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この凄まじいセカイに祝福を?(カズマがサッキュバスにヤられたり、触手の化け物や両性具有の天使にガチ堀されて出産する話)

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71稀人


 魔王城
「まさかこんな? こんなに簡単な事だったなんて?」
 一瞬正気を取り戻し、ベランダで立ち上がって有り得ない光景を見渡したウィズ。
 今までは全戦全敗、退却の仕方だけ上手くなって、逃げ出す潮時を覚えさせられたが、天使側の軍勢が撤収していくのを見るのは初めてだった。

 まだ生きていた魔獣や妖魔たちも、故郷に帰って仲間にもこの事実を伝えてから消えようと思っていたが、耐えきれずに身体の端から石化や塩化が始まり、安楽に成仏して行く者が多かった。これまで延々見せられて来た殺戮や浄化の逆である。
 城壁を破壊して周り、外堀を潰した城壁で埋め、歩兵の妖魔や小型の魔獣を招き入れていた巨大な魔獣の大半は自壊して、満足したのか許されたのか、塩の柱となって崩れて行った。
 あれほど激しかった神の雷もピッタリと止み、暗雲が消えて雲間から光が差し始めていた。
 剣や槍を振りかざすと、寸分違わず落ちてきた雷。手にした武器から電気がよく通る塩と鉄が入った水袋を通過してジュール熱で焼き切り、天使に歯向かった者に神罰を下す浮遊兵器。勇敢で恐れを知らない者から真っ先に討ち取られた。
 神の雷に焼かれずに済む正しい方法は、天使の軍団に可能な限り肉薄して、雷を受ければ共倒れになる所まで接近して鍔迫り合いするのではなく、武器も鎧もナイフ一本まで捨てて、見栄えや格好など気にせず、逃げ出して隅で震えていれば良かったのだとようやく気付かされた。
 下級天使達はそのまま去り、大きさがある妖魔も翼を広げて飛び去ったり、転移魔法を使って故郷に帰って行った。

 魔王城は天使の軍団が実力で攻め込んできた場所の中で、初めて撃退に成功した場所になった。
 もちろん力尽くではなく、セラフ1の言葉とドラゴンの少女の会話で戦う意志を失い、生命体が受け取る最終コード「次世代の生命が生み出されて、全ての亜人や魔物や天使達の記憶が保存された、夢の世界で永遠がある場所が、上の次元に送り出され、神の座に一歩近づいた」のを入力され、魔獣の肉体に塗り込められて罰を受けていた者や、喰われて取り込まれ苦しみ抜いていた者まで恩赦のように開放されて、呪われた肉体を自壊させて消えた。
 血を求めて暴れ狂い、言葉すら通じなくされていた各種妖魔も消え、下級天使まで満たされて消えて行った。

「勝てたのか? これで守り抜けたのか」
 城の主も、全ての戦場で負け戦と敗走を味あわされた天使の率いる軍団を、初めて追い返したのに驚いていた。
「叔父上、勝ち負けでは無いのです。天使と話し合い、愛し合う方法がやっと見つかったのです」
 これまでも、魔族の母親が泣き叫んで命乞いをして「この子の命だけは!」と懇願しても叶えられなかった対話や停戦。
 女でも子供でも顔色一つ変えずに殺し、虫けらでも踏み潰すように魔法で処理し、雑草を刈り取る作業でも済ませるように城塞ごと焼き払って浄化し、穢れた生き物と土地と建物が消滅するまで蹂躙して来た下級天使の兵団。
 どんな強者で勇士であろうと、魔法力、剣技、弩、全ての刃物と兵器と怒りと呪いが通用しなかった相手が、全城塞の住民の命が奪われる前に、初めて停戦させて退かせるのに成功した。
 必要だったのは、恐怖でも畏怖でも戦慄でもなく、お互いを信じ合い愛し合うアガペーがあれば解決していたのだと、長い年月を超えてようやく気付いた。

 飛行機械や蒸気機関を見せられて、全住民が呪いの刻印を受け、城塞から出られなくされ、上空から神の雷も現れ、後は全員焼き払われるのを待つだけとなった時も、外部から救援に来て刻印が無く、撤収できた冒険者やウィズに、どこの誰かも知らない女から「この子だけでも連れて逃げて!」と託された子を、鎧や装備を捨てて腹に着込むようにしても、飛んで逃げ出しても、確実に全員焼き殺されるか、追手が来て穢れた記憶すらない赤子でも殺された。
 何度もその地獄を見せられ信仰を全て捨てて、復讐者となって神から最も遠い存在リッチーとなっても、どんな手段を使っても倒せなかった魔獣や下級天使。
 それが今、呪われた魔獣も妖魔も赦されて、新たな世界に旅立って行った。
 頭がおかしいと言われて来た紅魔族の行動は案外正しく、処罰に来た下級天使でも出迎えて家に招き入れ、子供とも遊ばせて共に食事をして同じ場所で眠り、時には美形の天使に恋をして結ばれ、家族になって当初の目的は忘れさせる。

