KANON 終わらない悪夢
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24舞と佐祐理
祐一が舞を連れ、舞の家か自分の家に連れ込んで、一発お願いしようと画策して、エレベータを使って一階まで降りようとした時。
選択肢
1,このまま病院を出てタクシーを拾う。
2,裏口から逃げてダッシュで逃走。
3,舞に特殊な移動手段を教えてもらう。
4,冷静に考えてみる。
選択「4」
ここでも先ほどのような失敗を犯さないで、舞を犯せるように慎重に予想してみる。
祐一未来予知中……
選択肢「1」を選んだ場合。無事病院を出た後。
「舞、少し歩きながらタクシーでも止めようか? まだ歩けるか?」
「…うん」
まだ股間がヌルヌルのヌレヌレで、祐一と腕を組んで胸を押し付け、まんざらでも無い表情で祐一の言うまま連れて行かれる舞。
そこでタクシーが近付いたので手を上げてみたが、乗客が乗っていて病院に入って行き、助手席や後部座席に目をやると、乗っていた人物やリボンには非常に見覚えがあった。
(アルファワン高速接近! 栞クローが来ますっ!)
「くぁwせdrftgyふじこlp! キシャーーーー!」
歩道から目を話している隙に、音速で走ってきた栞に、挨拶代わりのランニングラリアットを喰らい、舞からも引き離され、ランニングネックブリーカーの体制で喉にエルボードロップもご馳走になり、それで終わりかと思えば、そのままチキンウィングフェイスロックに持ち込まれて引きずり起こされ、タップしてギブアップしても許してもらえず、美坂家仕込みのバーリトゥード戦のルールで殺人フルコースをタップリ堪能させられる祐一クン。
「おげふぅっ! ウゴフッ! グエエッ!」
多分、朝の通学時の態度の悪さ、人工呼吸でヌルヌルにされ、トイレまで走らされた罰。一時間目の休み時間にも不在で、周りの女子の噂話や嘲笑を受け、二時間目の休み時間まで女と過ごして浮気し、子供がいるかも知れなかった腹を蹴られ、魔物として殺されそうになった上、昼休みと五時間目の態度の悪さ、真琴(本物)と香里に完全敗北させられた怒りを、一身で受け止めさせられたらしい。
戦いの最中、栞を救おうとした事による情状酌量など一切存在しない過酷な制裁であった。
(タスケテ、タスケテ、シンジャウヨ)
先ほどタクシーに乗って来た人物に助けを求め、消え入りそうな心の声で鳴いてみたが、この時の祐一は、栞への恋心を完全に失い、決別を心に決めた。
『栞さん、それはやり過ぎです、相沢くんを離して』
「グルルルルルッ、ガオオオオオッ!」
猛獣使いのような同盟者の声を聞き、一応祐一への首絞めを解除し、勝利の咆哮を叫ぶ魔物。このままボロボロになったタヒ体?を抱えて姉の病室に駆け込み、武力によって雌雄を決しようかと思ったが、まずは目の前の敵を威嚇する。
「川澄サン、祐一サンヲ連レテ、ドコニ行コウトシテタンデスカ?」
「…私の家」
舞の言葉なので、肝心な単語は全部抜け落ちていたが、目の前の女が発情していて、自分の巣に連れ込んで交尾しようとしたり、メスの顔をして祐一を取り戻そうとしているのも分かった。
栞が抱えている首とは違い、自由になっている手を舞に掴まれ、嫌な予感がする祐一。
「…祐一を離して」
「嫌です」
先日、香里と栞にやられたのと同じように、「祐一クン綱引き」が開始された。まるで「オーエス、オーエス」の掛け声が聞こえた気がする祐一は、今日も二匹の魔物に千切られる感触を味わった。
「うぐぅ」
(ヤハ、舞クンハ、手ガ取レタッテ、決シテ許シチャアクレナイヨ、マイッタ、マイッタ)
香里と違い、手がもげた程度では諦めてくれそうにない舞。刀で左右に分割されるか、セックス嫌いの栞が上半身、舞が下半身と言う結果になりそうで肝が冷え、旧仮名遣いになる祐一。
ブチブチッ
嫌な音が聞こえ、首とか手の関節が限界を超えて外れ、肉とか皮だけで繋がっている祐一クンだけ、そこでついに……
(らめ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~っ!)
