロウ。掃除なども各自お任せください」
「分かった、じゃあ頼んだよ」
その一言ともに、士郎も九鬼財閥極東本部に向けて、出かけていった。
それをきちんと見送ったライダーは、早速掃除に取り掛かることにした。
以前の世界の最初のころは、力加減もわからず皿洗いなどで食器を割ってしまう事もよくあって苦手ではあったものの、今では士郎に届かないまでも、一流並みの家事スキルが身についていた、メリッサであった。
「よし、まずはこの屋敷を隅々まできれいにしましょうか」
意気込みと共に、メリッサの新しい日常が此処に始まった。
-Interlude-
ここ、川神学園の生徒の半数以上の通学路となっている土手にて、風間ファミリー全員がほとんど何時も通りに登校していた。
「ふふ、お姉ちゃんちょっとハイなんだ」
「まぁ、かっこうのバトル相手が来たからね」
「ああ、美少女らしくワクワクしてきたぞ」
闘気を昂ぶらせる様に、百代は心底嬉しそうにしていた。
「・・・遠目で見てたけど、義経は相当な使い手だよ」
「さすがは日本が誇る英雄、是非ともお相手願いたいものだな。それと・・・」
「昨日の黒騎士か・・」
クリスが昨夜の光景を、思い出しながら口にする。
「ああ!今日から同じ学び舎で会えるから、昨夜はあえて挑まなかったが、是非とも戦いたいものだな!!」
「あれ?その黒騎士と互角に戦って、かなりの強さを証明したジャンヌ・オーリックには挑まなかったの?義姉さん」
「それが・・あの時は、友人を守るために戦いに赴いただけって事らしくて、基本的には争い嫌いなんだと」
心底残念そうに説明する百代。
「それじゃあ、断られたんですか?」
「ああ。ジャンヌちゃんは、まゆっち以上に無駄な戦いを避けたがるようだな。こっちから無るやり仕掛けるのは、爺に禁止されてるから駄目出し、こういうのは本人自身がやる気を出さない限り、戦っても満足できるかどうか怪しいんだよなぁ」
ファミリーたちとの合流時とは真逆に、百代は黄昏ていた。
それはそうだろう。学年は違うとはいえ、同じ学校に昨夜ほどの戦闘力を見せた武術家、しかも絶世の美少女に断られたのだから。
「・・・・・あっ、そう言えば、昨日は私のことを、気遣ってくれたんだってな。お前たち!」
百代の言葉を聞いて、ファミリーメンバーの皆はハッとする。
武士道プランや昨夜の黒騎士のおかげで、今日は朝から機嫌がいいので、誰も触れないようにしていた話題だからだ。
それをまさか、自ら聞いてくるとは思いもしなかったからだ。
「なんだ、お前たち。揃いも揃って、そんな辛気臭い顔して・・・って、元々は私が原因だったんだよな、悪い悪い」
「その様子だと、やっぱり大丈夫なんだね。義姉さん」
「ああ、心配かけたな、お前たち。昨日みたいなことは多分、もう起きないと思うぞ」
「あやふやだね。でも、如何してそんなこと言いきれるの?モモ先輩」
モロのこの疑問は、当然なものだろう。
百代の、その夢に出てくる人物と再会しない限り、あの悪夢を定期的に見続ける事に成るのだから。
「それは、かくかくしかじかなんだ」
「それはまた、すごい偶然ですね」
「ああ。と言ってもシロの奴は、今ではもう社会人だから、そんなに頻繁には会えないけどさ」
「ふーん。って、あれ?確かその人はモモ先輩の3歳年上なんだよな?」
キャップの疑問に、それが如何した?と答える百代。
「なら、その人は中卒か高卒なのかと思ってさ」
「いや、大学院修了してるらしいぞ?とっくに」
百代の言葉に京以外が『ん?』となった。
「シロの奴、中学の時に他の追随を許さないぐらいに、ぶっちぎりに頭が良かったんだと。それに加えて藤村組の重要人物ってこともあったし、英国の超有名な総合大学に御呼ばれされて。3年間ほど留学してたんだってさ。しかも歴代首席卒業者のランクの中に3位の成績で首席卒したらしいんだよ」
「へ~・・・って!ちょっと待ってくれよ!?モモ先輩!」
「ん?如何したのさ、ガクト」
百代の説明を聞いていたガクトは、バカであるにも拘らずファミリー内の誰よりも早く、あることに気が付いてしまった。普段はバカなのに。
「そいつは、藤村組の重要人物で、すんげぇ頭良くて、更には武道四天王に選ばれるくらいに強いって、天はそいつに何物与えてんだよぉお!!?」
「ついでに、なかなかカッコイイ顔している人だよ、ガクト」
「ぬぁんどぅつぉおおおお!!??」
ただでさえ、うるさく喚き散らしているのに、京の余計なひと言のせいで、さらにヒートアップしだしたガクト。
だが、そこで・・。
「如何して、知ってるんだ?京」
大和の疑問に対して、素で答える京。
「だって、知り合いだからね」
その答えに皆が『なにぃ!?』と驚きの声を上げる。
