IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》
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【第638話】
前書き
久々な更新
夕方、一夏を除いた一年生全員が旅館に到着した。
先週居た旅館の姉妹館で、暫くIS学園が貸し切りという事で他に客は居なかった。
各自充てられた部屋割りで寛ぐ中、ヒルトは広い一人部屋に荷物を置くと徐にテレビをつける。
情報番組が流れていて御当地食堂やら職人の紹介など、映像で流れている。
立ち上がり、制服の上着脱いでをハンガーに掛けると部屋の外側の通路からセラ・アーカニアンの声が聞こえてきた。
「ヒルト、もうすぐ夕食の時間」
続けて襖を開けるセラに、ヒルトは顔だけを振り向くと――。
「ん? そっか、ありがとうなセラ」
「ううん。 ……ヒルト、元気になってる」
「え?」
「先週から何処か気持ち落ちてたから。 ……元気になったなら私も嬉しい」
柔らかな笑みを浮かべたセラに、ヒルトは視線を少し逸らして頬を掻いた。
「悪いな、心配かけて」
「ううん。 でも、まだ元気なかったら私が元気あげようと思ってたからその点は残念」
「はは……」
残念そうに少し頭が下がるセラに、ヒルトも苦笑しか出なかった。
「んじゃ、食事行きますか」
「うん」
襖を閉めるとセラはヒルトの隣に自然と寄り添う、IS学園の制服の白と褐色のコントラストが眩しく、艶やかな唇に塗られたグロスが色気を醸し出していた。
「……? どうしたの?」
「あ、いや……何でもないさ」
「そう」
それだけを言うと心なしか小さく頬を膨らませた様に見えるセラ。
そんなセラの頭をヒルトは撫でる、黒髪のショートカットがヒルトの手でわしゃわしゃされるがセラは嫌がる様子は見せず、小さく膨らませた頬も元に戻っていた。
旅館の大広間『梅花』、食事時という事もあってか続々と一組生徒が集結しつつあった。
「ヤッホーヒルトくーん♪ 此方空いてるよー♪」
「あっ、かなりん狡い! 私の隣がオススメだよ、ヒルトくん♪」
「ヒルトくん、此方にお寿司あるよ♪」
「むぅ、ヒルト! お寿司なら此方にもあるよ!」
何故お寿司で俺を釣ろうとするのかがいまいちわからない美春。
苦笑いして既に決まっていた席へと座るやそこから続々と一組生徒が食事を摂りに集合してきた。
一夏ただ一人、その場にいなかったが――一方で一夏はというと……。
「サインちょうだい!」
「IS見せて!」
「一緒に写真いい?」
すっかり扱いが芸能人と同扱いされる一夏は律儀に要求を応えていた。
ISの無断使用、許可なく展開した一夏はただただ要求に応えただけだろう……だけど、専用機持ちが無断に展開すれば問題も起きる。
そしてそれらの問題も知らない映画監督はそのIS展開した一夏を見てそれを活用しようと目論んだことに、後に問題が起きるのは別の話。
場所は戻り旅館では一夏を除いた面々が食事にありついていた。
一同思い思いに浴衣に着替え、出された豪華絢爛な食事の数々を頬張っていた。
「ヒルトくん、お刺身美味しいよ?」
「おー、このお吸い物も美味しいぞー?」
静寐、玲の二人に挟まれている俺――遠くから刺さる視線に少し冷や汗を流れるのを感じた。
「せっかく一組になってもヒルトの隣じゃないなら意味ないじゃん! ヒルトのバカヒルトのバカヒルトのバカ!!」
ぷんすかと刺身をやけ食いする鈴音、隠さない焼きもちに周りも苦笑を漏らす。
「はぁ……ため息はダメなのですが、やはりヒルトさんの隣になれなかったのは残念ですわ……。 それはさておき……少しでれでれし過ぎなのではないのかしら、ヒルトさん……?」
此方も明らかな焼きもちを見せるセシリア、ぷくぅと小さく頬を膨らませながら苦手な魚の切り身を箸でつついていた。
「…………」
じっと隣の席からヒルトを見てるのはシャルだった、肉体関係があるとはいえやはりヒルトがモテるのはあまりいい気分ではなかった。
幸いにもヒルトは一人部屋、うまく抜け出してヒルトに抱かれ――そこまで考えた辺りで頬に熱が帯びるのを感じ、シャルの異変に気付いた子が頬をつついた。
「シャルロット、頬が赤いわよ?」
「わわっ、な、何でもないよ!?」
「ふーん? シャルロットって結構ムッツリだからヒルトに抱かれる事を想像してたのかなって思ったけど?」
「む、ムッツリ何かじゃないよ!」
そんなやり取りの中、ラウラは少し焦りを見せていた。