まだタイムリープ能力を持っていないので、やり直しが効かない祐一クンは、選択肢2を選んで……
「くぁwせdrftgyふじこlp! キシャーーーー!」
2をすっ飛ばし、エレベータ内で舞に特殊能力での移動方法を聞いてみた。
「ま、まい、ガッコウからビョウインまでどうやってキたんだ? ウマクニげるホウホウってないかな?」
歯の根が合わず、カタカナ混じりの悲しい声で聞く祐一、逃走に失敗すれば、栞にかなりの制裁を加えられるのは間違いない。
「…え? こうやって道を開いたの、『私の家』」
舞が掌を差し出すと、エレベータの中なのに外の風景が広がり、どこかの家の中が見えた。舞の家らしい。
「俺もそこに行けるのか?」
「…ええ、付いて来て」
エレベータの到着音が鳴り、舞に手を引かれながら歩くと、「どこでもドア」を通るように風景が変わり、舞の家の玄関に到着した。
転移技でも「石の中にいる!」とかは無いらしい。
「…ただいま? 上がって」
自分の後ろで、「くぁwせdrftgyふじこlp! キシャーーーー!」と言う怪獣の叫びが聞こえたような気がするが、あえて聞かなかったことにして、靴を脱いで舞に続いて家に上がる。
目の前で起こった超常現象も無かったことにしようとしたが、気になったので一応聞いてみる。
「今の、一体どうやったんだ?」
「…え? 簡単でしょ? 多分祐一にもできる」
簡単なことのように言われたが、「秋子さんの家」と願っても道は開かなかったので諦めた。
「…お母さんが帰ってくるのは六時頃、まだ三時過ぎだから結構ある」
今回もプレイ時間は三時間と教えられ、舞の部屋に通された。ベッドと勉強机以外、本棚もないような部屋で、壁にもカレンダーと時計しか無い。
「…座ってて、ちょっと電話してくる」
武器を置いて部屋を出て、廊下にある電話を取る舞。番号をプッシュもせずに繋がったのか、いきなり喋り始める。
『…もしもし、佐祐理、電話に出て』
ほんの少し待つと、内線にまで侵入できたのか電話が繋がり、佐祐理らしき相手が出た。
「もしもし、舞なの? うちまで電話なんて珍しい」
「…うん、話があるの、祐一とキスした。それで左手と右手の魔物を捕まえて返してもらったの。これからもっと色々するから佐祐理も来て」
先ほどの未来予知を思い出し、もし舞をレイプした場合、壮絶な仕返しをされる相手を召喚されてしまい、度肝を抜かれる祐一。
和姦の場合どうなるのか不明だが「キマシタワー」な関係の佐祐理ならどんな反応をするか分からない。いつものような暗号同然の舞語で理解してくれるのかは不明だが、好意的に解釈してくれるよう祈った。
「ええっ? ちょっと待って、舞。今から行くからまだ何もしないで待ってて、いいでしょ?」
「…うん、待ってる、10分だけ」
用件を伝え終わったので、そのまま電話を切ってしまった舞。佐祐理が今の状態を理解しているとは到底思えなかったが、十分程度でビデオカメラとカメラを持った佐祐理と倉田家の人が殺到するのは予想できた。
「まずいじゃないか? 佐祐理さん怒ってるぞ、俺が舞に手出ししたら……」
ホモの人が沢山来て祐一がレイプされるとか、ワセリンもローションも無しとか言えなかったので口ごもる。
「…怒らない。佐祐理には、もしこうなった時、正直に言うように言われてたの、だから呼んだ」
まだ舞には喜びの感情はなかったが、哀しみの感情が動いたのか涙ぐみながら上着やシャツを脱ぎ始め、スカートのホックも取って床に落とした。
「ま、待て、10分待つんじゃないのか? 今からしたら佐祐理さん怒るぞ、お前は大丈夫でも俺が危ない」
どこかのグリフィスさんのように、地下に閉じ込められて拷問三昧の生活を送らされそうで、自分の危機を主張してみた。
「…先にシャワーでも浴びましょう、今日はバタバタして汗もかいたし」
精子や血で汚さずに済んだ制服をハンガーに掛け浴室に向かう舞。「浴びる」ではなく「浴びましょう」だったので、誘われているのではないかと思ってみる。
「俺も?」
「…祐一も早く、佐祐理が来てしまう」
やはり誘われているようなので、一緒に浴室に入った祐一。すぐ逃走できるよう、上着もズボンもはいたままだが、舞にはまだ羞恥心も戻っていないようで、シャツを洗濯カゴに入れると、すぐにブラもショーツも靴下も取って洗濯カゴに放り込んだ。
「ま、舞、写真に撮ってもいいか?」
真琴(本物)から借りているデジカメを出し、拒否されるのを前提に聞いてみたが、我慢できなくなり電源も入れて、シャッターを押してピントも合わせる。
「…いい」
思いがけず許可が出たので、全身やバストショット、背中や尻、細い足も撮って行く。
舞の体にはあちこちに傷があり、打撲、切り傷、擦過傷、様々な古傷がある酷い状態だったが、左右の腕だけは綺麗で、切り傷も青黒い痣も無かった。
「両手だけ痣もキズも無いんだな? もしかして魔物が帰って来たから治ったのか?」
「…本当、痣も切り傷も消えてる?」
不思議そうな顔をして、自分の両手を見渡す舞。長年自分自身を傷めつけて、自傷行為を続け、自殺するために努力し続けた少女には数えきれない傷があったが、今日の和解で許されたのか、再会と収容により修復の魔法でも掛かったのか、左右の腕から自傷の跡が消えていた。
「良かったな、いつか全身治してやる」
「…うん」
いつか残りの三体の魔物も説得し、目の前の気の毒な少女に返してやりたいと思う祐一。
しかし戦いに特化した体は美しく、真っ直ぐ立つと尻に皺さえできず、骨盤との間に笑窪までできる引き締まった体を見せられ、オットセイ君がギンギンになった。
(写真だけでも、佐祐理さんにバレたら殺されるのか?)
