藤村士郎が征く
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第20話 千客万来! ようこそ、因果の地 川神学園へ
前書き
もう解っていると思いますが、原作と完全に同じシーンはカットしていますので、あしからず。
あれから、ファミリーメンバーは全員何とか間に合い、朝のHRは全校集会へと変わっていた。
学長である川上鉄心の前置きが入り、最初に壇上に上がった女性が葉桜清楚だった。
彼女についての説明と本人からの挨拶も終わり、次に九鬼財閥では源氏3人組などとも呼ばれっていたりもする3人が紹介された。
但し、最後の那須与一についてはサボりであった。
それについては義経が誠心誠意謝っていたが、後ろで弁慶が川神水を飲み始めたが故、少しだけ台無しになった。
その事についてではあるが、学年内のテストで5位以下であれば川神学園敷地内での川神水の飲水を1ヶ月禁止させる。6位以下であればSクラス落ち、7位以下であれば即退学というルールが敷かれていた。
次に、とある高名な交響楽団が校内に入りすぐに演奏し始めて、従者服に身を包んだ男性たちがぞろぞろと表れ始めて、一人二組になり人間の橋を作り始める。
その後に、長髪の女の子がその橋を弾正まで渡り歩いてきた。
そして――――。
「我、顕現である!」
九鬼紋白が登場したのだった。後ろに控えたヒューム・ヘルシングと共に1年に編入するとのこと。
そして最後に・・。
「今回の武士道プランとは関係が薄い編入生が2人入るぞい。1人は3-Sなんじゃが、諸事情で少々遅れとる。そしてもう一人は、昨夜の天神館の助っ人役で現れた黒騎士じ『既に此処に』ぬ!?」
紹介のために、鉄心が呼ぼうとしたところで何時の間にか、存在感が強い黒騎士が既に表れていた。
「え?いつの間に・・!?」
「近くで見るとでかいな・・2m位あるんじゃないか?」
などと、ギャラリーからの声も上がった。
「お主・・いつの間に・・・って、なんじゃそれは?」
鉄心が黒騎士の左手にあるもの?を掴んでいたことに気付いた。
『屋上でサボっていたので連れてきました。おそらく彼が、那須与一でしょう』
黒騎士は、那須与一を壇上の下にいた義経に向かい放り投げた。
「うわっと、与一!?だ、駄目じゃないか、皆との輪を崩したら・・・って、与一!!?」
「ほう?今頃やってきても、罰は受けてもらうぞ・・・って、与一?」
受け止めた義経と近くにいた弁慶が那須与一を見ると・・。
「アガ・・ガッ・・ガガ・・・ア・・ガ・・」
当の那須与一は、半分ほど白目を剥き、制服こそ多少汚れた程度になっているが、ボロ雑巾のようになっていた。
『ご安心を。見た目こそ酷くはあるが、変に痛めつけてはいませんよ。理由としては、注意したところに逃亡を図ったので拘束したのですが、それでも抵抗を続けられたので少々痛い目を見てもらっただけです』
「那須与一が悪いとはいえ、編入初日からトンデモナイ事を仕出かすのぉ?お主」
『そうでしょうか?武士道プランの申し子の一人ということで、これでも手心を加えたのですが?』
軽く言ってのける黒騎士に、昨日の戦闘力も合わさって、生徒の大半は引き気味になっていた。
そこでふと、生徒たちの中であることに気付いた者達が現れ始めた。
「あの黒騎士、口調可笑しくね?」
「うん。昨日に比べると尊大さがなくなってるよね」
「まぁ、これが彼女の本来の喋り方じゃからの」
「「「「「え?」」」」」
生徒たちの合図地を突くように言い放った鉄心の言葉に、虚を突かれるような顔になった。
「ん?如何したんじゃ?お前たち・・」
『恐らく、私の姿を見て男だと思っていたのでしょう。判りやすい様に、この格好で来たのが仇になりマシしたね。変声期も使っているので気づかないのでしょう』
今すぐ外しましょうと言う言葉と共に、そこには綺麗に外された黒騎士の鎧。そして横には、腰まで届く黒髪をなびかせる、クール美少女が立っていた。
「え?」
「あの娘、誰?超、可愛いんだけど・・」
「っていうか、何時からそこに?」
