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IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》

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【第625話】

 未来たちが空域に辿り着いた時には既にヒルトは白騎士と交戦状態に入っていた。


「な、何よ、あれ……白騎士……?」


 絞るような声を出した鈴音、一夏の姿は無く暴走した白騎士――第二形態移行を果たした《ドレッシィ・ホワイトナイト》と有坂ヒルトの天・伊邪那岐が戦う姿だった。

 男と男の戦い――普段の一夏とは違う息遣い、模範するその動きはかつての織斑千冬――ブリュンヒルデの動きを模していた。

 武装腕《雪羅》を模した武装腕《白熱する白(グロウ・ホワイト)》、其処から伸びた爪状の粒子刃でヒルトを斬りつける。

 イザナミの腕部パーツを媒体にしたエネルギーシールドがそれを防ぎ、白騎士の顎を擦りあげる様に掌打を放つ。

 だが容易くそれを避け、雪片と白騎士のプラズマブレードが融合した新たな武装《輝きを放つ白(ホワイト・グリッター)》が形成された。

 間合いを離し、二刀流で来る白騎士――激戦で消耗の激しいヒルトが苦戦しているように見えた一同。


「……助けなきゃ、お兄ちゃんを……」


 美冬の言葉に未来は横目で見た――また紅く輝きを放つ瞳、呼応するかの様にコアが輝く。

 だが助けるにしてもあの動きに追従出来る気がしなかった、ブリュンヒルデを模した一夏の動き、正直反応が追いきれない。

 一方でヒルトは苦戦してはいるが動きに追い付いている、苦戦しているのは連戦の影響下と街への被害を考慮して全力を出せないからだ。

 今のヒルトに、未来たちが出来る事は――。


「皆……街を守ろう。 せめて――ヒルトが戦いやすい様に、街の人達の避難、怪我人の救助を優先しよう」

「みぃちゃん……」

「……そう、だな」

「今のわたくしたちに出来る事は……それしかありませんわね」

「……ッ」


 唇を噛み締めた美冬達、悔しかった――ヒルトの力になれないことが、援護が出来ないことが、自身の不甲斐なさが――。

 気が付けばその力量に差がつけられていた――普段の模擬戦で幾らヒルトに勝利しようとも、こういった時に発揮するヒルトの本当の力には敵わなかった。

 言葉だけでは意味がない――だけど、ヒルトはその言葉を乗せ、想いを乗せ、それらを力に変えていた。


「そらぁぁああッ!!」

「笑止。 私には、通じな――」


 通じない力ではなかった、逆胴回し回転蹴りが白騎士の刃を避けながらこめかみにヒット、ぐらりと体勢を崩した白騎士。

 下から斬り上げる肩の大神之神霧露の刃――体勢を崩しながらも輝きを放つ白《ホワイト・グリッター》でその一撃を防ぎ、その衝突で大気が激震した。

 グロウ・ホワイトの一撃が空振る、その一撃は衝撃波を生み、地上のビル屋上に備え付けられた給水タンクが吹き飛び、散水が辺り一帯撒き散らした。

 ビルの屋上もその衝撃波によってヒビが入る。

 桁違いの威力、長引けば長引くだけ京都は崩壊する――。

 そして、街を守るなら今の衝撃波も自ら食らわなければいけなかった。


「私の力、思いしれ」

「チィッ!」

「零落白夜」


 無機質なその言葉でホワイト・グリッターの刃が白亜の輝きを放つ――刹那、振るわれた白亜の斬撃が飛んだ。

 光波となって襲う斬撃を避けたヒルト、街ではなく夜空を白亜の刃が昇っていく――。

 下にいかなければ避けることも可能、だが逆にあの光波が街を襲えば被害は甚大。

 大神之神霧露を構えたヒルトは上を取り、上空から袈裟斬りで仕掛けた――だが白騎士の武装腕《グロウ・ホワイト》が可変――零落白夜の盾《ドレッシィ・ホワイト・グロウ》となって阻む。

 四散するエネルギー刃、無効化するその盾に阻まれ届かなかった一撃――だがヒルトは直ぐに格闘戦に切り替え、胸部、腹部、頭部へと三連打を浴びせた。


「所詮、この程度。 力の資格無き者。 お前では、相手に、ならない」

「何が相手にならないだ! 結局お前はそうやって、相手を見下し、守ってやる守ってやるって言っておきながら人を傷付けるんだ!!」

「何を、言って――」

「自分の姉の力を借りなきゃダメな奴が、人を守ってやる何て上から目線がウザイんだよ!! 本当に守りたいなら――姉の力なんか借りるなよ!! 姉の名前なんか出すなよ!!」

「所詮、力持たぬ者の、戯れ言」


 白騎士の武装腕が再度可変――《ホワイト・グロウ・シューター》となり荷電粒子を放つ――その一撃はヒルトに当たらなかったものの突き進んだその先は京都駅だった。


「ッ!! 彼処には避難している人が居るんだァァァッ!!!!」


 ヒルトの悲痛な叫びが木霊した時だった、その射線に割って入った五機。


「やらせないからッ!! これ以上、犠牲なんか出させないんだからッ!!」

「そうだ! 民間人が犠牲になる理由なんかはない!!」

「ヒルト! 僕達が守るから!!」

「だから――討て、白騎士を!!」

「ヒルト、くん! ヒーローに!!」


 貨物倉庫組であった皆が荷電粒子の一撃を身体を張って防いだ――先の篠ノ之束、そして無人機の自爆を受けた五機は満足に戦線に加わることが出来ない、ならば出来る事をしようとした結果が身を張って街を守ることだった。