「ちょっと四つん這いになってくれるか?」
「…こう?」
今日は何でも言う通りにしてくれるので助かるが、後ろに回って撮影しようとすると、さすがの舞も恥ずかしがった。
「…だめ、そんな所」
「舞のきれいな花びら、残しておきたいんだ」
「……うん」
我慢して撮らせてくれるようだが、無理強いすると佐祐理にSATSUGAIされてしまう。花びら撮影(笑)の接写モードにして、左手で開いて右手で何枚か撮り終わった。
「ありがとう、シャワーでも浴びようか」
本日二枚目の処女膜を拝見して撮影までして、約十年分のオカズを手にした祐一。浴室に入ってシャワーを出し始めた舞に続けるよう、大急ぎで服を脱いだ。
浴室に入ると、まだお湯になっていない冷水を平気で浴び続ける舞がいた。「冷たいので嫌」とか「寒い」という苦痛すら感じないのではないかと思い知らされた。
「舞、まだ水だぞ、冷たくないのか?」
「…平気、少し痛いだけ」
冷たいとも言わず、「少し痛い」と表現してしまう舞。常人なら飛び退くような冷たさも平気で、羞恥心も恐怖も無く、男の前に裸体を平然と晒していた。
「いつか体の残りも探してやるからな、その中に「冷たい水を浴びるのが嫌」って感情もあるはずだ、きっと「寒い夜の校舎で夜中まで待って魔物と戦う」なんて真似、しないで済むようにしてやる」
「…うん」
お湯が出始めた所で舞に近寄り、後ろから傷だらけの体を抱いてみる。オットセイ君がじゃまになったが、背中に当てたまま折りたたみ、傷や痣のある胸を包んで、綺麗になった両腕に手を添えた。
「…祐一、体が洗えない、背中にも何か当たってる」
少し感動的な場面で、そのまま肩越しにキスでもするか、もっと色々開始する場面かと思われたが、舞からすると風呂は体を洗う場所で、石鹸でも付けてスムースインする場所ではないと思っているらしく、熱々のオットセイ君も却下された。
素で言われたので、恥じらいとか焦らすという戦術ですら無く、単に邪魔らしい。
「ああ、ごめん」
離してやるとすぐに椅子に座って手を伸ばし、スポンジにボディソープを着けて乱暴に自分の体を洗い始める。
「俺が洗ってやるよ」
「…いい、順番があるの」
体でも洗い合って、ムードを出して興奮する場面かと思ったが、それも拒否される。色々と欠落したままの舞は、母親に教えられた通り、いつもの決まった順番に決まった回数を上から順に擦り、男の目の前でも平気で股間や足の裏も洗い、シャワーで泡を落とすとシャンプーを出して乱暴に髪を洗い始めた。
「そんなに乱暴にしたら髪が痛むぞ、折角きれいなのに」
二ヶ月の名雪期間で教えてもらった、「女の子の髪の洗い方」を実践してやり、長く垂れた髪を擦り合わせて洗ってやる。
「…佐祐理みたいな洗い方」
今の問題発言は聞き捨てならず、手を止めた祐一。
佐祐理は舞のスカーフや体操服持ち帰り以外にも、女同士という立場を利用して自分の家に舞を「お泊りパジャマパーティー」にでも招待して、使い勝手がわからない浴室のカランや高級石鹸を出して「佐祐理に任せて」などとホザいて舞の体を洗い放題、揉み放題、髪の香りも嗅ぎ放題、後れ毛を間近に見て洗い髪の香りも嗅いで卒倒寸前。さらに素手で体を洗って背中の汗も舐め、自分の胸で背中を洗う暴挙に出たり、抱き付いてはしゃぐ振りをして、前も全部洗って鼻血でも出しながら、拒否しない舞の股間まで指を伸ばしてやり放題、お尻を洗うだけなのに何故か四つん這いにさせてガン見、その姿勢で股間や足の裏まで洗い直し、ふざけて足をくすぐる振りをしてお尻やアソコがプルプルする所もガン見。鼻血を見られて「のぼせた」などと言い訳して自分は乳欲?せず、舞を長時間風呂に漬けた「舞汁」まで全部保存して日常的に飲用。当然使用したタオル、バスタオルは真空パックで永久保存、時にはビニール袋に入れてチンしてスーハーして、浴室や脱衣場もシッカリ、ねっとり、タップリ盗撮してオカズとして保存。
