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IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》

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【第618話】

 ヒルトがアリーシャを追って飛翔した直ぐ後だった、背後に聞こえた足音に振り向く一夏。


「お前は……!」


 いまだに状況に困惑する一夏が振り向いた先に居たのは亡国機業の一人であるオータムが立っていた。


「へっ、相変わらず脳ミソ日向ぼっこかァ? 織斑一夏!!」


 素早く拳銃を抜くオータム、繁華街に鳴り響く発砲音に逃げ遅れた一般人の悲鳴が木霊した。

 一夏の頬を掠めた銃弾――不味いと思った一夏は体が動き、背を見せて逃げる。


「逃がさねぇぜぇ!?」


 乾いた発砲音がビルの合間に反響、壁に弾痕を残す――狩りを楽しむかのようにわざと外すオータム。


「ハハハッ! 逃げの一手かよ、織斑一夏!」


 そんなオータムの挑発は一夏の耳には聞こえていなかった、けたたましくなるクラクションの音、一般人の悲鳴、警報器のサイレン全てが挑発の言葉を消していく。

 もし仮に聞こえていたのなら、ヒルト達とは関係無い所でIS市街地戦が開始されていたかもしれなかった。


「チッ! 待てよ織斑一夏ァ!!」


 チュンッチュンッ!と弾丸が弾ける音――既にヒルト等からかなり離れた位置、疎らに見える逃げ遅れた人を避け、路地裏へと逃げる一夏。

 一般人を巻き込むわけにはいかないという正義の心という訳のわからないものに支配されていた一夏。

 だがそれでも観光街、繁華街は人だかりがあり、銃撃事件や爆発事件の事情を知らない人間もいる。

 銃声が響く度に一般人は悲鳴をあげ、逃げ惑い、親と離れた子供の泣き声がオータムを刺激した。


「クソガキが、黙れよ!」

「ウワァアアアアアン!!」

「チィッ! 退け、くそが!」

「キャアアアアッ!?」


 路地裏へと逃げる一夏を追うオータム、パトカーのサイレンも聞こえてくるがオータムは気にする事もなかった。

 ISがある以上負ける要素はない――拳銃の弾装を換え、ひたすら一夏を追うオータム。

 そして、一夏が袋小路に入ったのを見てオータムは唇の端をつり上げた。


「おおっとぉ、そこは行き止まりだぜぇ?」

「クッ……!?」


 袋小路に追い詰められた一夏、逃げる術は空中以外ない状況、万事休す――にじりよるオータム、だがそこにパトカーが止まった。


「二人とも動くな! おい、応援を――」


 そんな一瞬の隙だった、オータムは振り向き様にやって来た警察官の足を撃ち抜き、パトカーに乗っていた相棒にもその凶弾が襲う。

 足を撃ち抜かれた警官は痛みに転がり、パトカーに乗っていた相棒は急所は外れたものの重傷を負っていた。


「……ッ! 白し――」

「ハッ! 展開すればこの警官を殺すぜ?」


 何度か鳴り響く発砲音――展開しようとしていた一夏だが流石に人質をとられていては無理だった。


「クッ……卑怯だぞオータム! 怪我した奴を人質に取るなんて!」

「けっ! テロリストに卑怯もくそもねぇよ織斑一夏! そもそもてめえが逃げなきゃ、こんな事態にはなってねぇだろ?」


 そんな時だった――オータムがISコアの反応を感じたのは、新しく奪ったアラクネのコア・ネットワークが反応を示していた。

 オータムの周囲を囲むように三機の機体がステルスを解除した。


「確保する!!」


 現れた女性の一声で動く二機の動き――瞬時展開しようとしたオータムより早く、一機は首筋にナイフを当て、もう一機は腹部にナイフを突き付ける。

 あまりの速さ、動きにオータムは舌打ちし、観念したように拳銃を地面に落とした。

 それを蹴り、壁際へと追いやる眼鏡の女性は直ぐ様状況報告し、救急車の手配をした。


「あ、貴女達は……いったい……」


 一夏を助けたのはダークブルーカラーの打鉄を纏った女性達だった、既にオータムを無力化させた隊員はオータムを拘束している。

 その内の一機、眼鏡を掛けた知的そうな美人が一夏に近づく。


「今回の作戦に協力させていただく、原田晶一尉であります」

「原田……さん?」

「……それはさておき、怪我は無いかね、織斑一夏くん?」

「え、えぇ……」


 一夏はそれだけを言う――直にやって来た救急車二台に乗せられ運ばれた警察官二人を見送ると同時にヒルトが現れた。


「無事か、一夏?」

「あぁ、俺は無事だぜ?」

「そっか……なら良いが。 ……オータム、か……」


 ヒルトはチラッと一瞥した、オータムは完全に無力化され、猿轡までされていた。


「それでは楯無さん、我々は今回の事後処理の為に一時離れるが、直ぐに合流は可能だろう」

「ええ、ご苦労様です、原田一尉」


 無力化されたオータムをいつの間にか来ていた楯無が預かる、そしてフッと三機はステルスモードに移行し、その場から消え去った。


