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IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》

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【第612話】

 京都の街を歩く俺、IS学園制服を着てる俺は周りからも目立つのか人の視線を感じる。


「え? あれって織斑くん――じゃない方か、織斑一夏くんは一緒じゃないのかな?」

「うーん、でも彼が居るなら織斑くんも京都に来てるかもっ」

「キャーッ! 私彼の大ファンなの! 探してサインもらわなきゃ!」


 等と聞こえてくる、それはさておき秋の京都の観光スポットを歩いていたらしく、そこらかしこに外国人観光客やら時期的に修学旅行の学生等が目立っている。

 そんな中でIS学園制服を着てるのだ、一夏が居るんじゃないかと少し騒ぎ始めている。

 変に質問されても面倒だから俺は脇道に入り、更に隙間道へと入る。

 思った通り俺の後を着けてきた一部人間がそのまま通り過ぎていった。

 一夏の事探したいなら俺に云々よりもSNSとかで情報仕入れたらいいと思うが――まあ良いかな。

 隙間道の曲がり角を曲がる――と、そこで真っ白な猫が居た。


「白猫? ……野良か?」


 野良にしては小綺麗な白猫、その真っ直ぐな眼差しが俺と交差する。


「ふむ……にゃん次郎辺りかな、名前を着けるなら」

「……にゃぁ(違う)」


 小さく鳴き声を鳴らした白猫、くるりと踵を返して歩き出した。


「む? にゃん次郎、何処か行くのか?」

「にゃぁ! にゃあにゃあ(此方に来て! ついでににゃん次郎じゃないから)」

「ん? 着いてこいってか?」

「にゃっ(そうよ、来て)」


 頷く白猫――よくわからんが着いていくことに。

 家と家の隙間道を抜け、細い脇道――時折通る自転車が危ないもののにゃん次郎の身軽さで避け、俺も端に寄って避ける。

 安全な塀の上を歩くにゃん次郎――それに着いていき、曲がると今度は急な斜面の階段が現れた。

 それをかけ上る――そしてまた細道に入った辺りで時間は二十分が過ぎていた。


「にゃん次郎~、まだなのか~?」

「ニャッ!(まだよ)」

「はいはい、わかったよにゃん次郎、でも連絡来たら戻るからな」

「にゃあっ(それまでには着くわよ)」


 ピョンと塀から降りたにゃん次郎――曲がり角を更に曲がると――。


「おかえり、『シャイニィ』」

「ん?」


 どうやらにゃん次郎は飼い猫だったようだ――飼い主である女性がシャイニィと呼んで自身の肩に乗せる。

 その飼い主の風貌はなんというか、いろんな意味で人目につく風貌だった。

 右目には刀の鍔に似た眼帯、着てる真っ赤な着物は気崩し、肩から胸元まで露出してエロい、遊郭の客寄せと言われたら信じそうなレベルだ。

 だが、僅かに覗き見える火傷の痕と失った右腕。

 胸元の谷間から煙管を取り出すと僅かにふかしてみせた。

 真っ赤な髪に真っ赤な着物、アンバランスなピンヒールに長身で白い肌は明らかに外国人の風貌だった。


「キミ、相がよくないネぇ」

「ん? 相?」


 また煙管をふかせた女性――肩に乗ったにゃん次郎は煙をすかさず避け、女性の頭の上に乗っかる。


「んー。 なんていうかサ。 ハレのち女難の相、時々銃弾の雨って顔に出てるのサ」


 女難の相は何と無くわかるが銃弾の雨――それはもしかしたら直ぐに何かが起きるのかと緊張が走る。


「フッ……気をつけなよ少年。 シャイニィをありがとうネ」

「にゃっ(楽しかったわ)」


 煙管を三度ふかせた女性と前足を上げたにゃん次郎はそのまま俺の横を通り抜けて立ち去っていった。