誰よりも早くヒルトと愛を営み、抱かれたという思いは自信に変わったのだがヒルトのモテッぷりにヒヤヒヤしている。
ラウラの体型は貧相だ、出るところはあまり出ず、下手すれば小学生に間違われてもおかしくないレベル。
何気無く自身のまな板よりはある膨らみに触れてみる――静寐、玲の二人はラウラのそれより遥かに大きい、というよりも周りが化け物級にさえ思うほど膨らみがある。
貧乳と呼ばれるものもいるが、少なくとも凰鈴音やラウラよりは胸がある。
ヒルトは大きさは気にしないとは言っていたが、やはり大きい方がいいのではと考えてしまう。
ぐるぐると二十日鼠の様に考え込むラウラ――だがそれもほんの一時まで、目移りするならば私に釘付けされればいいと思考し、早速夜這い結構を目論見、その為の精力をつけるため目の前の食事にありつくのだった。
一方で美冬、兄が鼻の下を伸ばしてるのが気に入らないのかこめかみに怒りマークが見え隠れしていた。
(あんなに鼻の下伸ばしちゃって……お兄ちゃんのバカ! やっぱり双子だからって、妹だからって受けに回るなら攻めに転じてお兄ちゃんと――)
等と、清い兄妹関係なら考えない淫らな考えを行う美冬。
それも仕方ない、兄がモテすぎるからだ――みぃちゃんだけなら美冬もこんなエッチな考えは起こさなかったのに――と、自身に言い聞かせていた。
美春は美春でやはりヒルトがモテるのはつまらないらしく、タイの刺身を食べながらじぃっと見つめている。
クラス統一され、織斑一夏派と有坂ヒルト派に分けられてから、ヒルト派の女の子の言い寄り方が過激なのも気になる美春。
そんな美春たちの視線に未来は苦笑を漏らす、ヒルトに抱かれたからか気持ちに余裕のある未来。
もちろんヒルトの事は今でも好き、独り占めしたい気持ちにもなる。
だけどここまでモテはやされ、誰か一人と恋人になると騒動に発展するかもしれない。
いっそ皆がとも考えてしまう辺り、未来も変に毒されてる気がしなくもなかった。
簪もヒルトが好きだが、あれほどアプローチ出来るほどの積極性もなく、じぃっと視線を送ることしか出来なかった。
「ヒルトくん♪ エミリアが装ったお刺身、食べて」
「なっ!? エミリア、たち歩くのは行儀が悪いぞ!」
「えー? 別にいいじゃん理央~。 ソフィーもそう思うでしょ?」
「ふぇ? あ、あたしも流石にたち歩くのは行儀が悪いかなぁって……。 ぱくぱく」
もりもりに盛られたご飯を食べるソフィー、現場を治める教師陣が不在という事もあり、広間は活気に溢れ返っていた。
そして場所は清水寺――映画撮影も佳境に。
「さあ、追いつめたぞ!」
清水の舞台で繰り広げられる撮影、ドレス姿の女優と黒服サングラス集団の俳優が演技をしていた。
「諦めて私と結婚するんだな! がっはっはっ!」
高笑いして現れた男、まるで時代錯誤のギャングといった風貌だった、勿論俳優だ。
「あの人は風。 留まることを知らない人。 それなら私も風になって追い掛けましょう」
軽やかに清水の舞台から身を投げた女優。
「なにっ!?」っと焦るボス――ドレスを着た女優をお姫様抱っこして上昇するのは白式を纏った一夏の姿だった。
「ああ、私の愛しい人。 風となって迎えに来てくれた……」
うっとりとした表情で見上げる女優に対して一夏はというと――。
「君が呼ぶなら何処へでも駆け付けよう。 この恋を翼に変えて、風となろう」
明らかな棒読み、芝居慣れしていない演技に浮きまくる一夏の姿と白式。
だが女優はうっとりしたまま一夏の首に腕を回し、監督も満足そうに頷いた。
そして、そのまま夜の京都の町並みへとゆっくり飛翔して離れていく所で「カァッ――――ト!!」と監督の大声が響き「お疲れ様でした!」と全員拍手で撮影が終わった。
主演男優である一夏がふわりと舞い降り、女優を降ろすと大歓迎され、一夏は充実感が満たされ、また気前よく写真撮影やサイン、握手と応じていた。
だが一夏はこのあと起きる悲劇を今この時、知る術はなかった。
食事も終えた一組生徒、ここの旅館も混浴で今はIS学園が貸しきっている――。
「にひひ、温泉温泉~♪ ひーくん、背中流してあげるね~」
「や、いくら混浴でもそれは……」
「あら? 安心してヒルト、ちゃんと水着を着て混浴するから♪」
本音、ティナとダブルサンドイッチに挟まれるヒルトの両腕、柔らかな膨らみに下半身に血流が行くのを感じ、色々な意味でヒルトは期待せざるを得なかった。
後書き
次回混浴パラダイス
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