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KANON 終わらない悪夢

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97香里と栞も秋子ちゃんに起こされた

 真琴と美汐の魂は救われたようだが、自然の理、この世界のルールによって天に召され、異世界でなら結ばれて狐の姉妹にでも成れる。
 美汐のお婆さんと夫も次の世界に旅立って行った。
 それでも祐一はその旅に同行することも許されず、神域から追い返されて現世に戻された。
 愛する人達を失い衰弱しきっていた祐一だが、言い渡された使命は、既に魔物に食われている栞、香里、佐祐理を、神域に連れて行き昇天させること。
 もし穢れ果てて災厄となるなら、秋子、名雪も闇に返さなければならない。
 そして天使の人形と名乗る見えない魔物、この事件、災厄の首謀者を倒さなければならない。
 一弥の実体部分になった佐祐理の祐一と、残り9個の命を持つナインライブスの化け物を殺しきるか、一体づつ始末しなければならない。
 それは舞と同じで、天使の人形の分体、10体いる自身の魔物の命を順に奪い去り、自傷を続け自分自身を殺すことになる。
 託されたのは美汐から渡された懐剣と札。札の使い方はわからなかったが、呪いに守られた妖狐を刺し殺すことが出来る小刀。
 ハーフである舞が自分から追い払った魔物なら、純血の妖狐よりも簡単に始末できる。
 日本刀では刃が立たなかった魔物にも、佐祐理に貰ったエンチャントされた剣よりも効果が高い妖狐の骨。
 五体の魔物を殺し切ると舞も死んでしまうが、祐一もそこまでは知らない
 美汐と真琴を失った祐一も、自傷自殺するために魔物と天使の人形を討ちに行った。

 天使の人形的には、祐一の嫁決定戦トーナメントで、まず舞が一勝、佐祐理が消えた。
 美汐と真琴は相打ち、舞と対戦する前に昇天したので不戦敗。
 次の対戦カードは香里と栞の美坂姉妹だった。
(他の女は全部消すよ、その涙は最後に君が拭ってあげれば良い)
 学歴、知力、体力、肉体的魅力、どれをとっても選ばれるはずがない、あゆを選ばせて、自分も祐一本体に戻って結ばれようと思う天使の人形。
 魔物が1体でも残って生き残れば、舞に天孫降臨の儀式を行わせ、人類も終わらせる。
 死者が蘇り、昼間の世界を闊歩する、生者が滅びて闇の席に行く世界。
 この時はまだ美汐や真琴も、その世界にでも呼び出せば良いと思っていた。

 夜間
 香里と連絡を取り合い、栞を探しに行く祐一。栞の立ち回り先は、いつもの公園か、そこに続く道のり。
 クズどもがレイプハイウェイと呼ぶ道路で、繁華街から大きめの集合住宅への帰り道、ナンパしてそのまま車に乗せて山でレイプするか、暗がりの誰もいないところで無理やり引き込んで、山でレイプして撮影もしてレイプ物のビデオを撮って小遣いも稼ぐ場所。
 その周辺が栞の狩場である。
 余り繁華街に近づくと消音の効果も低く、大勢の目の前で人が食われるような状況を覆い隠すほどの術は使えない。
 妖狐の一族で術者なら、軽い幻術などすぐに見破られて、夜の使い魔を見つければ一族上げて討ちに来る。
 多数の犠牲者行方不明者が出て、新聞テレビでも報道されていたが、ヤンキーどもはニュースなど見ない。
 その上、脳が去勢されて現実を認識できないようにされ、多くの仲間が食われても夜の街を我が物顔で闊歩していた。

