IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》
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【第597話】
第二形態移行を果たした天・伊邪那岐――補給方法は変わらず、ヒルトが補給を行っていると美春が姿を現した。
「ヒルト、大丈夫?」
「……あぁ」
明らかに疲労困憊のヒルト、さっきの山田真耶との戦いで大半の力を使い果たしたのだろう。
「ヒルト、補給は私がやるから休んでなさい!」
「……悪い」
美春にそう言って倒れ込む様にベンチに寝転がるヒルト、手際よく補給を行うとヒルトを見た美春、ヒルトの虚ろな眼差しが心配だった。
「ヒルト、次でラストだから」
「……あぁ」
「うん……身体、重く感じる?」
「……そうだな、まるで水の中で動き回る感じがする……」
本当に疲労が限界なのか、美春を見ず焦点の定まらない視線が天井を見上げるのみだった。
美春は優しく頭を撫で――唇を塞ぐ。
突然交わされた口付けにヒルトは驚くも、そのまま受け入れ、甘美な時間を過ごす。
何度も重ねる唇、不思議と身体が軽く感じたヒルト――。
「……どう? 少しましになったでしょ?」
「あぁ。 何したんだ?」
「ん~、言葉にすると難しいけど……要は生体再生機能の応用かな? ISだとコアを媒体にするんだけどね。 私は生身でしょ? 生身のヒルトに生体再生する場合は肉体的繋がりがないと難しいって感じかな」
「……成る程、よくわからん」
「ふふっ、私もいまいちわからないから。 ……でも肉体的繋がりで疲労回復出来るんだから……」
其処から美春の口が閉じる――見るとリンゴの様に顔が完熟していた。
「ふーん……肉体的繋がりか。 こういう事すればもっと回復するのか?」
「あっ……」
そう言ってヒルトは美春の身体を触り始めた――ISスーツを着た美春の肢体、柔らかな果肉は指を飲み込んでいく。
「や、やんっ……そ、そうだけど……そこ触っちゃ……ダメなんだからぁ……」
「そっか……何にしてもそろそろ試合だしな」
「そ、そうだよ? ……もう……元気になったならいいけど」
「ハハッ」
一部は既に元気満々なヒルト、だが美春に何も言わずにまた軽く口づけを交わす。
「もう……。 未来や美冬が見たら怒るよ……?」
「ハハッ……それは見られたら不味いな」
幾分増しになった疲労感、ヒルトは身体を起こして天・伊邪那岐を纏う。
「そういやさ、美春。 さっき力貸してくれてありがとな?」
「え? ……あはは、バレちゃったか。 元々ヒルトは私のマスターじゃん、力貸すのは当然だし、ヒルトなら力の使い道、間違えないはずだもん! 美春は信じてるし!」
満面の笑みを浮かべる美春の頭をそっと撫でると、嬉しいのか鼻の頭を指で軽く擦った。
残す相手はただ一人――美春に手を振り、ヒルトは飛翔して最後の模擬戦へと向かった。
一方でオーランド、イライラとした表情を見せながら織斑一夏、有坂ヒルトの資料を眺めている。
第二形態移行――それを果たしたのは先に一夏である事実を知り、安堵したように息を吐いた。
「ふんっ、第二形態移行した時は焦ったが、やはり織斑一夏君の方が先に果たしているな。 ハッハッハッ、こんな遅い時期に第二形態移行を果たす落ちこぼれはやはり落ちこぼれという事だな!」
オーランドの満足そうな笑みと笑い声が響き渡る――自身等が用意した資料には、有坂ヒルトが一夏と同時期に第二形態移行を果たした記述は載っていない。
それらの記載は有坂美春の資料に記載されている。
だから彼等は知らない――もしヒルトが村雲・弐式に乗り続けていたら、今回は第三形態移行を果たしていたという事実に。
ヒルトが立ち位置につく前に既に待ち構えていた一夏――そんな彼に声援が届く。
「織斑くーん! いい試合見せてねーっ!!」
「有坂君より才能あるとこ、見せなきゃね!!」
そんな歓声の中にもヒルトを応援する声が聞こえてきた。
「ヒルトくん! これでラストだよ!」
「ひーくんー、おりむーをやっつけちゃえー」
