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藤村士郎が征く

作者:昼猫
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第22話 士郎、編入1日目 早速因縁を突き付けられる

 
前書き
 こっち、久しぶりです! 

 
 放課後、3-S

 あれから色々あったものの、なんとか事を一時的に収束させた士郎であったが夕方のHR終了のチャイムが鳴ると同時に、学年問わず男女関係なくジャンヌファン会員の一部に席ごと囲まれる。

 「編入生さんよぉ?ちょっとツラ貸してもらおうかぁ?」

 その中からとある男子学生が、士郎にケンカ腰で話しかけてきた。

 士郎はそんな男子学生の態度に溜息を零すと同時に「わかった」と告げて付いていく事にした。
 本来であれば断ってもいいのだが、このままでは3-S生徒たちに迷惑がかかるだろうという判断によるものだった。
 しかし、その行動に京極が待ったをかけた。

 「まさかとは思うが君たち、校舎裏で士郎をリンチ等するまいな」
 「っんなことしませんよぉ。只決闘の用意が出来たんで呼びに来ただけですぅ!」
 「まっ、校舎裏では無いと言うだけで、リンチする事に成ってしまうかもしれませんけどねぇ」

 その後に、ギャハハハと言う下卑た笑いがその集団から聞こえてきた。
 その中の数名の女子からは「お姉様に手を出すなんて分不相応なことするからよっ!」と呟くものまで現れる始末だった。

 そんな光景を、ただ見るしかない者達は不安そうな顔をしていたが、士郎が「大丈夫」と告げる。
 そして・・。

 「こんな性根が腐った屑どもにやられるほど、俺は軟じゃないよ」

 などと言う大胆発言を繰り出す士郎。
 しかし、それが三下のような連中であろうと、そのようなセリフを吐かれて黙って居られるほど彼かの導火線は長くは無かった。

 「あ゛あ゛!?」
 「今なんつった!!?」
 「うん?耳が悪かったのか?なら次は違うセリフで。お前らのような下種であろうと、相応の慈悲を与えるように弱い者いじめする気は無いから安心しろよ」
 「ぶっ殺す!!」

 軽い挑発を受けてあっさり殴り掛かる下種A。
 されど当然と言うべきか、その拳をあっさり受け止める士郎。そして―――。

 「な!?てんめぇ!さっさと、手ぇ放、ぎゃあぁああああ!!?」

 士郎に拳を受け止められて、そのまま離れようとした瞬間に下種Aは突然、拳部分に強烈な痛みが走り悲鳴を上げる。
 そんな仲間を見てもう1人が士郎に殴り掛かる。

 「てんめぇ!田村を放せ!!」
 「ん」

 が、それも士郎には通じず、今度は手首を掴んだ。
 因みに今も下種Aの痛みは継続中。故にちょっとしたBGMになっている。
 煩いことこの上ないが。

 「――――ぁああああああああああああああああああああああああああああ!!?」
 「腕放せよぉ!?こら!!聞いてん、ってぇ、痛い痛い痛いイタイイタイ痛いイタイイタイ痛いイタイイタイ痛い!!?」

 手首を掴まれた2人目もあまりの痛みに泣き叫ぶ。
 今彼らの掴まれている部分は強烈圧力により骨を徐々に折られている――――なんてことは無く、恐らく痣も出来てはいまい。
 では士郎は何をしているかと言えば、掴んでいる手からその部分の神経に気を送り込み痛覚を過剰に刺激しているだけだった。

 この二人の周りのファンクラブ会員は、あまりの二人の痛みによる形相に士郎を見て怯えるモノ。腰を抜かす者、etc・・・。
 そこで、掴んでいるのは士郎自身ではあったものの、喧しく思えて来たし何より関係のないクラスメイト達にこれ以上続けると迷惑になると判断してすぐさま手を放した。

 「あがっ・・ハァハァハァハァ・・・」
 「ぐぎっ・・ハァハァハァハァ・・・」

 士郎が手を放したことにより下種A・Bが、勢いなど付けてはいなかったが疲労感により二人揃って尻もちを付いた。
 そして自分たちを掴んでいた士郎を見上げた2人目の下種Bが、悔し紛れに吼える。

 「て、めぇ~、こんなことして只で済むと思うなよぉ!!俺の親父はこの川神の有力者の一人なんだ。てめえぇが何所の誰だか知らねえが、社会的に潰してやるぜぇ!」

 そしてAも。

 「俺は隣町の藤村組の《黒虎》こと吉岡利信さんの甥っ子なんだぜぇ、頼みこめばテメェなんて直にずたぼろだぁ!」
 「そうか・・それで?」
 「あ゛?てんめぇ、今の話聞いてなかったのか「ちょっといいかな?」ああ”!?」

