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IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》

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【第220話】

 
前書き
米を炊く話が、後半は…… 

 
――調理室――


 場所は変わり、現在調理室内。

 俺とセシリアはエプロンを身に付け、五キロの米袋を用意した。

 無駄に多種多様な調理器具があるものの、残念ながらお米を炊いておにぎりを作るので殆ど必要が無いだろう。

 ある程度の準備が出来、俺はセシリアに声をかけた。


「さて、米の炊き方はわかるかセシリア?」

「……残念ながらわかりませんわ」

「まあそうだな。 ……まずは米を炊く前に、洗うことから始めるんだよ。 ……ほら、やってみて?」


 とりあえず米を三合分用意し、水切りが出来る容器に米を入れてセシリアの前に出す。


「わ、わかりました。 ……では、いきます」


 そう言って頷くと、結ったポニーテールがゆらゆらと揺らぎ、流れる金髪が調理室の明かりに照らされて更に輝く。

 そして――セシリアは手を伸ばし、洗剤を手に――って、洗剤ッ!?


「す、ストップ! セシリア待てェェェッ!!」

「ひゃっ!? な、何ですかヒルトさん!?」


 突然の制止する声に、驚きの表情と共に声をあげるセシリア。

 本当にびっくりしたのか少し跳び跳ねたその姿が可愛かったのは内緒。


「いや、セシリア? 米を何で洗おうとしてるんだ?」

「え? ……勿論、洗剤ですわよ?」


 そう言って手に持った食器洗い用の洗剤を見せるセシリアの表情は――『何かおかしいかしら?』――という表情だった。

 よく漫画やアニメ等で洗剤で米を洗うのを見たことはあるものの、まさかリアルにそれを見せてくるとは――。


「セシリア、残念だが米を洗うのに洗剤は使わないんだよ。 だから没収」


 そう言ってセシリアの手に持った洗剤を取ると、手の届かない場所に置く。


「……ではヒルトさん、米はどう洗うのでしょうか……?」

「OK、俺の言う通りにやるんだぞ? まずは米の入った容器に水を入れてくれ。 三合入れたからそれが沈むぐらいに」

「わ、わかりましたわ」


 頷き、蛇口を捻ると水道から水が流れ出て、容器に水を張っていく。
 そして、一定量に達すると俺が蛇口を閉め――。


「……次はどうすればよろしいのかしら? このままお米を炊けばよろしくて?」

「……まだ炊くのには早いよ。 次は入れた水を切ってくれるか?」

「……? わ、わかりました。 ……いざ」


 目付き鋭く、何処からともなく包丁を取り出すセシリア。


「……ちょっと待ってくれ、セシリア」

「はい? ……ま、また何かおかしいことをしたのかしら……?」


 手には包丁を持ったまま此方に向けるので、正直刃物を向けてくるヤンデレ彼女と誤認しそうになった。


「あ、まず包丁向けるのは勘弁してくれ」

「あ……。 す、すみませんヒルトさんっ!!」


 慌てて向けていた包丁をまな板に置くセシリア。


「んと……とりあえず何で包丁を持ったんだ?」

「はい? ……ヒルトさんが水を切ってと言いましたから……。 モーゼの様に切れるかわかりませんが、何とか実践してみようと……」


 ……多分悪気は無いんだ、ただ俺の言葉が悪いだけで。


「……んと、水を切るってのはさ。 容器の中にある水を抜いて、容器を空にする事だよ。 勿論、米は溢さないようにな?」

「……成る程、そういう訳でしたのね。 ……ISの専門用語より難しいですわ」


 むぅっと眉を下げるセシリアは、言われた通り容器の中の水を抜いていく――と。


「……せっかく入れたのに抜くなんて……勿体無くありませんか?」

「……こうしないと、米の汚れはとれないんだよ。 抜いたら米を手で暫く磨ぐんだよ」

「……わかりましたわ。 ん……しょ……」


 納得したのかしてないのか、表情が読み取りにくいセシリアだが言われた通りに米を研ぎ始める。

 リズムよく、しゃりしゃりと米と米がぶつかる音が調理室に響き渡る。

 ……今日は珍しく、俺とセシリアの二人っきりだから贅沢な気がしなくもないが。

 ある程度研ぐと、セシリアが口を開く。


「……ヒルトさん、そろそろ良いのでは……?」

「……そうだな。 じゃあまた水を入れてみて」

「はい、わかりましたわ……」


 言われた通り、再度蛇口を捻り、容器に水を張ると――。


「……白く濁ってますわね」

「あぁ、本来ならこれが透明な水になるまで研がないといけないんだがそこまでやると次の日になるからな。 ……この工程を何度かやってから米を炊くんだよ」

「な、成る程。 ……調理する方も大変ですわね。 わたくしはいつもメイドが用意してくれてたので……」

「……その分、セシリアはオルコット家当主としてやるべき事してただろ? 身の回りの世話はメイドさんが、そのメイドさん達の給料等はセシリアが……ってね」

「うふふ、ヒルトさん。 見てもいないのによくわかりますわね?」


 そう言って笑顔で此方に振り向くセシリア。


「ま、まあ何となくだよ。 ……ほら、また水を切って? ……包丁で切るのはダメだが」

「わ、わかってますわよ! ……もぅっ! ヒルトさん意地悪ですわ……」


 軽く頬を膨らませるセシリアは、ちゃんと言われた通りに水を切って容器を空にし、再度研ぎ始める。


「ははっ、セシリアは何だかんだで意地悪しやすいんだよ」

「むぅ……。 もぅっ! ヒルトさん何か知りませんわ……」


 言って、プイッとそっぽを向くセシリア。

 表情が窺えないが、怒ってるのだろうか……?


