IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》
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【第629話】
前書き
少しだけ合間のお話
京都から戻ってきたヒルト達、そして一応一夏預かりとなっているシャイニィ――又の名をにゃん次郎、勿論雌である。
今日はそんなシャイニィ(にゃん次郎)の朝の散歩物語。
朝起きたシャイニィ――心地よく眠っている一夏を一瞥した後、見慣れない土地という事で散歩に出る。
軽やかな身のこなしで窓から外に出ると手刷り伝いに歩いていく。
シャイニィの瞳に映るのは皆女の子、御主人様であるアリーシャも女性だが明らかに若い女の子ばかり。
だが朝も早いせいか皆寝てます、手刷り伝いに窓から覗いて見ても皆寝ていて思わずシャイニィも「にゃあ……(つまらないわ)」と泣き、手刷りから近くの木の枝に跳び移り、器用に降りていきました。
暫く散歩しているとカモメの鳴く声を聞き、興味が沸いてそっちへと走っていく。
波の音、寄港する船、貨物を降ろすクレーンと様々な物がある港へと辿り着きました。
「にゃ!(魚あるかしら!)」
いつもはアリーシャから与えられる高級にゃんこフードを食べてるシャイニィ、猫界で噂のお魚の味を食べてみたくなりました。
カモメの事も忘れて港を歩くシャイニィ――行き交うフォークリフトを華麗なにゃんこステップで避け、危ないと判断したのか少し端よりに歩いていきました。
ふと海面を覗いて見たシャイニィ――そこには同じ白猫と目が合いました、勿論それはシャイニィ自身の水面映し――だけどシャイニィにそれを理解できません。
「にゃ……にゃにゃっ(貴女、何でそんなところにいるの?)」
前足でちょこちょこ水面に手招き――勿論水面映しである白猫も同じように手招きした。
「にゃぅ……ふにゃ!(私を真似する何て生意気!)」
尻尾が逆立つシャイニィ、暫く水面映しの自分とは気付かず、港にシャイニィの鳴き声が響くのだが――。
「うにゃぅ……(もう貴女の相手、疲れちゃった)」
そんな鳴き声を鳴らしてシャイニィはまた魚を探すために港を歩く。
暫くすると学園に住み着いた三毛猫が眠たそうに欠伸をしていた。
「みゃう(おはよう、三毛猫さん)」
「にゃぅ(お前、見ない顔だな。 ここには来たばかりか?)」
「ふみゃっ(えぇそうよ。 名前はシャイニィ、よろしくね三毛猫さん)」
「にゃぅ、にゃぅ(よろしく。 俺の名前はにゃん太郎だ)」
「にゃ? にゃにゃう?(あら? にゃん太郎って名前なの?)」
「ふにゃっ、みゃうっ(ああ、元々俺には名前が無くてな)」
「ふにゃ(そうなの。 ……気のせいかしら、最近そんな名前で呼ばれるから近視感が……)」
「みゃう?(ん? シャイニィって名前じゃないのか?)」
「にゃ(ええ、シャイニィよ)」
「ふみ、にゃぅにゃぅ!(何か訳ありって感じだな。 それよりもだ、この港には何をしに?)」
「にゃぅんっ(お魚さんを探しに来たの)」
「ふみゃっ(魚か……一応海には泳いでるが、ここじゃ魚はあがらねぇぞ)」
「にゃにゃっ!?(そうなの!? うぅ……お魚さん食べたかったわ)」
がっくり頭が下がるシャイニィ――にゃん太郎はそんなシャイニィの頭ににくきうを当てた。
「みゃみゃう(まあ落ち込むな。 魚だったらここに居れば食べられるしな)」
「にゃうっ!? にゃんにゃん、ふにゃ(本当!? まあ暫くはここに居るから食べられるわね)」
魚が食べられると聞き、嬉しそうにぴょんぴょん跳ねるシャイニィ――暫く二匹は会話を楽しんだあとシャイニィはまた散歩の続きを楽しむことにしました。
危ないフォークリフトの姿も無く、舗装された並木道を歩くシャイニィ。
時おり見る昆虫に心惹かれそうになるシャイニィ、我慢して散歩の続きを楽しんでいると突然――。
「あれ? にゃん次郎?」
にゃん次郎と呼ぶその声の主は一人しか居ませんでした、にゃん次郎じゃないけど振り向くシャイニィ――そこに居たのはヒルトだった。
「よっ、朝の散歩か?」
「にゃう……みゃっ(にゃん次郎じゃないけど……ええ、散歩よ)」
「ふーん……。 まあこの辺り散歩するなら危なくない所を歩けよ」
「みゃうみゃ。 にゃ、ふにゃにゃんにゃ?(ええ、気を付けるわ。 てか何気にこの人、私の言ってる事がわかるのかしら?)」
「気を付けろよ? あ、でも帰るなら寮まで連れて帰るけど?」
「うにゅ、にゃうん。 にゃあん(どうやら通じないようね、これまで通じてた気がしたけど。 一応そう言ってるから甘えようかな)」
そう鳴き、ヒルトの腕伝いに肩に乗るシャイニィ――にゃん次郎と呼ばれた事に対してシャイニィはヒルトの頬ににくきうを押し当てる。
「むぎゅ――どうしたにゃん次郎? にくきう押し当てて?」
「にゃん、みゃうん(にゃん次郎って呼ぶからよ)」