 そこに京極が二人を憐れむような視線を向けて話しかけてきた。

 「君らは士郎のフルネームをまさか聞いてないのかな?」
 「は?こいつのフルネームが何だってんだよ!?」
 「聞いていないのか?ならば教えよう。彼の名は《藤村士郎》と言って“若”の愛称で親しまれている先代総組長、藤村雷画殿のお孫さんであり現総組長の実子に当たるそうだ」
 「あ?それが何だ・・・・・え?」

 京極の説明によりキョトンとする2人。
 そして、徐々に冷静になるとがくがくと震えだす。

 それはそうだろう。土地の一か所の有力者程度では歯が立たないほどの勢力と権力を持つ今の藤村の身内に、知らなかったとはいえ喧嘩を売りつけた上に脅そうとしていたのだから。

 「説明してもらって悪いな彦一」
 「礼には及ばないさ。それに、今回のこの騒動は私が質問してしまったために起きたのだから、これくらいで済まされるなどと思ってないぞ?」
 「確かに面倒事だが、気にしなくていいんだぞ?俺がうっかり口走ったのが原因なんだしさ」

 などと、先程までの剣呑な空気はどこ吹く風かのように、京極と話し始める士郎。
 そこで、今ならチャンスなのではないかと逃げようとしていた二人ではあったものの、腰が抜けて動けずにいた。そこで周りの仲間?に助けてもらうとしようとしたが、いつの間にか誰も居なかった。

 「彼らなら、君たちが二人揃って士郎にかみついている間に立ち去って行ったぞ」

 上から自分たちの疑問による回答が聞こえて来たので見上げれば、声の主は京極彦一だった。
 そして、つられるように横に居た士郎と目が合ってしまう二人。故にまた震えだす。
 そこで士郎はBの方に近づき、ドスの利いた声で話しかける。

 「場所は?」
 「へ、へ?」
 「俺に決闘を申込みに来たんだろ?ジャンヌの婚約者と言う事で俺に文句が有るのは逃げていった彼らも含めてお前たちだけじゃあるまい?」
 「ば、ばばばば、ばい!だ、第2ぐ、グラウンドででゅ!!」
 「わかった、ならまずお前は行っていいぞ」

 士郎がそう促すとBは、「は、はいぃいいいい!!!」と言いながら3-Sから出ていった。
 残されたAは、自分はどんな目に遭わされるのかと考えて震え上がる。
 それを見た士郎は溜息を吐きながら、やはり近づく。

 「おい、田村と呼ばれていたっけな」
 「あ゛あ゛あいぃいい!!」
 「良かれ悪かれ、自分で俺にケンカを売ったんだろ?だったら最後まで、それを貫けよ。いざとなったら親とかに頼る奴とかが、俺は一番嫌いなんだよ!」

 顔を近づけてドスの効いた声音の士郎に「あい゛!あい゛!!」と必死に頷くA。
 そんな反応に、本当に理解しているのかと嘆息しながら「行っていいぞ」と士郎が呟くと、即座に3-Sから立ち去るA。

 それを見送る様にしてから立ち上がった士郎に、清楚が近づいてきた。

 「士郎さん。あの人たちの腕、このままで大丈夫なのかな?」
 「ふむ、それは私も気になっていた。それで、如何なんだ?」
 「ああ、そのことか。それはな―――――――――――しかじか、と言う訳で一切外傷もないし、ショック死を起こさない様にとこれでも気を遣ったんだよ」

 その説明を聞いて通常の人間ならば「そんな事できるモノなのか!?」と思う処だろうが、此処は川神。驚く者の方が少人数なのだ。現に京極と清楚も「ほぉ」とか「士郎さん、そんな事が出来るんですか?すごいです!」と興味深そうな声や純粋にはにかむ様な驚きを見せる声もあるのだから。

 「さて、それじゃあ第2グラウンドへ行くとしようか。士郎」
 「ん?何で彦一まで付いて来るんだ?」
 「言っただろう?これは私自身も責任がある事なのだと。それに、君の実力にも興味が有るからな」
 「物好きだな」
 「ふふ、これが性分だからな」

