魔王卑弥呼
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淫魔インキュバス
スラッとした長身の黒いスーツ姿のイケメンが受付に来た。
「アポを取っています」
そう言って名刺を渡す。
「はい、お聞きしております、エレベーターで7階へどうぞ」
エレベーターを出ると秘書と思わしき中年の落ち着いた雰囲気の男が出迎える。
「こちらへ山崎様」
「コンコン」
「どうぞ」
部屋の中から若い女の声がする。
「あなたは部屋で待っていなさい」
「かしこまりました」
女社長に言われ秘書が出て行く。
「お待ちしておりました山崎さん、今度のプロジェクトよろしくお願いします」
「それが頼む態度ですか?」
「これは失礼しました」
そう言って女が服を脱ぎ始める、男は女社長の席に座る。
女は社長席の前で体をくねらせながら服を脱いでいる。
「退屈だな、社歌を歌いながら脱いでもらおう」
女は言われたとおりに社歌を歌いながら腰をくねらせ黒いブラジャーとパンティだけになる。
山崎と言われている男は人間ではない、淫魔インキュバスだ。
社歌を歌いながら下着姿になった女はついこの前までは仕事一筋で男は数えるほどしか経験が無かった、IQが高く若くして社長に登り詰めた、インキュバスはそんなエリートを性奴隷にするのが好物なのだ。
女は素っ裸になる。
「では背筋を伸ばし胸を張ってガニ股になり、両手の指で鼻をほじってスクワットをしながら国歌詠唱をしなさい」
女は背筋をピンと伸ばして形の良い胸を張り長い足を外側へ向けガニ股になる、高く鼻筋の通った鼻の両穴を指でほじりながらスクワットをする、そして国歌を歌った。
ビブラートを聞かせてなかなかの美声だ。
私が魔物を殺している、奴らの頭を砕き股を裂く。
そしていつも最後は雪山で大きな大きな黒い男の背中を見て震えてしまう。
「ガバッ」とベッドから飛び起きる。
「まただ……」
またいつもの悪夢だ。
「怖い怖いよ……誰か助けて……」
美樹は全身に汗をかき震えていた。
「解散総選挙になりそうなのですがどう思われますか?」
「今回の解散は大義名分がありません、総理の賄賂疑惑隠し解散です」
女性キャスターの問いに民民党の女性党首が答えている。
テレビの収録が終わり黒のレクサスに乗る。
「帰るわよ」
選挙に備えてスケジュールがミッチリなのだ。
「うん?代わったの?」
いつもの運転手では無かった。
「聞いてるの?」
「聞いてますよ」
センターミラー越しにニッコリと笑う。
女はその笑顔が可愛いと思った。
「今からホテルへ行きませんか?」
「はぁ?何を馬鹿な事を言ってるの?事務所よ事務所!冗談言ってないでちゃんと運転しなさい」
「自分に正直になってください」
「いい加減にしなさい、首にするわよ!」
男は事務所に向かわずホテルへ向かう
「違う違う、そっちじゃないでしょ?」
男はまたセンターミラー越しにニッコリと笑う。
「うっ、と、とにかく戻しなさい」
車がホテルの地下駐車場へ降りていく。
「戻りなさい、写真とか取られたらどうするのよ!」
男が車を駐車して降りる、そして後部座席のドアを開く。
「さあ降りて」
そう言ってニッコリと笑った。
(この子可愛い……)
「も、もう……しょうがないわねぇ」
いつしか女は男の笑顔をもう一度見たいと思っていた。
テレビは民民党の党首のスキャンダルで持ちきりだった。
政治評論家が神妙な面持ちだ。
「これで日本の未来が大きく歪みました」
美樹は煎餅を食べながら見ている。
「ポリッ、パリッ」
「政治家もたいへんねぇ、この人綺麗だから余計ね」
美樹の母が家事を終え腕を組みながら感想を述べている。
「私、政治家になろうかな日本を良くしたいの、悪魔から日本を守るの」
「ええ?あ、く、ま? あんた何言ってるの?」
母がケラケラと笑う、娘が小学生から成長してないとでも思っているのだろう、しかし美樹は心の底の方で感じていた。
(これは悪魔の仕業だ)
美樹は最近無意識の内に色んな所へ出かけるようになった、到着してから、
(あれ?私何しにきたっけ?)
