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藤村士郎が征く

作者:昼猫
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幕間其の参 兵どもに夢のあと、東西交流戦終幕

 
前書き
 二人の女子高生が睨み合っていた。
 一人は言わずと知れた、武神・川神百代。彼女は崖の下から、上を見上げている。
 もう一人は、戦術家である松永燕。崖の上から、見下ろしている。

 「如何して大和を納豆漬けにする!これじゃあ、大和は二度と納豆とは無縁の生活を送れなくなるんだぞ!」
 「大和君に近づくものは、彼を利用することしか考えていない!だから、大和君を納豆づけにすると宣言したのよ」

 その言葉に百代は瞠目するも、燕はすぐさま追い打ちをかける。

 「私、松永燕が餌付けするといったのよ!!モモちゃん!」
 「エゴだぞ、それは!」

 藤村士郎が征く、始まります。 

 
 天神館の2年生全員は、川神学園との挨拶を交わした後に、ホテルへと戻って行った。
 しかし、最後のあいさつという事で、西方十勇士だけは遅れて戻るという事で、まだ電車には乗らずにいたのだ。
 だがそれも終わり、改札口手前に来ていた。そこで――――。

 「まだ居たか。鉢屋、長宗我部」
 「「んん?」」

 二人に声を掛けたのは、黒いスーツに身を纏い、黒縁眼鏡をかけた銀髪の長身の男。
 藤村士郎だ。

 「おおー!士郎ではないか!久しぶりだな」
 「藤村士郎・・何時の間に来ていたのだ。気配を感じ取れなかったぞ?」

 自分たちを呼び止めた人物が士郎だと分かるや否や、長宗我部は満面の笑みに高らかな笑い声と共に歓迎の意を示す。
 方や、鉢屋は、気配を感じ取れなかった自分の未熟さに憤りると共に、士郎に警戒の意を示した。

 「ああ・・って、如何してお前は会うたびに、抱き着いてくるんだ!?」
 「ぬぁあはっはっはっはっ!久しき友との再会には、これが一番だからに決まっている!!」

 長宗我部は、上機嫌に再会の抱擁を、士郎にしてきた。

 「他意はないが、長宗我部。とある噂でお前は、両刀だって聞いたんだが、それとは関係ないよな?」
 「え?・・・・・・お、おうともさ!ぶ、無粋なことを聞くな士郎!」
 「うぉい!今の間は何だ!?と言うか、如何して動揺してるんだ!??」

 士郎と長宗我部がバカ?をしている間に、同じ西方十勇士である大友焔が鉢屋に話しかけてきた。

 「鉢屋、あの吾人は一体誰なのだ?」
 「・・・・藤村組の先代である藤村雷画の孫の一人であり、現総組長の藤村切嗣の実子でもある男、名を藤村士郎と言う」

 その説明を後ろから聞いていた石田が反応した。

 「何・・・だ・・と!?この俺以上の、出世街道を歩む男だというのか!?」
 「御大将?確かに藤村組は有名ですが、それほど有名な方なのですか?某、とんに聞き覚えがないのですが・・」

 そこで鉢屋が、島にある紙を差し出す。

 「これは・・?」
 「藤村士郎の公開されている、経歴と諸情報だ。島の旦那もそれを見れば、嫌でもわかるだろう」
 「ふむ。では、しばし拝借するぞ」

 島は、鉢屋から借りた、数枚にまとめられた資料を読んでいく。
 他も興味があるのか覗き見をする。そして・・。

 「何やこれ?完璧人間やん!」
 「しかも、あの九鬼財閥の総帥から認められていて、人材豊富にも拘らず、とある仕事を依頼されているって」
 「仕事の内容までは知らん。機密情報が絡んでいるのでな・・何なら調べてくるが?無論、有料で」
 「頼む気なんてありゃ知らんけど、因みに幾ら位で?」

