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藤村士郎が征く

作者:昼猫
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第17話 以下略 後編 戦場を蹂躙せし若き軍神、駆けつけるはオルレアン解放の英雄 ジャンヌVS雫

 
前書き
 マジ恋A4や、PS VITA移植版のFate/Hollow Ataraxiaやってたら、更新遅くなりました。

 あ!後、仕事。

 更には土曜の朝に風邪をひき、夜には熱(インフルエンザでは無かったです)を出してしまい、日曜はダウン状態で、ほとんど投稿の更新が進みませんでした。 

 
 昔、この日本には川神に匹敵する武家の一族がいた。
 その名を《暁》と言う。
 その一族の中で最も強いものだけが、《軍神》の称号を名乗れるのだ。

 彼らは西日本に本拠を構えていたので、『東の川神、西の暁』とか『東の武神、西の軍神』などと呼ばれるほどの、《武》における二大天だった。

 そして、その栄光は永久に続くはずだったが約一世紀前、とある理由により年々衰退していき、今ではその名を知り得ているのは国内外問わず、ごく僅かにまで減っていったのだ。

 話は変わるが、元武神であり川神院現総代の川神鉄心は、衰退する以前までの《軍神》であった暁幻摩とは強敵()だった。
 しかし、衰退していくにつれ会う機会も減っていき、今では生きているのかも怪しいとの事。

 そうして、折角の同じ地平に立つ唯一の強敵()を失った鉄心は、一時の間は彼と出会うまでと同じように孤独に陥って行った。
 しかし、偶然にも、藤村雷画や、ヒューム・ヘルシングと言う新たな強敵()との出会いにより、鉄心は天に感謝する思いだったという。
 だが、だからと言って《暁》一族の事まで忘れることが出来たかと言えば嘘だった。

 そんな10年前に、藤村雷画が西からとある女の子を拾ってきた。
 その名を――――。


 -Interlude-


 この東西交流戦最終夜において、此方の首級を上げるために、我に切っ先を向けた黒騎士の攻撃からあずみごと移動させてくれたものが現れた。

 しかし一体誰だと言うのだ?

 そうして煙が晴れたその先には――――。

 「「「ジャ、ジャンヌ!!?」」」

 『・・・・・・・・・・』
 (来ましたか、お嬢様)

 英雄の窮地を救ったのは、この交流戦に置いては後衛の事実上の中心人物と、いつの間にかになっていたジャンヌ・オーリックだった。

 「如何して、お前がここに?」
 「直感ですか・・・ね」

 そこで、ジャンヌをよく見るとそこには、銀色の手甲を装備していた。

 「ま、まさかその黒騎士と戦う気なのか!?」
 「無茶だよ、ジャンヌ!ジャンヌがそれなりに強いのは知ってるけど、そいつは強すぎるよ!」
 「ジャンヌは戦えたのか!?い、いや、だが、あまりにも無謀すぎるぞ!マルさんだってこの通りなんだぞ!」

 英雄を直も狙おうとする黒騎士に対してジャンヌは、二人の間に入りつつ構えている。
 今この場で気を失っていない、三人の知人友人の静止の言葉を背中越しに聞いて。

 「大丈夫ですよ、この場は私に任せてください」
 「しかし!」
 『・・・・・・・・』
 「少なくとも、あちら側は見逃してくれるか怪しいですから」
 『――――いや、私が用が有るのは、そちらの大将殿のみ。退くと言うのであれば要は無い』
 「で、あるならば、退くわけにはいきませんね」

 その言葉を真面目に受け止めた黒騎士は、ジャンヌの意思を尊重しつつ、今の自分の役割に戻ることにした。

 『成程。暁流槍術――――迅雷(ならば――――是非も、無い)!!』

 言い終える前に黒騎士は、雷が落ちるかの如く動き、光の速度でジャンヌの横に移動していた。
 そしてそのまま、漆黒のランスを突き貫いた。
 但し、貫いたのは空気のみだが。

 『!?』

 ジャンヌはいつの間にか、自分がいた(・・)場所の黒騎士の横に来ていた。
 そしてそのまま――――。

 「フロンタル・ストレート」

 黒騎士の兜めがけて、ジャンヌはかなりの気を練った拳を突き貫くように繰り出した。
 しかし黒騎士は、瞬時に横に居たのに気付き、楯でそれを防ぎつつ、そのまま押し込むように気を込めた楯で攻撃する。

