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IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》

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【第454話】

 
前書き
また遅れた(・ω<)テヘペロッ

 

 
 まだ唇に残る余韻を噛み締めつつ、俺は再度正門前へと足を運ぶ。

 ついさっきまで聞こえていた不毛な言い争いは聞こえず、正門前周辺は静かでカモメの鳴き声が聞こえるのみだった。


「……親父、さっきの金持ち坊っちゃんに無茶してないだろうな……」


 堂々巡りで繰り返されていたさっきの会話が脳裏を過る。

 ……多分大丈夫だろう、もしかすると親父は何とか諦めさせたのかもしれないし。

 そう結論付けると、俺は正門前を後にして一旦寮方面へと戻ることにした。

 その道中――。


「あれ? ヒルトじゃん。 ぐ、偶然ね」

「ん?」


 声が聞こえたので周囲を見渡すが誰も居ず、首を傾げていると――。


「バカ、上よ上!」

「ん? ――そんな所で何してるんだよ、鈴音」


 上を見るとそこには猫を抱えた鈴音が木の枝に座っていた、制服のスカートから覗き見えるカモシカの様な足――残念ながら下にISスーツを着てる為、いつものピンクのISスーツが覗き見えていた。


「ふふん、この子と遊んでたのよ」


 言ってから抱えた猫の両前足を万歳させる鈴音、猫は疑問符を浮かべたような表情を見せていた。


「猫と? ――てか、迷い猫が学園に入るって珍しいな」

「うん。 多分港に船が来てるみたいだからそれに乗り合わせて来たのかも。 昔の時代じゃ、ネズミ取りに船に猫を乗せてたって聞くしね」


 ニャーニャーと鳴く猫、鈴音はそれに合わせるように楽しそうに左右に身体を揺らした。

 ツインテールもそれに合わせてゆらゆらと揺らぐ――と、枝が微妙な太さなのか、ミシミシっと嫌な音がし始める。


「鈴音、降りた方がいいかも。 ――何かその枝、嫌な音が鳴ってるんだが……」

「む。 そ、そんなにアタシは太ってないわよ! 簡単に枝が折れる訳――」


 そう言葉を口にしてる途中、バキッと折れる枝。


「へ――キャアァァッ!?」

「……ッ!!」


 猫を抱えたまま落ちる鈴音、高さは高くないのだがバランスを取れず、背中から落ちていく鈴音。

 気付くと俺は直ぐに鈴音の落下する地点へと駆ける、両腕に強い衝撃が走り、筋肉や腕の骨に鈴音の落下の衝撃が諸に伝わった。

 ――だが、何とか堪えて鈴音を抱き抱えると俺の腕の中で目をぱちくりさせた鈴音は――。


「あ、あれ……痛く、なぃ……」


 そう呟く鈴音、鈴音の腕から解放された猫はニャーニャーと鳴きつつ、枝の折れた木をかけ登り、木の葉の合間へと消えていった。


「……てか大丈夫か、鈴音?」

「へ……? ……!?!?!?」


 今自分が置かれてる状況を把握してか、急に顔が真っ赤に染まり、目をぐるぐる回しつつ――。


「ば、バカっ! は、早く降ろしなさいよっ!! だ、誰かに見られたら……っ」


 腕の中で手足をじたばたさせる鈴音、その度に体力が消耗されていく俺は――。


「わ、わかったから暴れるなよ! ……ほら」

「……ぁ」


 降ろすと同時に小さく声を漏らした鈴音、何だか名残惜しそうな声に聞こえた。

 俯き、恥ずかしそうに人差し指同士を突つきつつ――。


「……ぁ、りが……とぅ」

「……ん? 何だ?」


 聞こえていたが、敢えてもう一度聞いてみると目尻を吊り上げ、さっきよりも真っ赤な表情のままハッキリと俺に言った。


「あ、ありがとうって言ってんのよッ! み、耳が良い癖に、何でこんな時に難聴煩わせるのよ! バカッ!」