「ごめん、ちょっと事情があって言えなかったんだ。でも、モモ先輩と士郎さんが知り合いだったなんて事は、初めて聞いたけど・・」
(言う訳にはいかない・・。だってそんなことしたら、モモ先輩以外は最悪病院送りだからなぁ)
何故事情を話すと病院送りなのかというと、小料理屋《衛宮邸》のたまに訪れる客の一人である九鬼帝が、ある提案を勝手にした。
「今日から、ここに来る客の毎回の食事代の4割を俺が負担する。但し、ここは隠れ名店にしたいから誰にも紹介しないこととする。但し、本当に紹介しなければならなくなった場合、その者が一番よく食べている料理を食べさせる。それともう一つ、ここに来る客の顔ぶれを数えたところ、2桁に収まっているので、3桁超えた時点で負担はしない」
という、わけのわからないルールを付けたのだった。
何故こんな事をしたのかと士郎が尋ねると「面白そうだから」だ、そうだ。何とも九鬼帝らしい理由だった。
兎も角、京が話せば、必然的に百代以外のファミリーメンバーが即病院送りになることは必至。
何といっても、京が頼んでいるのは、何時も京自身で作っている激辛殺人料理が可愛く思えるほどの辛さらしい(それでも一応、美味しさを追求しつつ致死量ではない)。
「まさか、京とシロの奴が知り合いだったとはな・・」
この事実に、声にも表情にも表れていないが、ほんの少しだけムッとする百代。
それが嫉妬であると、百代は自覚してはいない。
しかし、大和に年中恋している京だけが、百代のほんの僅かな感情の機微に気付いた。
(あれ?もしかしてモモ先輩って・・・でも、士郎さんにはジャンヌと雫がいるって事、教えた方が良いかな?)
そんな京の考えや、他のファミリーメンバーの反応をよそに、一子は別の考えに耽っていた。
(まずい、まずいわっ!お姉さまだけじゃなくて、京まで士郎さんと知り合いだったなんて。この事であたしが嘘をついてるって事が士郎さんにばれたら・・・・考えるのはよそっ!?と、兎に角、このことを今この場で告白しよっ!今からすれば、お怒りも少なくなるかもしれないし)
そう決意した一子は、意を決して告白することに決めた。
「おね「ぐぅあはっはっはっはっ!待っていたぞ、川上百代!俺は、西方十勇士・・」
声を掛けようとしたにも拘らず、変態の橋に差し掛かったところで、上半身だけ裸の筋肉ダルマに邪魔をされる一子。
「てめえは、趙孫堅!」
そこに、突如現れた趙孫堅に対して、先ほどまで怒り狂っていたガクトが、食って掛かる。
「別の意味で全然違うだろうが!長宗我部だ!チョーさんとでも、呼べ」
明らかにおかしいガクトの呼び名に対して、すかさずツッコみつつ修正した長宗我部。
「交流戦で不本意な負け方をして、名を下げちまったからな。武神を倒して、名誉挽回というわけだ。ぐぅあはっはっはっはっ!」
その挑戦に快く受ける武神、川神百代。
そしてそのまま橋を渡り切ってから、河川敷の近くまで下りてきて決闘を始めるようだ。
長宗我部は始める前に、持参してきた樽を豪快に明けてから、その中のオイルを頭から被る。
どこまで行こうともこれが長曾我部の戦闘スタイルのようだ。
「さあ、俺のオイルレスリングで、ヌルヌルにしてやろう!」
しかし、そんな様子に対して、いつものように余裕さを崩さない百代。
「私がそんな技にかかったら、川上百代が寝取られたって、学校の掲示板が炎上してしまうだろう?よってここは、指弾で打ち抜いてやろう!」
そう言いながら、百代は手を構える。
この時、長宗我部には勝算があった。
長宗我部は、昨夜の内に思い付いた名誉挽回の法方として、武神を倒す旨を士郎に携帯で連絡した。
その時に何故か、電話越しからも判るくらいに士郎の声が落ち込んでいたが、武神の戦闘時の特徴を事細かに聞いていたのだった。
故にこの勝負、必勝のつもりで事に臨んでいた長宗我部だった。
そして、宣言通り百代は、指弾を放ってきた。
しかし、長宗我部はそれを躱さずに、それを受けつつ技を流した。
「何!?」
この予想だにしなかった展開と光景に、ファミリーメンバーも、周りで百代の決闘がみられると聞いて集まってきた川上百代ファンクラブ員も、何より指弾を放った百代自身が驚いていた。
「如何した?武神。この俺を一撃で倒せるように言っていたように聞こえたがぁ?」
図星を突かれて百代はムッとすると同時に、少しは出来る奴じゃないかと、評価を上方修正した。
更に言えば長宗我部は、全身に気を纏っていた。
「長宗我部といったか、昨日はお前、気を使ってなかっただろう?」
「ああ。気を使わずとも、お前たちに勝てると思いあがっていたからな。結果、あのざまよ。だがこのまま帰っては、四国の王と俺を慕う者たちの裏切りになるからな。更には、気の修得時の師であり、世界にも胸を張れるほど誇れる益荒男たる、あいつの友としてこれ以上恥の上塗りをする訳にはいかんのだ!!」