 宇喜多の答えに鉢屋は、とある紙を取り出し、無言で渡す。それを見た宇喜多は・・。

 「たっかっ!こんな阿保な額払えるかい!!」

 宇喜多は、たたき返すように投げつけたが、それをあっさり受け止める鉢屋。

 「高いのは当然だろう。藤村組内でもトップクラスの重要人物の1人であり、九鬼財閥の総帥とも個人的なコネクションを持っている程の人物だぞ。その上、総帥本人や側近中の側近達からの依頼内容を探れ、と言うのだからな。因みに、個人的に言わせてもらえば、極力敵に回したくない奴でもある」
 「何やそりゃ、初めから受ける気なんて無かったってことかいな!」
 「そうは、言っていない。その額プラス忍びビジネスの布教に協力、それと奴を敵に回す見返り程に適した重要人物との個人的コネクションの確約、これら全て揃っていれば、受けるぞ」
 「そんなもん無理に決まってるやろ!と言うか、うちがそれ欲しいわ」

 鉢屋と宇喜多が言い合いしている間に、大友が吉村と話をしていた。

 「なぁ、吉村。ああ言う吾人の事って、何ていうんだっけか?」
 「英傑だな。この言葉が、一番しっくりくると思うぞ」
 「おおー!?それだー!さすがは吉村!・・・でもあの吾人何の為に来たんだ?」
 「それは、長宗我部と鉢屋に言っておきたい事があったからだよ」
 「うわ!?いつの間にそこに!?」

 吉村と話していた大友の後ろに、突如として士郎が移動してきた。

 「ちょっと二人と話したいんだが、いいかな?」
 「あ、ああ、構わぬが・・」
 「それじゃあ、お言葉に甘えて・・二人に言いたいことがあるんだが・・いいか?」

 だが、士郎が言いかけるところで、鉢屋が遮るように手のひらを前に出した。

 「おまえの言いたいことは判っている、藤村士郎。何故、気を使わなかった・・・と言う事だな?」
 「ああ、使っても勝てたかは知らないが、本気を出していれば圧勝されなかっただろう?」
 「士郎の言いたいことは分かる。俺たちは今回での敗因が、俺たち自身にもあったことを痛感されたからな。天狗の鼻を折られた、と言う奴だな」
 「・・・・忠告するまでも無かったか。杞憂とも思ったが、一応な」

 腕組をして、真剣な表情をしていた士郎の顔が和らいだ。

 「それを言うために、わざわざ会いに来てくれたとはな・・。これは何処かで、汚名返上をせねばな・・・・・そうだ!これがいい!見ていろよ、士郎!すぐに名誉挽回してくれるわ!!」

 いつものように高笑いしながら、別れの挨拶も無しに、長宗我部宗男は走り抜けてしまった。

 「ちょ!?」
 「あんの阿保!何してんねん!?」

 尼子と宇喜多が何に驚いたかというと、長曾我部はただ走り抜けただけでは無い。
 改札口をハードル走の要領で、飛び越えて行ってしまったのだ。
 このままでは、捕まるのは必至である。

 「藤村士郎殿。我らはこれにて、暇させていただきます」
 「長曾我部のしでかしたフォローと同時に、奴を追わねばならんからな!」
 「ああ、気をつけてな。冬木に来たら、力になれる事があるかもしれないから、言ってくれ」

 その言葉とともに、西方十勇士の諸君はホテルに向かうため帰って行った。
 それを見送り切った士郎。

 「さて、俺も帰るか」

 その一言ともに、士郎は帰宅するために後にした。


 -Interlude-


 電車に乗り込んだ西方十勇士の者たちは、あることに気付いた。

 「そう言えば、毛利は?」
 「いや、なんか、真の美とは一体とか呟きながら、先に帰って行ったよ」

 毛利元親は、帰り際にジャンヌ・オーリックに遭遇し、あまりの美しさに自信喪失したのは余談であった。


 -Interlude-


 その頃士郎は帰宅のため、周りの一般人からすれば目にも止まらぬ速さで、走っている最中だった。
 その時、川神の土手からあるものが視界に入った。

 「ん?」

 それは・・・。
 




 
 

 
 

 
後書き
 因みに、私は納豆が大好きです。最低一日、一パックは食べます。

 Fate/Apochrypha5巻 発売日決定、祝!!

 感想、お待ちしています。 
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