IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》
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【第604話】
前書き
ここから十巻
十一月、運動会も終わり、IS学園全校集会で楯無が壇上の上に立ち、マイクを調整していた。
ざわめく一年一組生徒――先日から一年は全クラスが一組に吸収合併されるという前代未聞の事態が行われた。
楯無がヒルトの願いを叶えたからだ――ヒルト自身、これはこれで良いかとも思っていた。
楯無が咳払いをすると、ざわめいていた校内静まりかえり、満足そうに楯無は頷く。
「それでは、これより秋の修学旅行についての説明をさせていただきます」
修学旅行――その言葉に生徒一同歓声が巻き起こる。
各国から集められた女子も、学園の一大イベントには目がないのだ。
「今回、様々な騒動の結果、延期となっていた修学旅行ですが……またしても第三者の介入が無いとは言い切れません」
事実、四月からここまで事件ばかり、大半は外部からの襲撃で学園の警備体制に疑問の声が上がっている。
親父が入っても未然に防げる様なレーダー類等で感知して自衛隊が対処という事もなければ難しいのだ。
僅かに鋭い視線を走らせた楯無、だがそれは一瞬の事でそれに気付いたのはヒルトを含めた専用機持ちだけだった。
だが、すぐにいつもの口調に戻った楯無。
「――という訳で、生徒会からの選抜メンバーによる、京都修学旅行への下見をお願いするわね。 メンバーは全学年の専用機持ち全員、そして引率には織斑先生、山田先生、後は有坂先生。 以上です」
その発表で様々な声が聞こえてくる。
「えー、エミリアもヒルトくんと一緒に下見にいきたい~!」
「ヒルトさん! 下見、気をつけて行ってきてくださいねっ!」
「有坂君と少数旅行ずるい! アタシも専用機ほしい!」
……主にヒルトの周りからの声だった。
そして、京都と訊いて喜ぶ選抜メンバーも居た。
「おお、古都京都か。 金沢も私は好きだが、やはり日本の古都、京都が一番だな!」
箒だ、京都と訊いてうんうんと何度も頷いた。
「わあ、京都、僕は初めてだよ! 楽しみだなぁ……ね、ラウラ!」
「うむ!」
シャル、ラウラの二人も嬉しそうな表情を浮かべていた。
「日本の古都、京都――我が英国、ロンドンに負けず劣らず、素晴らしいと御聞きしましたが……」
「うげ、また京都ぉ? 何で日本って修学旅行は京都が多いのよ。 京都、奈良、北海道、沖縄――あ、いや、沖縄はいっか。 それよりも、小学校中学校今回合わせて三回目よ、あたし」
写真では見たことがあるセシリアだが、やはり実物を見ないとわからないようだ。
一方の鈴音は流石に三回目という事もあってかげんなりしていた。
「京都かぁ。 そういや私達も小学校以来じゃない?」
「うん、京都&奈良。 THE定番だよね」
「そうなんだ? 美春は京都、初めてだから楽しみだ!」
「私もだ、というよりも日本の何処でも私は見てみたいのだが」
未来、美冬、美春、エレンと話し合っていた。
「こほん、鈴ちゃんとセシリアちゃん。 二人には生徒会副会長であるヒルトくんを同行させるからね♪」
そんな楯無の言葉に、セシリアは何時もの腰に手を当てるポーズを取り、鈴音もニィッと八重歯光らせて笑う。
「ヒルトさんと一緒であれば、古都京都も素晴らしい所になりますわね♪」
「へぇ、ヒルトと一緒なら構わないわよ? 三回目だけど、気のせいにしてあげる」
二人して水を得た魚の様に喜ぶ一方、選ばれなかった面々は――。
「……むぅ」
小さく膨れた箒、隣の一夏が顔を覗き込んだ。
「どうしたんだ箒? 膨れて――トイレか?」
「ば、馬鹿者! 誰が!!」
少しデリカシーのない一夏に、目尻を吊り上げて睨む箒。
「ヒルトと同じ班じゃない……班じゃない……」
虚ろにそう呟くシャル、心ここに在らずといった感じだ。
「状況終了、帰投する」
同じく虚ろなラウラ、勝手に帰ろうとしかけてクラスメイト全員で取り抑えていた、帰れば連帯責任という事でクラス全員グラウンド十周なのだ。
今や一組は大所帯、流石に走りたくはない。
「ヒルトと同じ班……。 ……まあたまにはいいか」
「むぅ、美冬だって一緒の班になりたかったのにぃ」
未来はちょっと残念そうにするも、たまにならいいかと割り切るが、美冬は兄と一緒の班じゃないのが不服だった。
「私も私も! 私もヒルトと回りたいんだからっ!」
「なかなか君と一緒になることが出来ないな」
ぷくっと頬を膨らませて我が儘を言う美春、エレンは少しだけ残念そうに呟いた。
