| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

エロゲー世界に神様転生って勝ち組じゃないのか?

作者:笠福京世
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第02話 満州会戦 オープニング


はるか昔、星域間の移動には数百年以上の時間が必要であり、
人類は限られた星域に点在していた。

それでもヒトは宇宙のすべてを求め気が遠くなるような期間を費やし、
世代交代型宇宙船で新天地を目指した。

人類発祥の惑星は今や名前や場所さえ失われた状態で、
現存する最古の国家とされる日本帝国に伝わる神代の歴史書に故星とだけ記されている。

還るべき故星を失った人類はあてもない宇宙に広がっていく……
ついでエイリス帝国が発生し、ヨーロッパ星海域の国々が発生していった。

やがて統一宇宙歴ゼロ年。

ワープゲートを利用し、星域間を瞬時に移動するワープ航法が発見された。
ワープコードが徐々に見つかり、散らばっていた世界が点で繋がってゆく。

大航海時代の幕が開け、様々な国家が産声をあげ、あるいは滅んでいった。

それから数百年。

星域ネットワーク図は現在の形に近づき、人類は限られたこの世界を奪い合ってゆく。

エイリス帝国は世界の半分を支配下におき沈まぬ帝国と呼ばれた。
しかし百年と待たず、独立戦争が勃発。ガメリカ共和国が誕生する。

革命、独立、侵略……戦火は世界のどこかで灯り続ける。

やがて各国は同盟を組み、連合を作り……初の世界大戦を迎える。

多くの犠牲を払った激動は富を生み、それを得た者をさらに貪欲にさせた。

だが、日本で現在の帝が即位した頃、大恐慌が発生。
世界を蝕む不景気は各地で政権への不満を高めてゆく。

革命が人類統合組織ソビエトを新たな凍土の主とし、
天才総統がドクツを敗戦からよみがえらせた。

統一宇宙暦939年現在、

ドクツ、ソビエト、ガメリカ、三つの大国が戦争を求め、開戦を目論んでいる。
エイリスではその鎮圧プランを議決。
世界を巻き込む大きな戦火が再び宇宙に灯ろうとしている。

日本帝国もまた、その潮流から逃れられはしないだろう……。


――――突然、頭の中に宇宙史のナレーションが流れる。――――

――――橋本み×きさんが歌う素晴らしいOP曲が響いた。――――

いきなり失われた記憶を思い出す。転生?エロゲ?大帝国の世界?

「伏見少将ッ!! 大丈夫ですか?」 倒れそうになる僕に気づいた女性オペレータが声をかけてくる。

「問題ない。前倉長官から連絡は?」 冷静を装い現状を確認する。

「旗艦、日向より連絡あり。これより第四艦隊が敵の前衛艦隊の攻撃に移る」

北京星域、満州地区

現在、中帝国の支配星域に日本帝国が誇る海軍主力艦隊が侵攻中。
戦艦8隻、巡洋艦17隻、駆逐艦37隻にも及ぶ大艦隊である。

(やばい。この戦いは負ける。)

第二艦隊の樋口提督と第三艦隊の末山提督による裏切り。
しかし、それを証明するものはない。
第四艦隊を指揮するのがゲーム主人公の東郷毅提督。
そして僕が所属するのが新鋭艦隊を揃えた主力の第一艦隊。

艦橋にあるコンソールを操作し各艦隊の位置を確認する。

「大原艦長、具申します」

戦艦を第四艦隊が援護できるよう前進させ、
第二、第三艦隊との間に他の第一艦隊を挟むように位置を取る。

「圧倒的ではないか我が軍は」艦長の大原中将が声をあげる。

「はい。東郷提督も旧世代の艦隊で戦果を上げております」

「ふむ。彼はもう少し真面目なら、もっと疎まれず出世できるものを……」

艦長と副官がスクリーンを見ながら暢気に会話を交わす中で急いで戦術プログラムを組み込む。

「それにしても敵の数が少ない気がするな」

「はっ。どこかに隠れている可能性もあるので注意すべきかと」

「旗艦、日向より連絡。全艦、惑星満州へ向けて全速前進せよ」

ズズーン!!と大きな音が艦内に響き渡る。

「なにごとか?」「だ、第一艦隊の旗艦、日向が大破」「なにっ?」

「敵か? どこからだ?」「こ、これは……!?」

「味方です、味方の第二艦隊が第一艦隊を攻撃中!!」「樋口提督が?」

「末山提督の第三艦隊からも攻撃! 旗艦日向が撃沈!」「裏切りかっ!」

(マジかよ!くそっ!記憶が戻ったと思ったらゲームオーバー?)

どうにか状況を打開するため、参謀として艦長に声をかける。

「大原艦長! 残りの第一艦隊の指揮を。
 旗艦が沈んだ今、序列から言うと艦長に指揮権が委譲されます」

味方の裏切りにより次々と艦隊が撃沈し艦橋にうめき声が満ちる。

「兵はともかく将が動揺してはなりません」力強い声で言い放つ。

「第四艦隊の東郷提督と連携して撤退を。よろしいですね」

「後方から中帝国の主力艦隊!」オペレーターが叫ぶ。

「全艦隊応戦! 砲門開けえ!! 回頭百八十度ッ!!」大原艦長が叫ぶ。

ズズーン!!

搭乗する新鋭戦艦の三笠にミサイルが被弾し大原艦長が倒れる。

「伏見参謀……君が、艦隊の指揮をとれ……」「私がですか?」

「健在な士官の中でどうやら君が最高位だ……。君の手腕をみせて……く……」

意識を失った艦長は医務室に運ばれる。

「全艦に連絡する。こちらは第一艦隊の艦隊参謀長、伏見少将だ」

残った艦隊に向けて士気を高めるため似合わない演説を垂れる。

「戦艦三笠が被弾し指揮官の大原中将が重傷を負われた。
 中将の命により、私が第一艦隊の指揮を執る」

「心配しなくていい。指示に従ってくれれば、大丈夫だ。
 生きて帰りたいと望む者に求める。
 冷静さを保ち、私の指示通りに行動してほしい」

「残る第一艦隊は戦術プログラム、番号A10、作戦コードCycloneを展開。」

戦術プログラムの展開により
第二艦隊および第三艦隊に仕掛けたトロイの木馬が始動し、
近くの中帝国艦隊と同士討ちを始める。

「敵艦隊、混乱してます!」

「今こそ反撃のチャンスだ! 第四艦隊と連携し敵中央を突破し離脱する!!」

こんなところで死んでたまるか! 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