まだ認知症には速すぎると思う。
そしてこの日も知らぬ間にある会社の前に来ていた。
(またやっちゃった、私……何しに来たんだろう?……私は……誰?)
黒いスーツ姿の男が会社から出てくる。
美樹は下を向いている、立ったまま寝ているかのようだ。
男はその若い女に興味を持った。
(コレクションを増やすか)
「コツコツ」と革靴の音を立てながら美樹に近づいて行く。
「お嬢さん、どうかされましたか?」
美樹が顔を上げる、男がニッコリと笑って凍りつく。
「お、お前は……」
美樹がニヤリと笑みを浮かべる。
美樹の目がすわっている、いや魔王卑弥呼の目だ。
「淫魔インキュバス、こっちに来てから何人の女に手を出した」
「あ、あんたにゃ関係ない、ほっといてくれ、あんたには迷惑かけて無いはずだ」
「迷惑なんだよ、党首に手を出したりここの社長に手を出したり」
「だから何であんたに迷惑がかかるんだよ」
男は明らかに狼狽していた、悪魔だが声をかけた自分を呪う。
「ここの社長は日本に貢献してる、お前のせいで業績がだだ下がりだ」
男は外国人のように派手に両手を広げながら
「はぁ?日本に貢献?」
「そうだここの社長のやってる事は日本の為になる」
「おいおいどうかしちゃったんじゃないの?あんたともあろう者が日本だ? 人間界に寝返ったんならせめて世界のためとか人類のためとか」
「世界中を駆け回る訳には行かないからな、ここは日本、そして東京だ」
美樹は卑弥呼の影響を受けていたが卑弥呼も同じく美樹の影響を受けていた。
(考えが甘いな、前よりも色々と弱くなってるんじゃないか)
「魔王卑弥呼、一緒に来てくれないか?」
ニッコリと笑う。
卑弥呼は少しだけこの男の事を可愛いと思った。
(可愛い?冗談じゃない、こいつはインキュバスだ)
「人目につかない所へ行きましょう」
男が手を差し出す。
「……話だけでも聞いてやる」
差し出された手は無視するものの男について行く。
裏路地に入る。
「さっきは無視されたけど」
男が手を差し出す。
(この男は何を言ってるんだ?でも手くらいは握ってやっても……)
卑弥呼が男の手を握る、美樹に戻っているのだろうか?
「ありがとう嬉しいよ」
(ああ?嬉しいだと? そんな言葉に騙されるもんか)
「ご無沙汰何でしょ?魔王になってからオスと交わってないんでしょ?」
(なんて無礼な奴だ、絶対に殺してやる!)
男はスーツのチャックを外して股間の逸物を出す、それはとても長い長い物だった、人間の腕以上の長さだ、しかも2本生えている。
「魔王卑弥呼、ひざまづいてくれ」
卑弥呼がひざまずく。
「この2本の内好きな方を口で咥えてもらう、そしてもう1本を手でしごきなさい」
卑弥呼は男の物に顔を近づけて行く。
(だめよ、騙されてはだめ)
(誰だ?お前は誰だ?そうか美樹か?違うのか?……私は……誰だ?)
夢が覚めていく。
(人間の心が私を弱くしているのか?いや違う、私の心が弱かったのだ、そして今人間の心に助けられた!)
「ガブッ」と男の物に噛みつく。
「ギャギャー」
そのまま食い千切る。
「ギャギャギャギャーーー!!」
男が、いやインキュバスがわめき散らしのたうち回る。
「危ない所だった、かつての私ならお前に負けていたかも知れない」
卑弥呼はゆっくりとインキュバスに近づき残酷な悪魔の笑みを浮かべる。
「痛い痛い、た、助けてくれ死にたくない、まだ1本残ってる、これでも楽しめるから殺さないで!」
「じゃあこうして、あ、げ、る」
無傷のもう1本を足で踏みつぶしてやった。
「ギャギャーーーギェェーー」
まな板の魚のように地面をのたうち回り暴れる。
「ギァァーー生きがいがぁ、死んだ方がましだーー」
「あっそう」
卑弥呼はインキュバスの頭を目がけて思いっ切り足を踏みおろした。
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