言い切ると同時に百代に突っ込んでいく長宗我部。
その行動に百代は・・。
「見くびっていたことは謝罪しよう。だがそれでも勝つのはこの私だ!川神流―――――星殺し!!」
百代は、交流戦で天神にも放った技で、長宗我部を迎え撃つ。
しかし、長宗我部は足を止めずに片腕を前に突き出しそれを止める。
「何だと!?あれを受け止めたというのか!」
「如何だ!と言いたい処だが、さすがに受け止めてなどおらぬわ。というか出来ぬ。これはオイルの滑りと気を融合させた事によって初めて可能となっただけにすぎぬ。その証拠にお前の気弾は、俺の掌の中で回り続けておるわ」
そう、よくよく見ると長曾我部の掌で、気弾がくるくると回転していた。
「これはまとめて返すぞぉおお!!我流奥義―――――技返し叩き!!」
突っ込みつつ、とどめていた気弾を百代に返す長宗我部。
「っ!ぐぁあああ!!?」
かなり距離が詰めていた事と、まさか気弾をそのまま返してくるとは予想だにせず、回避が遅れて直撃を食らってしまった百代。
瞬時に瞬間回復を行ったが、先ほどの衝撃で宙を舞う。
「まだだぁ!!」
そこで、宙にいた百代に突っ込み、ついに捉えて組にかかる長宗我部。
「うわっ!?くっ!?ホントにヌルヌルじゃないか!」
「当然よ!これこそがオイルレスリングの、真髄なのだからな!そのままくらえ!四国プレス!!」
長宗我部は、百代の抵抗にも気とオイルの融合された特殊アーマーで防ぎつつ、落下した。
「ぐぅううっ!?」
「如何だ?ぬぅあはっはっはっはっ!」
この攻撃にも瞬時に瞬間回復を使ったが、相変わらずの特殊ボディアーマーによって、容易には剥がせない様だ。
「ヌルヌルして気持ちが悪い!離れろよー!」
「そうはいかん!此の儘、Love四国THE2009スペシャルコンボの餌食にしてくれるわ!」
一向に剥がれない長宗我部に、業を逃がした百代はあの技を繰り出す。
「川神流――――――人間爆弾!!」
「ぬお!?」
特殊ボディアーマーのおかげでダメージは無いが、爆風による威力で宙に投げ出される長曾我部。
そして百代は、3度目の瞬間回復を行いながら宙に浮いている長曾我部目掛けて構えの姿勢をとる。
「川神流―――――無双正拳無限乱れ撃ちぃいい!!!」
無限というか、相手の気を失わせるか、相手を吹き飛ばすまで続く連続の正拳突きなだけ。
詰まる所、もう二度とあのヌルヌルした感触に組まれたくない、百代の自棄である。
「効かぬ、効かぬ、効かぬわぁあああ!!」
しかし効果は薄いようで、ダメージ処か、衝撃すらも吸収されていた。
だが所詮、それは今のところに過ぎない。
百代自身の感情が高まれば、自然と威力も上乗せされてくる。
「うらうらうらうらうらうらうらうらうらうらうらうらうらうらうらうらうらうらうらぁ!!」
「ぬぅぉおおおおおおぉおおおおぉおぉおおぉぉおおおおおおおおーーーー!!!??」
ダメージは無い。それは変わらない。
しかし、衝撃自体は吸収できなくなりつつある。
現に地上に降りられないばかりか、上へ上へあがっているのだ。長宗我部が。
「うらうらうらうらうらうらうらうらうらうらうらうらうらうらうらうらうらうらうらぁあ!!!」
「ぉぉおおぉおおおおおおぉおおおおぉおぉおおぉぉおおーーーーーーーーーー・・・・・ 」
そして遂に長宗我部は、四国に向かって星になった。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ・・」
百代は正拳突きの連打に次ぐ連打により、疲労困憊気味になり頬も朱に染まっている。
序でに、ヌルヌルが未だ服のあちこちにつきっ放しだった。
「・・・くっそぉおお、ベトベトヌルヌルで気持ち悪いなぁ」
「義姉さん。お疲れのところ悪いけど、そろそろ行かないと遅刻扱いだよ?」
そんな大和の報告に、義経ちゃんの披露を逃すわけにはいかん!!とか訳の分からないことを口にしながら、走り出す百代。
因みに、先ほど長宗我部を吹き飛ばした後に大急ぎで登校してきたヨンパチが、珍しい光景ということで写真を撮りそれをネットでアップしたところで、タイトル上の大騒ぎになった。
後日、悪意があったわけではないがヨンパチが百代ファンクラブ会員の手によって、制裁された。
もう一つ因みに、長曾我部は四国の一つである徳島県の吉野川の川岸に流れ着いているところを、地元住民に発見され無事に救助された。
後書き
年末年始は何かと忙しいので、まとまった休みさえ取れれば四国への旅行に行きたいですよ。
ネタ探しに四国について調べていたら、行きたくなりました。
感想、お待ちしています。
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