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IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》

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【第634話】

 
前書き
前日の話 

 
 京都修学旅行前日の日曜日、時間は午後を回る。

 普段なら買い物や遊びなどでほぼ誰もいない食堂に一年生ほぼ全員が集められていた。


「ぱんぱっかぱ~ん♪ ひーくんのの隣の席争奪、ババ抜きトランプ大会~♪」


 主催者である布仏本音の合図と共に一斉に開催されたババ抜き大会、これはもちろん学園非公式の大会だ。

 集まった一年生ほぼ全員、グループ毎に分かれてババ抜きをしている。


「えへへ、いっちばーん♪」


 真っ先に上がったソフィー・ヴォルナート、笑顔と共に勝利のピースサインでアピールしていた。


「むむ、エミリアだってあがるもん! ヒルトくんの隣はエミリアだもん!」


 先に上がったソフィーを見ながらババを引き当てたエミリア、思わずこめかみがひくついていた。


「上がったわ」


 次に上がったのはセラ・アーカニアンだった。

 くすりと微笑むセラ、負けて悔しそうな表情を浮かべていたのはセシリアだった。


「ふ、不覚ですわ! こ、このわたくしがババ抜きで負けるなどと……!」

「勝負は時の運とヒルトへの想いの差。 ヒルトの隣は私がもらう」


 静かに闘志を燃やし、そう告げたセラ。


「うぬぬっ、エミリアだってあがるもん! ぜーったい! あがるもんっ!」


 ああ無情、エミリアの手札にはババだけが残されていく。

 そんな大会が行われているとは露知らず、一夏は写真屋戻ってきたフィルムを眺め、整理をしていた。


「資料はこれでいいよな、後は自分用と保管用っと」


 生徒会資料用の写真だが、一夏の撮った写真の一部は既に焼け払われたり崩れたりしている。

 重要文化財に被害はなかったものの、観光街や繁華街には被害が及んでいた。

 それら当たり前の日常はあの日に失われたものの、写真の中には永遠と残り続けるだろう。


「おっと」


 不意に一枚の写真が落ち、拾い上げて見ると京都駅で最初に撮った集合写真だった。

 学園から去り、テロリストとなった二人も写っている。

 ダリル・ケイシー及びフォルテ・サファイア。

 二人の笑顔を見た一夏は呟く。


「何で……何でだよ……」


 二人の裏切りを信じられなかった――親しい間柄じゃない、今回の事件で裏切った二人とは対峙していない。

 実際に対峙したのはヒルトや一部の専用機持ちだけ――だがそれでも一夏は呟く。


「何で裏切るんだよ……。 俺が皆を、守らなきゃいけないのに……。 力が……まだ足りないのか……」


 誰も答えない、応えない――虚しく響く一夏の独り言と共に纏めた写真が床一面に散らばった。

 場所は戻り食堂、続々と各グループ一抜けメンバーが出てる中、エミリアは静かに涙を流していた。


「うぅ……ぃぃもーん。 エミリア、ヒルトくんに慰めてもらうもーん……」


 そうは言うもののやはり隣になれなかったエミリアは悔しい、いくらえっちしたからといってヒルトが自分だけに振り向く可能性は低い。

 せめて道中隣で思い出を作りたかったのだが、あいにく一抜け出来なかったエミリアにその権利は与えられない。

 それはさておき、各グループから抜けた一抜けメンバーによる早抜け決定戦が開始されていた。

 メンバーはソフィー・ヴォルナート、セラ・アーカニアン、鷹月静寐、布仏本音、エレン・エメラルド、飯山未来、シャルロット・デュノア、栗原理央、宇崎玲となっている。

 負けたメンバーは口から皆魂が飛び出たまま放心していた。


「な、何故だ……私はヒルトの夫なのに……」

「お兄ちゃんの隣じゃない……うぅ」

「ショック! ショックショックショックッ!」


 ラウラ何かは涙ぐみ、魂が半分以上出ていた。

 美冬は項垂れ、美春も負けたショックにムンクの叫びにも似た表情を浮かべている。

 それはさておき、繰り広げられるババ抜き大会――奇跡のババ一巡というまさかの堂々巡りで場が賑わっていた。

 場所は変わり寮近くの公園、ヒルトはシャイニィもといにゃん次郎と散歩していた。


「……明日はまた京都か」

「にゃぅ」


 あれからもうすぐ一週間、時間の流れというのは早い――。

 公園を駆けるにゃん次郎を見つめつつ、裏切った二人の事をヒルトは思い出していた。

 あの二人は一応休学扱いにはなっているが、亡国機業に降ったという事実は隠せない。

 箝口令にも限度はある、一応世界的なニュースになってないのだけが幸いだろう。


「……にゃん次郎」

「うにゃ?」

「アリーシャ――いや、アーリィさん今頃何してるんだろうな」

「にゃあ……?」

「わかんないか……。 ……よし、散歩の続きするか」

「にゃっ」


 少しは元気出たものの、まだどこか陰りが見えるヒルト。

 そんなヒルトをにゃん次郎は首を傾げて眺めるだけだった。

 場所は戻り食堂――ババ抜き大会も決着が着いた、そして勝者は声を上げる。


「わあ~。 私、あーがりぃっ♪」

「くっ……! 先に上がられた!」

「おー? 本音羨ましいぞー、私と替われー」

「いひひ~。 れいれい~、勝負は残酷なのだよ~」


 ヒルトの隣の席争奪戦は布仏本音の勝利で幕を閉じた、だがあくまでも新幹線の隣の席――自由行動にまだワンチャンスある。

 気持ちを切り替えた一同は前以て回ろうとしていた場所を改めて検索かけ始めたのだった。 
 

 
後書き
そろそろガス欠かも 
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