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IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》

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【第632話】

 
前書き
ちょいオリジナル 

 
 レゾナンス内を散策するヒルト、たまに一組生徒と行き交い、手を振って挨拶する――だがさっきのスコールとのやり取りがヒルトを更に思い悩ませていた。

 織斑千冬に気を付ける事、倉持技研の事はヒルトに関係ないと言いたいのだがもしかすると村雲や天照、天・伊邪那岐のデータを狙っているのではと勘繰る。

 もやもやしていると突然声を掛けられた。


「君、何暗い顔してるのかな?」

「え?」


 突然声を掛けられたヒルト、振り向いた先に居たのは赤い眼鏡を掛けたブロンドロングヘアーの女性だった。


「え……シャル?」


 眼鏡を掛けているとはいえその容貌はシャルを少しお姉さんにした感じだ、仮にシャルから姉と紹介されてもおかしくないぐらいに似ていた。

 違う点をあげるなら彼女の瞳の色だ、エメラルドグリーンは鮮やかな色をしている。


「シャル……って、もしかして僕の事? あははっ」


 屈託なく笑う彼女、幾ら似てるからって間違えるのは失礼だった。


「す、すみません……知ってる子に良く似ていたので」

「ううん、僕なら気にしないから大丈夫だよ♪」


 本当に気にしてないのか彼女は笑顔でそう告げた、そして――。


「それで、どうして暗い顔してるのかな?」

「え? あ、いや……その」


 流石に初対面の人間に打ち明けるのも躊躇するヒルト、一般人に言うわけにもいかなかった。


「……すみません、ちょっと訳ありで……」

「そっかぁ。 ……じゃあさ、暫く僕の買い物に付き合ってくれない?」

「え?」


 何でいきなり買い物に付き合わなければならないのか理解できなかったヒルトだが、半ば強引にヒルトの手を取り――。


「ほらっ、行こっ♪」

「ちょ、ちょっ!?」


 強引な彼女に手を引かれ、一路買い物に付き合わされたヒルト――洋服を見たり小物を見たりと彼女はヒルトを様々な場所に連れていく。

 そんな光景を偶然シャルが遠目で目撃した、ショックを受けると同時にヤキモチを焼くのだがそれよりもヒルトの隣に居る女性に近視感を感じた。


「シャルロット、どうしたのだ?」

「え? ……ううん、何でもないよ?」

「そうか。 では買い物の続きに行こうではないか」

「う、うん……」


 ラウラに手を引かれてヒルトとは反対側に向かうシャル――何かの見間違いかなと思い、買い物で気を紛らわす事にした。


「うーん、これはどうかな?」


 洋服を持ってヒルトに見せてくるお姉さん――ヒルトはそれよりも名前が気になった。


「てかお姉さん、名前は?」

「フフッ……女の子に名前を聞く前に自分が名乗らなきゃダメだよ?」

「あ……有坂ヒルトです」

「うん、実は知ってたよ。 この世界初の男の子のIS搭乗者だよね?」


 知ってるなら何故自己紹介させるのかと思うヒルト、気恥ずかしさで頬を掻く。


「じゃあ僕の番だね。 僕はシャルロ――じゃなくて、シャルトルーズ。 シャルトルーズ・D・フォルカスだよ」


 シャルトルーズと名乗ったお姉さん――何気に彼女もシャルになるのかと不意に思った。

 だが自己紹介が終わったら直ぐ様持っていた洋服を見せるシャルトルーズ、似合うかどうか判断してほしいのだろう。

 シックな色合いのコートだった、冬に向けての準備だろうか。


「うん、良いと思いますよ?」

「……」


 ジト目で見てくるシャルトルーズ、疑問に思っていると――。


「女の子がどうかなって聞いてるんだからそこはもっと誉めないとだよ?」

「ぅ……」


 出会ったばかりの人に誉めるのもどうかとも思ったが――その後もヒルトはシャルトルーズに付き合わされ、洋服や小物を見ていくのだった。

 一方でセシリア、一旦未来や鈴音と分かれて単独行動していた時だった。


「あ……ああっ!? せ、セシリー! セシリーじゃないかっ♪」


 びくっと身を震わせたセシリア、この呼び方をする人は一人しか居ない――恐る恐る振り向いた先に居たのは元許嫁であるゴードン・ラッセルだった。

 後ずさるセシリア、何でここにゴードン・ラッセルが居るのかが理解できない、既に関係は解消されているのに――。


「お、お久し振りですわね、ラッセルさん……」

「フフンッ。 君も相変わらず見目麗しいね……。 君の前ではこのバラですら美しさは霞むよ!」


