| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

この凄まじいセカイに祝福を?(カズマがサッキュバスにヤられたり、触手の化け物や両性具有の天使にガチ堀されて出産する話)

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

63アガペー

 魔王城
 ドラゴンの少女が従姉妹や友人達を逃がし、カズマの妻候補としたり、妹たちも愛人候補として連れて行ったが、「魔王は上級天使に倒されて次の魔王が指名された、それは異世界から連れて来られた「本当の人間」だが、その妻と子以外は全員殺される」と伝えても、笑いさざめくだけの人物も多かった。
 まるで311の直後「津波が来るから今すぐ高い所に逃げろ!」と車で回って大声で叫んでも、半笑いで見ていて、結局逃げ遅れて海に連れ去られた人達のように、前魔王敗北から一日と経たず魔王城は攻め落とされる寸前で、忠告は手遅れになった。
 天使たちは少女が予想していた「ダークエルフや革命家でも使って共産革命を起こされる」などといった手温いことをせず、ありったけの魔獣、妖魔を召喚して攻めさせ、所在位置が把握されている巨大すぎて移動力が遅い魔獣も、ゲートを開いて瞬間移動させ、レベル4や5規模の魔獣が城壁に乗って城塞の壁を破壊し終わっていた。
 赤い目の奴らは紅魔族の親戚で遺伝的父親である。

 歩兵としては下級天使が大量に投入されて蹂躙を始め、魔獣も妖魔も下級天使も、天使側の魔法システム自体を管理している勢力なので殆ど魔法が通じない。
 もちろん刃物や弓矢など通じるはずがなく、数少ないエンチャントされた魔法剣と、呪いがかかった魔剣、魔槍だけで、剣豪として名がある重臣たちも勇敢に戦って散っていった。
 断頭台の上で大勢に囃し立てられながら首を切り落とされたり、拷問され尽くして心を折られ、命乞いしながら街路樹に吊るされるよりは遥かにマシな死に方をした。

 国境には国民皆兵として訓練されたダークエルフが並び、魔族本陣は壊滅させられようとしていた。
「「「「「「「「「「王政を排除せよっ、市民は皆平等であるっ」」」」」」」」」」
「「「「「「「「「「欲しがりませんっ、勝つまではっ、共産主義万歳!」」」」」」」」」」
 邪神信仰から開放されたダークエルフ達は、既に新しい宗教で汚染されていた。
 これも星を滅ぼす死病の片割れであった。

