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IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》

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【第643話】

 
前書き
まだ原作 

 
 朝の朝食が終わり二日目、本日は自由行動という事もあり各々で京都を観光するという流れになっている。

 だがその自由行動の前の出来事――シャイニィことにゃん次郎は一夏に朝ごはんをねだりに行ったときだった。


「シャイニィ、おーい、朝御飯だぞ。 おーい」

「………………」


 朝御飯を用意されたにゃん次郎だが、まさか市販用の猫ミルクを出されるとは思わず、しかも冷えているのでお腹を壊す可能性もあったため完全にそっぽを向いていた。


「……困ったな、せっかく猫ミルク用意してやったのに……」

「………………」


 言葉が通じないと思ってるから出た言葉だろう――にゃん次郎はお腹が空いているものの冷えたミルクで食事するわけにはいかなかった。

 自由行動の時間が迫る――と、襖が開いて現れたのはヒルトを除いた専用機持ち女性陣達だった。


「どうしたというのだ一夏? 自由行動とはいえ部屋から出てこなければ山田先生が心配するぞ?」

「それがさぁ……」


 事情を説明する一夏、女性陣皆シャイニィを見ると先に箒が動く。


「……猫のご飯なら、昔からぶっかけ御飯だと相場が決まっている。 すぐもらってくる!」


 言うや早く、電光石火でぶっかけ御飯をもらってきた箒。

 朝の残り物に生魚の刺身が乗っかっていた。


 一瞬にゃん次郎は刺身に心奪われるのだが、ぶっかけ御飯という事もあってかぷいっとそっぽを向いた。


「くっ……ぶっかけ御飯ではダメなのか……!?」


 項垂れる箒は失敗に終わり、二番手はセシリア・オルコットが歩みを進める。


「うふふ、わたくしの出番ですわね。 猫は良い香りがわかると言いますわ。 わたくしが抱き締めてみましょう」


 にゃん次郎はお腹が空いている筈なのだが検討違いな方に思考し始めたセシリア。

 いつも常備している高級な香水を一振りして手をにゃん次郎に向けて差し出す。

 袖からフレグランスの香りが漂うも、にゃん次郎好みの香りじゃ無かったので横を歩き去る。

 そもそもお腹が空いているので御飯がほしいだけだったりする。


「こ、高級フレグランスの香りではダメですの……?」


 三番手は凰鈴音、この頃になると一夏の部屋に入った一同だが簪だけは襖の方からそっと覗き込んでいた。


「ふふん、香水じゃダメよセシリア! あたしに任せれば……ジャーン!」


 エノコロ草――又の名を猫じゃらしを取り出した鈴音は屈むと早速猫じゃらしを振り始めた。

 上下する猫じゃらし――だがにゃん次郎の興味を引かせる事は出来ない、動きが単調すぎたのだ。

 知らん顔するにゃん次郎――撃沈した三人に今度はシャルが口を開く。


「うーん、猫用のビスケットを焼くには時間が掛かるし、どうしようかな」


 腕組みして顎に人差し指を当てて思案するシャル、ビスケットという単語が飛び出した事ににゃん次郎。

 機敏に反応を示すのだが物が無い以上期待しても無駄だと思ったのか目を伏せて尻尾をゆらゆら揺らした。


「ふむ……ならば我が黒ウサギ隊のワッペンでつるというのはどうだ?」


 ラウラが制服に着けていた部隊章を外して見る、賛同も無ければ反対も無かったのでラウラは試す。


「こほん。 やあ、僕は黒ウサギ隊隊長のラウラウサ。 君と友達になりたいウサ」


 突然のラウラの一人芝居に驚愕を見せる一同だが、シャルは何故か胸がキュンキュンしていた。

 時折風呂上がり後の部屋にある黒ウサギのぬいぐるみとそんな会話をしてるのを見てから微笑ましくも思い、可愛くも見える。

 にゃん次郎の方はというとチラッと見るのだが興味がわかなかったらしくまた目を伏せた――と。


「こういう時は、適任者に任せるのが……いい」


 猫にアレルギーを持つ簪だけは部屋に入らずにそう告げる、今もくしゃみが出そうなのを我慢していた。


「ん~、じゃあ美冬が遊んであげる。 おいで、にゃん次郎♪」


 美冬がそう告げるや一夏が突っ込む。


「いや、名前はシャイニィだから」

「え? でもお兄ちゃんはずっとにゃん次郎って呼んでるよ?」