「……セシリア? 怒ったのか?」

「……知りません」


 あくまでも表情を悟られないようにそっぽを向いたままのセシリア。


「……悪かったよ、だから怒るなって……な?」

「…………」


 むすっとした表情のまま、睨んでくるセシリアなのだが俺には上目遣いで見てる様に見えて、内心ドキッと胸が高鳴る。


「……もぅ。 次意地悪したら口を聞きませんわよ……?」

「ぅぉっ……それは地味にキツいかも……」

「……うふふ、冗談ですわよ♪」


 そう言って笑顔のまま舌をぺろっと出すと、また米を研ぎ始めた。

 ……セシリアもこんな表情するんだな……。

 四月のセシリアが今のセシリアを見たら……多分倒れそうな気がする。

 そうこうして何度か同じことを繰り返すと――。


「ヒルトさん、そろそろよろしいのでは……?」

「ん? ……そうだな、じゃあ炊飯釜に研いだ米を移して?」

「えぇ、了解ですわ」


 俺に言われた通り、炊飯釜に米を移す。


「……このあとはどうするのかしら?」

「米は三合入れたから、目盛りが三の所まで炊飯釜に水を入れてくれるか?」
「うふふ。 了解ですわ、ヒルト先生♪」


 ……いつの間にか先生になってしまった。

 炊飯釜に水を入れ、目盛りが三を少し越えた辺りで蛇口を閉めるセシリア。


「入れたらこの炊飯器に炊飯釜をセットして、その後炊飯のボタンを押せばOKだよ」

「成る程、ここまでやれば後は炊飯器で勝手に炊き上がるのですわね」


 炊飯釜を持ち、炊飯器にセットして蓋を閉めると、言われた通りにスイッチを押すセシリア。


「……一応早炊きもあったが、待つのも醍醐味だしな。 後は炊き上がるのを待つだけさ、これがな」

「うふふ、因みにどれぐらいで炊けますの?」

「……三十分ぐらいかな。 まあ別に俺はゆっくり待つからな」


 そう言って用意した椅子に腰掛けると、セシリアも隣に椅子を移動させて座った。


「……待つ間は暇ですわね。 ……どうしますか、ヒルトさん?」

「ん? ん~……話するか、寝るか、それかセシリア、何かしたいことあるか?」

「わ、わたくしのしたいことですかっ!? ……あ、あるにはあるのですが……その……ゴニョゴニョ」


 何故か指を弄び、俯くセシリアを俺は不思議そうに眺めていると、意を決したかの様に顔を上げて口を開く。


「き、き……キスがしたいですわ!!」

「……はい?」


 顔を真っ赤にし、胸の前で手を組むセシリアに、気の抜けた返事しか出来ない俺……。


「……ちょ、ちょっと待てセシリア。 確かにしたい事を聞いたけどさ、何でキスを迫るんだよ……」

「う……ひ、ヒルトさんが聞くからですわよ……。 ……あの六月以来、ヒルトさんと重ねた唇……毎夜夢に出てくる程ですもの……」


 言って恥ずかしいのか、両頬に手を添えてセシリアは明後日の方向へと向く。

 ……まあ俺も、何度か夢に見てるんだが……。


「……だ、だからって……そう簡単にキス出来ないだろ。 ……したくないわけじゃないぞ? すればセシリア自身、傷付く結果にならないのか……?」

「……確かに、ヒルトさんにフラれたらと思うと胸が張り裂けそうな気持ちになります。 ……ですが――」


 一瞬沈んだ表情を浮かべるセシリアだが、直ぐに真っ直ぐな瞳で俺を見つめ直すと――。


「あの時、こうすれば良かった……と、後悔したくありませんもの。 ……それに、少しでもヒルトさんがわたくしを意識してくださるのであれば……」


 言ってから顔を赤く染めるセシリア。

 その瞳から一滴の涙がこぼれ落ちる。


「あ、あら……。 うふふ、ごめんなさい。 ……少し、お見苦しい所を御見せしましたわね」


 制服のポケットからハンカチを取り出し、流れ出た涙を拭うと精一杯の笑顔を見せるセシリア。

 四月以来、二度目の涙を見せたセシリア。