 『暁流矛盾術――――圧害(あっがい)!』

 楯の前面に風の圧力壁を創り出し、そのまま吹き飛ばすなり押しつぶす技だ。

 しかし、この技を楯の上の枠部分に掴み逆立ちするように躱しつつ、そのまま兜を蹴り砕くように足を叩き落とす。

 「タロン・セレントベ」

 踵落としが眼前に迫るも、黒騎士はそれに落ち着いて迎撃する。

 『暁流――――甲殻(こうかく)!』

 文字通り、カメが甲羅に潜る時の様を表した防御技である。
 ジャンヌの攻撃に対して、そのまま固くした頭と兜で受けつつ迎撃した。

 だが、踵落としが防がれるや、ジャンヌはそのまま宙で逆さ状態のまま、黒騎士の背中を気の込めた拳を思い切り打ち出した。

 「はぁああ!!」
 『っ!?』

 《甲殻》が発動中のまま故、その攻撃からはダメージは無い。
 しかし、いくら体を固くしたからと言って、衝撃までは防ぎきれずいくらか撃ち飛ばされる黒騎士。

 それでも、スムーズに着地した黒騎士はジャンヌを睨み付けるかの如くに、彼女に兜を向ける。

 『・・・・・・』

 この二人の戦いが始まってからここまで、僅か5秒ほどの攻防だが、黒騎士が自分たちに全く本気で当たっていなかったことは勿論のこと、その黒騎士に勝るとも劣らない腕をあの(・・)ジャンヌ・オーリック(絶世の美少女)が持っていたことを否が応でも痛感された光景だった。

 「フフ――――勝負は、まだまだこれからですよ!」

 不適の笑みを浮かべながらジャンヌは、黒騎士に突貫していった。


 -Interlude-


 この東西交流戦最終夜を、別の場所から観戦している者達がいた。
 場所は九鬼財閥極東本部の晩餐室の一つで、観戦者は九鬼帝に九鬼局、それに加え従者部隊の零番及び序列2位・3位の5人もの重鎮メンバーだ。

 「あずみめ!特例で序列1位を預かりながら、あーも早くに気絶しおって・・」
 「確かに、守るべき主よりも先に気絶してしまうのは減点の対象ですが、暁雫殿の攻撃に対してあそこまで庇いきったのです。無茶を言い過ぎではないですか?ヒューム」

 部下の失態に対して厳しく批評する殺戮執事と、序列1位の失敗を認めつつも酷評が過ぎるのではないかと庇う完璧執事。

 「おー!すっげー!あの2人の戦いなんてそう見れるもんじゃねぇぜ!!」
 「確かにジャンヌ・オーリックについては、噂以上の実力のように思えますが帝様は、あの黒騎士の素性をご存じなのですか?」
 「あー、知ってるぜ。因みにヒュームたちもな!」
 「ほう、そうなのか?」

 自分だけが知りえていなかった事実より、かの黒騎士の素性の方が興味深かったのか、脇に控える様に立っていた星の図書館(マープル)に疑問をぶつける局。

 「はい。藤村士郎の次期専属従者候補の一人である、暁雫と言う英雄様と同い年の少女ですよ」
 「暁雫・・・・・と言う事はまさか、あの暁一族の末裔か!?」
 「局様のお察しの通りです。ですが、彼女の境遇からか、暁の名に何の未練も無いようですよ」
 「ま、その辺は人それぞれだろぉ。俺が言いたかったのは、あの娘は士郎の二人目って事だ。まぁ、あいつは女難の相が出てるからな、もっと居てもおかしくねぇだろうが。重婚制度も公式的に可決された事だしな。これからまだ増えそうだな士郎の嫁候補」

 楽しげに話す帝。余程の、お気に入り兼友人故なのだろう事が容易に窺える。

 「相変わらず、藤村士郎がお気に入りなのですね?帝様は」
 「駄目かぁ?」

 何か含みがあるのかと、疑うように聞く帝。本当は、士郎の事が気に入り過ぎて、妬いている事に気付いていながら。

 「いえいえ!寧ろあの若さで、あそこまでの傑物は現時点で2人と居るか怪しいですから。例え藤村の血縁者と言えど、帝様に迫るほどであれば尚更です!」
 (帝様に迫る・・・か。本人はそれを否定するだろうし、スペックは兎も角、実績に置いては言うまでもないが、まだまだ敵うまい)