「ヒルトさぁん! 私達四組、皆貴方を応援してますからぁ!!」
そんな歓声に応える様にヒルトは手を振った。
身体に残る疲労感――軽く身体を解していると一夏は。
「ヒルト、最後の相手は俺だぜ。 男と男の真剣勝負だ、ハンデも無ければ手加減も無しだぜ」
構えた雪片の刀身は夕陽を浴びて赤い輝きを放っていた。
一方のヒルト――。
「御託はいいさ、こうしてる間にも時間は過ぎている。 始めよう……!」
左肩のランチャーが可変展開され【神之神霧露】となって分離された。
柄と鍔のみの刃のない剣――それを構えるやシグナルが点灯した。
世界に静寂が訪れる――二機を照らす夕陽、額を汗で濡らすヒルトとは対照的に一夏は体力が有り余っていた。
今日一日一夏がしたこと何てただ座ってるか、反対派と会話したかトイレに行ったぐらいだ。
二つ目のシグナル――観客席からは生唾の飲む音が聞こえる、来客席にいる反対派は一夏の勝利を確信してやまなかった。
三つ目のシグナル――試合開始のブザーと共に一夏は単一仕様を使った。
「零落白夜、発動!!」
雪片の展開装甲が開かれ、白亜の光刃を纏う――当たれば一撃必殺の零落白夜、一夏はいつもの様に短期決戦を狙うつもりだった。
ヒルトは神之神霧露の光刃を形成――イザナミを媒体にした大神之神霧露とは違い、紅蓮の粒子刃が姿を現す。
「うぉぉおおおッ!!」
叫びと共に一夏は瞬時加速で肉薄、袈裟斬りで振るうも白亜の光刃の軌跡はヒルトに見極められていて、カウンターに紅い一閃の一撃が一夏に叩き込まれる。
「ぜぁぁあああッ!!」
切り返しの一撃――バックステップで避けようとするが疲労感からか僅かに反応が遅れた。
一撃は避けたものの零落白夜の光刃を受けた神之神霧露の紅い刃は四散した。
刃を失った神之神霧露は可変展開、ランチャーに戻ると牽制を込めてヒルトは撃つ。
大気を焼く粒子砲――一夏は左腕の多機能武装腕《雪羅》から《霞衣》を展開させた。
粒子ビームを無効化する霞衣――激しく四散する粒子ビーム。
端から見ると一見派手で盛り上げるには十分だった。
だがこの時点で一夏のエネルギーは五〇〇を下回る――逆にヒルトはまだ六〇〇以上と差が広がっていた。
「ぜらあああっ!!」
再度瞬時加速で肉薄――雪片の一撃はヒルトに掠りはしない、だが動きの鈍いヒルトはその隙をついて一撃を与えられなかった。
雪片の勢いそのまま、回し蹴りを放つ一夏の一撃はシールド・バリアーに干渉、エネルギーを減らすも電離分子結合殻装甲から放たれるプラズマが一夏のシールドにも干渉し、削られた。
霞衣の範囲外からのプラズマ干渉は予想外のエネルギーダメージを与えていた。
「まだまだぁッ!!」
一夏の叫びは木霊する、また反応が遅れたヒルトだが零落白夜の一撃は確実に回避していた。
傍目から見ても一夏が押してる様に見える試合の流れ、反対派のオーランドも満足そうに頷く。
「ハッハッハッ、なかなかいい試合ではないか! やはり織斑一夏君の方が上手のようだな!」
「その様で、現に有坂ヒルトはろくな反撃も出来ていませんからな!」
「ハハハッ! そこだーっ! いけっー! 落ちこぼれに格の違いを見せつけてやれー!!」
愉快そうにはしゃぐ反対派――だが表示されてるシールド・エネルギーの差は二〇〇と開きかけていた。
試合を見守る千冬にとっては複雑だった、疲労しているヒルトにろくに攻撃を当てる事も出来ない一夏。
それどころかエネルギーの消耗率を計算に入れない戦い自体が不味かった。
そもそも――白式は近接特化仕様の欠陥機、第二形態移行してからはエネルギー消費率が加速的に跳ね上がり、誰から見ても扱いにくい機体となっている。
勿論本人がそれらを考慮すれば良いのだが、最近までアリーナが使えなかった事もあり、ろくに訓練出来ず、明らかにヒルトとの差は広がりを見せていた。
姉としては頭が痛い――上達した事と言えば十月から男子操縦者の情報が解禁され、サインを求められる事が多くなったと言ってサインを書く技術だけが向上している。
深い溜め息を吐く千冬――ディスプレイに映し出される映像を見ると、また左手を閉じたり開いたりを繰り返していた。
