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KANON 終わらない悪夢

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90栞も香里も美汐チャンも悪夢

 4月に栞が完全回復して毎日正妻面をして弁当持参。香里が倒れた後に「奇跡の濃いシーズン2」が実施されてから一週間ほどで退院。
 毎日のように美坂姉妹が朝早くからランニングして水瀬家に駆け込んでいるルート。

 タッタッタッタッ! ザシュッ、ピンポーン
 朝早くから水瀬家までダッシュで来て、インターホンのチャイムを押す少女。
「祐一ちゃ~ん」
 ピンポ~ン
「起きて~~」
 ピポピポピポ~ン
 どこかの「ひろゆきちゃん」の家と同じ状況の水瀬家。香里の声はどこかの犬チックな「あかりちゃん」にとても良く似ていた。
「あら、おはようございます、香里さん」
 あの家と違う所は、朝早くても秋子が起きている所だった。
「おはようございます、ふぅ、ふぅ」
 何やら息を弾ませながら、元気に答える香里。体力があったので妹より早く完全回復したらしい。
「祐一さんが起きて来るまで、上がって待っていて下さい」
「はい、お邪魔します」
「良かったら一緒に朝食でも」
「いえ、朝は食べて来ましたので」
「じゃあ、お茶だけでもどうぞ」
「はい」
 招待を受け、可及~的速やかにドアを閉じようとした香里だったが。
 ゴガッ!
 外からノブを掴まれ、ドアの隙間に靴を入れられる。
「「あっ」」
「お姉ちゃんっ、やけに早く出たと思ったら、やっぱりこう言う事だったのねっ」
 朝早く家を出る姉を不審に思い、後を追いかけて来た栞を振り切るために走り出し、弁当も持たず作らず、体力に勝る香里が先に到着したらしい。
「ああっ、閉まらない」
 間に挟まった妹の靴を蹴り出しながら、何とかドアを閉めようとする香里。
「まあ、栞さんじゃないですか、よかったらご一緒にどうぞ」
「はい(ニッコリ)」
 鬼瓦のような表情から、ドアの隙間から見える部分だけ笑顔になる栞。
(チッ!)

 そして二人は、どちらも祐一の席の隣に椅子を置き、目も合わさず陣取っていた。
「もう起きる頃ですから、ここで待って下さい」
 ピピッ! ピピッ! ジリリリリリリリリリッ! ピポッピポッピポッ!
 その時、毎朝のように名雪の目覚ましが鳴り響き、水瀬家の朝が始まった。
「じゃあ、私が祐一さんを起こしてきます」
「だめよ、あたしが行くわ」
「あの、やめておいた方が」
 秋子にしては歯切れの悪い言い方で二人を止める。
「「行ってきます!」」
 ドタドタドタ!
 二人は相手を妨害しながら、もつれるように階段を上って行った。
「「祐一っ!(さんっ!)」」
 しかし、祐一の部屋は既にもぬけの空だったので、臭いや温度を探る二人。
((まだ布団が暖かい……))
 まるで時代劇か忍法物のような事を考えながら、祐一の気配を探る。
「ほら、起きろ」
 そこで、別の部屋から祐一の声が聞こえた。
「「名雪(さん)を起こしに行ってたのね(ですね)」」
「あの、あちらには行かない方が」
 後を追った秋子が何とか止めようとしたが、二人は聞こうとしなかった。
「はーい、ばんざ~い」
「ばんにゃ~~い」
 パジャマとTシャツを脱がせ、ブラの準備をしている祐一。
「前え習えっ」
「にゅっ」
 モミモミモミ、うにぐにぐに…
「「祐一っ(さん)、何してるの?(してるんですかっ?)」」
「ゲッ、香里、栞まで」
「あで? 香里だお……?」
 寝ぼけているので、何故家に香里がいるのか分からず、学校で合っても、目も合わさない相手がいても笑っている名雪。
 まだ天使の人形と一弥が抜けていないので、エネルギー抜かれまくりで早起きは不可能であった。

 栞が祐一をエスカリボルグで撲殺したり、香里から寝ている名雪へのマッスルリベンジャーなどなど、一騒動あった後、朝食のテーブルに着席した一同。
「信じられない、毎日ああやって着替えさせて貰ってたのね」
「私だって知らなかったんだよっ」
 やはり目を合わさず、違う方向を向いている二人。
「祐一さんって、そう言う人だったんですねっ」
 さらに何時でも血を吐いて倒れる準備ができている栞。
(朝から最悪の組み合わせだな)
 張り詰めたピリピリした空気の中で、胃に穴が空きそうな重圧を感じる祐一。
「「ひどいわ(です)祐一っ(さん)、あたし(私)と言うものが有りながら」」
「そうだよ、勝手に着替えさせるなんてひどいよっ」
「その前に起きろ」
「まあまあ香里さん、良かったら久しぶりにこれでもどうですか」
 ドムッ!