 何処からともなく取り出したバラの花束、もらって嬉しくない訳じゃないが出来ればゴードン・ラッセルからは欲しくなかった。


「ごめんくださいまし、今は買い物中ですので花束等はご遠慮くださいまし」

「あぁ……何て奥ゆかしいんだ! 僕はそんな君が大好きサッ★」


 バチッとウインクするゴードン、セシリアはこめかみをひくひくさせていた。


「あぁ……こんな庶民が来る場所で君と出会えるなんてまさに運命! 赤い糸が見えるよ、僕はッ♪」


 小指を立てて見せたゴードン、ため息を吐き、セシリアはとりあえず指でハサミを作り、その赤い糸なるものを切った。


「な、何て事をするんだい!? セシリー、酷いじゃないかっ★」

「酷いとかじゃありませんわ! 既に貴方との許嫁関係は解消されましたのよ!?」

「あぁ……怒った顔もチャーミングだね……。 ふふん、あれは君の本心じゃないことぐらい知っているサ★」

「……言っても無駄そうですわね……」


 聞く耳の持たないゴードンにへきへきしていた時だった、未来が現れたのは。


「セシリア、何かあったの?」

「あ……未来さん、助けてくださいまし!」


 現れた未来の後ろに隠れるセシリア、何事かと思っていると目の前の金髪男子――ゴードン・ラッセルが迫ってきた。


「隠れる事ないじゃないかセシリー♪ ……っと、君は……なかなか可愛いじゃないか、僕の愛人にしてあげるよ♪」

「!」


 いきなりのセクハラ発言に未来は絶句する、初対面の人間に愛人にしてあげるよ何て言われたら誰でも絶句するだろう。

 そして――。


「御断りします。 というか私の友達が困ってるでしょ!?」

「ふふん、それはセシリーの照れ隠しなのさ★」


 ダメだ……話を聞かない辺り織斑くんと同レベルぐらい鬱陶しい――そう思った未来。

 と、其処にやや年配の執事風の男性が現れる。


「ゴードンお坊っちゃま、いい加減になさってくださいませ。 お父上から帰国しろと連絡がございましたのだから帰りますよ」

「ぬわあ!? や、やっとセシリーと会えたのに!? や、やめてくれセバスチャン!? まだ僕は、僕はーッ!!」


 連行されていくゴードン・ラッセル、セシリアは安堵の溜め息を吐くと未来に――。


「未来さん、助かりましたわ。 はぁ……」

「しつこかったね……」


 買い物に来たのに精神的に疲れたセシリア、だがこれで暫くはゴードン・ラッセルとは顔を会わせなくて済むと思えばセシリアの心は軽くなった気がした。

 レゾナンス三階、エレン・エメラルドも皆と分かれて一人で行動していた。

 私服はそこそこ揃えたとはいえ、まだ冬物があまりないのが現状だった。

 一着手に取るエレン――。


『へぇ、なかなか似合ってるじゃんエレン』

『凄く可愛いね、エリー。 君は何を着ても似合うね』

『全く……子猫ちゃんはそんな服来て俺様を誘惑する気かい? 仕方のない子猫ちゃんだな……試着室で沢山可愛がってやるぜ』


 またも乙女の思考回路が暴走するエレン、こうなってはエレンSD消防隊は鎮火作業に追われるだけだった。

 ふと唇にふれるエレン――あの時の感触が甦る。

 そういえば――唇に塗るグロスを持っていなかったなと思ったエレンは洋服を戻すとコスメティック専門店へと向かうのだった。

 思い思いに過ごすレゾナンス内での出来事――夕方、皆が学園に戻る時間が迫っていた。


「シャルトルーズさん、すみません……そろそろ戻らないと」

「あ……そうだね。 ……どう? 少しは気がはれたかな?」


 顔を覗き込むシャルトルーズにヒルトは頷く、頭の片隅に追いやられた亡国機業、倉持技研、そして織斑千冬の事は記憶の奥底に眠りについた。


「良かった♪ じゃあここで良いよ、君も早く戻らないとね?」

「え? でも荷物あるでしょ?」

「大丈夫だよ、ツレと来てるから♪」


 ツレと聞いてヒルトは不味いことしたかなと思った、これだけ容姿に優れているのだ、彼氏がいない訳がない。


「大丈夫ならいいんですが……」

「うん、じゃあまたね。 君とはまた近いうちに会えると思うから♪」


 そう言って荷物を抱えて走り去るシャルトルーズを見送り、ヒルトは集合場所に集まり、帰路に着くのだった。


「お待たせ、ウィステリア♪」


 駐車場で待っていたウィステリア、チャネル通信を聞きレゾナンスの表に車を回していた。

 車は古いタイプのマッスルカーだ、黒光りするその車は所々カスタマイズされていて洗練されている。


「構わないさ。 荷物を積んだら本部へ戻ろう」

「うん♪」


 荷物を車に詰め込むウィステリア、シャルトルーズを助手席に乗せて自身が運転し、街中へと消えていった。 
 

 
後書き
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