 さらばにゃん次郎、例え名前がシャイニィだろうと、あの顔はにゃん次郎しかあり得ん。

 立ち去っていった女性とにゃん次郎を見送り、そのまま真っ直ぐ歩くと大通りに出た、

 そこでメールの着信音が鳴った――このメールはシャルからだ。


『ヒルト、すっごく美味しそうなお菓子屋さんを見つけたから、ここに来て。 PS、美冬と美春の二人から――早く来ないとお兄ちゃんの奢りで団子買っちゃうよ?by美冬。 ヒルト! 和菓子って凄く美味しいね!by美春。 僕も……待ってるからね、ヒルト ×××』


 ――という内容だった、というか下の×××はなんだ?

 よくわからない――それはさておき、シャルのメールに添付されていた地図には赤丸で場所を示していた。


「そんなに遠くなさそうだな」


 携帯ナビに住所を入力し、画面にナビルートが表示された。


「……そういやカメラで写真――いや、携帯のカメラで大丈夫かな。 今から使い捨てカメラを探すよりは良いだろうし」


 そうと決まれば俺は人波を掻い潜り、待ち合わせ場所へ向かう。

 行き交う観光客――土産物屋に集まる外国人、舞妓衣装を着た観光客等様々な人とすれ違う。


「……あれ、ヒルト?」

「え?」


 唐突に呼ばれ、辺りを見渡すが人が多すぎてわからなかった――と、俺の右肩を叩かれ、振り向いたら成樹がそこに居た。


「あっ、成樹、久しぶりだな!」

「フフッ、そうだねヒルト。 ……まさか地元じゃなく、京都で君と会うなんて思わなかったよ」


 柔らかな笑みを浮かべた成樹、服装は秋らしく黒のジャケットにインナーは白のカットソー、下は黒のスキニーパンツ、帽子もつば広ハットを被っていた。


「成樹、京都には何をしに?」

「僕は父さんと一緒に茶葉探し、後僕自身がちょっとここに行きたくてね」


 そう言って携帯を取り出し画面をスクロールさせて俺にページを見せてきた。

 内容は【世界のラファール・リヴァイヴ展】――そういやニュースでやってたな。


「成る程、ラファール・リヴァイヴ展か」

「うん。 ヒルトはどうしてここにいるんだい?」

「……一応来週の修学旅行の視察」

「視察……? ……そっか、何か事情があるんだね。 ……何かはわからないけど、僕で良かったらいつでも力になるから」

「ああ、ありがとうな。 成樹、会えて良かったよ、ちょい美冬達を待たせてるからもう行くよ」

「フフッ、それじゃあ待たせちゃ悪いね? じゃあヒルト、また連絡するよ」


 そう言って成樹は手を振った――まさか成樹とここで会うとは思わなかった。

 思わぬ巡り合わせに感謝しつつ、遅れた分を取り戻すため走って向かった。


「……彼は……ふむ、成る程」


 ヒルトが去った後、笹川成樹を見る仮面の男ウィステリア・ミスト――京都には似合わないその仮面姿は目立つのだが本人は気にしていなかった。


「もう、こんなときぐらい仮面外したら良いのに」

「すまないなシャルトルーズ。 あまり表立って私の顔を晒したくないのでね」

「……まあ良いけど。 ウィステリアの姿見たら、直ぐに女の子が寄って来ちゃうもんね」

「……ヤキモチかね、シャルトルーズ」

「……むぅ」


 認めようとしないのか僅かに視線をそらして膨れたシャルトルーズ。


「……大丈夫だ、私にはキミ以外の女性は映らないのでね」

「……もう、口が上手いんだから」


 少し唇を尖らせるも、シャルトルーズは頬を紅潮させて微笑んだ。


「……さて、まだ調査は途中だ、行くぞシャルトルーズ」

「あっ、うん!」


 ウィステリア・ミストとシャルトルーズの二人もヒルトや成樹とは反対側へと消えていった。 
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