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メスデカ

作者:
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美少年剣士

木村秋の1人息子の木村凛、絶世の美少女にしか見えない剣道達人の中学生だ。
 今日は中学生の剣道地方大会の個人戦だった。
 学校関係者が大勢応援に来ていた、凛の母親の秋も来ている。

 息子の凛が決勝進出を決めた。
「凛君凄いわね、羨ましいなぁ、美少年だし、うちの息子が凛君だったら良かったのに」
 凛の同級生の母親だ、息子が同じくこの大会に出ていたが1回戦で早々と敗退していた。

 秋が困ったように愛想笑いを浮かべる。
「あら、否定しないのね、ふふ」
 わざと大袈裟に言っておどけてみせる。
 2人はお互いの顔を見ながら「キャッキャッ」と女子学生のように笑う。

 凛はここまで何とか勝って来てはいるが危ない場面が何回もあった。
 中学1年生の時は感じなかったが2年生になり力負けする事が多くなったが技でごまかしてきたのだ。

 しかし3年生になりその差がますます大きくなってきた、決勝に来られたのは相手に恵まれたからかも知れない。
 決勝の相手は凛の最大のライバルだ、1年生の時は同じくらいの背丈であったが、今は大きく差をつけられた。

 試合が始まる、3本勝負だ。
 礼をして竹刀を構える。
「イヤーァ」
 お互いに声を出す、凛は女のようにかん高く相手は迫力のある低い声。

 お互いに警戒をして前に進めない。
 相手は攻撃力のある上段の構え、凛は守りの堅い下段の構えだ。
 凛は相手の攻撃をいなして隙を突くのを得意としている、チラリと面越しに相手の顔を見る、相手も同時にこちらの顔を見た、凛は上唇と下唇を口に入れる、上向きの鼻の穴が縦に伸びる。

 相手は凛の鼻の穴に注意が行ってしまった。
 凛が仕掛ける、スキ有りと見たのだ、相手の剣先をこちらの剣先であて竹刀を丸め込む、相手は意表を突かれた。
 踵を返し凛が面を打つ。
「めぇーーんー」
 鮮やかに大面が決まった。

(あと1本だ、勝てる!)
 面越しに相手を見る、悔しそうにこちらを睨んでいた。
 2本目が始まった、しかし一方的であった、開き直った相手が開始早々怒濤の攻めを見せてそのまま押し切ってしまった。
 完全に力負けだった。

 相手は驚いていた、拍子抜けしたのだ。
(なんだ?弱いじゃないか、1本目が警戒し過ぎただけなんだ、あの腕力ならもう一度攻め倒せる)
 相手が自信過剰になった訳ではない、冷静に凛の腕力がないことを感じ取ったのだ。

 観客席では秋が祈るように両手を握りしめている。
(凛がんばって、あなたなら大丈夫)
「次で決まりね、凛君大丈夫かな?」
 先程まで和気あいあいと話していた同級生の母親だが、今はジットリとした目を秋に向けていた。

 3本目が始まった。
 また先程と同じように相手が一方的に攻めてきた。
 凛は防戦一方だ、追い詰められる、風前の灯火だと思われたその時、相手が足を滑らせてしまう、汗だろうか?
「めぇーーんーー」
 一瞬の隙を凛は逃さない、鮮やかな大面が決まる。
 観客席から歓声が湧き起こる、凛の地方大会優勝が決まった。

「おめでとう」「やったね凛君」「君はわが校のプリンスだ」
「文武両道とは君のことだ」「美少年剣士」「侍」「美少年で天才で強い、君の未来は約束されている」
 皆口々に褒めてくれた。
(ありがとうみんな、うれしい、ほんとに心の底からうれしい)
 凛は満面の笑みを浮かべている。

「おめでとう、よくがんばったね」
「うん、でも危なかったよ」
 優勝してから凛は学校へ、秋は仕事へ?戻っていたので初めての会話だ。

「お腹空いたでしょ?すぐご飯作るからね」
「うん」
 凛は秋の自慢で光だ。
 秋も凛の自慢で目標だ。

「刑事になるのって剣道強い方が有利なんでしょ?」
「ガシャン」食器を落としてしまう。
「凛、刑事はとても危険な仕事よ」
「僕悪いことをする奴が許せないんだ、お母さんみたいに刑事になってそんな奴らを捕まえるんだ」

 秋は凛を刑事にはしたくない、危険だからだ、父親も刑事だったが殉職している。
それに、ありとあらゆる汚い物も見なければならない、凛にはそんな物は見て欲しくない。
 それは愛する息子を危険な目に遭わせたくないという母親としては当然の気持ちかも知れなかった。

(僕は刑事になる、小さい頃からの夢なんだ)
 しかし正義感に燃える凛は刑事になる事を決めていた。
 その日の夕食は凛の大好きな母の手作りハンバーグだった。
 ハンバーグをほおばりプクッと頬が膨らんでいる我が子を愛おしく秋が眺めていた。