その度に、霞衣が形成されて無駄なエネルギーを消耗するだけの一夏を見て更に深い溜め息を吐くのだった。
「……全く成長してないな、あの馬鹿者……」
空中での戦いは一夏の攻撃だけが苛烈差を極める中、ヒルトは疲労した身体に鞭を打ち、零落白夜の軌跡を読んで避け続けていた。
「ぜああああっ!!」
逆袈裟払いからの袈裟斬りによる二段返し、それすら疲労したヒルトに当たる事はなかった。
理由は簡単で一夏の攻撃は大振りが多いのと前以て構えるため、読みやすいのだ。
かといって篠ノ之流古武術裏奥義『零拍子』なんて使えば簡単にヒルトにカモにされるだろう。
裏奥義といえど子供が習得出来る程度では古武術としてはたかがしれている。
達人が使うなら『零拍子』も違うのだろうがその域に到達するには地道な努力が必要だろう。
「ヒルト、もう息が上がってるのか? まだまだ戦いは始まったばっかだぜ!!」
呼吸の荒いヒルトと消耗していない一夏でははっきり言えば五分の条件ではない。
とはいえ五分ならとっくに決着は着いているだろう。
『主君! 挙動制御サポートは此方で行う! 主君は反撃を!』
『そうなのですよぉ(`皿´#) サポートしまくるからマスターは反撃優先なのですよぉ!凸(`皿´)』
袈裟斬りの一撃を避け、ヒルトはワイヤーブレードを射出、一夏の脚部へ絡ませ、回転を加えて地表へと叩き落とす。
「がはっ!?」
体勢を整えるより早く、電磁投射小銃による掃射が一夏を襲う、抉れる地面、巻き起こる砂塵、装甲に突き刺さるタングステン弾。
立ち込める砂塵から一夏は飛び抜ける――瞬時加速による肉薄と合わせて荷電粒子砲《月穿》を放つ。
ヒルトもそれに反応――ほぼ同じタイミングで荷電粒子砲は放たれ、互いに撃った一撃同士がぶつかり、目映い閃光が辺りを包み、熱で大気が焼け、辺り一帯に陽炎が立ち込めた。
「おおおおおっ!!」
叫びが学園に木霊し、遂に雪片と武装腕二刀流による零落白夜が解禁、瞬時加速と合わせてもりもりとエネルギーが無駄に消耗していく一夏。
二刀流による連撃――白亜の光刃の一閃が夕焼け空を白く彩る。
だがその一閃は届かない――どんなに振るおうとも、ヒルトにその一撃が届くことはない。
だがそれでも一夏は止まらない――シールド・エネルギー残量が一五〇を下回ろうとも、止めなかった。
もう一夏にはそれしか手が無いのだ――固定された戦法、誰かに教えを乞う為に頭を下げない無駄な男の意地。
高過ぎる威力を持つ零落白夜の最大威力ですらもう躊躇わない――最大威力ならシールドバリアーに掠るだけでシールド・エネルギーを確実に四〇〇は持っていけるからだ。
白亜の光刃が伸びる――最大威力になった光刃の一撃が遂にヒルトのシールドバリアーを掠めた。
触れた零落白夜の光刃からシールドバリアーは崩壊、再構築――それだけで最大値近くあったシールド・エネルギーが一気に二〇〇を下回る。
「ハッハッハッ! 良いぞ良いぞ! そこだーっ!」
オーランドは力強く激を飛ばす――だが、流石に他の生徒は気づいてしまった――。
「……気のせいかな、何か今までの試合より盛り上がらなくない?」
「うんうん、てか……有坂くん攻撃したのって僅かだよね?」
「逆に織斑くん、攻撃してるけど……って、あぁ!?」
一人の女子生徒が指を指す――一夏のシールド・エネルギーが五〇を下回りかけていた。
「逃がさねぇッ!!」
「逃げるつもりなんか――ない!!」
光刃を纏った雪片を北落師門で受けるヒルト――一夏は口角を吊り上げ、笑った。
「もらったァァァッ!!」
武装腕の光刃がヒルトの脇腹を狙うように横一文字で振られた――だがヒルトは避けない、否……避ける必要がなかった。
シールドバリアーに触れるより早く、武装腕から伸びた光刃は空中で四散――その刃を失った武装腕はただの左フックを繰り出しただけの一撃で、シールドバリアーに干渉、二〇〇から一九〇に減らすだけだった。
雪片に纏われていた光刃も四散――。
「クッ……エネルギーが!?」
もう何度聞いたかわからない一夏の呪詛の言葉――ディスプレイに表示されてるエネルギーゲージは二〇を下回っていた、雪片の展開装甲は閉じ、物理刀へと戻る。