 街では成樹が、美冬が、箒が、セシリアが、鈴音が――そして未来が住人や観光客の救助支援を行っている。

 負けられない――ヒルトが背負う想いはまた新たな力となり、内から込み上げてくる皆の想いが――ヒルトを新たな次元の一歩へと足を踏み込ませた。


「力の、資格が……」


 そんな呟きはヒルトの耳には届かなかった――極限まで研ぎ澄まされた感覚、集中力、真っ直ぐとヒルトは視界に白騎士の姿を捉える。

 解キ放テ、己ノ力ヲ。

 解放シロ、定メラレタ運命ヲ。

 変エテミロ、悲惨ナ未来ノ結末ヲ。

 誰が言ったわけでもないそんな言葉がヒルトの耳に届く、そして――瞳は紅蓮を宿し、視認出来るレベルで装甲から光が帯びる。


「……陽炎幻影――――《覚醒(アラウザル)》!!」


 大気は揺らぎ、白騎士周囲から陽炎が立ち込める。

 其処から姿を現したのは――無数のヒルトだった。

 それは陽炎が生み出した幻――否、違った。

 その幻影が振るう武装――ミョルニルの一撃には明らかに質量があった、攻撃が終われば幻影は消える。

 ミョルニルの一撃に吹き飛ぶ白騎士――全てを薙ぎ払おうとホワイト・グリッターの白亜の刃が街もろとも関係なく吹き飛ばす程の光波を飛ばした。

 だがそれは阻まれる――美春達じゃない、陽炎幻影によって生み出された質量を持った幻影であるヒルトが、その一撃を身を張って防いだ。

 其処からヒルトの攻撃は始まる――カリバーンを構えたヒルトの幻影が白騎士を打ち上げ、ジャガーノートを構えた幻影が先回りし、その一撃を打ち込むと白騎士は墜落――する寸前にワイヤーブレードが白騎士を拘束し、空域へと投げ飛ばした。

 対応する白騎士――振るわれたホワイト・グリッターの刃が無数のヒルトを薙ぎ払っても、それら全ては幻影、隙が生まれれば今度はギガンティック・マグナムの拳が白騎士に直撃、破片が空を舞う。

 そして――残った全機による対空砲火、街への被害が出ないように全ての幻影は白騎士の下へと陣取り、電磁投射小銃による弾雨が白騎士を襲った。

 大幅に削られる白騎士のエネルギー、逃れるように緊急上昇しようとした白騎士だが狙撃粒子砲の十字砲火の直撃で阻まれた。

 京都タワー、そして京都高層ビルからの狙撃だった。


 京都タワーに陣取る更識楯無――狙撃粒子砲《サモセク》を構えての狙撃に対して十字砲火の位置に立つ山田真耶が構えた狙撃粒子砲《アルマッス》。

 チャネル通信で相互通信を行い、的確な狙撃が白騎士を襲うも粒子砲の一撃は零落白夜の盾で防ぐ。

 だが、それが白騎士に致命的な隙を生む結果になる。

 幻影は消え去り、周囲を立ち込めていた陽炎も消える。

 大神之神霧露を構えたヒルト――青白い刃が月明かりを浴びてまるで白銀の様に輝きを放つ。

 白騎士は気付く――そして呟く。


「力持たぬ者に、敗れる……!?」

「その傲り、その傲慢――そうやってずっと、否定すれば良いさ! 例えお前に力の資格が無いものだと言われても! 持つべき者の義務《ノブレス・オブリージュ》として俺は戦うさッ!! 白騎士ィィィッ!!」


 エネルギーが枯渇する白騎士――粒子砲の十字砲火が白騎士の装甲に直撃――そして、大神之神霧露の斬撃が白騎士を戦闘不能にした。

 白騎士の装甲が粒子化され夜空へと四散――意識のない一夏がぐらりと落下しそうになる瞬間、ヒルトはその手を掴んだ。

 男を抱える趣味はない――上空約三〇〇メートルとはいえ目撃されたら世界が荒れる、ヒルト自身それは望んでいるわけではない。

 陽炎と共に上空から一旦ヒルトは一夏と共に姿を忽然と姿を消す、奇しくもそれは初めて白騎士が目撃された時と状況が似ていた。

 違うのは――近くに目撃者がいなかった事、避難する人々がそこまで気を止めなかった事だろう。


 後に【白騎士暴走事件】と呼ばれるこの惨劇、報道されたニュースはテロリストが無差別にテロ行為に走ったとして処理される事となる。

 だがヒルトは忘れない――亡国機業の非道な行いを。

 そして誓う――また白式が白騎士に変貌を遂げ、暴走するのであればヒルト自身の手で討ち取るという事を。

 月下の元、白騎士暴走事件は幕を閉じた。

 被害総額日本円で約五〇〇億。

 死者八名、重軽傷者約七二〇〇人。

 それら被害を被った企業や人々に対して、人知れずイルミナーティは金銭的援助を惜しまなかった。

 ――だがこの事実を知るものは総帥であるウィステリア・ミスト以下数名の者しか知らない事実である。

 
 

 
後書き
白騎士暴走事件終わり

ドレッシィ・ホワイトナイトの武器の名前が中2チックだけど('◇')

まあ最高潮に一夏のヘイトは貯まってるだろうけど、限界突破してオーバーフローしていくよ、これから


楯無と真耶が使った狙撃粒子砲の元ネタはアニメね

流石にボンバーマンはやらんかったが

後モノレール爆破も

細かいところだと原作倉庫忍び込むのが空港の倉庫だけど此方は貨物倉庫っす

空港だと大阪になるから

単一仕様《覚醒》込みでの能力はイメージしにくかったらナルトの影分身で良いかと

細かい変更点は他にも、白騎士は原作だと第二形態移行しない、決着着けた相手は真耶、本来戦うのはヒロインズのみって所かな、戦うってよりかは何か京都上空で告白合戦してただけだけど

 
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