 机に「謎ジャム」が置かれた。
「「「ヒッ!」」」
 ジャムの破壊力を知る者達は、頭のてっぺんから悲鳴を上げた。
「い、いえ、もう朝は食べて来ましたから、遠慮しておきます」
「わたしもいいよっ」
「俺も」
 そこで、秋子ちゃんの魔手は栞の元に。
「甘くないジャムなんですけど、一度どうですか?」
 祐一や向かいに座っている名雪は、首を振ったり、手でバツを作って「やめて」とか「だめだ」と信号を送っていたが、栞はこう言った。
「はい、頂きます」
((ヒッ!!))
 二人は栞の行く末を思い、心の中で悲鳴を上げた。
(ふっ、これで貴方は終わりよ)
 自滅しようとする栞を見て、クールに笑う香里。
「栞? ジャムは医者に止められてたんじゃなかったか?」
 さりげなく栞を窮地から救い出そうとする祐一だったが?
「いいえ、大丈夫です(ニッコリ)」
 栞は最後の命綱を自分で切り落とした。その時祐一には栞の姿が、集団自殺するレミングのように見えたと言う。
 サクッ!
(馬鹿ね、祐一の前で吐き出すか、無様に倒れなさい)
「おいしいですね」
(((なっ、何ぃいいいいいいい!!)))
 きっと前歯にクラゲの「スタンド」を出して吸わせたのか、四次元の彼方に葬り去ったのか、謎ジャムを口にしても平然としている栞。
「これでしたら、紅茶に入れてもおいしいかも知れませんね」
(まさか、あのジャムを食べて笑える人間が、秋子さん以外にいるなんて)
「ええ、試してみますか?」
 ジャムの味を共有できる人間に出会い、ちょっぴりご機嫌な秋子ちゃん。
(そんな、この子には味覚って物が無いの?)
 無かった。
(ふっ、あの薬を飲み続けた私にとって、この程度の味、何とも無いんですよ)
 栞にとって、ジャムの破壊力など大した物では無かった。
 今まで飲んで来た薬のように、口に入れたとたん脳天まで突き抜ける程まずい物や、間違って喉の奥で糖衣が解ければ、七転八倒の苦しみを味わう物に比べれば、謎ジャムは薬に混ぜるシロップのように、口当たりが良く円やかな味でしかなかった。

 通学路
「お姉ちゃん、離れてっ」
「嫌よ、あんたこそ一人で行きなさい」
「…………」
 暖かい日差しの中、姉と二人で邪魔し合いながら、祐一と腕を組んで通学路を歩いて行く。たったそれだけの事が、今まで見たどんなクズドラマより怒りを誘った。
『どうしたのアレ?』
『奇跡の恋よもう一度、のはずが、お姉さんの方が本気になったみたいね、修羅場よ』
『うわ~、朝から凄いもん見ちゃった』
 次第に下がっていく二人の評価、所詮、世間の噂など、この程度の物だった。
 教室
「おはようございます~、祐一さん、今日はどうしたんですか~?」
 教室に入ると今朝は寝ている名雪では無く、祐一の腕にしがみついているオプションを見て、変な汗を流す佐祐理。
「あ? ああ、これは」
 佐祐理の言葉に、いつか見た妄想に既視感を感じる祐一。
「おはようございます倉田さん」
 しかし、予想に反して佐祐理に丁寧に挨拶する香里。
「はい、おはようございます~」
「先日は姉がご迷惑をおかけしました、
 反対の腕にしがみ付いて、姉の妨害にも屈せず教室まで着いて来た栞だが、こちらも世間体を気にしているのか、普通の挨拶をした。
「…祐一っ」
 まだお姉ちゃんだと判明していない舞ちゃんは、何か苦々しげな表情をしていた。
 二人の中に潜む魔物の気配に気づいているのかも知れない。
 舞が真剣を抜いて、真剣(マジ)で私に故意しなさい?する前に、神移を発動して100メートル7秒の俊足で逃げた。

 そんな数日が続いたが、二人の襲来と朝から泣き出す名雪に挟まれ、胃に穴が開くのを恐れた祐一は、早朝に目覚ましを合わせていた。
 コン、コン!