「ふーん。 後でにくきうぷにぷにされたいんだな?」
「……にゃあ(やっぱり通じてないのね、にくきうぷにぷに何て冗談じゃないわ)」
つんとそっぽを向くシャイニィ――そんなシャイニィを肩から抱えるように抱くヒルト。
突然の事にシャイニィはきょとんとし、ヒルトから目が離せなくなりました。
其処から暫くして寮まで戻るとシャイニィを解放したヒルト。
「まだ朝早いからな、多分寝てるだろうし……。 窓から出てきたんだろうし、其処から一夏の部屋に戻れよ」
「みゃ、みゃう(あ、ありがとう)」
「じゃあな、にゃん次郎」
そう言って寮の中へと消えていくヒルトを見送り、シャイニィは器用に手刷り伝いに一夏の部屋に戻ることにしました。
時間も時間だからか、ぼちぼち起き始める女の子達、シャイニィもそんな様子を見ながら一夏の部屋に戻るとまだ眠っていました。
「んん……大丈夫だよ……俺が、守るから……守ってやる、よ……」
「……にゃにゃ?(何の夢?)」
心地よく眠る一夏に、シャイニィは顔の隣へ移動――そして徐に猫パンチを何度も繰り返す。
ペチペチ叩くシャイニィ――と。
「ん……何だよシャイニィ……。 せっかく気持ちよく眠ってたのに」
「にゃう。 みゃんみゃう(起こしてあげたのよ。 それよりお腹が空いたわ)」
「……ふわあ」
大きな欠伸をする一夏、身体を起こして起き上がると洗面所へと向かっていく。
小さくお腹が鳴るシャイニィ――机の上にはアリーシャから預かっているにゃんこフードが積まれている。
机に移動し、缶詰めタイプのにゃんこフードを転がすシャイニィ――動くものを見た彼女はそれに夢中になり、ひたすらコロコロと転がし始めました。
楽しい一時、お腹が空いてるのも忘れ、机の上で転がしていると洗面所から戻ってきた一夏、シャイニィを見て――。
「おぉ? 楽しそうに遊んでるな、シャイニィ」
遊んでると勘違いしたのか一夏は玄関を開けて部屋を出ていきました、残されたシャイニィ――飽きたシャイニィは一夏に頼れないと思ったのか、器用に缶詰めをコロコロと転がし、部屋を出ていきました。
遊びに夢中で忘れていたお腹の音――早く食べないとお腹が空きすぎて死んじゃうと思ったらしく、コロコロとひたすら転がして通路を歩いていきました。
そこで曲がり角から現れた一人の女の子――。
「わあっ!? 白猫さんだぁ♪ えへへ、おはよう、白猫さん♪」
現れた一人の女の子――少し長めのミディアムカットに茶髪、きらり光る八重歯が眩しいソフィー・ヴォルナートでした。
「みゃ? にゃんにゃう(あら? 貴女でいいわ、これを開けてほしいの)」
鳴き声を鳴らし、缶詰めをポンポン叩くシャイニィ――ソフィーはそんなシャイニィの可愛らしい仕草にキュンキュンしながらも言ってる事を理解したのか缶詰めを開けた。
高級にゃんこフードの香りがシャイニィの食欲をそそり、その場で食べ始めるシャイニィ。
そんなシャイニィをソフィーはニコニコ笑顔で眺めていた。
「あれ? ソフィー、なにやってるの?」
「あ、エミリアさん♪ 今ね、白猫さんが転がしてた缶詰めを開けてたんですよぉ♪」
次に現れたのはエミリア・スカーレットだ、シャイニィはご飯に夢中で気付く事は無かったものの、二人の会話は聞こえてきた。
「白猫? ……やぁん、超可愛い」
「ですよね♪ ……でも、何処から入ったんだろう? 学園に居るのは三毛猫か黒猫だけですし……」
「うーん……」
にゃんこフードを食べる姿を眺める二人、だけどシャイニィは答えない。
ご飯に夢中だからだ――と。
「ん? 二人ともどうしたんだ?」
更に現れたのはヒルト、そんな声を聞いて開口一番エミリアは――。
「やん、ヒルトくんお帰りなさい♪ エミリア、凄く寂しかったんだからね……?」
白猫に夢中だったエミリアも、流石にヒルトには敵わず笑顔を溢した。
そしてソフィーも――。
「お帰りなさぁい、ヒルトさぁん♪ 京都では大変でしたね……」
ソフィーも出迎えるが、先の事件でやはりヒルトが気にしてるのではと思い、表情に陰りが見えた。
そしてシャイニィ――お腹が満腹になったのか缶詰めをそのままにして三人を残し、その場を後にしました。
時間は七時前、シャイニィは一夏の部屋に戻ると――。
「シャイニィ、何処行ってたんだ? ほら、ご飯だぜ」
先程食べたにゃんこフードを開けた一夏、既にお腹が満腹のシャイニィはそれを一瞥し、興味無さげに横を通りすぎて持ち主の居ないベッドに身体を丸めて横になりました。
そんなシャイニィを一夏はというと――。
「うーん、シャイニィって気分屋なのか? まあいっか、ご飯は好きに食べろよ」
「……にゃ(もうお腹いっぱいよ)」
こうしてシャイニィの朝の散歩は無事に終わりました、次回はどうなることやら……。
後書き
シャイニィのお散歩シリーズ、気が向いたら書きます
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