 しかし、気づかれているとはいざ知らず、局は妬いている以外の本音を力強く口にした。
 そして、心の中で高圧的では無く正しい判断をするヒューム。

 「2人と居ない・・・か。紋はまだ幼いから兎も角、揚羽と英雄はカウントしないのか?」
 「・・・我が子であるならば!と己惚れたくはありますが二人とも未だこの世界では駆けだしたばかりでしょう。それに、この評価は親馬鹿が過ぎる・・・。この程度、帝様も解っているでしょうに」

 拗ねるような口調を露わにする局。

 「わりいわりぃ。・・・と、話を変えるがジャンヌの嬢ちゃんがあそこまでの実力者だったなんて初めて知ったぜ」

 と口にし乍ら、「お前ら、知ってたんじゃないか?」と言う風な目線を、老従者3人に向ける。

 「いえ、我らもジャンヌ・オーリックの実力については、噂程度でしか知りませんでした」
 「何しろ、ジャンヌ様ご自身が士郎様と同じく、無為な戦闘を好まない性格ですから。詳しい情報もほとんど入ってくる事が無かったのですよ」
 「しかも、あの二人とも。工場地帯という事もあって、周りに被害が及ばないようにあれでも、手加減しているように思えます。まったく、あの若さで大したものですよ」
 (それに比べて、他の若者ときたら嘆かわしいったらないよ全く・・。士郎及びジャンヌ、雫(あの子ら)の爪を煎じて飲ませたいくらいだね)

 そんな他人事のように観戦をしている九鬼の重鎮たちをよそに二人の戦いは、より苛烈さを極めていく。


 -Interlude-


 川神学園サイドの本陣では、ジャンヌ・オーリックと黒騎士による激戦が今も直、英雄たちの前で繰り広げられていた。

 ジャンヌは黒騎士によるランスの高速突きに対して、時には殴り返すように撃ち合い、時には捌き、躱す。

 「ふっ!くっ!つっ!はっ!!」
 『―――――――――――――――――』

 一方、黒騎士()はランスによる目にもとまらぬ高速突きをしつつ、気を練りながら収束させていく。
 雫のこの高速突きは、相手の攻撃を迎撃するためのモノでは無い。ましてや、ジャンヌを突き貫くものでも無い。単なる足止め・・・時間稼ぎでしかないのだ。

 自分とジャンヌの力量は、現時点では雫からしても、まだまだ格上だった事は予測できていた。
 で、あるならば、この一進一退の攻防を終わらせるためにも、溜めに溜めた主砲でこの戦いを終わらせるのが賢明だ。事実、周りは気づいていない様だが、徐々に雫が後退を余儀なくされていた。
 これではいずれ、押し込まれるのが落ちだろう。故に、尚更早めに決着をつけまいと、この策のために不本意ながら“若”の友人で大将でもある、九鬼英雄に狙いを定めた。

 そして――――。

 『――――ふん!!』
 「っ!?」

 今までしていた高速突きの最後に、押し込むように力強く突くことにより、ジャンヌを少しだけ突き飛ばす。

 『これで終幕としよう。大将殿!』
 「ぬぅ!?」

 英雄のほぼ眼前にまで一瞬で迫り、気絶させるために槍を振りかぶる。
 しかし――――。

 ――――ギィン!!

 ジャンヌが阻止するために、二人の間に割り込みをかけて、これを弾く。
 だがこれこそが雫の狙い。

 弾かれるのも計算通りで、瞬時に着き貫く体制に入り、ここで溜めに溜めた気を開放させ、技を発動させる。

 ランスの切っ先にのみ圧縮させた気を、一点集中させるように留めていき――――。

 (今日こそは勝たせてもらいますよ、お嬢様)

 実はいうと、ジャンヌと雫はこれまで何度も実戦に近い稽古で幾度も矛を交えており、今日まで全てジャンヌに後れを取っていたのだ。

 『暁流――――《神威い゛!??!?

 いざ主砲を放とうかと言う直前に、雫は確かに見た。ジャンヌの口元が嗤っていたのを。
 しかし、気はすでに放つ直前故に元に戻せず、ランスを突くようにした腕も、相手が並の相手であれば何のことも無いが、ジャンヌととなればそれが致命傷になりかねず、引き戻す事も出来ない。

 「はぁああ!!」
 ――――――――――ン!??!』

 ズッォオオォ―――――――ン!!!!