「朝~、朝だよ~、朝ご飯食べて学校行くよ~」
 ノックだけすると、相手の確認も取らず、まるで自分の部屋のように入る名雪。ついでに目覚ましの内容を生声で聞かせる。
 きっと「お注射」で元気が出たのか、美坂姉妹が来る前に早起きして祐一を起こしに来てしまった。
「起きないと、また飛び乗っちゃうよ?」
「うう~~ん」
「えいっ」
 バフッ!
「あう~~~」
「えっ?」
 飛び乗った布団の中から、祐一以外の声が聞こえたので、驚いて起き上がる名雪。
「ゆ、祐一?」
 頭まで被っていた布団をずらし、顔を出させる名雪だったが、そこには…
「あう~~~」
 裸の真琴が、祐一と抱き合って寝ていた。
「きゃっ!」
 悲鳴を上げてニ、三歩後ずさる名雪。 それはもちろん真琴が帰って来た驚きでは無く、自分と愛し合ったはずの相手が、また別の女と寝ていたからである。
「にゃ~~~」
「いやぁああっ!」
 名雪の瞳からは、ぴろに近付いて猫アレルギーを起こしただけでは無く、本物の涙が溢れ出した。
「何だ? 朝っぱらから… うおっ、真琴っ」
 目覚めた時には裸の真琴と、クローゼットを背に泣いている名雪の姿があった。
「信じてた… 信じてたのに、ひどいよっ」
「待てっ、おまえは今、猛烈に勘違いしている、俺の話を聞けっ」
「あう~~~(は~と)」
「にゃ~~~」
 勘違いを煽るように、まだ寝ぼけている真琴が祐一に抱き付く。
「うそつき」
 現場を押さえられた今、これは修羅場以外の何物でも無かった。
 トン、トン、トン、トン
 一階からは、騒ぎを聞いた秋子も、階段を上って来た。
「お、お母さん、祐一とあの子がっ」
 また名前を呼ばず、「あの子」に格下げされた真琴だったが、やはり秋子のセリフと言えば。
「了承」
 一言だけ言い残すと、また朝の食卓に戻ろうとする。
「待ってよ、お母さんっ! わたしと祐一の事は話したでしょ、それなのに祐一ったらっ」
 何でも包み隠さず話し合う水瀬家では、祐一が落ち込んでいた時の出来事も、秋子が「少しだけ」怪我をして入院した時、祐一がどれだけ力になってくれたか全て話すと、秋子は二人を祝福してくれたはずだった。
「お帰りなさい真琴」
「え? …ただいま(ぽっ)」
 寝起きの目をこすりながら、秋子にだけは挨拶する真琴。
「そうじゃなくてっ」
 裸の真琴を見た秋子は、自分のカーディガンを羽織らせ、ショーツだけは履いているのを確認する。
「あっ、あり…」
 真琴は「ありがとう」と言いたかったらしいが、まだまだそこまで素直にはなれなかった。