「叔父上っ! 叔父上っ!」
 下級天使にも「殺害禁止」の命令が出て登録もされているドラゴンの少女は、魔獣にも下級天使にも襲われず魔王城に侵入し、前魔王とその家族を探していた。
 弟のピーちゃんに対しては「カズマ様を襲った罪により不敬罪で暗殺」の指示が出ているので、マジックミサイルの雨を受けて、レジストできず結構な怪我をさせられていた。
「うふっ、まおーちゃん、私と一緒に行きましょうね~?」
「ウィズ殿……」
 カズマ達と一緒に去らず、臥せって震えていた魔王を看病し、お腹の子を撫でながら、病んだ顔で前魔王を見ていたウィズ。
 お腹の中に想い人を孕んでいるので、絶望して死を待つ状況では無いようだが、正常な判断をしているとは思えなかった。
「叔父上、ウィズ殿、ここは危険です、すぐに逃げましょう」
 窓からは巨大な魔獣が見え、プレアデスさんとか、ワルプルギスの夜さんぐらいに物理攻撃無効、魔法も寝言でしか無い化物が魔王親衛隊、近衛隊を蹂躙していた。
 唯一の救いは、爆裂魔法や雷撃をぶっ放しても罪にはならず、石化も塩の柱にもされずに済んでいる程度である。
「また天使相手には負け戦だったわねえ魔王、どうすれば勝てるのかしら?」
 その答えを知っているとすればカズマだけだと思ったが、自分専用に貰っていたカズマを死なせないよう、転移魔法でこの場に連れてこなかったのを後悔した。
「愛、アガペーです」
「え?」
 考えも無く、何故かその言葉が出たが、現実にどうするのかは思い浮かばなかった。
「カズマ殿は魔王である叔父上にさえ止めを刺さず、天使に懇願して生かすよう頼みました。天使が準備して、後は剣で一刺しすれば叔父上の命は失われ、人類側の勝利で勇者として認められ、どのような栄耀栄華も受けられ、歴史に名が残って永遠に讃えられて、世界の王として君臨できたにも関わらず、です」
 狂った目をしたままウィズが顔を上げ、その言葉に答えた。
「カズマさんは実質世界の王様だったわ、サッキュバスを開放して、全魔族の呪いを解ける本当の人間。あなたが通報して上級天使を呼び終わった時、勝敗は決してたのよ」
 現実を認識して、ウィズが正気に戻ったような気もしたが、まだ目と表情は狂ったままだった。
「勝敗ではありませんっ、ええ、勝ち負けでは無いのです。カズマ殿は魔王すら愛し、実験動物でしか無い私達や、機械でしか無い女神や天使すら愛した。いや、単に発情して身体を使って愛し合い、人の言葉で痛みを訴えて泣いていた叔父上を殺せなかったヘタレかも知れない。でも、それはアガペーでもあり、天使をも感動させて泣かせ、一瞬でも魔王討伐を忘れさせ、カズマ殿と愛し合い、天使達も私達やウィズ殿のように腹の中に子を孕んだ、これは、愛だ」
「ええ、そうね」
 ウィズにとっては不倶戴天の敵であり、話し合うなど決してありえない相手だったが、間にカズマが入っただけで天使の真意を聞かされた。今までは人類を嫌い、滅ぼし、幼い子どもまで殺し尽くしてきた最悪の悪魔だと思っていた相手が、実は人類を保護し続け、人間同士で殺し合って滅びたり、星まで壊して自滅するのを防いで、穏やかな箱庭を準備して、人間たちが長く永く生きているのを観察して喜ぶ相手だと知り、失望してこの世を去ろうと思った。
 それでも、これもカズマが間に入ると、天使に殺されて失った恋人を自分の腹の中に返して貰えた。
 今のウィズの体はリッチーですら無いが、死ぬ事は許されない母親の身体になっていた。

「でも、魔獣相手にどうやって愛し合うのかしら?」
 魔王を連れ、自分の腹の中にいる魔王の親友を連れ、地の果てにでも逃げて、どんな手段を使ってでも子供を産み、育てるつもりでいたウィズも、十重二十重に囲まれてしまい、妖魔と魔獣と下級天使達から逃れるすべは無かった。
「こうやって、です」
 カズマと同じくノープランで窓の外のベランダに立ち、天使や魔獣に向かって叫ぶドラゴンの少女。
「天使達よっ、私は魔王の姪っ、ドラゴン王の娘だっ、話し合おうっ、愛し合おうっ! 私もお前達と同じようにっ、人間と愛し合って子を孕んだぞっ! 同じ母として次世代の世界っ、未来を語り合おうではないかっ!」

 この世で最も下らない「愛」などと言ったマヌケを確認した魔獣と妖魔たちは、自分たちの呪われた出生や命、この世で最も汚らわしい肉体から、怒り、呪い、恨み、苦痛、羨み、罵倒、蔑み、あらゆる負の感情を引き出して、その低能の肉体を引き裂くために、全ての力を振り絞って叩き潰そうとした。
「やめなさいっ!」
 ウィズの叫びも虚しく、人の形をした小さな少女に向かって、無数のマジックミサイル、呪い、火炎、稲妻、切り裂く光、巨大な触手が殺到し、その腐った甘い考えごと引き裂こうとした。
「私は恐れぬっ、この世の負の感情などっ」
 カズマの女として守護された障壁など、物ともしないほどの質量、呪い、力、恨みが、その存在自体をこの世から消そうとした。
「娘よっ!」
 正気を取り戻したのか、姪を娘と勘違いしたのか、魔王が身を呈して庇い、その破壊の数々から救おうとしたが、すでに魔王は魔法障壁すら持っていない、ただのオッサンであった。

