メスデカ
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警視庁捜査0課
未解決のまま放置されている事件、それらをあらためて調査し解決する為に警視庁捜査0(ゼロ)課が新設された。
新設と言っても6人だけである、室長と係長、主任しゅにんとその部下が3人、係長と主任は女性である。
「主任、やはりその男が引っかかりますか?」
「証拠がないから踏み込む訳には行かないわね」
聞かれた主任が曲げた指をアゴにくっつけて考える。
引っかかるかと尋ねた部下は西島、無精ひげを生やしている渋い男前だ。
主任の姫川結子(ひめかわ ゆうこ)、ロングヘアの美人だ。
捜査0課が現在捜査しているのは7年前に東京で立て続けに3人の女子小学生が誘拐された事件だ、犯人からの電話や手紙など有力な手がかりがあったにもかかわらず解決にはいたっていない。
結子が聞き込みをした中に怪しい人物がいた、水田と言う1人暮らしの高齢の男だ、玄関から見えるテーブルの上に大量のお弁当が置かれていたのだが、弁当の事には触れずに誰か来客があるのかと尋ねたのだが誰も来ないと言うのだ。
「怪しい事は怪しいわね」
係長の木村だ、目が細めで知的溢れるしっとりとした美人。
「係長 来客もないのに大量のお弁当が置いてある やっぱりおかしいですよ」
姫川だ。
「弁当の種類は何だったんですか?」
部下の宮迫、この課のムードメーカーだ。
「そんなの関係ないですやん」
同じく部下の丸山、さわやかな男前だ、この男だけ結子に下の名前で“テッペイ“と呼ばれている、名前が“丸山てっぺい“だからだろう、関西弁だ。
「あの家に3人が……」
結子が頭を掻かきむしる。
「生きていれば高校生くらいですね」
西島が呟つぶやく
「宮迫とテッペイは水田の交友関係を調べて 西島は私と」
____
水田の家に近い住宅街にスーツ姿の結子と西島がいた。
「あそこ」
結子がスーパーから出てきた水田をアゴで指す。
「また沢山お弁当を買ってますね」
「これで来客がなければ……」
指を軽く曲げて鼻に近づけながら話す。
「すみません」
水田が家に入ろうとした時、結子が声をかける。
「またあんたか……なんだね」
水田は60前後と思われた、頭はおおかた禿げていて両端だけ髪の毛がある。
「何度もすみません もう一度7年前の事件についてお聞かせ願えないでしょうか」
「だから俺はなんにも知らないよ 可哀想だと思うけどね」
結子はこの前は聞かなかった誘拐された時の水田のアリバイを聞く。
「平日だね? なら大学に行ってたよ仕事でね」
「教授か何か?」
西島がたずねる。
「はは いやいやそんなたいしたもんじゃ 雑用の仕事ですよ」
「今からお昼ごはんですか」
水田が持っているレジ袋をわざと見ながら結子が尋ねる。
「ああ あのスーパーのお弁当は美味しいんだよ」
「1人でこんなに?」
「……昼と夜と……明日の分だ」
____
水田がお弁当を買ったスーパーへと向かう、店員に向かって警察手帳を見せる。
「警視庁捜査0課の姫川です」
何人かに話しを聞いて分かったのは水田はかなりの頻度で大量のお弁当を買っていると言うのだ。
__本署__
「ほぼ毎日?」
木村が尋ねる。
「はい しかも大量に」
結子が答える。
「かなりの食費になりますよね 大学の雑用の給料では厳しいと思います」
西島が疑問を呈する
宮迫と丸山が戻ってくる。
「水田の知り合いの話しなんですが1度アダルトビデオを買わないかと持ちかけられたようです」
宮迫が興奮気味に話す。
結子が首をかしげながら
「それがどうかしたの?」
「ロリコンのどぎつい奴って言われたそうです」
「……可能性はあるわね ふたりともご苦労さん」
____
その後の捜査で裏社会で高額で売買されていた水田のビデオが見つかる、そのビデオには誘拐されていた少女たちが出演していた。
すぐに強制捜査が行われ水田の自宅の地下室からは誘拐された少女3人が助け出された、室長と係長が記者会見を行う、マスコミが大騒ぎだ。
____
「かんぱーい」
カチャカチャ__
生ビールで打ち上げだ、みな満面の笑みだ。
「ぷはぁっ いや 主任の洞察力に完敗です」
宮迫がおちゃらける。
「あぁ上手い みんなありがとう 私も鼻が高い この0課は立ち上がったばかりだ 実績をあげなきゃ先がないのでね」
室長の片岡だ、顔はエラが張っていて小柄で痩せている、目がギョロッとしていた。
「これからもどしどし星をあげるわよ」
木村がみんなを見回しながら語る。
居酒屋の個室、事件の話題も遠慮なく語れる、この日はみな遅くまで楽しんだ。
____
2人とも酔っていた、結子と西島だ、打ち上げの後結子の自宅に向かっている。
「主任は結婚はしないんですか?」
普段は絶対に聞けない、酔った勢いだ。
「西島 レディーに失礼だぞ」
結子はマンション住まいで1人暮らしだ、仕事一筋で結婚などは考えなかった、今は警部補だ。
「ありがとう じゃ また明日ね」
「失礼します」
マンションの前で別れる、暗証番号を入力して自動ドアが開く。
その時男が1人一緒にマンションフロアに入ってきた。
「あの すみません ご自宅拝見とかできますか?」
「はぁ?……あなたは?」
「ご自宅拝見っていうバラエティ番組のようなものです」
若い茶髪の男でビデオカメラを構えている。
結子はカメラレンズを手で遮さえぎる。
「ごめんなさい結構よ」
こういう事がないように西島に送ってもらったのにと思う。
「ほんの少しだけでいいんです お礼もしますので」
カメラをさえぎられてカメラを降ろしていたのだが結子が手を退けた途端にまたカメラで撮り始める。
「ちょっと カ・メ・ラ! やめてもらえる?」
睨みながら告げる。
「お願いしますよ」
「しつこいと逮捕するわよ!」
警察手帳をチラリと見せる。
「あっ!……い、いやぁ ごめんなさい帰りますんで」
ようやく男が出て行った。
「まったく……」
エレベーターが1階に降りてきた。
「遅いのよ」
やや苛立ち気味に言って乗り込む。
「なんにせよ良かったわ」
男の事ではない、少女たちの事だ。
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