 天野の家の者も、身内から犠牲者を出したので、妖狐の家の勤めとして夜の使い魔を狩る手伝いをし、数人の術者も同行した。
「夜の使い魔はあちらにおるようです、応援も呼びます」
 ダウジングのような術で探し物を探し、美坂栞として探す術者。
 隣に香里という食われかけの人物がいるが、今まですぐに討ち果たされた経験から、天使の人形の偽装が巧妙過ぎて、舞でも術者でも見分けができない。
 やがて、車が止まっている付近で男の悲鳴が聞こえた。
「やめろっ、助けてくれっ!」
『ダ~メ、今マデコノ方法デ、ナンニンオンナノコ泣カセテキタノカナ?』
「ぎゃあああああああああっ!」
 見えない右手で首根っこ引っこ抜かれ、絞首されながら振り回されて千切れた胴体が飛ぶ、かち割った頭から美味そうに脳みそをしゃぶり、天使の人形と一弥は胴体にむしゃぶりついた。
 術で周囲の人物からも存在を消されたり、警察に相談に行けるような人物でもなく、届けを出されても担当官が支配されているので探されることもない元加害者?
 毎回数匹の魔物と舞が徘徊するだけで、街の治安は劇的に改善する。
「あちらですっ」
 数人の術者とともに、祐一と香里も駆けつけたが、既に道路や歩道は血の海だった。
『ウフフフフフ、キョウモタノシカッタ、イッパイカリトッテヤッタ』
 栞だった物は、既に人間の振りをするのも止めて、ソフトクリームでも食べるように人間の脳を齧っていた。
「化け物め」
 天野の術者たちは警官のように声を掛けるような真似をせず、即座に拘束の術を使って足止めした。
(おや、今日はご本人登場じゃないか?)
 ナインライブスと一弥、祐一が持っている妖狐の力を大半所有支配する化け物。
 それもレベル1で降りてきた妖狐ではなく、他の少女が行使した魔法を覚え、神域の魔法も見て覚え、数え切れない失敗をして、苦しみながらやり直してやり直してやり直して、経験値を異常なまでに高めた魔物。
 人間のレベル5程度の術者が使った拘束など、一瞬で解除してやって逆に術者を拘束する。
「なっ、何だと?」
「体が動かんっ」
 この状態で動けたのは魔物である香里、天使の人形の本体でもある祐一だけ。
 まず頭に来ていた祐一が懐剣を握って襲いかかるが、空中を浮遊して飛び回る相手には触れることすらできなかった。
(へっ、空が飛べるようになってから出直してこい)
「やめてっ栞っ、これ以上罪を重ねないでっ」
 姉として人として語りかけるが、もう栞にはそんな人間用のお綺麗な言葉は届かなかった。
『アア、マタオネエチャンカ、ハイドウゾ、オイシイヨ』
 手近な死体から内蔵を抜き取って差し出す栞だった物。
 やはり香里は内臓の臭気と力に引き寄せられ、フラフラと歩み寄っていく。
「香里っ、何してんだっ、離れろっ」
 離れた場所から声を掛けるだけに徹するよう言われていたのに、栞の右手の射程に入って、内臓に手を伸ばす。
 祐一も、香里まで魔物に食われてしまい、内臓を欲する体になっているのを知らなかった。
 初期状態として体が欲する生肉をわざと遠ざけたり、肉類が欲しいので穀類豆類も食べられなくなる。
 脳は今までより糖分を求め、喉の血を欲する乾きや、火照りを抑え冷却も可能な食品を探している香里。
 しかし、本当に欲しい生肉、それも血が滴っている内蔵を出され、手に取ってしまった。
「オ、オイシソウ」
「やめろっ、香里~~っ!」
 香里が掴んだ物を叩き落とし、本人の目も覚まさせるように頬を叩く。この時点で祐一も、香里にも魔物が入って人肉を求めているのだと気付いた。
「か、香里、お前まで?」
『ウフフ、ソウデスヨ、ユウイチサン、オネエチャンモナカマヨ、ミンナデタベマショウ』
「そんな、そんな事ってっ!」
 真琴、美汐に続いて栞に香里、祐一の周囲から少女たちも狩られていた。
 舞は既に佐祐理の中に入れられた魔物に気付き、日に日に壊れていって破滅して、猫でも野良犬でも捕食した親友。心も魂も食われていく友人を見かねて、中に潜む魔物と共に葬っていた。
 名雪も秋子も天使の人形に闇落ちさせられ、祐一に選ばれることがない闇の存在にされていた。
 残るは親友を斬り捨てて壊れてしまった舞が、この戦いの勝者と最後の魔物を斬って心中する予定で、あゆしか残れない。
「アア、オイシイ、オイシイノ」
 手についた血を舐め、落ちた内蔵を取ろうとするので、何度も頬を叩いて肉から引き離す。
『ジャマスルナ、ソイツニモ、ナマニクヲ、ハライッパイクワセロ』
 魔物になった栞が右手の腕力で祐一を払おうとしたが、残された意識が恋人を吹き飛ばされないように柔らかく掴み、次に見えない手が握り潰そうとした時、一瞬支配から逃れた左手がポケットから何かを掴み出した。

