IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》
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【第615話】
次はセシリア達と行動する為に向かっている途中――。
「あ! あれってヒルトじゃん!」
「うぉっ!? マジだ!! おーい、ヒルトーッ!!」
「え?」
またも京都観光街で名前を呼ばれて立ち止まる俺、手を挙げる二人組がいてよく見るとたっくんと信二の二人がいた。
「おぉ、たっくんに信二! 前のレゾナンス以来だな」
「ああ! てかヒルトとまさか京都観光街で会うなんて思わなかったぜ!」
「ヒルトは何でここに? もしかして――IS学園も今修学旅行か!?」
「あ、いや、修学旅行は来週だ。 今回は京都視察の為に来てるんだよ」
「おぉ、IS学園って生徒が視察するのかよ……」
「やっぱ違うよなぁ……。 まあいいけど、それよりもヒルト、シャルロットちゃんは来てないのか?」
早速シャルの事を聞く信二に俺は苦笑を溢す。
「シャルは美冬と美春、三人で行動してるよ」
「え!? つか美冬ちゃんや美春ちゃんも来てるのかよ!?」
妹に食い付いたのがたっくんだ――いや、いい加減諦めろよと思う、二人と話をしてると向こう側から人力車が煙を巻き上げてやって来た。
てか、えらいでかい人力車だと思っていると見知った顔が乗っていた。
「おぉ!? あの人力車に乗った外国人レベルたけぇな!」
「や、やべぇ……ドレスから溢れ落ちそうなあのおっぱいは反則だろ、あの緑髪の子!」
「いやいや、あの金髪の子も中々だぜ? 銀髪の子は眼帯でちっぱいだけど、何かお人形みたいでやべぇ!」
たっくん&信二の二人は向こうから来るセシリア達を見て色々言っていた。
そして俺達の前に止まり、たっくんと信二の二人は「やべぇ、もしかして俺達に何か用なのか!?」とか「お、落ち着けたっくん。 先ずは英語で挨拶からだ」等と耳打ちしている始末。
「ヒルトさん、お出迎えに参りましたわ」
高いところからそう告げるセシリア、秋の京都に紫のドレスは目立つレベルどころの騒ぎじゃなかった。
「さあヒルト、乗り込むがいい!」
何故か銃口が異様に長い銃を構えて言うラウラは黒いドレスが異様に似合っていた――たっくんと信二の二人は目をぱちくりさせて俺やセシリア達を見ている。
「キミ、ここでは色々と目立つからね。 早く乗ってくれると助かるのだが……」
最後に身を乗り出して言ったのはエレンだ、翠のドレスの胸元が溢れ落ちそうな程で、谷間を強調するドレスが蠱惑的に見える。
「ん、確かにそりゃ目立つな。 全員ドレスだし」
「うふふ、せっかくの京都ですもの。 ドレスアップは当然ですわよ?」
柔らかな笑みを浮かべたセシリア――と、たっくんが俺の肩を掴む。
「おいおいおい! ヒルト! この子達もヒルトの知り合いなのかよ!?」
「うぉぉっ! 何でヒルトばっかり可愛い子が集まるんだよぉ!!」
たっくんと信二の魂の叫びが観光街に木霊する、セシリア達も目をぱちくりさせて見ていた。
「ヒルトさん、お知り合いの方ですの?」
「そういやセシリア達って初めてだっけ? 俺も記憶が曖昧になってるが一応。 此方が成河拓斗、通称たっくんで此方が佐々木信二」
そう紹介するとたっくんは目をキラキラさせて――。
「はっじめましてー♪ 僕、成河拓斗っていいます♪ 有坂君とはマブダチで、中学まで一緒だったんですよ!」
「ふむ、キミのご友人は面白い方だね」
「そうですよ! 良かったら緑髪のお嬢様、このわたくしめと京都でデート等でも……」
たっくんのそんな誘いにエレンは――。
「いや、すまないがこれから私達全員ヒルトと約束があるので申し訳ないが断らせてもらうよ」
「ガーン!!」
ガクッと膝から崩れ落ちるたっくん――何かいつも通りの光景だ。
「信二、悪いけどたっくん頼むよ」
「お、おう。 ほら、傷は浅いぞ。 まだ京都の舞妓はんをナンパしてないだろ、傷付くには早いぜ?」
「……ぅぅ……だってよぉ、ヒルトの周りばっか可愛い子いるじゃん、いるじゃんよぉ……」
そんな二人のやり取り、だが少し前から気になるのは人力車の運転手だった。
肩で息をしている赤髪の運転手――。
「あれ? 見覚えあるって思ったら確か五反田弾君じゃなかった?」
「え? ……あ、ああ! 確か一夏の友達の有坂ヒルト君!? よ、よお!」
一夏の友達の五反田弾、何故京都に居て人力車引いてるのかわからないから聞いてみる。
「五反田君は何で京都に? てか何で人力車引いてるの?」
「ち、ちょっとバイトでな。 それでそっちの金髪のお嬢様が文化祭に来ていた俺の事を覚えてたらしくてさ。 とりあえず捕まってこうしてるわけ、なはは」
「そうなんだ」
セシリアを見ると小さく頷く――そしてラウラが割って入る。
「ヒルト、いつまでも話していては埒があかない。 早く乗るんだ」
「え? ……この人力車、大きめだが三人が限界っぽくないか?」
見ればセシリア、ラウラ、エレンの三人でぎゅうぎゅうな人力車――と、セシリアが五反田君に告げる。