入浴後は傷薬や軟膏を塗るふりをして体に触り放題。さらに舞を着せ替え人形にして、普段着せられないヒラヒラの可愛い服を着せたり、ボーイッシュな服装をさせて鼻血ブー、チビTにデニムのホットパンツを着せてヘソとナマ足でヨダレを垂らし、他校のセーラー服や色々な職業の制服を着せてエロエロ、最後は寝巻き用の「脱がせやすい」浴衣を着せ、それらの全てを一眼レフで写真に撮らせ百年プリントの大判で永久保存。
その後は夕食、デザート、お茶などにタップリと「睡眠導入剤」を混ぜて、歓談、ゲームなど夢の様なひと時を過ごし、眠くなった舞をベッドに寝かせ、当然自分も同じベッドで眠ったふりをして一睡もせず、よく眠っているのを確認してから浴衣をはだけて胸の谷間に顔からダイブ、ふあふあのフカフカでヘブン状態、寝ぼけて母親に甘える自分を演出しながら「お母さん」などとホザいて生乳に吸い付いてエロエロ、股間に指を伸ばして舞がビクっとした所で撤退、寝ているのを再度確認、顔を近づけてついにファーストキスを済ませて号泣、堪えきれず数回キスをしてから胸、腹、股間と移動して、クンカクンカ、ペロペロして、生尻の谷間にも顔からダイブして再びヘブン状態、タップリ堪能した後太腿に挟まれてみたりして、ついに舞の太腿に擦りつけて(何を?)絶頂から失神という失態を犯して朝を迎えてしまうが、舞が動き出したので起床、身支度を整えて同時に起きたかのような演出を入れて、無事に色々と済ませてから夜明けのコーヒーや朝食も共にして、罪悪感やら恥ずかしさで目も合わせられずにいたが、日曜は「計画通り!」デートも済ませてヘブン状態、昼食や夕食も共にして夜には舞を送って悲しいお別れ、という週末を過ごした佐祐理ちゃんの姿が簡単に想像できた。
「…次は祐一が洗って、私は先に上がるから」
祐一が妄想している間に髪を流した舞は、素早く席を譲り、スポンジも渡した。
舞の体中を這い回ったスポンジを受取った祐一は、泡が付いたままのソレをペロペロしたくなったが、「お母さんと共用」なのを想像して断念、舞本体をペロペロさせてもらう事にして自分の頭と体を洗い始めた。
その頃の倉田家。
「舞っ、待ってて、すぐ行くからっ」
電話は既に切れていたので、マッハで部屋着の上に上着を着て、内線で電話を入れる。
「佐祐理ですすぐ出ますので車を用意して下さいっ」
句読点を含まない言葉を発し、すぐにビデオカメラやデジカメが入った鞄を掴んで走り出し、車止めまで行ったが用意ができていないので通学用の走りやすい靴を履いてダッシュで舞の家に向かった。
「お嬢様、どちらへっ?」
「舞の家ですっ」
車の準備をしている家の者が止める声も聞かず、一目散に突っ走る佐祐理。走れば十五分程度、車なら十分以内なので、待っていた方が早いのだが、佐祐理の心は車より遥かに急いでいた。
(舞、早まらないでっ)
祐一を好きな舞が、いつかこうなるのは覚悟していたが、それが今日だとは思いもしなかった。
学校に魔物が出ると言われ暫く休んでいたが、その間に二人の距離が急接近するような事件があったに違いない。
(きっと祐一さんが何かして、舞の両手を?)