 正直……女の子の涙には弱い、特にセシリアみたいな子は滅多に涙を流すことなんて無いのだから。


「……今なら、誰もいないよな?」

「え? ……えぇ、いませんわよ……?」

「……でも、念のためこっち来て」

「あっ……。 は、はぃ……」


 椅子から立ち上がり、セシリアの手を引くとその白い肌を真っ赤に染め上げ、奥の材料室へと入っていく。

 中は狭く、ムードも何も無いのだが俺は――。


「……セシリア、言いふらしたりしないか……?」


 肩に手を起くと、一瞬ピクッと身震いするセシリアは――。


「……えぇ、今回もわたくしの我が儘ですから……。 それに――もし、言いそうになったら貴方のその唇でソッと塞いでくださいまし……」

「……は、恥ずかしい事言うなよな? ……正直、ドキドキし過ぎて死にそうなんだが……」

「……うふふ、わたくしも……。 この胸の高まりが抑えられませんもの……。 触って確認……します?」

「……さ、流石に触るのは――」

「うふふ、冗談……ですわよ? ん……」


 悪戯っぽく微笑むと、首筋に腕を絡ませ、身を預けるセシリアはいつかの様にキスを受け入れる体勢に――。

 ……何か、こうやって女の子とキスをするのに慣れていくのかな、男って。

 セシリアの背中に腕を回すと、そのままゆっくりと互いの唇を重ねていく。

 唇が触れ合うと、小さく身震いしたセシリアをそのまま抱き締めると、彼女も首に回した腕に力を込め、より深く口付けを交わす。

 何度も重ねる様な口付けを交わしていくと、不意にセシリアが唇を離し、真っ赤な表情のまま――。


「……ひると、さん。 もっと……深くお願いしますわ……。 ……ん……むっ……」


 言ってから再度唇を押し付けるセシリア。

 軽く口内が開き、そこに舌を入れるとびっくりしたのか一瞬目が開く。

 そこで俺と目が合うと、トロンとした目のまま拙い舌の動きで必死に絡ませてくる。

 ぴちゃぴちゃと、淫靡な音が材料室内に響き渡るとお互いの思考が完全に麻痺したのか俺もセシリアも、夢中になるぐらい何度も何度も舌を絡ませ、キスを続けた――と。

 調理室からピピピッという音が耳に届く。

 その音に反応し、俺は舌を絡ませたまま、調理室を見ると炊飯器が鳴っていた音だと気付き、そのまま唇を離す。

 互いに呼吸を忘れるぐらい、キスを続けていたためか唇を離すと同時に呼吸を整え始める。


「ふぅ……ふぅ……。 わ、悪いセシリア……夢中になって……」


 呼吸を整え、セシリアを見ながら言うと真っ赤な表情のまま――。


「ぃ、ぃぃぇ……。 ――わ、わたくしも夢中でしたので……。 うふふ、このまま……貴方に抱かれるのかしらって思うぐらいでした……」


 胸に手を置き、柔らかな微笑みで返すセシリア。


「……俺も、夢中だったな。 ……てか、流石にえっちまでするのは……学園の特記事項に違反するから」

「……うふふ、わかってますわ。 ……ヒルトさん、ドキドキ……しましたか?」

「……当たり前だろ」


 セシリアのその言葉に、また一気に胸が高鳴る。

 ……キスしたからドキドキしてるのか、それとも……。

 ――考えても答えは出ず、ふるふると頭を横に振ると俺は……。


「た、炊き上がった事だし、次はおにぎり作りだ。 いいな?」

「うふふ、わかりましたわ。 ……ヒルトさん、大好きですわよ♪」

「……~~~~っっ」


 不意討ちにも似た告白に、俺も顔が真っ赤になり炊飯器の元へと向かう。

 後ろからはクスクスと微笑するセシリアの笑い声が聞こえてきた……。 
 

 
後書き
ギャアアァァアアアッ

書いてて俺の脳味噌が異常事態な気がしてならない

キャラ崩壊してない?

ラウラのもそうだが何だか書いてるとキャラ崩壊してる気が

批判などは感想にて

何もなければスルーで(b^ー゜) 
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