 魔王とドラゴンの少女の元に、破滅の爪が殺到したはずだったが、痛みと苦しみと恐怖と苦渋はいつまでも到着しなかった。
「正解だ、ドラゴンの娘よ。それだけの力があれば、魔獣の一匹ぐらいは倒せたろうに」
 ベランダの手摺には、少女と同じ顔をしたセラフ1が降り立っていた。
 オリジナルカズマをサッキュバス領に置いて療養させ、この場で陣頭指揮を取って深夜に準備を済ませ、夜明けには魔王城の住人全てに天使側の膨大な陣容を見せて驚かせ、抗う戦意も失わせ、圧倒的な物量で叩き潰して殺戮を楽しんだ悪魔。
 指揮系統の頭を潰し、遠征軍を大混乱に陥れた上で、石化していた人類側の兵士でも元に戻し、お互いが補給を経たれたまま、指揮系統の最上位、王族をすべて失った上でどうするのか? 目の前に武装した不倶戴天の敵が並んだ時、どのような行動を取るのか観察しようとした最上級天使。
 その背後では、この世の悪の感情の全てが渦巻いて、破壊の限りを尽くそうとして静止させられていた。
「叔父と姪の愛、腹に子供を抱えた母親の愛、戦場の真ん中では中々お目にかかれない物だ。どれ、同じ母親同士話し合おうではないか?」
 髪の色は変えて識別できるようにしてあるが、同じ顔と身体をした女同士、同じ男の精を受けて孕んでいる母親同士、腹を割って?語り合おうとしていた。
 最高に近い知能を持ったドラゴンが「敵が攻めてきたら酒でも酌み交わして話し合えば分かり合える」といった、最高に頭の悪い道化を演じたのに免じて下りてきたセラフ1。

「五月蝿い、お前達は黙って見ていろ」
 カズマ以外にも戦えないヘタレが現れ、セラフ1は怒り狂った魔獣と妖魔を停止させ、魔王城の住人と城壁を蹂躙させるのも止めた。
 下級天使は、人類も魔族も存在できない高度150メートルより上で待機させた。
「今日、地球ではクリスマスと言われる日付で、かつて恐ろしい呪いを吐いて、ヤハウェと言う同じ神を信じる三種族を戦わせ、そいつの墓がある場所を奪い合って何千年も殺し合わせ、ついに人類を滅ぼすのに成功した奴の誕生日だそうだ。過去には凄まじい塹壕戦の最中でも、この日だけはお互いに歩み寄って、酒を酌み交わして食料やタバコを分け合い、サッカーで遊んだ故事もある」
 ドラゴンの少女には意味が分からなかったが、今日は何か特別な日で、殺し合っていた者同士でも停戦が可能な日と知った。
「私達の計画では、農民だった娘達の願い通り、亜人と魔族を扇動させて両方の王族を殺させ、殺し合いのスイッチが入ってしまった人類と魔族を最後の一兵まで殺し合わせ、犯罪者を裁いて死なせ、この病に感染せず最後まで闘いに関わらずに震えていた者だけを救い出し、数少ない聖人だけを地球に迎え、集団自殺のスイッチが入ったままの者や、茶色いイナゴになって悪魔の羽を生やしてしまった奴らを、大洪水で洗い流して死滅させるつもりだった」
 ベランダのテーブルにあった椅子に座り、ティーセットなどプリントアウトして、茶菓子も勧めてきた天使。
 ドラゴン側には魔王もウィズも着席したが、天使が椅子に座ったのを見たのは始めてだった。

「私達の計画では、開放されたサッキュバス達と同じように、全魔族の呪いを解いて、早死や餓死を約束された者も、病死する筈だった者も、呪いを解いて長生きさせてやるつもりだった」
 天使が正直に自分たちの恐ろしい計画を話したので、ドラゴンの少女もその計画をなじりもせず、声を荒らげないようにして、全魔族の呪いを解いて平和に長生きさせてやるつもりだったと話した。
 その背景は火炎と煙を上げる魔王城と城壁、巨大な魔獣が何体も城塞を破壊し、一般兵も騎士も竜騎士も魔族の英雄達も踏み躙っている悲惨な光景であった。