佐祐理妄中……
「なあ舞、これお前の両手なんだろ? 返して欲しいか?」
「…お願い、返して、返してくれないと、もう生きていけないっ」
佐祐理の妄想なので、多少性格と顔が歪んでいる祐一くん、舞の両手を持って?届かない位置まで持ち上げ、嫌がらせをしているらしい。
「返して欲しかったらヤルことは決まってるだろ? まずはパンツでも見せてもらおうか」
「…え?」
渋々承諾して、仕方なくスカートをたくし上げて、下着を見せる舞。それを間近で見られたり、クンカクンカされたり、縦筋を弄くられたり、中を見られたりする。
「ウヒョー、ピンクか(何が?)いい色してるじゃねえか」
佐祐理の妄想なので、性格と顔が結構歪んでいる祐一くん、声の調子も下品になっていた。
「じゃあ次は、キスでもしてもらおうか?」
「…えっ?」
これも渋々承諾して、祐一の肩に手を掛け、背伸びしてキスをする舞。
「…これでいいでしょ? もう返して」
「お前の家へ行こうぜ、それで全部脱いで隅々まで見せてもらって、写真も撮ってビデオで撮影して、着ていたものは全部真空パックして保存、お風呂のお湯も保管してから、もっと色々するんだ」
佐祐理の妄想なので、自分の欲望が多量に含まれているが、写真まではほぼ正解である。
「…そ、そんな」
(…佐祐理、助けて、私、全部奪われちゃう)
祐一が大量のゴム製品と一緒に、飲み物でも買っている隙に、電話を掛ける舞の姿が想像できた。
「…うん、話があるの、祐一とキスした。それで左手と右手の魔物を捕まえて返してもらったの。これからもっと色々するから佐祐理も来て」
(待ってて、舞、今すぐ行くわ)
妄想終了。
しかし運動不足の体で、休息時からいきなりレッドゾーンに叩きこまれ、体が悲鳴を上げる佐祐理。脇腹は痛くなり、酸素不足で呼吸も苦しい。
「お嬢様、こちらへっ」
そこに車が追い付き、運転手がドアを開けて佐祐理を収容する。
「そこまでお急ぎとは、何事ですか?」
「はあっ、はあっ、舞のピンチです、急いでっ」
妄想に取り付かれているのか、舞からの電話の落ち着いた口調とは違い、まるで助けを呼んでいるかのような悲鳴に書き換えられている。
「それでは急ぎますので、シートベルトをお締め下さい」
「はい」
車の中でビデオカメラと三脚を合体させ、デジカメも用意してバッテリー残量も確認する。
明らかに違う目的のために準備しているが、どこかのお嬢様と同じく「さくらちゃんの好きと、わたくしの好きは違うのですわぁ」なので、佐祐理にとってカメラはオットセイ君の代償行為であり、舞の映像記録や保存は生きがいでもある。
ポケットの中にある合鍵まで用意し、すぐに突入できる体制をとった。
(これは一大事、舞様に何かあったに違いない、もっと人を連れてくるべきだった)
セバスチャン風の年配の運転手は、舞が襲われているような状況も仮定して、現地で戦う準備を心がけた。
「もうすぐ着きますのでご用意下さい」
「ええ」
倉田家の車が舞の家に近付き、佐祐理、セバスチャン組の突入まであと僅か。
その頃のびょういん。
「くぁwせdrftgyふじこlp! キシャーーーー!」
病院に駆け込み、エレベーターホールまで来た栞は、到着したエレベータの中に舞を見たような気がしたが、幻のように消えてしまった。後ろに祐一の気配も感じたがそれも舞とともに消えた。
(祐一さんの匂いがする、さっきまでここにいた?)
魔物に体を強化されてしまった栞は、獣のような嗅覚と勘で自分の恋人?を検知したが、確信は無いので後ろから続いてきた真琴一行と共に姉の病室に向かった。
香里の病室まで移動した一同。通路には昨日トイレをノックして来た看護婦の服を着た人が立っていて、どうやったのか内鍵を解錠して迎えてくれた。
「今日もお見舞いですか? どうぞ」
(一応監視はしてくれてるみたいね)
(どこの手の者だ?)
警戒して念話で話す真琴一行。眠っている香里は無事なようで安心したが、母親もおらず、テレビクルーもいない。
上着は皺にならないよう脱がされてハンガーに掛けられていたので、舞や祐一にはできない配慮に、母親か看護婦風の女性の介助が感じられた。
「ふんっ」
栞は匂いや赤外線で見た動きの動線で、マヌケな恋人が「また姉とキスをして、さらに川澄さんともキスして発情させ、病室で事に及ぼうとして追手を感じて思い直し、姉も自分もいない所に連れ込んで、エロエロな行為に及ぼうと画策し、可及的速やかに逃走を図ろうとした」のが手に取るように分かった。
「香里、起きて、大丈夫なの?」
「う~ん、あと五分」
お約束のセリフを言ってくれるが、数人がかりで起こされて、栞にはグーパンまで貰い、仕方なく目を覚ます香里。
「やっと起きた? どこまで覚えてるの?」
真琴一行も、昼間まで感じていた「夜の使い魔」の気配が、香里から完全に無くなっているのに気付き、また祐一との間に移動の儀式が行われたのだと思えた。
「どうしたの、みんな? 栞も、ゆう…… 相沢くんは?」
祐一と言おうとして目を逸らし、わざわざ言い直したのを見て、記憶はあるが、そう呼ぶのは拒否しているのも分かった。
『あ~、香里、相沢くん諦めるんだ~、呼び捨てにしないって、もう恋人じゃないって意味でしょ?』
寝ぼけまなこで話し、祐一と呼べない面白おかしい状態の香里を楽しむ一同。
「違うわよ、あたしと、ゆ、相沢くんは、その、ラブラブ、なんだから……」
後半は目も逸らし、消え入りそうな声で話す香里。先ほどの夢の中の出来事のような、魔物と舞や祐一との会話を朧気ながら思い出し、自分を支え、命まで繋ぎ、背中を押し続けてくれた存在がいなくなり、後ろ盾が無い状態で恥ずかしすぎる数日を思い、顔が赤くなったり青くなったりするのを隠していた。
『え~、聞こえない、もう一回言ってよ』
聞こえたのに聞こえなかったと言い、香里が口に出せない本心を何度も言わせようとする真琴。
「あたしと相沢くんは、その、愛し合ってるのよ」
誰とも目も合わせられず、真っ赤になって下を向いてしまう、楽しい状態の香里をからかうため、他の女も参加した。
「そりゃあ「九回」もして、「口で三回」だっけ、愛がないとできないよな~」
(くっ、くっ、くっ、口で三回?)