「ヒルトくん、一夏くん、現場を離れましょう。 車は確保してあるからこの女を連れて旅館へ。 今後の対策を練りましょう」


 そう言って楯無はオータムを起こすと歩かせた――モガモガと何かを告げるオータムだが眼光一閃で黙らせる。

 ヒルトと一夏はそのあとに続くと一台の大型車が停まっていて、楯無が真ん中の座席に乗り込み間にオータム、そして一夏が後ろに乗ってヒルトがオータムを挟むように座る。


「よぉ、大丈夫かヒルト?」

「ああ、大丈夫だ」


 運転手は陽人だった、全員乗り込んだのを確認するとそのまま車を走らせる。

 銃撃、爆発があってか多少混雑はしていたものの大通りを避けて親父は皆が待つ旅館へと走らせた。

 バックミラーからオータムを見る陽人の目付きは鋭く、殺気を感じ、いつもとは違って車内は静まり返っていた。

 流れる景色を見つつ、ヒルトは裏切った二人の事を考えていた――。


 無事アリーシャとヒルトから逃走したレインとフォルテの二人は亡国機業のスコールと合流、彼女等が京都滞在に使う京都のトップクラスのホテル、エグゼクティブフロアにあるプールに二人の姿はあった。


「あ~、気持ちいい。 流石は亡国機業の実働部隊『モノクローム・アバター』を率いるスコール叔母さんだ。 待遇が違うね」


 全裸で泳ぐレインはスコールを見ると、当の本人は苦笑を溢し、寝そべっていた身体を起こした。


「嫌み? 後、叔母さんはやめなさい。 正体がばれるわ」

「いいじゃんかよ。 なあ、フォルテ?」


 レインと同じ様に全裸でプールに浮かぶ巨大な浮き輪に乗っていたフォルテは小さく反応した。


「そ、そっスね。 はは……」


 恥ずかしそうに笑うフォルテをスコールは小さく笑みを溢す。

 亡国機業にとって一機のIS手に入れることは大きい、何れ裏社会のトップに立つためにも、ウィステリア・ミスト率いるイルミナーティを排除するにしても戦力は喉から手が出るほど欲しかった。

 その為ならスコールは何でもした――カーマインに抱かれる事すら惜しくない、身体を使って仲間に引き入れれるのであればそれに越した事はない。

 ふと腕時計を見たスコールは小さく溜め息を吐く様に呟く。


「それにしても、オータムは遅いわねぇ。 織斑一夏くんを招待するように言っておいたのに」


 サングラスを外したスコール、再度身体を起こして時計を見る。


「ああ、オータムは捕まったって」

「……? 言ってる意味がわからないのだけど」


 レインの言葉に顔をしかめたスコール、オータムは元女性特殊部隊所属にしてISを装備している。

 簡単に捕虜に出来るはずがない――だがレインはプールから上がり、タオルで身体を拭きながら自分の携帯端末を手にとってそのメールを見せた。

『亡国機業オータム確保、各員至急作戦会議場へと戻られたし』――という内容だった。

 その内容を見たスコールは勢いよくプールチェアから立ち上がり、二人に告げる。


「二人とも、迎えにいくわよ、オータムを」


 スコールの目には怒りにも似た焦りが浮かんでいた、動揺しているらしく、放っておいたら単機で行きそうな勢いだった為、フォルテは言う。


「いや、それはちょっと……向こうの戦力は冗談が効かないレベルっスよ? 二代目ブリュンヒルデのアリーシャに加えて自衛隊からも応援が来るらしいっスから。 ……他だと人材的に見たら有坂ヒルトの父親が途中から入ったぐらいっスけど、学園警備員程度っスから人材戦力に加算はしなくても平気っスね」


 スコールは有坂ヒルトの父親と聞いて戦慄した――キャノンボール・ファスト時に彼と対峙、一瞬判断が遅れていれば今自分はこの場にいなかっただろう。

 だがそれよりも、彼が身に纏うIS――否、似た何かのパワードスーツが驚異だった。

 それに――レインは有坂ヒルトの暗殺に失敗している、先日不意討ちとはいえ一方的にやられたことをスコールは忘れていなかった、だから暗殺対象を有坂ヒルトに変更したのだ。

 奥歯を噛み締めるスコール――現状戦力が此方は四機、だが向こうは調べた限りの保有戦力は十五機――有坂陽人や自衛隊を入れたら規模としては大きかった。

 制限を解除した四機だけでは先ず無理だ、単純に四対一という計算、話にならない。

 ――それに、有坂ヒルトの機体は制限されて此方を圧倒したのだ、無策のまま向かえば確実に負け、捕らわれ、待っているのは極刑……。


「今は機会を待つしかねーんじゃねーの? 叔母さん」

「………………」


 レインの言葉に無言で立ち去ったスコール、レインは肩透かしを食らい、フォルテを見た。


「オレらも行こうか、フォルテ。 ベッドにさ、いっぱい愛してやるから」


 その言葉に頬を染めたフォルテは――。


「わ、わかったっス……」


 頷き、プールから上がったフォルテにもう裏切りの迷いは消えていた、だがヒルトの言葉だけは無意識下に刻まれていたのだった。 
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