「後あの鎧・・・畳んであるというか、綺麗に置かれて無い?」
いつの間にか、黒騎士の代わりに一人の美少女と入れ替わっていた?事に驚く、一般学生達。
ついでに、黒騎士の鎧にも。
『改・・・改めまして、昨夜の交流戦で天神館の助っ人役を務めていた黒騎士事、暁雫と申します」
この発言に生徒たちは・・。
「え・・・えぇええ~~~!?」
「いやいやいや!背が全く違うだろう!?」
「それについては厚底ブーツの様な物を使いましたので」
「そう言う問題か!?」
そんな疑問を投げかける一方で・・。
「あの娘も可愛いじゃねえか!」
「クール美人って感じだね!さっきの葉桜清楚さんと同じく綺麗な髪だなぁ」
「今日はどの娘もSRづくしだぜ。俺達、男からすればご褒美だらけじゃないか!」
といった、男(というか、2-Fのある3人である)の喜声も聞こえて来る。
他には・・。
「あの黒騎士、雫だったんだ。全く気付かなかったよ~」
「ですが彼女なら、あの戦闘力にも納得です」
「つうか、2-Sに入るんだろ?源氏組もうちに入るし、トンでもねぇクラスに成るな」
と言う。2-S仲良し3人組がそれぞれの感想を述べていた。
「後もう一つ、皆様に説明しなければなりません。私事の様な物ではありますが、今この時より私暁雫は藤村組内に置いて、護衛見習いからジャンヌお嬢様の専属護衛となりました。それ故に、お嬢様に不埒の真似を働く者には問答無用で制裁を加えますので、悪しからず」
その発言に、またしても大半の生徒たちは驚くと同時に、ジャンヌ・オーリックを狙っていた男衆(一部の女子も)は絶望に瀕した。
ジャンヌに手を出せば、昨夜の武力が自分たちの身に振るりかかる事に成るのだから。
それと同時にもう一つ驚くべき事が有った。それは・・。
「と言う事は、昨夜は本来護衛するであろう対象を傷つけようとしたって事か?」
誰が言ったかは判らないが、この言葉と共に生徒達に疑問の波が広がっていった。
「確かに。一見すればその様に思うやもしれませんが、昨夜の戦闘でお分かりの通り、ジャンヌお嬢様も相当な実力者であり、私とほぼ互角(実はジャンヌの方がまだまだ上)です。その事を踏まえまして、昨夜での事は私とお嬢様にとっては時たまにやる、組手稽古の延長線上の様な物です」
最後に、ですよね?と、ジャンヌの居る方に視線を向けると、本人も素の表情で頷いた。
こんな発言に生徒の以下略だった。
そこで、生徒の一人であった武神・川上百代は、ジャンヌと雫を羨んでいた。
(昨夜の戦闘が組手稽古の延長線上だと!?な、なんて、羨ましい!あんな戦いを不定期とは言え確約されているなんて!!?ホント羨まし・・・いや、――――ずるい、ずるい!ずるい!!)
否、嫉妬していた。
ジャンヌ・オーリックにか?それとも、暁雫にか?否、両方にだ。
方や、自身の戦闘の申し出を断るまゆっち以上の非戦闘欲主義者。
もう一方は、これでほぼ初見の様な物で話したことも無いのでまだ判らないが、少なくともあのクールっぽさから自分と同じ戦闘狂では無い事は、少なからず推測できる。
にも拘らず、自分は毎日のように強者との戦いを望んでいるのに、あの二人はやろうと思えだが、そんな理想を簡単に実行可能にできてしまう状況、環境に嫉妬してしまうのも無理からぬ事だろう。
「百代?如何したで候?速く教室に戻るで候」
「は?え?あれ?」
そんな風に考えていたら、同じクラスメイトで弓道部主将の矢場弓子から声を掛けられていた。
しかも周りを見渡すと、いつの間にか全校集会が終わっていたのか、生徒全員がぞろぞろと校舎に向かい歩いていたのだ。
「何を呆けているで候?まさか、気分が悪く・・・いや、あり得無いで候」
そんな言葉を口にしながら、百代を置いて校舎に戻る弓子。
「ちょっと待てユミ!如何して否定したんだ、最後!?」
弓子を問い詰めるために後を追う百代。
しかし、彼女はまだ知る由もないだろう。
後に、百代はジャンヌと雫に対して、更に羨ましがる様に成るだろう事に。
何せジャンヌと雫共々、士郎の“女”なのだから・・。
-Interlude-
1-C