「てか、そもそもにゃん次郎って何だよ……ネーミングセンスがないよな、ヒルトって」

「ムッ! お兄ちゃんの悪口言うなー!」


 牙を剥く美冬の剣幕に一夏は僅かに後退り、シャイニィことにゃん次郎は名前はもう呼びたいように呼んでいいとさえ思っている。


「じゃあにゃん次郎! 美春の頭に乗せてあげる!」


 言い問答している二人の横をすり抜け、にゃん次郎を頭に乗せた美春。

 突然不安定な所に乗せられたにゃん次郎は驚きに目を見開き、器用にジャンプするとテレビの上に着地した。


「あーん、逃げられちゃった……」

「ふむ。 ならば私が行こう」


 そういってエメラルドカラーの髪を靡かせたのはエレン・エメラルドだった。

 テレビの上に居るにゃん次郎に手を差し出すと――。


「……にゃー」

「……ニャ?」


 何と猫の鳴き声の真似をして話し掛けたエレン。

 ラウラといいエレンといい、軍人タイプはこういう事をするのが主流なのだろうか――真実は闇の中だ。


「にゃー、にゃー」

「にゃう、にゃうん」

「にゃ?」

「ニャ……ニャニャゥ……」

「……成る程」


 会話が終わったのか振り向いたエレン。


「彼女はただお腹が空いている様だな。 織斑一夏からミルクを出されたが冷たいミルクだとお腹を下す可能性があるらしく手をつけなかったらしい」

「え? エレン、お前猫と喋れるのか?」

「何を驚いている織斑一夏。 この程度の意志疎通は目を見ればわかる」

「ふーん」


 そういって一夏はにゃん次郎に近付く――いきなりだったからかタタッと横を駆け抜けていき、未来の足下に移動した。


「ふふっ、お腹が空いてるんだねにゃん次郎♪」

「みゃうっ」


 頷いたにゃん次郎に目を細めて優しくにゃん次郎の顎を撫でる未来――と。


「おーい、そろそろ自由行動の時間だぞ?」


 余りに遅く、部屋を覗き見る簪の後ろからヒルトの声が聞こえてきた。


「……ニャッ!!」


 タタッと未来の足下をかけて走り、ヒルトの元に向かったにゃん次郎――だが悲劇は簪に起きた、猫アレルギーの簪はにゃん次郎が近付くだけでくしゃみが止まらなくなった。


「くしゅっ! くしゅんっ!」

「あ、簪は猫アレルギーか……。 山田先生、にゃん次郎を――」

「!!!!」


 遅れて現れた山田先生を見たにゃん次郎は跳び跳ねる。

 山田先生が手に持つ何かの木の実――それはマタタビだった。


「あらあら、やっぱり猫さんはこれですねえ」


 通路で屈むとにゃん次郎は山田先生の手に飛び付く。


「ニャンッ! にゃんにゃん♪」

「うふふ」


 山田先生は手のひらを開く。

 するとにゃん次郎はその香りを吸い込むと――。


「ふにゃあ……にゃうぅ……♪」


 と、普段のツンとしたにゃん次郎ではなく愛らしさ満載の可愛らしい猫の姿を見せていた。


「やっぱ猫にマタタビは効果抜群ってやつだな、これが」


 にゃん次郎を一度見てからヒルトは山田先生に視線を移す。

 僅かに頬が紅潮する山田先生は内心穏やかではないものの、取り繕って答えた。


「そ、そうですねえヒルトくん。 こほん……じゃあ織斑くん、あまり嗅がせ過ぎない程度にマタタビを与えて下さいね。 後皆さん、自由行動は羽目を外しすぎないように」


 そういって山田先生はマタタビを一夏に渡すと踵を返して戻っていく――にゃん次郎はというと、マタタビの誘惑には勝てず、それを持つ一夏に抱きついたのだった。


「げ、現金なやつだなぁ」

「いや、ただ単にマタタビ持ってるからだろ?」

「そうだよ、マタタビのおかげで織斑くんはにゃん次郎と交流持てたんだから感謝しなきゃ」


 ヒルト、美冬とそう言われて納得したのかしてないのか微妙な表情の一夏――にゃん次郎はただただ満足そうにマタタビを嗅いでいた。

 二日目の朝、自由行動はこれから始まる――。

 マタタビで忘れているかもしれないが、にゃん次郎は未だに空腹だという事実は残されているが……。


「てかさあヒルト、シャイニィだからにゃん次郎って勝手に名前呼ぶなよな」

「ん? 知ってるけど『にゃん次郎』って顔してるからな。 なあにゃん次郎?」

「うにゃぅ……にゃう(知らないわ、それよりも早くご飯ちょうだい)」 
 

 
後書き
寒さがヤバい

一応次回は京都自由行動編――って言ってもあんまり色んな場所は書かないかも

それ終わったら最新刊入りかけの成樹転入 
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