 ザシュッ

 天使の人形が作った障壁に守られ、妖狐の障壁を展開している闇の存在。
 魔物や妖狐を傷つけられる骨の小刀は、まだ祐一が握っていた。
 舞の木刀にも警官の銃弾でも傷付けられなかった栞だが、以前自分で手首を切って血を吸わせ、自傷や自殺を許可して自分と同化していたカッターは例外だった。
「祐一さんっ」
 左手で自分の喉笛を掻っ切って、最後に残された本能で魔物から自分の恋人を救おうとした、栞だった物。
 何もかも食われてしまった体の、どこにそんな力や考えが残っていたのか、仲間に引き込もうとした姉とは違い、恋人の命は救おうとした。
「シッ、栞っ!」
 魔物化を始めていた香里でさえ目を覚まし、魔物の目をした表情から、血の気が引いた人間の顔に戻った。
「お、お姉ちゃん、私を殺して… ココジャナカッタ、血管ヲ切ッテ…」
 最後の力でカッターを姉に向って投げ、喉笛を切っても死ねない体にされたのを悔やむ。
 右手は今にも祐一を握りつぶしそうで、全ての力を使ってその手を抑える。
「そんなのっ、できるはず無いじゃないっ」
「オネガイヨッ、ワタシノテデッ、ユウイチサンヲッ! ニギリツブサセナイデッ!」
 般若の形相で右手を抑え、首を左右に振り乱して全力で魔物に抗う栞だった物。
「ああっ、あああああああああああっ!」
 妹の最後の願いを聞き届けた姉は、自分の恋人でもある祐一を救う、唯一の手段と思われる攻撃を仕掛けた。
 喉の前ではなく横、動脈が脳に繋がって、血液を送り出している管を栞のカッターで切り裂いた。
「許してっ! 栞っ! 私を許してっ!」
 魔物の腕力では脆いカッターなど一瞬で砕けてしまうので、刃を出し直して二度、三度と刃を当てて、妹の脳に血液を送り出している管を左右とも切った。
「ア、アリガトウ、お姉ちゃん。やっと、自分に…戻れた…、きっと…ゆっくり眠れる……」
  頚動脈から噴き出す返り血を、無言で目を見開いたまま浴びる香理。妹の最後の言葉は、魔物の声では無く、人間だった妹が発したように聞こえた。
「栞っ、栞いいいいいいっ!」
『グ、ゴガッ、グアアアッ』
 断末魔の声を上げると、次第に魔物の気配は消え、妹だった体を取り戻せた。
「嫌ああっ!! 栞っ! 栞~~~!!」

 翌日のテレビでは、「17歳女子高生、妹を殺害」のニュースが全国のトップを飾っていた。
「調べによりますと、殺害された少女は不治の病にかかり、余命一年以内の宣告を受け、先日、姉も同じ病気を患っていた事が判明した事から、当局では死を目前にして苦しむ妹を見かね、心中を図ったのでは無いかとの疑いから、調査を続けています」
 血痕の残る現場からの中継と、どこかの児童心理学者がコメントを付け加えた後、アナウンサーはこう締めくくった。
「尚、犯行後自殺を図った少女が「妹の体を乗っ取った化け物を追い出すため、仕方なくやった」と自供した事から、少女の精神鑑定が急がれています」

 香理の家族も同じような供述をした事から、栞は死の恐怖から来る人格の乖離、もしくは脳障害により別の人格が形成され、様々な奇行に走ったのでは無いかと推定されていた。
 一緒にいた祐一も取り調べを受けたが、天野家の執り成しと圧力で妖狐絡みの事件だと説明もされ、災厄が起こって夜の使い魔が捕食を続けていたので成敗したと伝えられた。
 それによって現場に残った巨大な爪跡と、今まで通り魔として処理されて来た、不良グループや暴走族の車に残っていた傷跡が同じなのは黙殺された。