距離を離す一夏は、地上へと降りていく――ヒルトも同様に地上へと降下。
「ヒルト……まだ勝負は終わってねぇぜ!」
「…………」
ヒルトは何も答えない、ただ――右腕部可変展開装甲を組み換え、イザナミを媒体とする大神之神霧露を構えるだけだった。
「ば、バカな……お、落ちこぼれが……落ちこぼれが……!?」
流石のオーランドも事態に気付く、ほぼ十倍近いエネルギー差をつけられている両者、一夏は諦めていない様だが決着は既に決まったも同然だった。
ドローンカメラで映し出される映像――構図はまるで刹那の一瞬を見極める為に睨み合う二人の男。
片方はブリュンヒルデの弟にして世界に祝福された織斑一夏。
もう片方は世界初のIS男子操縦者にして適性により落ちこぼれの烙印を押され、世界から評価されなかった有坂緋琉人。
そして――動いたのは一夏だった。
「ウオォォォオオオッ!! 終わりだァァァッ!!」
武装腕を構え出力を最小限にした月穿の一撃がヒルトに向かって直進を続けた。
大気を焼く粒子、だがヒルトは迷うことなくその場でバック宙――景色が逆さになり、頭の下を粒子砲の一撃が通り抜けていく。
「それは読んでたぜ、ヒルトォォォッ!!」
バック宙で避けたヒルトに対して、加速をつけた雪片によるバリア無効化攻撃を行おうと一夏は四基のウイングスラスターを点火、唸りを上げた。
着地したヒルトに迫る一夏の一撃――脚部可変展開装甲がイザナミの脚部パーツを取り込み可変――刹那、脚部から衝撃波を放ち加速と同時に一夏の背後をとったヒルト。
衝撃波が一夏を襲い、更に大神之神霧露の青白い光刃がウイングスラスターを破壊しながら一夏の絶対防御を発動――操縦者生命維持機能が強制的に発動され、守られるも一夏はその一撃で気を失い、前のめりに倒れた。
四散する雪片――白式も主を守り、エネルギーを使い果たしてその試合の役目を終えたように一夏の身体から粒子となって消えていく。
荒い呼吸のヒルト、静寂に満ちたグラウンド、勝者は立ち、敗者は地に伏すその光景――誰が予想出来ただろうか。
連戦で疲労困憊のヒルトが立ち、逆に圧倒的優位な一夏が地に伏している。
「ぐ……うぅ……」
疲労からか膝から崩れ落ち、ヒルトも同様に地に伏す――唖然とした一同、我に返ったアナウンス担当の生徒が試合終了のブザーを鳴らし――。
「こ、この勝負! 有坂ヒルト君の勝利とします!!」
そのアナウンスが学園全体に響き渡るや、ヒルトの勝利を信じていた生徒から歓声が巻き起こった――だが。
「ええいっ!! 何が勝者は有坂ヒルトだ!? よく見ろ! あの落ちこぼれも倒れておるではないかッ!! この勝負は引き分けだッ!! 引き分けだァァァッ!!!!」
反対派のオーランドがその審議に水を差した、落ちこぼれと蔑む有坂ヒルトが勝った事を認めない――鼻息荒くそう告げる。
「お、オーランドさん、落ち着いて――」
「貴様らも黙れ! 私が居なければ、貴様ら等委員会にすら入れん馬鹿ばっかだろうがァァァッ!!」
反対派の面々がオーランドを落ち着かせようとするも、一喝で萎縮、縮こまった。
「な、何で有坂くんが倒れただけで引き分けになるのよ!?」
「そうだそうだ!! シールド・エネルギーだってヒルトくん一九〇残ってるじゃん!!」
「それにヒルトくん連戦じゃん!! 誰だって倒れちゃうよ!!」
一年を中心に巻き起こるブーイングの嵐、流石に事態を収集させようと教師が宥めようとするがそれより早くオーランドの怒声が響いた。
「黙れ小娘どもがァァァッ!! 現実を見ろ! あの落ちこぼれは倒れておる! 試合終了のブザーがなる前に倒れた!! 誰がどう見ても引き分けだろうがァァァッ!!」
意地となってヒルトの勝利を認めないオーランド――刹那、乾いた音が響き渡る。
「なっ!? き、貴様……何をする、ブリュンヒルデ!!」
織斑千冬だった――平手打ちでオーランドの頬を叩いた千冬。
叩かれた頬が赤くなり、オーランドは頬を大袈裟に擦った。
「いい加減にしていただきたい。 有坂は勝った――この学園に居る全ての専用機持ちに、貴殿方も見たはずだ」