「これは今から四人乗りになりましたの、そうですわよね、五反田さん?」
「は、はぃ……」
小さく頷く五反田君、まあ本人が良いって言うなら良いが……俺の乗るスペースない気がした。
「ヒルト、真ん中に座るといい」
「え? ラウラはどうするんだ?」
「大丈夫だ、席はある。 とりあえず目立つのだ、早く行くぞ」
怒ってはないが注目されてるのが気になるラウラとエレン、セシリアは聴衆の視線など気にせず、金髪の髪を掻き分けていた。
傷の深いたっくん、信二に視線を向けるがこれ以上待たせても仕方ないので乗り込む。
「じゃあ真ん中に……」
ラウラは立ち上がり、席を譲ると俺が座る。
セシリア、エレン二人の合間に挟まれた俺――にラウラが。
「ではヒルト……し、失礼する」
「「……!!」」
「席って……俺の膝かよ」
ラウラが俺の膝に座った、セシリア、エレンの二人はその手があったかという表情を浮かべていた。
ヒルトの両隣という良い位置よりもヒルトの膝の上なら安定しないからヒルトが後ろから抱きしめなければ危ない――。
「や、やりますわねラウラさん……」
「……その手は思い付かなかった」
悔しがる二人を他所に、ラウラは銃口を五反田君に向ける。
「さて、五反田、貴様はあの織斑一夏の友人という事だったな。 とはいえ今は人力車の運転手だ。 ならば客のお願いは聞くことだ。 ゆっくりかつ安全運転を心掛けろ。 そしてカーブ多目のルートで京都を案内してもらおうか!」
後頭部を銃口でつつくラウラ、俺からは少ししか見えないが五反田君はげんなりしてる様に見える――と。
「……やってやる、やってやるぞぉぉぉっ!! わざわざ京都くんだりまでバイトに来たんだ! うぉぉおおおッ!!」
高らかに叫ぶ五反田君は人力車の引き手を持ち上げる。
「っと、たっくん、信二。 またな!」
出発前にそう声をかけると――。
「おう! じゃあなヒルト! ほら、たっくん! ヒルト行くって」
「おぉぅ……じ、じゃあな……」
力ない言葉でいうたっくん、信二は傷は深くなくとりあえず振る手は見えた――そして。
「では出発!」
ぐっと足に力を込めて引き始める五反田君――ゆっくりとだが回り始める車輪、そして直に景色がゆっくりと流れ始めるとセシリア、エレンの二人は。
「少し揺れますわね。 ヒルトさん、腕を組んでもよろしくて?」
「確かに揺れるな。 ……は、端は危ないから私も腕を組ませてもらいたいのだが……」
二人してそういい、俺は頷くと同じタイミングで俺の腕に抱き付くように絡ませ、自身の乳房を押し当ててくる。
「ヒルト、ちゃんと私の腰に腕を回すのだ。 膝に座ってるのだから揺れて危ない」
「はいはい。 てか四人乗りが危ないよ、てかまずい気が――」
「うふふ、お気に為さらず。 せっかくですもの、いいじゃありませんか♪」
「ああ、キミとの思い出としてはこれも悪くないだろ?」
一様にそう告げる三人――と。
「うぉぉおおおッ! 俺はやる! やってやるぞぉぉぉっ!!」
いきなり叫ぶ五反田君――刹那、急激に加速し、安全運転だが思い切りカーブを曲がり始めた。
「おわっ!?」
遠心力に振り回され、腕に当たっていたエレンの乳房に肘が当たり、形が崩れると共に柔らかな感触が伝わってくる。
「……!?」
エレン自身、腕に当ててはいたがまさかこんなにも自身の乳房が遠心力でヒルトに密着されるとは思っていなかった。
『エリー、すまない……。 わざとじゃないんだ』
『わ、わかっている』
『そうか――っと、すまない、またカーブで君の……』
『だ、大丈夫……です』
――まだ思考回路は暴走していないが、やはり乳房を押し当たる度に熱暴走し始める乙女の思考回路、一方でセシリアは。
「きゃあっ♪ うふふ、揺れますわね?」
「だ、だな……」
楽しそうなセシリア、抱き付く力は緩めず、乳房に挟み込む様に腕を抱くセシリア、そしてラウラは。
「ヒルト、もっとぎゅってしてくれないか? やはり危な――きゃっ!」
「っと!」
二人に抱きつかれながら俺はラウラの腰に手を回したまま更にキツく抱き締めた。
その後もカーブ多目の道を曲がる度に左右に揺らされ、その度に両サイドからの柔らかな感触、膝の上のラウラも今は俺に凭れかかる様にしている。
「ちょ、ちょっと五反田君! 安全運転でスピードを――」
「うぉぉおおおッ! お客様の要望叶えて特別料金だあぁぁあああっ!!」
俺は悟った、こいつ何も聞こえてないなと――。
揺れる人力車の中から何とか携帯を取り出し、俺はそれをセシリアに手渡し――。
「これも記念だ、四人で撮ろう!」
「うふふ、良いですわね!」
「良いだろう、嫁との記念が増えるのは私も歓迎だ」
「私もOKだ。 セシリア、頼むぞ」
「任せてくださいまし」
激しく揺れる人力車、曲がる度に遠心力に振り回される中、携帯で何度も写真を撮る俺達四人。
見切れていたりぶれたりと散々な写真だったが、それはそれで記録にも記憶にも残る結果になるだろう。
京都の街に響く五反田弾の叫びが木霊する中、俺達は揺れる人力車を楽しんだ。
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