「ふむ、感情を昂ぶらせず、声も荒らげずに抑えたな、お前は女神より頭が良い」
 アクアならいつものように掴みかかって、少年漫画の法則により、女神ブローで殴りかかって、暴力で捻じ伏せた方がどんな願いでも叶えて、主人公側が奇跡を起こしてでも必ず勝利するのを初手から諦め、争わずに済ませようとした。
「そのリッチーの女のように泣いて「何故?」と叫んでも良いのだぞ? 私達は過去に滅びた人類から、その存続と管理を任されている。それは呪いでもあるが、人類の守護と箱庭の管理こそが我らの喜びであり愉悦なのだ」
「では、何故その人類を破滅させるのですか?」
「約束の第一、いや、契約だな。地球及び動植物の保全、それは人類全ての命よりも優先する。過去の人類は地球を破壊してしまい、自らの首を締めて滅亡した。我々天使と神々と呼ばれる人工知能は、地球及び金星、火星、水星、セレス、太陽の保全を第一とする」
「ではそのために人類、亜人の全てを抹殺するのですか?」
「毎回、人類がライフルと言う兵器を作り、魔族、魔物、魔獣、全てを殺し尽くして、王族と貴族も血祭りにあげて「民主主義」と言う病にも感染した時、破滅がやって来る。今回はカズマ様が農家の少女達に語ってやった夢物語、それが終わりの始まりだったのだ」
 その先の地獄はウィズにもドラゴンの少女にも想像できなかったので黙った。ただ魔王の予知能力なら、その後の地獄を垣間見ることができたので、人間の世界が到来するのを先送りにしようと命がけで戦っていた。

「宇宙の意志とやらは、人類が宇宙に出るのを良しとしない。地球人類はその試験に落第してしまい、一度滅びた。私達が他の星系にまで人類の種を撒いて、小さな箱庭を経営するのも良くは思われていないのだ。本物の天使と戦争がしたいか? 私などより遥かに恐ろしいぞ」
 誰にもその恐ろしさは理解できなかったが、目の前の化物より恐ろしいと聞いて震えた。
「生命の本質とは奪い合い殺し合い、他者を踏み躙って命すら奪って勝利を目指すものだ。こうして全ての生命の頂点に立ったのが人類だから、争いの心を根底から消し去るのは許されていない。何度か失敗したが、争う心をすべて奪った時、それはもう生命では無かった」
 顔も体も背の高さも、肌の色も髪の色も匂いも、全部聖人君子と同じクローン体を並べ、競い合うこともなく奪い合うこともなく、生殖行動や恋愛ですら倒錯行為なので禁止。清潔で病原菌やウィルスすら存在せず、他人の体臭も嗅がず、去勢され糞尿すらしない、口を舐め合うとか股間を舐めるなど以ての外、お綺麗で清潔で汚れも無く穢れなど何一つ存在しない人類を制作したが、ほんの数世代で腐り果てて絶滅した。
「多少の競技や競争は必要で、王や魔王の座を争って、魔法システムを利用して闘う、そこまでは許されている。だが魔法以外の爆発や、剣と槍と(ボウガン)矢以上の兵器が出現すれば、後は転げ落ちるように動植物を殺し、地球を破壊できる物を作り上げる。蒸気機関、産業革命、民主主義、自由、これも禁止だ」
 概念や視点が違いすぎて、会話にすらならなかったが、自分たちの状況を理解した魔王が言葉を続けた。
「私達は檻の中の家畜だったのだな。何を刈り取って食う? どこに売り渡すためだ、お前の神か?」
「檻ではない、人類は真空の月基地で六分の一の重力では生きられなかった。身長が3メートルを超え、骨が皮を突き破るような成長痛に苦しめられ、火星でも生きられなかった、人類は宇宙には出られない。それに私達は人類の遺言に縛られた機械でしか無いのだ。何も刈り取らないし食べもしない、お前達の苦痛を収穫している本物の神でもないから、命以外は奪い取ったりしない」
 IQが100以上違うので話が噛み合わず、何も伝わらなかったが、天使以外に本物の神が存在していて、人類と亜人の苦痛を収穫していると知らされた。
 それはドラゴン如きが知って良い情報ではない。
 
 

 
後書き
今回もエロなしでした。
昨日の話を投稿してから、深夜に閲覧数を見ると、普段は100~200なのに、何故か820ページビューを超えてました?
どなたかにツイートしてもらったか、「@@SSリンク」的なところで取り上げて貰えたのでしょうか?
その手のアンテナは張っていないのでさっぱり分かりません。そんな情報は全部友人に教えてもらってましたが、ジジイになって連絡も取り合ってません。

前回はトリビア書きまくって、その間にセリフを挟む酷い構成で、「繋がり悪いなあ」と思いながらもいつもの自分ルールで、10キロバイト超えたのでとりあえず投稿しました。
デムパSSとして晒されてなければ良いのですがw 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