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IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》

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【第630話】

 
前書き
授業 

 
 連日ニュースは白騎士暴走事件、或いは三人目のIS操縦者に関しての話題ばかりだ。

 まだ成樹の転入時期は未定だが、修学旅行後には転入するだろうと山田真耶の話だ。

 それよりも白騎士暴走事件がやはり世界を駆け巡っている、目撃情報のない無人機は話題には上がらないがやはり白騎士はそうはいかなかった。

 連日行方不明の白騎士をテロリストはどうやって手に入れたのか等と無駄な討論をただただ繰り返していた。

 それはさておき、白騎士暴走事件の解決者として話題になっている人物が居た――無論有坂ヒルトの事だ。

 メディアはあまり取り上げないものの、ネットやSNS等では話題に上がっている。

 とはいえ、これまでの偏向報道に加えて白騎士以外でのメディア露出は何処からかの圧力によって映像記録等が無いため、その白騎士暴走事件解決者の内容に懐疑的な人間も居るのは事実。

 だが――それでも世界は少しずつ、少しずつだが有坂ヒルトの評価が上がっていった。

 修学旅行三日前の平日金曜日、授業は滞りなく行われている。

 一組(クラス合併して総勢一二〇人超)は初めてのIS量産機全てを使った訓練だ。

 今回の内容は以前のキャノンボール・ファストを参考にした空中機動訓練、それもハイレベルな内容だ。

 空中に浮かぶ輪を順番に潜るエアレース――だけど、その輪というのが厄介な事に次の輪がその前の輪を潜らなければ出てこない上に、その輪が出てくる場所が学園全体な上にランダムなのだ。

 しかもイヤらしいことに輪を潜って反対側に輪が出ることもあり、一年生全員四苦八苦していた。


「ハアッ! ハアッ! この訓練キツいよぉ……」

「ら、ランダム過ぎて判断遅れちゃう……!」

「もう……ダメぇ……」


 ラファール・リヴァイヴ、打鉄から降りた生徒一同、皆が額に汗を流し、肩で息をする事態だ。


「よし、では次のグループ前に出ろ!」


 千冬の激にグループは前に出る――その中には有坂ヒルトの姿もあった。

 専用機持ちも皆等しく訓練を行う――この訓練はレースという訳ではなく、時間内にどれだけ輪を潜れるかが肝となる。

 個人の技術力が物をいう、どんなに性能が高い機体でも扱う人間の技術が追い付いていなければ意味がない。

 各自打鉄、ラファール・リヴァイヴに乗り込む――ヒルトは天・伊邪那岐を展開、全機スタートラインに立つ。

 正面に輪が投影される――一際大きな輪、それを潜れば後は個々に潜る輪の色が表示される。

 トップなら赤、二番なら青といった具合に。

 シグナルが点る――全機スラスターを点火、一斉にスタートを切る、一番手二番手と輪を潜り、三番手にヒルトが潜る――輪の色は黄色だ。

 潜ったその瞬間から表示される黄色の輪、だが地表ギリギリのライン。

 他の子が空中にある中で地面から僅か三メートルしか離れていない位置に輪があった。

 急降下して輪を潜る――今度は第六アリーナ頂上に輪が出現、急降下したヒルトは地表ギリギリで脚部スラスターとPICによる急停止後からの加速、そして瞬時加速によって最高速に達して一気に第六アリーナ頂上の輪を潜るヒルト、他の生徒も苦闘しながら技術力を磨くために必死に輪を潜っていた。

 四つ目、五つ目と潜り抜けるヒルト、直角に曲がるその機動、負荷の掛かる曲がり方に思わず真耶がオープン・チャネル通信を飛ばした。


『有坂くん! 無茶な機動は身体を壊すのであまり多用は――』

『了解っす』


 返事をするヒルト、螺旋降下し、学園島の海上に浮かぶ輪を目指す。

 急停止によって海面が飛沫をあげ、加速――輪を潜ると今度は遊覧船の上に輪が現れる。

 乗船客も突如現れた輪を見上げる――直ぐ様その上空をヒルトが通過、今度は学園側に浮かぶ輪を目指した。


「あ、あれって有坂ヒルトだよな!?」

「うん! てか速すぎ!? もう学園方面に行ってるし!?」


 乗船客も突如上空を飛んだISの姿に目を奪われた、その中でも一瞬でヒルトだとわかった客は少しだけ話題に上げていた。

 そのまま順調に九個目の輪を潜った時点で終了の文字が表示され、各機グラウンドに戻り、装着を解除する一同。


「やぁん……エミリア、四つしか輪を潜れなかった……」

「輪を探す方が大変だよ……二個目まではナビされるけど、三個目からは目視だもん。 ハイパーセンサーでいくら全周囲見れても反応出来なかったら意味ないよぉ……」


 大体の子が三、四つ潜るのが精一杯の中で投影ディスプレイに表示される九の文字、ランク付けは意味無いのだが現状三位にランクしたヒルト、一位は鈴音で二位が美冬だった。

 ランダムとはいえある程度運も絡んでるのかもしれない。

 待ち時間も無駄にはしていない、地表では近接模擬戦闘の真っ最中、終わればまたさっきの空中機動訓練、これをひたすら何度も行う。

 ラファール・リヴァイヴ、打鉄、各専用機互いに火花を散らせていた。


「行くよ、ソフィー!」

「わわわっ!? せ、接近戦苦手なのにぃ……」


 シャルとソフィー、火花散る剣の打ち合い、一方では――。


「うぉぉおおおっ!!」

「甘いな、織斑君」


 振るわれた一撃を体捌きでかわし、雪片を蹴りあげられ宙を舞う。

 それに気を取られた一夏にエレンは強烈なスレッジハンマーの一撃を白式胴体部に直撃、一夏は吹き飛ばされる。


「……ふむ、織斑先生には特別コースで指導と言われたが……。 まだまだ時間は掛かりそうだな」

「ま、まだまだやれるぜ! やあぁぁってやるぜッ!!」


 グラウンドに刺さった雪片を引き抜く一夏は叫ぶと、再度エレンとの近接戦闘訓練を開始した。

 ヒルトも直ぐに訓練を開始する、相手は鷹月静寐――。


「ヒルトくん、よろしくね」

「ああ、此方こそよろしく」


 刀と刀が触れ合い、距離を離した二人――先にヒルトが動いた、訓練だから特別な機動はいらない、真っ直ぐ向かい北落師門を振るう。

 鈍い金属音が鳴り響く、近接ブレードで受けた静寐だが勢いを殺せず体勢が崩れる――そのまま近接ブレードを弾き飛ばしてヒルトはその刃を下ろした。


「これで一本かな?」

「っ……。 ま、まだまだやれます!」


 突き刺さった刀を抜き取り、また構える静寐――二本目が開始される中でも学園上空では生徒が輪潜りに必死になっていた。

 専用機持ちではセシリアと未来が飛翔している、輪を潜り抜ける無数の機影――それをグラウンドから眺めていた千冬は小さく笑みをこぼした。 
 

 
後書き
ただただ近接戦闘or空中機動訓練のみ

修学旅行まではもうちょいかな 
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