自分でヤった事ながら、トイレが終わった直後の物を美味しそうに頬張り、喉の奥まで使って上顎の味蕾に押し当てて舌と同時に味わったり、同じく上顎の洗濯板のような場所でゴリゴリしたり、思いっきり吸い出して先っぽをペロペロして、出された物は美味しく頂き、何が根拠なのか「百薬の長」だとか「十年寿命が伸びる」と思いながら飲んで、十年掛ける三回なので三十年寿命が伸びた。などと考えてヤった自分が信じられず、背中を押し続けてくれた存在に向かって「ヤり杉だろコノヤロー」などと苦情を言う香里だった。
『今日の香里おもしろ~い』
顔から火を吹いて、二日前自分から入れたのと逆に、穴が会ったら入りたい状態の香里。もしこれで祐一本人がいたらどうなるのか? 会話など当然無理、目も合わせられない、また手を繋いだり、キスでもされたら心臓が止まるか破裂して死んでしまう。
「そ、そうね、ラブラブだもん、二人の愛の結果よ」
そう言いながら、自分のお腹の中に「二人の愛の結晶」がいるかも知れないのも思い出し、嬉しすぎるような、恥ずかしくて心臓が激しく脈打って壊れそうな、色々な感情で潰れそうになる。
(きゅ、きゅ、きゅ、キューカイ)
九回裏、逆転サヨナラ満塁場外ホームランをブチかましてしまった自分の行為と体力にも驚き、祐一が上になったのも二回目だけ、初めても三回目以降も全部自分が上になり、倒れてしまったオットセイ君を叩き起こし、ウエェットテッシュで拭いたとはいえ、自分の中に含んだ物を舐めたり掴んだり、しごいたり叩いたり噛んだりして起立させ、何度もレイプしたのを思い出し、背中を押し続けてくれた存在に向かって「一体どうしてくれんのよコンチクショー、今すぐ帰って来いっ」などと苦情を言う香里だった。
「病室でも絶叫告白して、今日の五時間目も凄い告白したんでしょ? 凄いわね~」
「あ、あれぐらい普通よ、ええ、普通だわ」
大人しめのトイレの少女にまで笑われ、自分がやらかした事態に卒倒しそうになる。病室での告白は緊急事態で命の危険があったので仕方ないとしても、泣きながら背中に抱き付いて「帰らないで、一人にしないで」とか、左胸を直接握らせて「あたしの心臓、まだ動いてる?」とか、髪を切らせた上に「遺髪を渡す」とか、先ほどのホームルームでは大幅にやり過ぎ、さらに午前中には偽装した物とは言え「婚姻届」を提出してしまった。
このままではクラスのほぼ全員に祝福されて結婚式が行われ、書類に不備がなければ婚姻届が受理されてしまう。嬉しいのだが恥ずかしすぎて死にそうな結果に、また顔が青くなったり赤くなったりして忙しい香里の自律神経。
「もういいんですよね? だったら祐一さんは返してもらいます、お姉ちゃんは祐一さんと別れて下さい」
妹にもとどめを刺され、首元まで「わかったわよ」と出かかったが、声帯と気管と肺が発声を拒否した。
もう自分の体は「祐一と体が離れられない関係」で、「充電器と付属品」「世間には言えない不潔な関係」なのも理解できた。
「嫌よ、そんなの、別れたりなんかしない」
以前の気の強さが発揮できないので、まだまだ弱気だったが、別れるのが嫌なのは香里内部の会議でも満場一致で議決された。
『香里、相沢君と別れてくれるんだ、良かった。後は私に任せてね、相沢君と私、結婚するね、祝福してくれる?』
「なっ、どうしてお嬢が? 結婚? 何で?」
栞の方向から嫌な気配がしたが、これは香里への挑発なので構わず続ける。
『私ね~、相沢君と小学校からの同級生でね、お互い初恋の相手だったのよ。それで運命の再会しちゃって、今朝結ばれたの、いいでしょ?』
祝福も賛同もできないので全然良くないが、現在の香里的優先度では、栞>祐一になりつつあり、秋子の決定でも栞が優先で、自分には権利が無い。
それに祐一は、目の前のチンチクリンでチンクシャで、こまっしゃくれた中学生みたいな女とヤルことをヤってしまったのも理解できず、寝起きのボケた頭に鞭を入れ、急速に目を覚ました。
「いつの間に? 相沢くんに何したの?」
『したんじゃなくて、されたの。私んち、一人暮らしだから学校サボってしようって言ったらすぐ来てくれてね、もうスッゴイことしてもらったの』