 そんな風に談笑しながら士郎と京極は、10分後に始まる決闘のために第2グラウンドへ向かうのだった。


 -Interlude-


 同時刻、2-S

 「――――と言う事でお嬢様。これから来る一子の事をお許しになってもらえないでしょうか?」

 現在雫は、ジャンヌの許しを得ていた。一子の動揺ぶりが、あんまりだった故に。

 「雫」
 「は、はい」
 「一子がそれほどまでに怯えているのであれば、優しく赦す事はあっても冷たく接するなどあり得ません。それとも私は貴女から見て、それほど狭量に見えるのですか?」
 「い、いえ!」
 (お嬢様の面貌、とてもいい笑顔の上に瞳も笑っていらっしゃったはずなのに、背後から黒いオーラが見えるのは何故なのだろう?それに『赦す事はあっても』と言う事は、一子が嘘を付いていたが反省していると言う(くだり)を伝えた時、やはり一瞬だけ逆鱗に掠ったのだろうか?)

 などと考えていると、ドアが開いた。
 入ってきた面々は俗にいう風間ファミリー。この面々は他の生徒同様、源氏3人組を見に来た様だ。
 但し、何時もは活力にあふれた一子が一番後ろでしょぼんとしていた。
 しかも、お嬢様を視界に居れた瞬間、びくりっと反応して小刻みに震えだす。
 そこへ、敢えて一子に近づくお嬢様。そして・・。

 「怖がらなくてもいいんですよ、一子。貴女も、悪気があった訳ではないと分かりましたから」

 頭を撫でながら一子の震えを落ち着かせるお嬢様。

 「だから、ね?大丈夫なんですよ」
 「・・・う、うん・・・うん。」
 「はい、いい子」
 「で、でもね、ジャンヌ?――――嘘ついて御免なさい!」

 その正直な一子の態度に、頬を緩ませる緩ませるお嬢様。

 「よく言えました!偉いですよ、一子」
 「そ、そうで「ぐぉおおおっ、ま、待て、姉御、離せ!」ん?」

 と、そこで、お嬢様と一子の和解中に、与一の呻き声が聞こえたのでそちらを向く。
 そこには既に、与一の頭を鷲掴みにしながら窓から放り投げようとしていた弁慶の姿が有った。

 「与一、ちょっと頭冷やそうか」

 遂にそのまま放り投げだされる与一。だがそこで、この教室内で数人だけ気が付いてしまった。

 「あっ、まずい。少し弱すぎたか、プールまで届かない・・。まぁ、いっか。与一なら」
 「えぇええっ!?弁慶!おま「あれ?」」

 あんまりのセリフに弁慶を怒ろうとした義経があるモノを視界に居れた。それは――――。


 -Interlude-


 「ん?あれは・・」

 此処は第2グラウンド。これから始まろうとしている決闘のために、士郎と付き添いの京極は来たのだが、まだ相手が来てはいない。

 そこで棒立ちのまま立っていたら、とある教室のベランダからあらぬ体制で一人の男子学生がプールに一直線に飛んでいった。威力的には届きそうになかったが。

 「たくっ、何してんだか」

 呆れ声を漏らしつつも、士郎は跳躍して与一を助けた。あのままでは、首から地面に対して突っ込む体勢だったからだ。

 「大丈夫か、君?」
 「お、おお、おう。わるいっすね・・」

 そのまま着地すると、とある女子生徒が強烈な速さで近づいてきた。

 「与一ぃいいいいい!!だ、大丈夫か!?」
 「そ、そんな心配しなくても、大丈夫だっての!?だから、体中に手を這い付かせるな!」

 駆けつけてきた女子生徒は昨夜の戦闘や新聞にも出ていた、源義経だった。そして、この娘のセリフからして彼が与一なのだと容易に知ることが出来た。
 そこで彼女が俺に向き直る。

 「あ、有り難う御座いました。与一を助けてくれて!」
 「礼には及ばないよ。それよりも、そろそろここで決闘が行われるから下がっ「藤村っぁあああ!!」来たか・・・」

 嘆息しながら振り返るとそこには、50人ほどの男女学年関係ない混合の生徒集団が降りてきた。
 そこに、審判として葛木先生がいつの間にかに居た(今この場では、少なくとも士郎、義経、与一以外にはそう感じた)。

 「さて、決闘を始め「待ってくださいよ、葛木先生!」む?」

 そこで集団の中からガタイのある男子生徒が一人、静止の声と共に出てきた。

 「おいっ、藤村士郎ったなぁ?」
 「ああ」
 「てめぇっ、今すぐ分不相応な事を止めろ!そうすれば赦してやる!!」
 「分不相応な事とは?」
 「ジャンヌさんと付き合ってることに決まってんだろうがぁあああ!!」
 「そうよ、そうよ!」
 「藤村だろうが何だろうが、お姉様に釣り合わないって事も解らないほど低能なの!!?」