「――――と言う訳で、ワタシがあなた達の担任になりましター。カラカル・ゲイルでーす。よろしくお願いします!悩み多きボーイ&ガール」
黛由紀恵ことまゆっちが席を置いているクラス1-Cに、新たな担任として全米王者のカラカル・ゲイルが教壇の前に立っていた。
そんなゲイルのクラスに籍を置く当のまゆっちは、困惑の中に居た。+アルファ。
(と言う訳でってどういう事でしょうか?松風)
(わっからねぇー。この全米チャンプ、つい数日前にある武士娘と引き分けたって噂だけど・・・)
そんな風に、独り言を二重に呟くまゆっち。
「ワタシは母国であらゆる格闘大会を制して行きマシタ。しかし、これ以上いても自分を高められないと考え、ここ日本に来たのデース!」
最初からそれを言えばいいモノを、漸く説明するゲイル。
その言葉に納得したのか、相槌を突くように一人の生徒でまゆっちの「《『【“初”】』》」(←ここテストに出るぞ!!!)の同学年の友達である大和田伊予が質問した。
「だから、武士娘が川神学園に身を置いたと?」
「YES!教師のお誘いの話は前から頂いていたんで、正式に引き受ける事にしたんデース!」
「これはすごい補強だね!弟のゲイツさんは天才だけど、兄であるゲイルさんもすごく頭が良いんだよね!ベイもこれ位の的確な補強をしてくれたらなー」
ゲイルの肯定の言葉に大和田伊予は勿論の事、他の生徒たちも大興奮だった。
しかし大半のクラスメイトとは別に、似て非なる意味でまゆっちも少なからず興奮していた。
「お友達に成るのは無理ですかね―――と諦めてはだめです!」
「オラ達にDANDAN心向いてくるようにしようぜー」
と、またもや二重になった。
そしてそんな近くに居た生徒は・・。
(ぎゃー、黛さんがまた一人でぶつぶつ言ってる!)
(さ、最近少しはマシになって来たのに・・・ぅぅ怖いよー!)
そんな風に本人のあずかり知らぬところで、またもや友人を作りにくい環境が生成され始めていた。
-Interlude-
同時刻、1-S端折る。
-Interlude-
同時刻、3-S
教壇上に二人の男女が立っていた。
一人は、このクラスの担任で国語担当の葛木宗一郎と言う34歳の既婚者。
もう一人は、武士道プランの申し子の一人ではあるモノの、自身は勿論の事周りの人も誰も知らない(九鬼の極一部と藤村士郎しか知らない)故に本人自身は気に入っているが半分偽名であるといっても過言では無い女子生徒、葉桜清楚その人である。
「全校集会でも説明があったが改めて紹介する。葉桜清楚君だ。仲良くする様に」
だがそんな事は言われるまでも無かっただろう。既にクラスメイト達は喝采の嵐だった。
2-Sと比べて3-Sは、基本的には選民意識も無く協調精神のある生徒だけだった事も、幸いしているだろう。
「短い間ですが、宜しくお願いします」
品のいい笑顔と、上品な所作でお辞儀をする清楚。
そんな態度で受ければクラスメイト達―――特に男子生徒たちは歓喜に満ちていた。
「いやぁ、受験で身も心も大変な時期に清涼剤だぁ」
「川神学園はツンツンした娘ばっかりだったから、清楚な君は大歓迎だよ」
「文学少女バンザイザーイ!!」
そんな風に自身を受け入れてくれる新たなクラスメイト達に、感謝の念を覚える清楚。
「有難う御座います・・・すいません、得体が知れなくて」
と同時に謝罪の念も覚える清楚。
しかし・・。
「京極彦一だ、君の生い立ちは朝礼で聞いた。正体が誰であろうと君は君・・・私たちは気にしない。あまり自意識過剰にならぬことだ」
基本的には常に袴姿の男子生徒。イケメン四天王の一人であり、言霊部部長の京極彦一が淡々と、相手を諭すように思った事を口にした。
そのセリフを受けて清楚は・・。
「・・・!はいっ」
まるで見守りたくなるような、裏表の満面の笑顔で素直に頷いた。
その返事に納得した京極は、うむと静かに頷く。
そして、周りも・・。
「笑顔が可愛いな清楚ちゃん、清楚だよぉ」
「文学少女がこんなに似合う娘もいねぇよなー。こりゃー、魍魎の宴も熱くなるぞー」
「文学少女サイコウコーウ!!」
そうした空気の中で、担任教師である葛木は手を叩く。