「あれからどうしてたの?」
「丘の上で(ポッ)祐一と結婚したの。 指輪はなかったけど、ヴェールだけかぶって、これで」
 チリンッ
 手首の鈴を嬉しそうに動かし、「エンゲージリング」の代わりを見せる。
「そう、良かったわね、その後は?」
 もう今の真琴の言葉を聞いた名雪は、へたり込んで「えぐえぐ」と泣いていた。
「その後は眠くなって… 何も覚えてないの、でも昨日の夕方、丘の上で目が覚めて」
 例のエンディングから、夕方まで寝こけていたらしい。
「ずっと、これ探してたの」
 枕元から、泥で茶色に染まって、ボロボロになったヴェールを出す。
「やっと見付けたのにっ、汚れてたから川で洗ったのに… 落ちないの、あんなに洗ったのにっ」
 茶色のヴェールを抱いて泣き始める真琴。 見付けた後は、日が暮れるまで洗っていたのかもしれない。
「大丈夫よ、ちゃんと洗剤を使って、痛まないように手洗いしたら綺麗になるわ、貸してみなさい、洗ってあげるから」
 頭を撫でながら「よしよし」して真琴をなだめる秋子。 その間自分の娘は、ほったらかしであった。
「本当っ? きれいになる?」
「ええ、新品みたいにはならないけど、白くしてあげるわ」
「うんっ」
 相手が秋子ちゃんだけに、きっと裂け目も直して、真っ白にしてしまうのだろう、と思うのは祐一だけでは無かった。
「真琴、この服、お洗濯したのいつ?」
 ベッドの傍に脱ぎ散らかした、泥だらけの服を拾い集め、洗濯籠に入れて行く。
「…わかんない」
「そう、じゃあ洗うから着替え出してあげるわね」
「うん」
 秋子にだけは素直で、恥ずかしそうにしている真琴。
「それよりどうやって入ったの? 玄関には鍵を掛けておいたはずだけど?」
 秋子にとっては、今の修羅場や名雪より、防犯上の盲点が気になったらしい。
「えっと、入れなかったから壁を登って、そこから」
 そう言いながら、ベランダを指差す真琴。
「お前は泥棒かっ」
 ボカッ!
「なにすんのよっ、痛いわねっ」
 食い逃げ、ヤク中、学校の辻斬り、居眠り娘、病気の妹を無視する女、万年タートルネック、けろぴー、祐一の周囲には、ろくな奴がいなかった。
「もうっ「きんきゅうじたい」だったんだから、しょうがないでしょっ」
「泥棒猫…(ボソッ)」
 名雪にとっては正に泥棒と猫のセットだったが、相手は狐なので「ねこさ~ん」などと、和んでいられる状況でも無かった。
「でも、あの壁を登りきったなんて、真琴って凄いのね」
 いつものポーズで、にこにこ笑っている秋子。
(あの壁って、どんな壁なんだ?)