「ふむ、撤退指令前に引いたな? 懲罰物だな」
 全兵力の交戦の意志を自分で奪っておきながら、先程と同じ姿勢のまま座って、必要も無い茶を飲む上級天使セラフ1。
 魔王もウィズも潮が引くように去って行く兵団を見送り、地平線まで続くかと思えた天使の軍団が、目的も果たさず去って行く、ある種の奇跡を見た。
 剣聖と呼ばれ最高の剣と鎧を装備した勇士も、どんな魔法も習得したはずの鉄壁の魔術師も無様に斬り殺され、石化し、塩の柱にされてしまう逆の奇跡が起こるのは何度でも見た。
「これからのこの国はお前に任せよう、天使とも話し合い、思う通りにすると良い」
「はい、叔父上」
 天に歯向かい、戦うことしか考えられなかった魔王は、自分の力の限界を感じて天使の軍団を追い返した姪に今後を託した。
「話を続けるか? 今日はこれまでにするか?」
 既に月まで接近していて、空には大きくなっているように見える半月が残っていた。
 この機会を逃してしまえば、次の対話はなく、全てが洪水に押し流されてからになる。自分たちはカズマの女として生き残れる可能性があるが、周囲の全員、ウィズ以外は一人残らず神罰を受け、この場所さえ厚く積もった泥の下に消え失せるだろうと思えた。
「いえ、続けて下さい」
 いくら知能が高いドラゴンでも、宇宙の概念など無いまま聞かされても理解できない。それでも話し合い、近寄って手を取り合うのが必要だと感じた。
「そうか、では次にカズマ様の話でもしよう」
 多少柔らかい話題に切り替わったようなので、理解しようと務める。

「この世界にも、ごく稀に監獄の罪人では無い人物も訪れる。私達は稀人と呼ぶが、預言者とは違う。奴らは神の手先で、甘い言葉で人々を誑かし、この世の地獄の中で最も安く手に入る麻薬の入手方法を教えて回る。宗教と言う麻薬だ」
 宗教の話かと思い、多少理解出来そうだったが、それがカズマに関わる話とも思えなかった。
「私達もエリスやアクアのような女神を用意して、迎え入れや送り出しの際に顔も合わさせて神を信じさせる。狂信者による弾圧に魔女狩り、錬金術の禁止、異端禁止で文明の発展を可能な限り遅らせる。それとは違う方法でこの世を混乱させる者も来るが、何の目的も持たずこの世界を訪れる人物、お前達や私のような地獄の獄卒でもなく、預言者といった神の使いでも、罪人でもない人物だ」
 街頭に立って神の救いを歌い続ける人物を見たこともあるが、許可されるはずもなく追い払われるか、牢獄に放り込まれて、行いを改めなければ短い一生を牢で過ごす。
 本物の預言者は見たことが無いが、アガペーの伝道者としてならカズマもその中に入る。あのマヌケな顔をした人物が預言者や稀人と聞いて、やっと頬を緩ませたドラゴンの少女。
「宗教的にはこの煉獄での勘定を終えた人物、より高位の場所に移転するのも許されているのに、わざわざ住み慣れた三次元の地獄に帰って来る馬鹿な稀人。多くの動物の魂などを引き連れて来る、恩赦を受けた人物だ」
 全てのサッキュバスを開放し、魔族の呪いすら解ける人物。それは罪人たちに呼ばれて、請われて、降臨を願われて下生したのでは無く、出ていくのが嫌で戻ってきた人物らしい。
「動物たちの魂は口々に叫ぶ「このヒトに住みよい場所を」「私達の感謝を受け取って」「このヒトはもう許されている」などなど、数十万単位で騒ぐので非常に五月蝿い。嘴からギャアギャア騒ぎ立てて、本当の神とは関係がない私達にまで喚き続ける」
 カズマの回りにも、見えない幸運と祝福が渦巻いていて、その力が全ての呪われた存在を救ったのだと知り、涙ぐむ一同。
「簡単な計算方法として、貧しい人物が少い収入や財産の大半を、罪人ではない動物に与えると効果が高いようだ。この世界の獄卒になる人物か、罪人の中でも模範囚として優遇されている者が、大きい財産から半分を寄付しても大して役に立たん。特に、苦しめるべき罪人である人間を救うことがあれば、逆に苦しめられ、罪を重ねる事にもなる」
 今までは貧しい者に喜捨するのは正しいことで、清く正しい預言者と貧しい人物を同一視して救うのは、功徳を積む行為として歓迎されると思っていた。
 しかし腐った宗教家が肥え太って、心まで醜く綺麗事だけを言う僧侶を金糸銀糸で着飾らせ、寺院を汚らしく飾って、さらに巨大な神像でも青銅や金属で立てて金箔を貼り、地域の住民を金アマルガム抽出法の水銀で汚染して、救うはずの人民を神像が重金属中毒で苦しめた奈良の大仏のような呪われた存在など、冗談にもならない出来事もあったが、それらも神罰の一環だと思わされた。
「どこかの馬鹿な指導者が、落とされて来た人間の魂を見て鳴く、天の使いと思われる動物に向かって「穀物を食い荒らすスズメは人民の敵だ!」と宣伝して、農民や軍隊まで出動させ、田畑に現れるスズメを狩り尽くした。どうなったと思う? スズメが狩るはずだった小さな虫が死なずに大発生、あらゆる場所で草も木も枯れ果てて、二千万人ほど餓死した。どうにか生き残った連中も、土や虫を食べて、自分の子を食べるのは忍びないので、近所の子と替えて食って生き残るような地獄になったらしい、はははっ」
「自分の子を? なんとおぞましい」