「君、ちょっと来て」
 婦警に呼ばれ、香理がいる部屋へ連れて行かれる祐一。
「ふふっ、おいしい? 今日のおかずはハンバーグよ、好きだったでしょう」
 血にまみれたストールを掛けた椅子に向かって、懸命に箸を運び話し掛けている香理。 きっとあのストールだけは、何があっても手放さなかったに違いない。
「沢山食べないと、胸大きくならないわよ、祐一に嫌われても知らないから」
 そして箸から離れた食べ物は、椅子や床に向かってボトボトと落ちて行き、周りの床には、ご飯やおかずが散らばっていた。
「始めからずっとあの調子なの、お弁当を二つ用意しても、自分では絶対に食べようとしないし、私達が妹さんのふりをしようとしても、あのストールに手を掛けたとたん、物凄く暴れ出すの… 今日にも病院に送られる予定だけど、貴方から何か声をかけてあげて」
 例え鬼でも、こんな状態の娘を取調べようとは思えない。 痛ましい香理の姿を見て涙ぐむ婦警は、祐一の背中をそっと押した。
「…香理」
 声に気付き、一度だけ振り返る香理、その表情に以前のような覇気は全く無く、目の焦点があっていない美汐と同じくレイプ目で、別人のようにやつれ果てていた。
「栞、祐一が来てくれたわよ、良かったわね」
「どうしたんだよっ、しっかりしろっ! お前がそんなじゃあ、栞は浮かばれない」
 しかし香理はキョトンとして、何を言われているのか分からない様子だった。
「もう栞は死んだんだ、俺達が無理にでも生きていて欲しいって思ったから、死んだ栞の体に化け物が入れられたんだろ?」
「な、何言ってるの? 死んだ、栞が?どうして?どうやって?」
 ガタガタと震え出し、事件の核心に触れられると香里は壊れる。
「お前が化け物を殺してやったんだろ? 思い出せよっ、最後に栞が言ったじゃないか「ありがとう」って「これでゆっくり眠れる」って」
「嘘よっ! 栞が死ぬわけ無いじゃないっ、あなたの方こそどうかしてるわっ、自分の恋人が死んだなんて、よく言えたわねっ!」
 そう言いながらも、目を泳がせ、エンドロフィンの欠乏と血糖値の低下でガクガクと両手と体を振るわせる。
 そこで見かねた監視の婦警が、耳元に来てささやいた。
「お願い、嘘でもいいから、この子を少しでも安心させてあげて」
「は、はい…」
 とっさに思い浮かぶ良い嘘は無かったが、何となく有りがちな、病院でも言った嘘を言ってみる。
「栞は… お前と一緒にいるじゃないか」
 嘘を探す祐一、しかし「心の中で生きている」「霊になって見守っている」そんな話では到底納得させられない。
「ど… どこに?」
 もう全身を震わせ、座ってもいられない様子の香理、ここで致命的な事を言えば、もう香理は立ち直れないかも知れない。
「お前の」
 祐一は必死になって嘘を考えた、そこでテレビでありがちなラストシーンを思い出す。
「お前の、お腹の中にいるじゃないか」
「えっ?」
 僅かに落ち着きを取り戻し、震えが収まった香理。
「栞の体は病気で壊れてしまったけど、新しい体がお前の中で育ってる、今度は俺とお前の子供として」
 我ながら上出来な嘘だと思った、後は香理がそれを受け入れてくれれば救われる。
「あっ、ああっ!」
 涙を流し、自分のお腹を大切そうに抱きかかえる香理。
「こんな所にいたのねっ!ばかっ、心配したんだからっ!」
 嘘は香理の心に届いた、もし本当に妊娠していれば、香理は立ち直れるかも知れない。
 心と魂が、魔物に食われ果てて闇に堕ちるまでは。
「もう「お母さん」なんだから、しっかり食べて、丈夫な子に育ててやれよ」
「うん… グスッ、うっ、うわああっ」
 テーブルに突っ伏して泣き続ける香理、その肩に栞のストールを掛けた。

 その頃、病院の霊安室には、不気味な影が5つ集まっていた。
(ふふっ、栞さんのカッターを使うとは恐れ入ったね。 でも、あゆちゃんが泣くから楽に死なせてあげないよ)
 残り3体の魔物、真琴、美汐、佐祐理が穢れた肉体、人に見える人形で再生され、解剖されて魔術器官の観察も済ませた栞の亡骸に手をかざした。
 天使の人形と一弥も加わって「瀕死」になっていた魔物に力を与えて行く。