 きっとSASUKEも真っ青な仕掛けが満載に違いない。 そんなささやかな疑問を抱く祐一だったが、自分で実験したり、門限に遅れても壁だけは登るまいと心に決めた。
(今度真琴に登らせてみよう)
「それで、ゆうべ祐一さんとは愛し合ったの?」
 雑談と一緒に、確信を突いた話題まで、顔色一つ変えずに聞ける秋子。
「えっと、「昨日は」してないよ?」
 その時、名雪と祐一の辺りだけ「サーーー」っと血の気が引く音が聞こえていた。
「そう、でもこれからは、お腹がすいたら夜でも遠慮しないで起こしていいのよ」
 まるで夜食でも作るように簡単に言う秋子、この場合、秋子ちゃんがお腹一杯にしてくれるのかも知れない。
「うん」
「何言ってるのっ、お母さん」
「名雪、真琴が帰って来られたのは偶然じゃないのよ、祐一さんに「愛された」者は、命を吹き込まれたように蘇る事ができるの、不治の病が治った香里さんと栞さんみたいに」
 平然と話す秋子だったが、その意味は鈍感な名雪の頭にも届き始めた。
「愛された? 真琴も、栞ちゃんも? 香里までっ!」
「あなたも祐一さんに「元気」を吹き込んで貰ったのかも知れないわね、朝早く起きられるようになったのも、そのせいかしら?」
「い、いやああぁっ!!」
 名雪は朝食も食べず、今日もダッシュで学校に走って行った。公園のブランコでドナドナ永遠ループかも知れない。
「名雪っ!名雪~~~!」
 祐一とて、パンツ一丁で外まで追いかける根性は無く、真琴もそれを許さなかった。
「何ようっ、せっかくあたしが帰って来たのにっ」
「にゃぁ~~」
「祐一さん、名雪は大丈夫ですから、ゆっくり二人で話し合って下さい」
 そう言いながらティッシュの残量を確認して、箱ごと置いて行く秋子、きっと主婦のエプロンにも「四次元」が存在するに違いない。
 バタン、トントントントン
 扉を閉め、一階に降りていく秋子、だがそれは足音を小さくしただけで、階段の途中で目を爛々と光らせて、中の様子を伺っているとは祐一や真琴が知る由も無かった。
「あっ?(ポッ)」
 秋子が気を利かせて出て行ったと思って、顔を赤らめる真琴。
「バカ、何考えてんだっ」
「もう、祐一っていっつもそうねっ、女心なんて全然…」
 だが祐一の表情は怒った顔ではなく、涙をこらえるような真剣な表情をしていた。
「な、なにようっ」
「どうしてすぐ帰って来なかったんだ」
「だってあれ、風で飛んで行って、すごく悲しかったのは覚えてたから、どうしても探したかったの」
「二人で探したらもっと早く見付かっただろ、それに、俺が持って帰ってたらどうするつもりだった」
「もしかして、探してくれたの?」
 真琴が残して行ったのは、漫画の山と毛布だけだったので、祐一もベールを探していた。
「もしかしないでもだ、それにしてもよく見付けたな、ずっと出て来なかったのに」
「だって、祐一の匂いがしたから」
「こいつっ」
「あう~~~」 
 やっと再会し、涙を流して抱き合う二人。
「でも、あたし、帰ってきたよ、今度は忘れなかったよ」
「心配かけやがってっ」
 やがて二人は引き合う磁石のように…

 ガチャ
「真琴、着替え持って来たから、何か着なさい」
「「ひぃいいいっ!」」
 現場を押さえられそうになり、慌てて離れる二人。
「あら、お邪魔だったかしら」
 もちろん狙っていた秋子ちゃん。
「い、いえ、感動の再会ってやつを少々」
「う、うん」
 何故かベッドの上で、正座して話す二人。
「いいんですよ、続けて下さい、私は見てませんから」
 そう言われて、はいそうですかと、ディープなキスをしたり、パコパコ交尾できる猛者はいない。
「俺、やっぱり学校行きます、お前は自分の部屋で、おとなしくしてるんだぞ」
「うん」
 祐一が出掛けるのは寂しかったが、自分の部屋と言われ、少し嬉しそうにしている真琴。 もちろん祐一が出て行くのは、これから始まる美坂姉妹の襲撃を避けるためである。
「もうどこにも行くんじゃないぞっ」
「うんっ」
 着替えを持って部屋に行く時、真琴はとても嬉しそうにしていた。
(く~~っ、いい足してやがったな~、一回「やって」からでも間に合ったかな?)
 後には真琴の素足と下着を見て、不謹慎な事を考える男が一人。
(ちょっとヌイて行こうか)
 ティッシュを取り、真琴をオカズにして、布団の中でモソモソし始める祐一。
(あの細い足首を掴んで、思いっきり広げて中まで…)
 ドタドタドタドタ、ガチャ!
「げっ!」
 また秋子ちゃんが入って来たのかと驚くが、こんな騒がしい登場の仕方をするのは、一人しかいない。
「祐一っ、あっ!」
 ツルッ、ごすぅっ!