 その後も似たような自分勝手な野次や誹謗中傷の声が上がってくる。
 それをどこ吹く風のように受け流す士郎。そして、最後に溜息を吐きつつ集団の方に目を向ける。

 「お前たちは一つ勘違いしている。いや、烏滸がましいと言った方がしっくりくるか?」
 「何だと!?」「何よ!?」「私たちに下等生物の分際で口を利くな!!」
 「ジャンヌは俺の女だ、一生な。それを横から無粋にも水を差すな!有象無象ども」
 「「「てんめぇ!!」」」「「「アンタァ!!」」」「「この家畜がぁ!!」」

 士郎の言葉に頭に来た集団は、葛木の始めの合図も無く突っ込んでくる。
 これではルールもへったくりも無い。故に葛木は止めようとするも、士郎が制止する。このままでいいと―――――。そして、それに応じる葛木。

 そこで士郎は腕を組んだまま集団全員を視界に収めるように見て、それから・・・。

 ギンッ!

 そんな音が鳴り響くとバタバタと集団全員が崩れ去った。

 「えぇええ!?」「なぁあああ!?」「むぅ!?」

 と言う声が後ろから漏れる。

 「勝負それまで、よってこの決闘は藤村の勝利とする」

 あくまでも生真面目で自分のペースを変化させることなく、無表情に終了の合図を告げる葛木。
 その合図後に3人の元に戻ってみれば感激している義経と興味深そうな京極が、先程は何をしたのかと言う質問をしてくる。

 「あれは、柔道の絞め技と同じようなものだ。あれは頸動脈をある程度圧迫して意識を落とすモノなのだが、俺もそれを気で彼らに流し込んだに過ぎない」
 「ほぉ?気にはそのような運用方法があった・・・いや、3-Sの教室で見せたあれとほぼ同じか」
 「ああ、だが気の精密な使い方としては、レベルがぐんと上がる。何故なら、圧迫する部分が頸動脈だ。下手すれば死にかねない。故に壁越えやその一歩手前の達人たちなら、習得可能だ・・・が。これを使う者はあまりにも少ない」
 「何故なのですか?」

 義経が士郎に尊敬の眼で質問する。と言うか初対面なのに、何故ここまで士郎に懐いているのだろうか?

 「先ほど上げた次元に立つ者達は、基本的に根っこが好戦的な輩が多いから、締め上げて落とした方が早いという点と、先程の技は気もかなり使う上に燃費も悪く、何より雑魚相手にしか通じないんだ。君と同じクラスメイトの英雄や井上準にも効きはしないだろう。要するに声だけ張り上げるだけで実は器も肝っ玉も小さい者にしか通じないのさ」
 「な、なるほど。勉強になります!」
 「フ、君のとんでもなさを改めて実感したよ」
 (まさかコイツ・・・・・・組織の人間か!?)

 などと、それぞれが“らしい”感想を抱いていた。
 それよりも士郎は先ほどから自身を尊敬のまなざしで見上げる娘が気になっていた。

 「そう言えば、君は確か源さ「義経の事は義経と呼び捨てにしてくださって結構です」じゃあ義経」
 「ハイなんでしょう!」
 「俺と君は確か初対面だったよな?」
 「はい!そうです!!」
 「じゃあ、なんで俺に対してそんな眼差しで見て来るんだ?一応、何となく想像はつくが・・・・・・」
 「ヒュームさんやクラウディオさん。それに、ミスマープルに藤村先輩の武勇伝はある程度聞いていたからです!本当にお会いできて光栄です!!」
 「お、おおう、そ、そうか・・・」

 義経のあまりの勢いに、押されている士郎。

 「しかし、クラウディオさんやマープルさんのお二人は兎も角、あの殺戮執事はなー・・・」
 「何か問題でもあるのか?士郎」
 「いや、問題がある訳じゃ無いが、これだけは言っとくけどあの金獅子を見習うのはよした方が良いぞ!義経」
 「え、えっと・・・何故でしょうか?」

 士郎の助言?に言いよどむ義経。

 「何故も何も!あの、人を見下す事でしか愉悦を感じない様の傲慢チキチキの串刺し狂の爺っ!?っと!危ないじゃないですか?」
 「チッ、外したか」

 士郎は何時もの様にあっさりと避けた。いつの間にかに来て士郎の顔面を蹴り砕こうとした、ヒュームの瞬足の足技を。

 「俺の質問には答える気はゼロと言う事ですか?」
 「フン!人の陰口を吐くような奴に礼儀をわきまえろと?馬鹿を言うな」
 「陰口なんかじゃありませんよ。将来有望であろう後輩のための的確な助言をですね・・・・・・・・・・・・」