 夜間、残った自分の魔物を始末してやろうと思い立ち、舞が空間ゲートを開いて転移する。
 その場所を検知する能力は無かったが、天使の人形によって無理やり脳内に書き込まれた。
『…病院、牢屋の中』
 舞の目の前に広がったのは、病院に収容された香里の部屋だった。周囲は警戒されて、扉も外から施錠されていたが、まさか空間転移してくる暗殺者が来るとは考慮されていない。
『…香里、貴方も死なせてあげる、妹と同じ所に送ってあげる』
 祐一がいる前では少し元気を出した香里だが、魔物に食われてしまった体では子供は出来ない。
 子供に必要な命や内蔵まで食われてしまったのを知っている舞は、処刑人のように剣を構え、その事実を心の声で知らされた香里も、背を向けて罪人のように膝を屈して手で合掌して祈りを捧げた。
(最後の一体は舞の中に帰っておいで、君が勝者だよ)
 魔物の中でも祐一を誰が食べるのかが争われたようで、最後に残った左手が勝者となって、空っぽだった舞の体に戻された。
『…もうこれ以上苦しまないで良い』
「ええ…」
 剣を逆手に構えた舞が後頭部、頚椎から脳を狙う…

『はい、ここまでですよ、起きなさい』
 秋子ちゃんの声が響くと風景が変わった。

「うむ、気が付くと私達には、既に完璧な治療が施されていたのだ」
「何っ、知っているのか雷電(さゆり)?」
 長い学ラン、長ランとボンタンを着ていて、極太の眉で何故か男前な舞。中国風の服を着て解説係になっている佐祐理。
「そうなんです~」
 回想する佐祐理や美汐だが、まるで大威震八*制覇か、天頂*輪武闘会で死んだはずの塾生達のように完璧な治療? 要は包帯でグルグル巻きにされているだけだったが、何故か生き返った。

 現在、香里の病室
「イヤアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!」
 霊安室と呼ばれる香里の病棟では、このような騒ぎは日常茶飯事のチャメシゴトなので、当直の看護婦が懐中電灯持って来たぐらいで済んだ。
 眠るどころの騒ぎでは無いので、眠剤とか鎮静剤を貰って、どうにか寝た香里さん。
 火山の中でガメラみたいに回復していたので、もうすぐ鳳凰座の聖衣とかも復活する。

 倉田の家で栞がいる部屋
『ぎええええええええええええええええええええええええええええええええええええっ!』
 現在も悪い方向のギャグキャラ、ペギラとか水と氷の聖闘士にされ、惰弱な性格は治ったが全然クールじゃない栞さんも、ちっちゃい怪獣の叫び声を上げて鳴いた。
 舞の魔物を精霊化する魔法を覚えてからは、魔物に魂を食われないでも済み、改造を進めてもマッスルボディになったり、呼吸法によって鋼鉄の肉体で不死身になったりするが、闇落ちする程度?で、生き餌を捕食し続ける化け物に成り果てずに済んでいた。

 高野豆腐か昆布みたいに湯戻しされた祐一きゅん。
「エヘ、エヘヘヘヘヘ、パパァ」
 変わった取り合わせだが、ヤンキー女、教頭の孫、眼鏡地味子さん。今日の昼間、舞の精霊を貸し出された一同だが、新婚初夜を過ごしている佐祐理と舞のお姉ちゃんズから祐一を下げ渡され、こちらも新婚初夜を過ごしていた。
 全員数ミリしか胸が膨らんでいないような鉄板。エストロゲン欠如しまくった見事な貧乳。ド貧乳好きの祐一からすれば貧乳パラダイスのはずだが、ヌ枯れすぎたゆうくんは、まだ新婚で貰ったばかりのお嫁さんを、深夜の妖狐のパワーで天国には送れていなかった。
「センパイ」
 マッパで抱き合っている4人だが、ヤンキー娘も教頭の孫の手前怒り狂えず、「パパのお嫁さんになる~」をして新婚でご機嫌なので、邪魔な女がいても怒鳴り散らさなかった。
「ま!」
 なんか天孫だかガサラキさんが降りちゃってる祐一キュンが、ヤンキー娘と地味子さんの愛の看護?で復活した。
 貰えるボーナスポイントは精力に全振りして、先程のように精子量無限大、精力もほぼ無限大の化け物が爆誕した。
 
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