IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》
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【第435話】
第三アリーナへ向かう途中、突然のゲリラ豪雨に襲われ慌てて近くの屋根のあるベンチに避難する。
ここ暫く雨が降らなかったのだが――そして現在、激しい土砂降りの雨が地面や屋根を叩き、辺りを濡らしていく。
傘も無いため途方にくれるのだが、其処へ傘を差した女子生徒が現れた。
高級感溢れる傘を畳む彼女――俺のクラスメイトであるセシリア・オルコットだった。
「ヒルトさん、突然の雨ですわね。 念のため傘を持ってきていてわたくしは濡れませんでしたが……ヒルトさんは濡れてますわね。 寒くは無いですか?」
用意が良いのか、セシリアは傘を持ってきていた様だ、そして制服が濡れた俺を心配してる様に見える。
「めちゃくちゃ濡れた訳じゃないからな、だがアリーナに行くのは止めにするよ」
「うふふ、その方がよろしいですわよ。 雨でも訓練は出来ますが、気持ちは憂鬱にさせますもの……」
言いながら隣へと腰掛け、制服のスカートからハンカチを取り出し、俺の濡れていた顔を拭き始めた。
「わ、だ、大丈夫だから気にするなよ、セシリア」
「いいえ、濡れたままですと風邪を引きますわよ? これからタッグマッチ大会もあるのですから、体調管理は確りとしないといけません」
ピシャリとそう告げるセシリア、俺も確かにそうだと思うと黙ってセシリアになすがままにされる。
一通り拭い終わるとセシリアは口を開いた、まだ一帯に雨が降り注ぎ、雨粒の音が激しく地面を叩いてリズムの無い音色を奏でている。
「……ヒルトさん、今回のタッグマッチ大会。 わたくしと組みませんか?」
「ぁ……悪いセシリア。 今回は四組の更識簪って子と組もうと思ってるんだ」
「え……? …………」
ショックだったのか、言葉が出ないセシリア――流石に俺も罪悪感に苛まれ、セシリアに謝る。
「ごめん、セシリア。 ……セシリア以外からも誘われたが、全部断って今回は更識さんと組もうって決めてたんだ。 彼女、これまで大会なり何なりって出場も出席もしなかっただろ? そんな中で顔見知りっていえば俺か美冬しか居ないが、ある程度話をして知ってるのは俺だけだし、これからもし何かの事態がある時は俺を介して更識さんが皆と仲良くなればって思ったりもするんだ。 ……怒ってる……か?」
説明――否、人が訊いたら言い訳にしか聞こえない言い分を言う俺に、セシリアが怒ってると感じたのだが当の本人は。
「……怒ってませんわよ? ですが、やっぱりその……ヒルトさんとタッグを組めないのかと思うと、残念に思いますわね……」
「ご、ごめん……」
表情は確かに怒ってはいないのだが、逆に寂しそうな表情を見せたのが胸を締め付けられる。
謝る事しか出来ない自分に歯痒い思いを抱く――と。
「……ヒルトさん、その……良いですか?」
「え? ど、どうした?」
「……タッグマッチのパートナーの件の代わり……一つお願いしても良い……かしら?」
言いにくそうに言葉を選びつつ、セシリアはそう言った。
いつもの様に白い肌に赤みが差し始める――お願いとは何だろうか?
「ん、パートナーになれないんだ。 俺に出来る事なら言って良いぞ?」
「あ、ありがとうございます。 ……その、ですわね……。 い、言うのが恥ずかしい……ですわ」
本当に恥ずかしいのか、両手で顔を隠すセシリア、耳まで真っ赤に染まっていた。
土砂降りの雨で気温が下がるのを肌身で感じる中、セシリアの周囲だけは何だか気温が高い気がした。
そして、意を決したのか顔が真っ赤なまま俺を真っ直ぐと見つめると口を開く。
「こ、この間の……ま、マッサージの続き……ぉ、ぉ願いしてもよろしく、て……?」
「へ?」
我ながら間抜けな声が出たものだと思う、この間のマッサージというとほぼエロい事しかしなかったあのマッサージの事だろう。
正直、あの時のセシリアのおっぱいの感触は今でも手のひらいっぱいに思い出せる――まあ理央のもだが。
俺自身断る理由はない――というか、正直いえばもう理性の歯止めが利かない状態だ。
誰か一人をと心で思っても、一度経験した快楽やその行為から逃れられる人はいないはず……とはいえ、やってる事は最低なのだが、それでも……欲には勝てない。
「……か、構わないが……。 き、今日はちょっと無理だから明日はどうだ?」
「わ、わたくしもその方がよろしいですわね。 その、気持ちの整理という意味もありますし……」
言ってから恥ずかしそうに顔を背けるセシリア、だが手は俺の手の甲に重ねられ、優しく包むように握った。
「……じゃあ、明日は確か男子の風呂の日だから八時――」
「あ、そういえばそうですわね。 ……せ、せっかくですから、大浴場の広々とした空間でマッサージ受けるのも良いかもしれませんわね」
名案とばかりに手を合わせるセシリア、だが大浴場は俺が最初の三十分しか使えないことをセシリアに告げると、何故か自信満々な表情で――。
「お任せくださいな。 織斑さんにはわたくしから説明して今回は大浴場のお風呂を諦めさせますから」
何処にそんな根拠があるのか、自信満々なセシリア――一夏が簡単に折れるとは思わないが……と、おもむろに携帯を取り出すとメールを打ち始めた。
その間に雨は小降りになり、うっすらと夕日が姿を現す。
「……これでよしっと。 チェルシーに明日の夕方までに必要な物を送ってもらう手筈は済みましたわ」
「は?」
必要な物とは何だろうか……考えても答えは出ないのだが、何故か自信満々なままの表情のセシリア。
一夏の部屋に備え付けの風呂でも用意するのか――いや、これはまず無理だろうし、一夏が今さら備え付けの風呂に満足するはずはない。
ならば別のものだろうが、全くわからない……こればかりは明日にならないと――というか、明日セシリアと大浴場って……翌々考えるとほぼ二時間貸し切り状態だ。
そんな事を考えてると、セシリアはベンチから立ち上がる。
もう雨は降っておらず、さっきまでの土砂降りの雨がまるで嘘の様に晴れた――雲は出てるが。
「うふふ、ではヒルトさん。 今日は明日に備えてわたくしと夕食を共にしましょう」
「え? あ、あぁ……雨が上がったとはいえ、もうアリーナに行く気分でもないからな、俺は」
「わたくしもですわ。 ……まあ、あまり根を詰めすぎてもよくありませんもの、休める時に休むのが代表候補生として、ひいては後々の国家代表になる為にも必要な事ですもの」
そう言って微笑みセシリア、夕日を受けてる為か柔らかく、優しい微笑みにドキッと胸が高鳴る。
「ではヒルトさん、寮に戻りましょう。 エスコート、よろしくお願いしますわね?」
スルッと腕をとるセシリア、相変わらず慣れた手つきで見事としか言いようがないが、それと同時に貴族故にこういう事には慣れてるのかと思うと複雑な思いにかられる。
だが、そんな思いもセシリアが押し付けてくる乳房の柔らかさに比べたら些末なものだと思い、俺とセシリアは寮へと戻る道の帰路を歩いて帰っていった――。
後書き
セシリアも遂に……( ´艸`)
あ、もしかすると更新遅れるかもですのでその時は御待ちくださいませ
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