 と、一瞬にして外野となった義経達を置き去りにして、何時もの様に言い争う2人。
 そして、外野扱いとなっている3人はと言うと――――。

 「ヒュームさんがいつの間にかに来たのは何時もの事だから驚かなかったが、聞いていた通り藤村先輩はやっぱりすごいな!与一!」
 「わーったから、そんなに引っ付くんじゃねぇえよ!」
 (コイツッ!?出来る!!まさか本当に地下世界(組織)からの刺客なのか?それにこの尋常ならざる気配・・・・・・こいつがあの伝説の魔術師殺し(メイガス・マーダー)・・・・・・!!?)
 「ふむ?士郎にしてはなかなか挑発的な物言いだな・・・・・・」

 またしてもそれぞれの言葉を述べていた。
 と言うか、与一はある意味あっていた。単なる中二病の思想であるにも拘らず。

 そんな何とも言えないメンバーの処に、一人の女子生徒が突撃して来た。大声を上げ乍ら。

 「しっろおぉおおおおおおおおお!!!」

 よく見なくても声音ではっきりとわかった。百代だ。
 因みに今はもう既に、ヒュームは紋白の元に戻った。

 「ん?如何した。そんな剣幕で?」
 「如何したって、ホ、ホントなのか?お前とジャンヌちゃんが付き合っているって」
 「いや、付き合ってなんていないぞ」

 士郎の口から出たものは、今口内中での噂を覆すものだった。少なくともここまでは。

 「そ、そうなのか?」
 「ああ、付き合うと言う事は『恋人』と言う事にあるんだろう?なら違うな」
 「そうか!なら「『恋人』じゃなくて『婚約者』だからな」・・・・・・・・・・・・え?今、なんて・・・・・・?」
 「だから『婚約者』って、モモ?モモ、如何した?」
 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 百代は放心状態居陥っていた。暫くの間ずっと。


 -Interlude-


 あれから、一子が合流して放心状態の百代を連れていき、現在士郎は川神院に来ていた。
 目的は一子の件についてだった。

 室内には士郎の横に口をあわあわとしている一子に、対面には鉄心とルーが正座していた。

 「――――と言う事で、如何か一子の事。許してはもらえないでしょうか?」

 士郎が2人に対して、真正面から言い放つ。

 「ふむぅ」
 「ン―――――」

 それに対して2人は、特に怒った様子も無く、ちらっと一子に注視する。
 そんな仕草に一子は、今も直口をあわあわと動かしながら涙ながらに謝る。

 「じいちゃん、ルー師範代。黙っていて、本当にごめんなさい!」

 その事に2人は何故か笑顔になった。

 「――――一子よ。儂らは別に怒ってなどおらんぞい。のぉ、ルー」
 「ハイ!寧ろ一子が何か隠しているは知っていましたからネ。疚しい事を一子がする訳がないと信じていたからこそ。一子から言うまで黙っていたんだヨ?」

 2人の許しの言葉に更に涙が押し寄せてくる一子。

 「じいちゃん・・・!師範代・・・!」
 「そら一子よ!涙を拭かんかい。可愛い顔が台無しじゃぞ?」

 一子を抱き寄せながら、あやす鉄心。
 そんな2人を見て士郎へ向くルー・リー。

 「それでは、士郎君!これからも一子の事、頼んだヨ?」

 目の前のこの青年、藤村士郎になら任せられると踏んだルーは、真剣な眼差しで頼んだ。
 だが――――。

 「――――いえ、お断りします!」
 「ハ?」
 「ホ?」
 「ヘ?」

 士郎の返事があまりに意外だったため、鉄心と一子までポカンとした表情のまま虚を突かれていた。

 「ど、如何いう事じゃ?」
 「別にお断りと言うワケではありませんよ?一子の事は、これからも3人で頑張って応援しましょうよ!と言う事です」

 そんな士郎の言葉に、何と頼もしい青年かと笑顔になる鉄心とルー(2人)
 そして一子は、自分は十分過ぎるほど恵まれているなと再確認するのであった。 
 

 
後書き
 贋作者と乳龍帝の叙事詩に、意識が向いていたのでこの後の展開について少々忘れて仕舞ったのですが、何とか思い出しつつ頑張っていきます! 
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