「彼女の自己紹介も済んだ事だし、次は朝礼でも言っていた編入生を紹介するぞ。丁度来た様だからな。入って来てくれ」
その言葉と共に、教室に入ってきた編入生に当然ながら注目が集まる。
その人物は男、と分かった瞬間に気落ちする男子生徒たちと、黄色い悲鳴を上げ乍ら歓喜する女子生徒に分かれていた。少なくとも全体的に見ればだが。
別にただ、男だからと言う理由で歓喜したのではない。理由は簡単イケメンだからだ。
男子生徒達は、そんな編入生の容姿に僻みはしても、それを言葉にする事も表情に表すことも無かった。少なくとも、それ位には彼らは大人だった。
そして教壇の前に立つ編入生。
「藤村士郎と言う。一年にも満たない間だが、これからよろしくお願いする」
「ふむ。誰か質問がある者はいるか?挙手してから、許す」
葛木の許しの言葉に、挙手をする女子生徒達。
「よし、平川」
「はい。まず確認なんですが、藤村と言うのはあの“藤村”でいいんでしょうか?」
「ああ、その理解で間違ってはいないよ。俺は現在の総組長の実子だからな」
質問を終えた生徒は下がり、また葛木に指定された生徒が立つ。但し、今度は女子生徒では無く、京極だが。
「必要以上に詮索する気は無いのですが、同い年にも見えません。故に聞きたいのですが、何故川神学園に?」
「それは、1-Sに編入したヒューム・ヘルシング“君”にでも聞いてくれ。俺の意思とは無関係に編入させられたんだ(理由は知っているが、無理矢理編入させられた事は本当)」
「そうですか、それは大変ですね。お察しします、心から」
本当に心の底から気を遣う京極。
若しかすれば、哀れんで視られて居るのかもしれないが。
「あーそれと、3つしか歳は離れてないんだし、好きにすればいいが敬語なんていらないぞ?」
「そうですか?・・・いや、では遠慮なく。京極彦一だ。好きに呼んでくれ、士郎」
京極は、士郎の提案に乗りつつ、自己紹介をしながら手を出してきた。
「了解だ。こちらこそな、彦一」
その京極の手を握り握手をした。
そのイケメン男性2人の光景を見ていた女子生徒の数名が、突如として騒ぎ出す。
「こ、これは・・いけるわ!」
「インスピレーションが来た―――――!!」
「京極君×イケメン編入生・・・この妄想に浸るだけで、白米3杯はイケる!!!」
などと主役をよそに奇声を発する、3-Sの腐女子たち。
そんな馬鹿たちを歯牙にもかけず、次々と紹介しあう士郎達。
そして・・。
「あの・・・私は・・・」
自分よりも遅れてやってきた編入生である士郎に、オドオドした様子の清楚。
そんな反応に士郎は・・。
「あー大丈夫だよ、話は学長から聞いてる。よろしく、葉桜君」
「え!?・・・はいっ!よろしくお願いします。藤村・・・士郎さん」
まずは、目標に怪しまれずに接触できた事に成功したと同時に、僅かながら罪悪感を感じる士郎。
しかし、これも仕事だとすぐに気持ちを切り替えるのだった。
-Interlude-
同時刻、3-F
1-S同様に此処の新担任としてカラカル・ゲイツが教壇の前に来ていた。
「と言う訳で、僕が君たちの担当であるゲイツだ」
「コンピュータ製作で世界的にも有名なゲイツが教師とは」
「・・・武士道プラン発動による教師の増員ねぇ~・・・」
ゲイツの挨拶に、3-F生徒は各々それぞれなりアクションを取っていた。
そして百代はと言うと、明らかに不満そうだった。
「カワカミモモーヨ。何だか不満そうだね~?」
「Sクラスとかは女の子補充しているのに、何で私たちのクラスには、こんなギリギリなのが来るのかと思いまして」
ゲイツの的確な指摘に対して、百代は愛想も振りまく事も無く、正直に自分の心情を語った。
彼女らしいと言えば彼女らしいが。
「なに、僕自身はデータ収集においての解析の修業がまだまだ足りていなかったからね。武士娘たちの戦闘データを収集して解析しつつ、そのお礼に授業をしてあげようと思ってね」
「それで私のクラスですか、やれやれ・・・」
ゲイツの話した理由に、気落ちしながら納得する百代。
そこでゲイツはキリっとした顔で・・。