「…あう~~~~」
「いってぇ~~」
 真琴のダイビングヘッドバッドが決まり、ダブルノックアウトとなった。
「お前なあ~」
 フォール寸前、カウント2.8で祐一が起き上がり、いきなり飛び付いて来た大馬鹿者をひっぺがす。
「急に抱き付いてくる奴があるかっ」
「パジャマが脱げかけて滑ったのよ~」
 ボタンもちゃんと止まっていないまま、慌てて駆け込んで来た真琴。
「だって隣にいる間に、祐一がいなくなってたら嫌だから」
「頭の上に、ぴろが乗ってたらどうするつもりだ、今ので潰れてたぞっ」
「置いて来たもん」
「にゃ~~」
 そこでぴろは、ドアの隙間から入って、定位置に落ち着いた。
「あっ」
 その声はぴろが頭に乗った驚きでは無く、下腹部に当たる懐かしい感触に気付いたからである。
「エッチ」
 もちろん真琴が飛び乗っても捻挫?しなかったのは、インパクトの瞬間も「手で握ってガード」していたからなのは間違いない。
「仕方ないだろ、朝なんだからっ」(C)シンジ君
 この手のキャラの場合、寝ている祐一の布団を剥がし、朝立*しているのを見て「キャーー!エッチ、チカン、変態、信じられない!」とか言ってビンタを入れるのがお約束だが、この場合、*立ちではなく、自分がオカズになっている自覚があったのか、発言が弱かった。
「脱げ」
「えっ?」
「お仕置きだ、お尻ペンペンしてやる」
 そう言いながら、ドアの方に行き、内鍵を掛けておく。
「なにようっ、ちょっと滑っただけなのにっ、きゃっ!」
 裏返され、下着を引きずり下ろされた所で、ようやく「お尻ペンペン」の意味が分かった真琴。
「あう~~、そんなとこ広げて見ないでようっ」
「また名前以外忘れて、どこかで拾われて、パコパコ浮気してなかったか調べてやる」
「あう~~~~」
 両手の指で思いっきり広げられ、中まで調べられちゃうマコピー。
「もうこんなにヌルヌルにしやがって、入れるぞっ」
「もうっ、祐一って「でりかし~」って物が… きひぃっ!」
 ず*ゅるっ
「どうだ?痛いか」
 パンパンパンパンパンッ!
「あう~~~」
 痛みは無かったが、これはお仕置きなので、気持ち良くしてやる必要は無い、真琴はそれから約3分間、お尻パンパンされ続けた。
「うっ!」
 これでもか、と言わんばかりに、朝の濃ゆいのを、たっぷり中に叩き込んでやる祐一。
「ハアッ、ハアッ、ハアッ、ハアッ」
 真琴も激しく体を揺すられて、荒い息をしながら、涙やよだれを流していた。
「これで懲りたら、少しはおとなしくして、秋子さんの言うこと聞いてるんだぞ」
「うん(ポッ)」
 全然懲りた様子も無く、嬉しそうにしている真琴。 これで味をしめ、毎晩お仕置きしてもらうため、深夜のいたずらが再開されるのは間違い無かった。
(すばらしいですわぁ)
 秋子ちゃんも黙って見ていた訳ではなく、真琴の部屋からベランダに出て、ハンディビデオを持って、二人の性長?の記録を撮っていた。
「ピピーー、あさ~、朝だよ~、朝ごはん食べないと~」
 名雪声の目覚ましが鳴り、美坂姉妹襲撃に備えなければならない時間になってしまった。
「うっ、もうこんな時間か、あいつらが来る!」
 美坂姉妹の来襲を察知して、素早く着替えて用意をする、もちろん、犯されたばかりのマコピーなど見られた日には命が無くなる。
「神移!」
 本日も100メートル7秒の俊足で着替えて朝食を食べてから学校に逃げる。美坂姉妹の襲撃から逃げる。
 
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