メスデカ
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AVデビュー
「もう少しだけ待ってもらえないでしょうか……」
「待てない、さっさと払えよ」
雑居ビルの一室、艶っぽい美人が苦悶の表情を浮かべ顔中から汗が吹き出ている。
「バーン」と机を叩きつけ男が立ち上がる。
再び叩く
「バンバンバン」
「あきー、早く払え!早く払え!」
女の下の名前を叫び呼ぶ。
木村秋(きむら あき)は下を向き目をつぶっている。
「警視庁捜査0課の係長ともあろう者が借金まみれでにっちもさっちも行かない、どうすんの?1000万だ、まだまだ利子が膨らむんだ」
目をつむる木村の目の前に自分の顔を持っていき怒鳴りつける。
「ええ、ええ、分かってるの、分かってるから、もう少しだけ待って……」
頭を下げる
「1つだけ借金を返す方法がある」
鼻くそをほじりながら男が告げる。
「方法……?」
「体を売れとは言わん、お前も刑事の端くれだからな、AVデビューしろ、短期間で金が作れるだろ」
「画像では見ていたがあそこまでの美女とはな」
結子は帰って行った、誠が嫁の陽子に話しかける。
「刑事だから簡単には行かないわね」
「ふふ、現役刑事のAVデビューか、こりゃ売れるぞ」
「刑事よ?上手く行くの?」
「心配するな、さっきの姫川より先に現役女刑事がデビューしそうなんだ」
ホワイトボードに写真を貼っていく。
「みんな、次の調査は10年前の連続殺人よ、都内で3人の若い女性が殺された事件、3人の被害者はすべて裸で左の臀部に“侍“の文字が黒マジックで書かれていた」
木村だ、やや疲れた表情で説明している。
1人目の被害者は自宅で絞殺された後に屍姦されていた、2人目は自宅で強姦された後に絞殺、3人目の前田弘美(まえだ ひろみ)は自宅で強姦された後に服を着せられて河川敷まで行き、そこで裸にされて絞殺された、いずれも同一犯だと思われる。
「この事件の捜査は私も加わるわ、捜査0課は実績を上げないといけないのよ」
木村が知的な眼差しで語る。
「係長?」
結子だ。
「貴女はいつも通りで、私は単独で調べるから」
「分かりました」
「今日は10年前の資料のチェック、明日から宮迫は被害者の親族を当たって、テッペイは被害者の交友関係を、西島は私と」
結子がテキパキと指示を出す。
「いーい?この未解決事件を必ず解決するわよ!」
「はい!」
一同が元気よく返事をする。
「被害者の左臀部に侍の文字、性癖よね」
結子が西島を見る。
「性癖……なんでしょうか?」
逆に聞く。
「何かのメッセージかしら?性癖ならそう簡単には変わらないわ」
街を歩きながらアゴに手をやり結子はしばらく考える。
「そういう性癖の人が行く店ってあるかしら?」
「あるには……あると思います」
「知ってるの?」
「……いえ」
「フーゾク店を片っ端から当たるわよ!」
「警視庁捜査0課の木村秋係長……ですか、凄い肩書きですね」
「……いえ……」
ここは鈴木宅だ、アダルトビデオの面接である、誠に面接されているのは警視庁捜査0課の“木村秋“係長だ。
「警視庁捜査0課、木村秋係長AVデビューですか、ヒット間違いなしですね」
「知られたらまずいんです」
「話は聞いてますよ、大丈夫、うちで撮ったビデオは私の店でしか販売しません、レンタルも無しですから身バレはしませんよ」
10年前の連続殺人を単独捜査すると偽って面接に来ているのだった。
「うちもボディペイント好きのお客さんが来ますが侍を書いたなんて聞いたことがありませんよ、ビデオなら知ってますけどね」
「ビデオ?」
風俗店での結子の聞き込みだ。
「ビデオ購入するわよ」
「えっ?買うんですか?」
西島がたずねる。
「もちろんよ、現在一番有力な手がかりだわ」
しかしどこのビデオ店に言っても売っていなかった。
「廃盤なんですかね?」
「どこで売ってるか聞けば良かったわ」
「相当マニアックかそもそも全然売れなかったのかも知れませんね」
本署に集まり情報交換をする。
「今日は進展なしね、また明日がんばりましょう」
木村が皆の労をねぎらう。
「お疲れ様でした」
一同が帰って行く、木村が携帯をかける。
「うん、今から帰るから、ご飯何がいい?」
木村には一人息子がいた、中学生だ、夫とは死に別れだ、刑事だったが殉職したのだ。
結子はその様子を羨ましく見ている、一度息子の写真を見せてもらった事があった、どう見ても美少女にしか見えなかった。
「明日もよろしくね」
木村が帰って行った。
「お疲れ様です」
結子が頭を下げる。
「ハンバーグがいいな、うん、待ってるからね」
警視庁捜査0課、木村秋の1人息子の木村凛(きむら りん)だ、美少年である、いや絶世の美少女と言った方が合っているだろう。
中学3年生で剣道全国大会で2連覇中だ、勉強も学内で1番である、背はこの年の少年にしては低い方だ、体格も剣道をやっているとは思えないほど“きゃしゃ“である、髪は肩まで伸ばしている。
秋の唯一の光、目の中に入れても痛くない大事な大事な宝である。
この完璧に思える美少年だが本人はコンプレックスを持っていた、父親がいないなどではない、容姿に関してである。
先ずは胸である、女性ホルモンが多いのか胸が出ているのだ、筋肉が盛り上がっているとかではなく女性のおっぱいのように出てしまっているのだった、腰回りも女性のような感じになっている。
そして鼻だ、鼻筋が通る高い鼻だがかなり上を向いていた、どの角度から見ても鼻の穴が見えてしまうのだ、もっとも本人はコンプレックスなのだが他人から見れば魅力的な鼻だった。
最後はお臍、凛のヘソはデベソなのだ、大人しく穴の中から除いているようなレベルではない、完全に表に出ていた、しかしデベソ周りの縁はあるしすき間もあった。
少年は刑事になると決めている、正義感に燃える少年の望みはかなうのだろうか?
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