「成功の秘訣は目標を定める事さ、モモヨ」
「なんか、名言チェックの様な事を発言されたぞ」
「君のデータや、今回発動された武士道プランの申し子たちの戦闘データさえあれば、僕自身のデータ収集能力の向上にもつながるし、兄さんはさらに強く成れると思うんだ。それと、学長にはすでに許可を取ったから言うけど、時々僕と兄さんも川神院の朝のトレーニングや稽古などに同席させてもらうから、よろしく。モモヨ」
「許可を取っているのであれば構いませんが、ゲイルさんはどれくらい強いんですか?」
数日前の噂も耳にしていた百代は、ふと気になった。
「ふん~~、全米での格闘大会では使うまでも無かったから言うけど、兄さんは気を扱えるのさ。ランク的には壁越えだねぇ」
「へぇー!」
ゲイツの言葉に初めて深く関心を覚えた百代。
「とは言っても、数年前までは今ほど気の使い方について熟知していなかったのさ。ある時日本から訪れた子供から、気の運用方法を教えてもらうまではねぇ~。」
「子供・・・ですか候?」
「うぅん!その出会い以来、僕と兄さんにとって彼は、国も違えば年も離れているけれど、今では自慢のMy best friendなのさぁ~。フッフゥ――――!」
「その子供と言うのはどの辺に住んでいるんですか?」
ゲイツの話に、少々興奮しながら質問する百代。
例え、源氏3人組が現れたからと言って、強者とはできるだけ多くと戦いたい性は、そう易々と抑えられるモノでは無いのだから。
ただ強者を求める心に代わる特別な何かでも、百代の中に現れない限りは。
「ああ、それは――――」
キ―――ンコ―――ンカ―――ンコ―――ン×2
百代の質問に答えようとしたゲイツだったが、HR終了のチャイムが鳴ってしまった。
「おっと、話は此処までだねぇ~。続きはAfter schoolにでも話すよぉ~」
「ちょ!?」
「じゃあ、皆、今日からよろしく!&一時間目の用意しておくんだよぉ~」
肝心なところでゲイツはクラスを後にしてしまった。
「行ってしまったで候」
「ハハハハハ!ドントマイン、ドントマイン!!」
「む~~~、こうなったら昼休みに速攻、清楚ちゃんを口説き落としに行く!それしか、この憂さを晴らす方法は無い!!」
悔しそうに口元を歪ませながら、吠える百代であった。
-Interlude-
同時刻、2-S
今回の主役はあくまでも、源氏3人組だろうと言う雫の提案により、まずは前座である自分をぱっぱと終わらせるべきだと言うので、3人の前に雫1人が入ってきた。
だがそのまま自己紹介をせずに、英雄の席の前に行く雫。
そのアクションにあずみは咄嗟に動こうとしたが、英雄に危害を加えるためではないと理解して自重した。
「ん?如何した?」
「交流戦中とはいえ、昨夜は失礼しました。英雄様のお噂はジャンヌお嬢様や“若”から、かねがね」
「ほぉー、真面目な奴だな。だが昨夜のあれは、正面堂々とした決闘中のものだ。遺恨など有りはしないのだから、謝罪する必要はないぞ」
「了解しました。お気遣い、痛み入ります」
そのまま一礼した雫は、指定された席に座った。
「お、おい、暁?自己紹介がまだだぞ?」
あまりの意外な行動に、動揺する2-S担任・宇佐美巨人。
対して雫はと言うと・・。
「このクラスは基本的に実力主義とお聞きしました。馴れ合うのは一部の人たちだけとも・・。であるならば、必要に感じられませんが?個人的に親交のある冬馬さん達には、後で挨拶しま「雫」・・」
巨人の疑問に対して雫は、必要以上には馴れ合う必要を感じないと、自身の心情を語る。
しかし、最後まで言い切ることが出来なかった。
理由は自身の名前を読んだ、ジャンヌの声にあった。冷淡かつドスの利いた声だった。かの聖処女とは思えない声音だ。
「ちゃんと前に出て、皆さんの前で自己紹介しなさい」
「ですが、お嬢さ「もう一度だけ言います」・・」
「皆さんにご挨拶なさい、雫。さもなくば――――(ニコッ)」
「「「「「ひぃいい!!!」」」」」
今度は口調は穏やかそのモノであるが、満面の笑顔が何時も魅せる神々しさとはかけ離れているメフィストフェレスの微笑みだった。