「ピンポーン」
 木村秋が玄関のチャイムを鳴らす。
「はい」
 中から若い男が出てくる。
「私、警視庁捜査0課の木村です」
 そう言って警察手帳を見せる、木村が上唇と下唇を口に入れる、美しい鼻が縦に伸びる。
 その表情のままでしばらく時が流れる。

「カット!」
 鈴木誠が指示を出す、スタッフが数人周りを取り囲んでいる、AVの撮影だ。
 カメラが木村の鼻をアップにしてしばらくしてからのカットだ。

 木村は濃紺のスーツのボタンを止めず下の白いワイシャツがハッキリと見える、そのワイシャツは短くお臍が見えている、撮影用だ。

 木村は10年前の連続殺人の捜査をすると偽ってAV撮影をしに来ているのだ。
「カット」の指示の後、うつむき下唇を少し噛む。
(私……何をしてるんだろう……みんなに……被害者に顔向けできない)

「ピンポーン」
 チャイムを鳴らす。
「はい」
 インターホンから男の声がする。
 インターホンのカメラに警察手帳を見せながら
「警視庁捜査0課の姫川です、お話をお伺いしたいのですが」

 テーブルを挟みお互いソファーに座る。
「またですか、10年前もこの前も同じことを聞かれましたよ」
 若い男だ、ウンザリと言ったふうだ。
「すみません、最後に浅井マキさんに会っているのが貴方なもので」

 結子はこの日は非番であったが個人で浅井姉妹の件を調べていた、警察は今はこの件を捜査していない。
 「ピンポーン」
「またかよ」
 男がインターホンを取る。

「えっ?捜査1課?」
 新しい客が入ってくる。
「おやおや、貴女も来ていましたか、捜査0課の姫川警部補」
「水谷警部、どうしてあなたが?」

 水谷右角(みずたに うかく)警視庁捜査1課、特命係。
 50代半ば、銀縁の眼鏡をかけ髪形はキッチリと七三、背はそれ程高くはなく痩せ形で小柄な部類だ。
 超人的な洞察力で数々の難事件を解決してきた敏腕刑事である。
「失礼」
 結子の隣に座る。

 結局この聞き込みでは有力な情報が得られなかった。
「どうして特命が?」
「貴女と一緒ですよ、個人で調べています、自殺とは思っていません」
 結子がジッと水谷を見る。

「自殺をするならもっと早くにしていると思われます、えげつない内容のアダルトビデオですからねぇ。
 姉妹ともにソフトオンデマンコリアとの契約が切れてから“自殺しています」
 結子を指さしながら水谷は得意げだ。

「契約でもめた為に殺された?」
 水谷をマジマジと見ながら小首をかしげる。
 水谷は一瞬見とれるが気を取り直して
「ソフトオンデマンコリアは殺人を揉み消すぐらいは動作のないことです」

 素っ裸で大鏡の前に立つ、中学3年生の男子とは思えない“きゃしゃ“な体だ、少女のようである。
 そして胸が出ている、オッパイだ、腰も艶めかしい女の腰だ。
 お臍はデベソである、プックリと丸いデベソがだらしなく出ていた。

 そんな木村凛を男と証明する男性器は皮が被っていた、包茎でそして小さかった、粗チン(そちん)である。
(どうして僕の体はこうなのだろう)
 この前の大会で痛感したことだが周りの少年は逞しく男として育って行っている。
 しかし自分の体は女として成長しているのだ。

 しかもやたらと体全体が敏感なのだ、散髪屋に行っても少し体に触れられるだけでビクンとしてしまうのだ、いつも散髪してもらう人に怪訝な顔で見られる、いや、怪訝な顔だと思っているのは凛だけで実際は欲望の眼差しで見られていたのだった。
(どうして?この胸、腰、お臍、どうして僕はこうなんだ!)
 自分の体を見れば見るほどに憂うつになってしまう。

「ピンポーン」
 チャイムが鳴る。
 服を着て玄関に向かう。
「ガチャ」
 鎖のロックをしたまま少しドアを開ける。
「初めまして私、週刊文豪の坂田と言う者です」
 名刺を渡される。
「はぁ……何の用でしょう?」

「お母さんのことで話したい事があるんです」
「取材ですか?母はまだ帰ってません」
「ええ、これをあなたに見て欲しいんですよ」
 写真を1枚取り出す、そこにはカメラに向かって警察手帳をかざすスーツ姿の母が写っていた、濃紺のスーツ、ボタンは留めていない、中の白いワイシャツが見える、そしてそのワイシャツの丈が短く可愛らしい丸いお臍が見えていた。

「ドクン」と胸が鳴る、嫌な予感がした。
「この……写真……」
「お母さんの事で話があるんです、中に入れてもらえませんか?」
「この写真はどういう?」
「ええ、ですから中に」

「カチャカチャ」
 ロックを外し坂田を部屋へ入れた、凛の未来が大きく変わる。 
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