名雪のような秘めた思いではなく、目の前で堂々と宣戦布告してきた友人を見て、ガンを飛ばそうとしたが、「祐一は自分の物」と言えず、恥ずかしくなって目を逸らす。
「どうして? 相沢くんは栞と結婚するのよ、そんな訳ないじゃない」
とりあえず妹の名前を出して優先順位を主張するが、それでは自分も愛人一号になってしまう、学校での工作や世論を利用して戦うはずが、祐一に対してはこうも弱くなってしまった自分を呪う。
『私は相沢くんが転校してきた時には、すぐ気が付いたんだけどね、私が「真琴です」って言ったら彼も気付いてくれてね、「八年前からずっと好きだった」「結婚しよう」って言ってくれたの~』
「嘘よ、皆であたしをからかってるんでしょ? 相沢くんはそんな人じゃない」
術を掛けながらとは言え、香里は向かってこようともせず、理想の彼氏像を作って浮気を信じようともしない。それより栞の方が今の話を聞いてドス黒い感情を増幅させているので、この辺りでやめておく事にした。
『妹ちゃん、これなら香里は潰すまでもなさそうね』
「そうですね、今のままなら祐一さんと会話もできそうにありません」
五時間目までの強大な力を発揮できず、「潰すまでもない」相手として処理されてしまった香里。そこで真琴は、今必要な情報を引き出すのを優先した。
『じゃあ、『私達がいない間、何があったのか思い出して、正直に話して頂戴』、香里』
目を見開いて香里に目を合わせ、普通より強めの術を掛け、使い魔が入っていた間の記憶や、どうやって抜き出したのかを思い出させる。隣で栞が聞いているが、既に関係者で昼まで使い魔が憑いていた当事者。祐一がどんな特殊な力を使ったかを知っている本人なので構わず聞いた。
舞の家。
祐一が風呂場から出ても、舞はバスタオル一枚で鏡に向かい、濡れた頭をハンドタオルで熱心に、相変わらず乱暴に拭いていた。そのままだと鳥の巣のような髪型になりそうだったが、手櫛ですいて髪留めを巻いただけで、いつもの舞の髪型になった。
「俺にもバスタオル貸してくれるか?」
「…はい」
当然のように自分に巻いていたバスタオルを外し、手渡される。
(いいんだ……)
風呂場と同じように裸体を見られても平然として、まだ体が濡れているのに、下着も着けず、部屋着のくたびれたジャージを着る舞。「体が濡れているのでベタベタして気持ち悪い」という感触すら無いらしい。
祐一もバスタオルをクンクンしてから自分の体を拭き、佐祐理が突入して来た時に脱走できるよう、Tシャツと下着、ズボンまでは履いて、上着とシャツ、大切な舞画像入りカメラを持って舞に続いた。
「…祐一」
舞の部屋に戻ると、すぐにしがみ着かれ、震える両手で背中に爪を立てられた。
「…あの子に会いたかったのは魔物の私だけじゃない。私だって、ずっと、ずっと、ずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっと……」
「舞っ」
止まらなくなった舞を元に戻そうと、大きな声を出して、肩を揺らす。
「ずっとっ! 会いたかったのっ!」
その狂った目は、祐一だけを見て、祐一だけを求めていた。まるで何かの中毒患者のように体を震わせながら、溢れる涙を拭おうともせずに。
「そうだったのか、悪かったな。俺、7年前の記憶が無いんだ」
「7年じゃない、10年よ」
香里や真琴(本物)より怖い、ヤンデレーなお目目に見つめられ、またオシッコをちびりそうな祐一クン。
舞を揺り起こしていたはずの祐一は逆にガッシリと肩を捕まれ、次第に壁に追い詰められて行く。腕力の方も、美坂姉妹を合わせたぐらいあるので、逃げる事も出来なかった。
「…もう、祐一と二度と離れたくない」
「ああ、今年1年同じクラスだし、卒業したって友達だろ?」
祐一が言った「友達」と言う言葉がお気に召さなかったのか、舞の表情が曇る。
「嫌っ、友達なんて嫌っ」
「じゃあ、恋人か?」
「それでも足りない、私達… もう溶け合って一つになりたい」
こう何度も同じ事が起こっていれば、連れて来られる前に分かりそうなものだが、舞の言葉に操られ、天使の人形もそれを許したに違いない。そして聞かされるセリフと言えば。
『…抱いて』
もう命令口調で術を掛けられ「拒否する」という選択肢は無かった。ベッドに押し倒され、上から乗られる祐一クン。