「わははははっ、ちゃんと鈴音の素直なお礼の言葉を聞きたくてな。 ……何にしても、怪我がなくて良かったさ、これがな」


 言いつつ、軽く頭を撫でる俺、鈴音は軽く伏し目がちになりながらも何処と無くその表情に喜色が満ちている気がした。

 にゃーっていう鳴き声が頭上から聞こえてくる――それ以外では特に誰かが居るような様子は無く、何となくムードがよく感じたのだが鈴音はそれに堪えきれなかったのか――。


「そ、そう言えばさ! す、少し前に、あんたのお父さん、金髪のお坊っちゃん風の男を何か無理矢理正門の方に追い出してたんだけど――」

「え?」


 ……追い出し、親父は強制的に排除したのか。

 ……とはいえ、堂々巡りを延々と続けられても親父的には堪ったものでは無いのだろう。


「……俺もちょっと前に正門前を通ったが、やり取りがずっと進展してなかったからな。 何か金で入ろうとしてたっぽいし」

「ふぅん。 ……今まであんな変な奴来なかったのに。 ――まあいいわ。 それよりもさヒルト、明日の放課後、予定を空けときなさいよ」


 唐突な話題変え、急に明日の放課後予定を空けておけとは何事だろうか?


「どうしてだ、鈴音?」

「そんなの決まってんじゃん。 アタシの模擬戦の相手よ」


 腕組みし、仁王立ちする鈴音は無い胸を張った――言えば殴られるので決して口にはしないが。


「模擬戦の相手か? 別に構わないが……今日じゃなくて明日か?」

「うん。 今日は甲龍の微調整だけのつもりだし。 ――っても、自分の部屋でステータス開いてやるんだけどね?」


 小さく左目でウインクすると、八重歯を光らせて笑みを溢す鈴音。


「成る程。 なら明日の放課後模擬戦で」

「うん。 場所は第二アリーナを抑えてあるから、ちゃんと来なさいよ?」

「了解――」


 そう返事を返す最中に鳴り響く着信音、慣れた手つきで鈴音はスカートのポケットから携帯を取り出すとその場で電話に出た。


「ティナ、どうしたの? ――ぅん、ぅん。 ――え? あ~、楊候補生管理官が……。 ぅん。 ――今? ヒルトと一緒――へ? ぅん、分かった。 ……ってかあんた達、二人で【日米同盟】の話なんかして楽しいの? ――まぁ良いわ、ヒルトにそう伝えておくから、それと直ぐに戻るからって伝えて」


 一通り通話を終えると、鈴音は携帯をポケットに仕舞う。


「ヒルト、悪いけどアタシそろそろ戻るね? ――後、ティナから伝言なんだけど――『また日米同盟について熱く語りましょ?』――って。 ……あんた達二人で日米同盟語ったからって、何か変わる訳じゃ無いのに、変な事で盛り上がってるのね?」

「あ、ま、まあな」


 日米同盟――多分だが『アレ』の事だろう。

 脳裏に過るその時の行為に、下半身に血液が集中するのを感じた俺はそれを払拭するように頭を軽く振った。

 鈴音はそれを見て疑問符を浮かべるが、早く戻らないといけないのか慌てた表情を浮かべると――。


「じゃ、じゃあまた明日ね!」

「あぁ、また明日な」


 駆け足で寮の方へと戻っていく鈴音を手を振って見送る、それと同時に木に登っていた猫が鳴き声を鳴らしながら降りてきた。

 一頻りにゃーにゃーと鳴くと、船が入港している港方面へと駆けていった。


「……そういや、鈴音があんな風に猫と戯れる姿、初めて見たかもな」


 そんな独り言が風に乗って空へと消えていく――秋風に小さく身震いした俺は、鈴音と同じく寮へと戻ることに決めた。 
 

 
後書き
若干陳腐な短編化してきてる気がするが、多分気のせいじゃないかも(・ω<)テヘペロッ

とりあえず書いたが……鈴音の話に期待してた人には物足りない内容かも(ぇ 
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