 轟音と共に、近くの伝統宿の明かりよりも強い光がジャンヌと雫と英雄と気絶中のあずみ(彼ら)の頭上で目を伏せたくなるほどの輝きを放った。

 何故、彼らの頭上で雫の放った神威が爆散したかと言うと、気を溜めた箇所がランスの切っ先のみだったので、ランスの下辺を気を溜めたサバットによる蹴りにより、予定が居である空中へ放たれてしまったのだ。

 その時に、追撃としてジャンヌは、《フロンタル・ストレート》を雫にかますも、それを楯で防ぎきった雫は少し間をあけるために後退する。

 そして、光が未だ消えない中で互いに気を自身の得物に溜めこんでいく。
 これが小細工なしの正面突破である。

 そのまま雫は、ジャンヌに突っ込みながら気を込めたランスを振りかぶった―――――。

 『暁流――――――――砕・・!!?

 ジャンヌは、最速のスピードで駆けぬくように、雫の懐へ入り狙う―――――。

 「疾風なる(ラピード)・・・!?

 互いに、駆け引き無の正面突破なる攻撃を加えようとしたところで、天神館本陣側から一子の声が聞こえたのだ。そう―――――。

 【敵将、全員打ち取ったわよぉお!!】
 【えいえい、おーー!えいえい、おーー!】

 一子の勝鬨と共に、天神館本陣側に行っていた十名ほどの川神学園サイドの学生たちによる続く掛け声が聞こえてきたのだ。つまり――――。

 『これにて、東西交流戦最終夜及び、東西交流戦事態も終了という事だな』

 この戦いが終わったのを確認した黒騎士は、潔く矛を収めた。

 「そうですね。いずれ一子達も戻ってくるでしょうし、直に気絶している他の方の手当てもしましょうか」

 ジャンヌも、先程までの戦闘状態を解除し、周りで倒れている同級生の手当てを開始するのだった。


 -Interlude-


 「みんなー!勝ったわよぉおおーーーって、な、何これ!?」

 いずれどころか1分もしないうちに、一子達が戻ってきた。川神学園の制服に身に包んだ見知らぬ黒髪ポニーテールの女の子と共に。
 そんな驚いている、メンバーに対して冬馬が事情説明をする。
 それと同時に、大和が悪いと思いながらも、英雄にあの女の子について事情を聴いていた。

 「―――――と言う訳です」
 「なるほど。有り難う、葵君」
 「どういたしまして」

 「――――これから、よろしく頼む」

 ぺこり。

 「どうも、こちらこそよろしく」

 ぺこり。

 「これからは、よろしく頼む」

 ぺこり。

 「大事なので、義経は2回言ってみた。では、さらば」

 義経と言う少女は、礼儀よく挨拶した後、姿を消した・・・いや、直に戻ってきた。申し訳なさそうな顔で。

 「・・大変な事に気が付いてしまった・・」
 「どうしたの?」
 「ヘリから投下されたのだが、帰り道が分からない・・」

 英雄は、あずみのケアで忙しそうにしていたので、大和が彼女に対応した。
 如何やら意地を張っての迷子の様だ。

 そこで、対応していた大和に聞けばいいにも拘らず、何故か義経と名乗った少女は、隅に居た黒騎士に道を尋ねた。そうしたら―――――。

 『――――ここを、まっすぐ行ったら、ここを曲りこうだ』

 鎧の中からペンとメモを取り出した黒騎士は、素早くこのあたりの分かりやすい簡易地図を瞬時に書き込み、丁寧に説明した。実に親切ではあるが、異様な光景である。

 「おー!判りやすい、ありがとう!!ではこれにて、御免」

 その言葉と共に、義経と名乗る少女が今度こそいなくなった。
 そして、大和は・・。

 「いちゃもん付ける訳じゃ無いが、ずいぶんと詳しいな」

 思い切って黒騎士に聞く大和。

 『地元ではないが、ここにはたまに来るのでな』

 その言葉に、ジャンヌ以外の皆が「は?」と、聞き返すような顔をする。

 『私の在住宅は、冬木市にあるのでな』

 「「「「「な、なんだって~~~~!?」」」」」

 『随分と大げさな反応だな・・。それと、明日から私も君たちの川神学園に編入する事に成っている。以後よろしく頼む』

 そんなあっさりとした爆弾発言が、黒騎士から発せららた。
 そして・・。

 『『『『な、な、なな、なんだとぉおお~~~~~~~~~!?!?!?』』』』
  
 

 
後書き
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