「何が全ての専用機持ちだ! まだ更識楯無、ダリル・ケイシー、フォルテ・サファイアの三名も残っておるではないか!! それにブリュンヒルデ! 貴様も専用機を――」
言い切る前に吹き飛ぶオーランド――我慢の限界からか織斑千冬の拳がオーランドのこめかみに突き刺さり、派手に回転して地に伏した。
ピクピクと気絶するオーランド――異様な殺気を放つ千冬に反対派は脂汗を流した。
「……おい、反対派諸君。 不幸にもオーランド・カーン氏は突風によって飛来した小石に頭をぶつけ、吹き飛んだ。 軽い脳震盪を起こしてるだろうが問題はないだろう」
「さ、左様です。 ふ、不幸にも小石が飛んできました……」
本能で悟った反対派――逆らえば自分達もああなる……ここはIS学園、何処の国にも属さない――例えIS委員会が力を誇示しても、本当に意味は為さないと肌で感じた。
「……レイアート会長、お見苦しい所を御見せして申し訳ありません」
「いえ、此方こそ委員会の恥を晒しました。 ……オーランド・カーンの今回の不祥事は委員会でも問題にさせていただきます。 流石に目にあまりました、今のやり取りも記録されていますし、先程委員会に出資為さってるスポンサーからもオーランド・カーンに関する情報をいただきましたからね。 ……ヨーロッパ視察も中止して、我々はアラスカに戻ります」
立ち上がるレイアート会長――それに倣うように反対派四人も立ち上がった。
「有坂ヒルト君の代表候補生選出は今回の模擬戦の結果と試合ログがあれば問題ないと思います。 スコット、ダスティ! オーランドを連れて帰ります。 ……ですがその前に、市内の病院で検査をしてからです。 正門前に既に車を回してます、そこまで運んでくださいね」
会長に逆らえなかった――オーランドの腰巾着である反対派四人にその選択肢はなかった。
学園から用意された担架でオーランドを運ぶ四人、レイアート等委員会の人間は今回の視察に満足して帰っていった。
ヒルトがその話を聞いたのは、翌朝の医療室、楯無によって聞かされた。
「――という訳、ヒルトくんが倒れた後はそういう事で決着した感じ」
「そうっすか……」
医療室にある投影ディスプレイに映し出されていたニュースは、俺を代表候補生に選出という見出し、そしてIS委員会議員の汚職という見出しも書かれていた。
疲労感で身体が重く、今日一日はゆっくり安静にしなければいけないらしい。
「……ヒルトくん、お疲れ様。 ……いつの間にかあれだけ強くなっていたのね。 お姉さん、見直したわよ」
「……ははっ、ありがとうございます。 そういや一夏は?」
「ん? 生命維持機能の弊害で昨日の運動会の事は一切記憶に無いわ」
「ははっ……いつになく都合のいい頭だな、あいつは」
そう言って俺は天井を見上げた――連戦は終わった、その安堵からか俺は眠気に誘われる。
「ヒルトくん、君が勝ったから……何でも叶えたい願い、言ってもいいのよ?」
「ねが、い……か……」
意識が深淵へと落ちていく前に、俺は呟いた――。
「……み、んな……いっしょ……ぐぅ……」
そのまま眠りについたヒルト、楯無は小さく頷き、眠ったヒルトの唇に口付けを落とす。
「今日は休みなさい。 明日は振替休日だしね」
小さく呟く楯無、誰も見ていないディスプレイにはオーランド・カーンの顔写真と行った不正、更には各国の大統領や首相、王族の総批判される映像が映し出されていた。
後書き
これで終わりかな
次回から原作っす
一夏にパーフェクトゲーム期待してた人もおるかもだけど、連戦って考えたら今の方がまだましかな
ぶっちゃけただただ無双するだけなら描写をもうバリアーにすら掠りもせず、全弾必中とかやればいいけどそれはつまらん気がする
あくまでも個人の感想っす
因みに一夏の記憶が都合よく無くなるのは原作の描写見る限りじゃこうしか見えんからね
あくまでも原作忠実な一夏で、改悪に見えるかもだけどリアルに居たらあんな感じかと
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