だが、もっと悲惨な子がいた――生徒会織斑一課の更識簪、織斑一課として一夏と一緒に行動しなければいけなかった。
勿論当初は一夏をヒーローとして見てたが今はもうそんな風には見ていない。
「何で私だけ……」
しくしくと心の中で泣く簪だった。
全校集会も終わり、教室へと戻る途中――。
「ヒルトさん、隣よろしいかしら?」
「私も、良いよねヒルトっ♪」
同意を得る前にセシリア、鈴音の二人は俺の腕をとり、絡ませるのだが――。
「あーっ!? セシリアも鈴音も何やってんのよ!?」
「ま、まあまあエミリアさん。 とりあえず落ち着こっ」
セシリアと鈴音がヒルトの腕を取って絡ませたのを見たエミリアは憤りを見せるが、ソフィーが何とか宥める。
「こほん。 ヒルトさん、今回の視察旅行は大儀ですわね♪」
「ふふん、全くよ。 あ、ヒルト、あたし向こうで舞妓さんの格好してあげよっか? ね、セシリアも日本の舞妓、少しは興味あるでしょ?」
「うふふ、勿論ですわ。 日本の舞妓衣装に興味ありますもの」
「そうよねー、あはは♪」
俺を間に挟み、盛り上がる二人だがその様子を見て割って入る子が居た――。
「セシリア、鈴、幾ら視察旅行だからってヒルトの独占は許さない」
セラ・アーカニアンだ――いつも静かな彼女だが明らかに言葉に力を感じた。
「べ、別に独占するわけでは……」
「そうよ? 一緒の視察旅行で同じ班なんだから独占じゃないし」
「今独占するなら、私達の時は独占させないから」
怒ってるのだろうか、言い終わるとセラは足早に戻っていく。
「……てかさ、視察旅行だけど今回は遊びじゃないだろ?」
俺の至極真っ当な意見を目をぱちくりさせて聞く二人――今回の至極旅行、京都にあると目される亡国機業の拠点制圧が目標であると俺は刀奈から訊いている。
無論俺達だけじゃなく、京都在住のIS部隊も参加する大規模作戦らしい、本来なら学生の俺達を使いたくないらしいが戦力的優位に立つ為だとか。
難しい顔をしていると、ソフィーから開放されたエミリアが俺の前に立つ。
「ヒルトくん! 難しい顔をしないの! 何時もみたくニコッと爽やかに笑って♪」
「え? ……こうか?」
歯を見せ、ぎこちなく笑う俺――と。
「違いますよぉ。 ヒルトさん、笑顔はこうするんですっ」
ニコッと柔らかな笑顔を見せたソフィー・ヴォルナート、正直可愛かった。
「こ、こうか?」
もう一度笑ってみる、セシリア、鈴音の二人も覗き込むが――。
「まだ少し堅いですわね?」
「ほら、こうやって笑顔を見せるのよ♪」
ニコッと鈴音の決め笑顔、ポーズも決めて以前見せてくれたモデル写真みたいだった。
「あ! 笑顔なら負けませんよ、凰さん!」
対抗意識を燃やしたのか、ソフィーは小さくジャンプすると左手を斜めに挙げ、左足を横に、ウインクし、きらり光る八重歯を見せ魅力溢れる笑顔を見せていた。
ちょうど取ったポーズがアルファベットのKになっている。
「むぅ、エミリアだってヒルトくんをメロメロにさせるもんっ!」
前屈みで上目遣いに俺を見上げ、両手でピースするエミリア――てか何の勝負だ、これ。
「あ、じゃあ僕はこうかな? こうやって、ターンしてからの……笑顔♪」
そう言ってシャルも参戦、くるっとターンして両手いっぱい前に掲げ、華開く満面の笑顔を見せた。
「では、わたくしはこうですわね」
後ろ髪を手で靡かせ、ウインクしながら微笑むセシリア――気品溢れる高貴な感じがするが、既に俺が笑顔云々の話じゃないし――てか周りにどんどん伝染していってるのが……。
「ヒルト、因みに私の笑顔はこうだ」
ニヤリと笑うラウラ――ごめん、ときめかなかったよ。
「もう、いつまでもそうしてたら織斑先生に怒られちゃうよ?」
未来がそう言うや、伝染は治まって教室に戻っていく。
「むぅ! ヒルトくん、時間ある時エミリアの最高の笑顔、見せてあげるからね!」
「えへへ、織斑先生に迷惑掛けたくないから戻りますね!」
エミリア、ソフィーと自然な笑顔を見せた――。
「……皆の笑顔、可愛いけどやっぱり自然な方が俺は好きだよ?」
その言葉に、一同が顔を赤くする――その時、久方ぶりの出席簿アタックが俺の脳天を貫いた。
「馬鹿者が、歯の浮くような台詞は休み時間に言え。 さっさと戻るぞ、授業があるんだからな」
「う、了解っす……」
突き刺さる脳天の一撃に顔を青くする一同、笑顔対決は終了し、痛む頭を擦りながら俺も教室に戻っていった。
後書き
前半は原作、後半帰り道の笑顔合戦は絵がないので皆の想像力を駆使してくださいませ
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