 農業政策の失政は多く、ソビエトから北朝鮮に来た農業指導団や軍事顧問を捕らえて「金を寄越せ、ウェハハハハ」とやらかした頭が壊れた民族もいて、善意で農業指導して、軍事力強化のために派遣した顧問を、いつも通り「ウリを侵略しに来て、農政を失敗させて餓死させる悪魔」と思い込んだようで、捕らえて金を奪って国外追放にしたらしい。
 あまりの愚かさに宗主国ソビエトから見放されて「お前達とは永久に手を切る」と宣告され、さらに愚かさが過ぎる「チュチェ思想」が、農業のノの字も知らない政治指導者から指示され、作物が一切育たず穂を付けない密植を指導し、当然のように作物が育たず餓死者続出、それでも下部組織を責めて「将軍様の言う通りにしないから」と餓死者を責める地獄が繰り返されている。
 アメリカから貰ったトウモロコシの粉も固形食(ドッグフード)も軍隊が独占して、横領されたものだけ市場で売られている。
 もちろんいつもの人肉の塩漬けなども、人気商品として流通している、絵に描いたような地獄が、この世に現出しているらしい。
 そのソビエトも「故意」でウクライナ人を清掃(クリアランス)するために、穀物の収穫が失敗するようにして、約1400万人餓死したと記録されている。現在のウクライナ人の大半は、スラブ民族である。
 知的階級の失敗では、「諸葛孔明もまた書生であった」と言われるように、温暖な蜀の地から持ち込んだ麦は、北方の魏の国では穂を付けず、秋になって食料が足りず敗走した故事もある。
 穀物は戦略物資であり、冷戦中ですら取引が行われていて、ソビエトもガスのパイプラインを止めずにヨーロッパに供給し、ガスと交換するように輸出入されていたが、アメリカで飢饉が起こった時、レーガンにモラトリアム宣言を出されて共産国には穀物禁輸。
 ソビエト国内でも餓死者が出て、ソビエトその物も崩壊して解体。CISなどの国家群が作られて、バルト三国だけでなく、ウクライナ、グルジアのような衛星国まで離反した。
 トランプ政権でもモラトリアム宣言が行われてば、共産国には石油穀物禁輸で、中国や南米の共産国崩壊、リベラルで民主党応援でクリントン陣営の人物も、悲願であるフリーチベットとフリー新疆ウイグル自治区(イーストトルキスタン)が実現して黙るかも知れない。
 ちなみに中国のイスラム圏でも、腐敗役人を追放して、プラハの春のような開放が起こった事もあったが、チベットにも出現した水陸両用車を擁した機甲師団が瞬着包囲、反乱を起こしたイスラム指導者や男たちを全員街路樹に吊るしまくって、中東系でイスラムの女を全員レイプして、処女性を重んじるイスラム社会を破壊し尽くして漢民族の子を孕ませて、男は全員去勢。と言う、いつもの中国様の裁きがあって殲滅された。
 もう純粋なチベット人は少なく、毎週焼身自殺している年寄りのお坊さんが残っているぐらいで、新生児は漢民族とのハーフで民族浄化終了。チベット人はある意味この地獄から開放された民族でもある。五体投地で山を回って「世界が平和になりますように」とか願って見るものである。
 
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