魔王卑弥呼
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四天王アマーン
コツコツと革靴の音をさせて黒のスーツ姿の美女がビルの一室を目指す。
ロングヘアで目鼻立ちがハッキリとしている、背が高くスタイルが良い。
パク・シネ、在日韓国人だった、しかし今は人間ではない。
その部屋ではスーツ姿の男性が銃を構えている、そしてその先には猿轡をされている女の首筋にナイフを突き立てる男がいた。
「銃を下ろせ、この女を殺すぞ!」
「その子を離せ!これ以上罪を重ねるな!」
銃を構えるのは刑事、銃を向けられているのは連続強姦魔の犯人、ナイフを突きつけられているのは監禁されている少女だ。
「コツコツコツ」
開いたドアにシネが現れる。
「誰だ!」
刑事はチラッとドアに振り向く。
シネはゆっくりと刑事に近づく。
「じっとしてなさい!危ないから近寄らないで!」
刑事がシネに向かって叫ぶ。
「バリバリバリー」
シネの体が見る見る大きくなりスーツが破れる、そして3メートル以上の素っ裸の大女に変身した。
目は真っ赤で口からは大きな牙が生え爪は野獣のそれだった、そして勃起した乳首が異様に長い。
「ば、化け物!」
刑事は叫ぶが同時にシネが刑事の頭を引っかく。
「ズバッ」
刑事の頭がザクロのようになり脳味噌が飛び散る。
「く、来るなー、ば、ばけものー」
強姦魔が怯えて尻餅をつきながら叫ぶ。
「ふっふっふ、強姦魔から使い魔に変えてあげるわ」
シネは自分の右おっぱいを掴み絞る、長い長い乳首から白い液が飛び出す、それは目を見開き怯える女の顔にかかる。
「シューー」
白い煙を上げながら女の顔が焼けタダレて蒸発した。
強姦魔は腰が抜けて這いずりながら逃げようとする。
「た、助けてくれ、死にたくない」
シネは男の髪を掴み自分に向かせる。
「因果応報だよ」
そう言って男を食べた。
4階建てのマンションの3階に佐々麻美は住んでいた、名前はマンションだが外見は古びたアパートだった。
「ここは動物飼ったらだめなんだからね」
目の前のテーブルのハムスターに言い聞かす。
「ヒマワリのタネを買って来てくれケージはいつも綺麗にしてくれ、できる範囲で構わないから」
そのハムスターが注文をつける。
ハムスターゆえに会話のキャッチボールが下手なようだ。
「はいこれ」
麻美がテーブルに1枚の紙切れを出す、彼女もまた会話のキャッチボールが苦手なようだ。
「なんだこれ?」
ハムスターが問う。
「契約書よ」
「契約書?」
「そうよ、あなたは使い魔なんだから私と契約しなければならないのよ」
麻美はやれやれと言った風にハムスターに言い聞かす。
ハムスターは読んでみる。
「なになに、私こと使い魔ハムスターは佐々麻美様の奴隷になることを誓います、もし言うことを聞かなければオチンチンをちょん切られても文句は言いません……な、なんだこれ?」
「早くそこの朱肉に前足を乗せて」
上から目線で命令する。
ハムスターは契約書の上に小便をした。
「あっ、なにするのよ!」
「タタタッ」とそいつは走って逃げた。
「ズルズルチュルチュル」
美樹がそばを食べている、天ぷらそばだ。
下町の高架下の屋台だ。
「やっぱり美味しいわ」
美樹がニッコリと店主に話す。
「そば一筋40年ですからね、早いの上手いの安いのがモットウですよ」
青年もニッコリと返す。
この屋台の店主は“あの山“のそば屋の店主だった男だ。
この男もハムスターのように使い魔なのだろうか?人間でないことは確かなはずだ、どう見ても二十前後だ。
色々と聞きたい事がある、まずは名前だ。
「私は織田美樹、18才よ」
しばらく待つが男はなにも言わない。
「名前教えてほしいな」
「名前ですか?名前ねぇ……」
「鬼形卓(きがた すぐる)です」
「……そう……鬼形さんね……」
(考えてたよね?怪しいなぁ)
「鬼形さん歳を取らないのはなぜ?教えてくれますか」
「あの空間では歳を取らないんですよ」
「でも……あそこに迷い込んだ……いえ、引きずり込まれた家族はガッツリ取ってたわ」
「そうなんですか?」
「あなた……使い魔よね?」
「パリポリ」
平日の昼間、美樹は煎餅を食べながらテレビを見ていた、工事現場のアルバイトをやめてからニートをしている、母に悪いという気持ちもあるが毎月家にはお金を入れている、貯金があるのだ。
サングラスをかけた60位のお笑いタレントが司会をする番組を見ていた。
「今日のゲストはパク・シネさんです!」
客席の大歓声の中パク・シネが現れる。
「あっ! 四天王!!」
美樹は煎餅の破片を口から飛ばして叫ぶ、山頂のそば屋で会ったあの女だ。
美樹が、いや、卑弥呼が魔王を辞める少し前に四天王を作るという構想があった、しかし卑弥呼が反対したのだ、必要ないと、しかし顔の変わる男を倒した跡にマンションの屋上で会った妖魔ザンギの話、そしてこの前の山頂での出来事などから四天王が作られたのを知った。
美樹は魔力を感じる事が出来る、妖魔ザンギは人間の姿を取っていたが魔力で妖魔ザンギだと分かった、しかしあの山では魔力を感じる事が出来なかったのだ、だから妖魔ザンギ以外の残り3人の四天王が誰なのかは分からなかった、しかし今はテレビの生放送から魔力を感じる。
「妖魔アマーン、いや、四天王アマーン!」
美樹が叫んだ直後、テレビ画面のパク・シネが美樹に向かってウインクをした。
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