そんな彼女の《貌》を視界に居れてしまった胆力の低い者達(その中に不死川心も居る)は、悲鳴を上げると同時にひどく怯えている。
そして、そんなジャンヌの《貌》の標的となっている当の雫は、怯えはしていないが気圧されていたのは確かだった。
「・・・・・・・」
「ほぉ、茶化すつもりは無いが、ジャンヌの逆鱗の一端など始めて見たな」
「ですね。ただ、少しばかり羨ましくも思えます。私もジャンヌさんのあの瞳に貫かれてみたいものです」
「フハハハハ、相も変わらず物好きだな。我が友トーマよ」
雫をよそに、英雄と冬馬は各々勝手に盛り上がっていた。
しかし当の本人である雫に、そんな2人の話題を気にしている余裕は無かった。
しばしの間、黒い笑みを雫に注ぎ続けるジャンヌと、彼女のそのプレッシャーに気圧され続けるという構図が続いていたが、後の事もあると考え、溜息を漏らしながら直に席を立ち教壇前に進んだ。
「・・・申し遅れて、申し訳ありませんでした。改めまして、ジャンヌお嬢様の護衛を務めさせていただく事に成りました。暁雫です。今日からよろしくお願いします」
最初はしんと静かではあったが、クラス全体の生徒から拍手が起こった。
ただし、拍手の質は2種類であったが・・。
一つは、心からの歓迎の意が少数。残りは先ほどのジャンヌの怒りに当てられたうえでの、空気を読んでいると同時に引き気味の拍手であった。
「と、兎に角、これで自己紹介も済んだろうから、暁も席に行ってくれていいぞ?」
宇佐美巨人の言葉に、雫は頷いたまま席に座った。
「――――だから、オーリック。お前もその黒い笑みを引っ込めてくれねえか?」
「そんな黒い笑みとは、あんまりではありませんか?宇佐美先生。ですがまぁ、本日の主役たちの自己紹介もありますし、この辺にしておきましょうか」
そのまま、教室全体にいきわたっていた剣呑とした威圧感を掻き消すジャンヌ。
その様子に、2-S生徒の半分以上がホッとした。
それと同時に彼ら或いは彼女たちは、ジャンヌと雫に対して「触らぬ神に祟りなし」と言う考えで、これから約2年間の間はそう接しようと心に決めるのだった。
「よし、これで漸く今日のメインを進行出来るな。それじゃあ、お前たち入っていいぞ!」
雫の自己紹介と言う騒動を、漸く収集してから直に宇佐美巨人は、廊下に待機していた本日のメインたちを呼んだ。
呼ばれて入ってきた源氏3人組は、義経だけは緊張していたが他二人は気にした様子も無く、自然体そのままだった。
そして、一人一人の自己紹介をしつつ、軽いスキンシップをとる源氏3人組。
そこで最後に、教室内に入って来てからずっと与一は警戒をしていた。自身を先程の全校集会にて、ボロ雑巾の様にしてから義経達に引き渡した雫を。
それに気づいていた雫は、漸くそこで与一の視線に対して目を合わせた。
「・・・警戒しているようですが、先程の事は特例です。これからは直接の依頼ないし弁慶様や義経様からの直々の頼み込みでもなければ、手を出しませんので悪しからず」
それはつまり、逆を言えばそうなった時は容赦なく手を出すという勧告でもあった。
これに対し与一は・・。
(あ、姉御よりも恐ろしい女が居やがる・・!!)
只々、戦慄していたのだった。
-Interlude-
同時刻、2-Fほとんど端折る。
最後に一子は一人、戦慄の中に居た。
(まずい、まずいわっ!まさか、士郎の屋敷での先生2号まで編入してくるなんて!!)
一子は、焦燥感に溢れんばかりの胸中に居た。
もしバレる事になれば、士郎の説教が入るのだからと。
まるで生まれたばかりのチワワの様に体を震わせていた。
すぐ後ろの大和に、不信感を抱かせるくらいには。
後書き
区切る事が出来なくなり長文になったのと、年末なので仕事が忙しく中々投稿を進める気に成れなかった事が更新の遅れた理由です。13、14、20,21の4日間である土日も仕事だったので。
感想、お待ちしています。
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