『私を食べてもいいから、祐一を食べさせて』
「はわわ~~」
すっかりおかしくなられた舞さんは、「エッチしちゃう」ぐらいでは収まらないらしく、祐一クンの一部を食べて胃袋で消化して、自分と同化するおつもりでいらっしゃるらしく、大きく口を開けて祐一に迫った。
「食べちゃダメ~~」
ここでマヌケな祐一クンは、舞ちゃんを普通の女の子と思って誘いに乗り、自宅まで行って一発お願いしよう、などと考えたのを後悔した。多分、オットセイ君も食べられてしまうに違いない。
選択肢
1、舞に食べられちゃう
既に祐一君には、舞に喰われて一つになる以外の選択肢は無かった。今回は心の声で秋子ちゃんに助けを求めて、愛の逃避行すらできないらしい。
『…祐一』
祐一の顔を両手で挟み、とんでもなくイっちゃった目で見据える舞。今まで栞、香里、真琴(本物)など、死を間近に控えた女の表情や、怖い目を見て来た祐一だが、あの日の香里を越える目付きが存在するなど、思ってもみなかった。
『祐一に食べられて、一つになれるならそれでもいい。耳でも、胸でも噛み切って、一生治らない傷を付けて』
「はわわわわ」
甲羅の中に入った亀のように、縮み上がって小さくなっているオットセイ君の上に、ジャージ1枚で跨り、「食べて欲しい」と言ってくる特殊性癖のお姉さん。
「この後、どうやったら溶け合えるの? 佐祐理も、お母さんも詳しく教えてくれなかった」
相手が舞なので、性行為も知らず、単に深く交わる方法を知らず、「食べる」と言っているらしい舞ちゃん。
どうにか説得して、正しい方法を教えれば、オットセイ君は食べられずに済みそうな気がしてホッとする。
「違うんだ、愛し合うには食べるんじゃなくて、舐めたり擦り付けたり、入れたり出したりするだけで大丈夫なんだ、噛み切ったり、食べたらダメなんだぞ」
「…うん」
一応納得してくれたようなので安心したが、すぐに唇をこすり付けて来る舞。キスとか吸うといった行動とは全く違ったが、やがて本能に命令されたのか、口を大きく開けて祐一に襲い掛かる。その時、哀れな祐一クンはこう思った。
(喰われる…)
再び口を合わせても、香里のように噛みはしなかったが、お互いの歯がゴリゴリ当たるほど乱暴に口を合わせ、可能な限り舌を奥に押し込み、舌も、歯茎も、頬の裏側も狂おしい程に舐めて行く舞。祐一の心も体も魂も、何もかも欲しかったのかも知れない。
(だめだっ、舞、離れてくれ)
口を封じられているので、心の中で叫び、鼻以外では呼吸もさせてくれない舞を拒む。
(私が嫌いなの? それともこんな汚い事したくないの? テレビで見たのに… 好きな人とはこうするって)
とうとう祐一の心の声に正確に答えた舞。今までは教室の中で心の声で叫んでも、それに佐祐理が平然と答えても全く答えなかった舞が、体と同じように心まで晒そうとしていた。
(お前、聞こえるのか? ずっと聞こえてたのかっ?)
(聞こえてた… そんな事できるのは化け物だって言われる。でも祐一とだったら、もうどうなってもいいっ! 誰にも渡さないっ!)
あの麦畑で、化物の自分と同じ力で遊んでくれた少年、あの場所を守っていた友達を取り返した今、舞にとっては世界が祐一と佐祐理と母親だけになっても構わないとさえ思えた。
(でも俺には他に女が一杯いる。約束した子がいるんだ、あいつらも俺がいないと死んでしまう)
(そんなの知らないっ、私も祐一がいないと死ぬっ!)
そこで祐一には、舞の心の奥に「みんな消してやる、祐一の前にいられないようにしてやる」と言う、恐ろしい闇が見えた。
(お、お前?)
『そうよっ、私は化け物っ! でも祐一は遊んでくれたっ、あの日も、あの日も、ずっとっ、ずっと遊んでくれたっ! そうでしょっ?』
やっと口を離した舞だったが、涙と涎で綺麗な顔はぐしゃぐしゃになっていた。しかし祐一も、不思議と汚いと言った考えは浮かばず、澄んだ心と同じ崇高な物でも見る思いがしていた。
「舞……」
余りにも一途な思いをぶつけられ、その姿と心を見ても「美しい」とまで思ってしまった祐一。もちろんその思いは舞にも伝わった。
『抱いて…、私を傷付けてっ、祐一以外、誰も触りたくなくなるよう滅茶苦茶にして、祐一の物だって印を付けてっ!』
「ああ」
それは油断した瞬間、心の全てを奪われたのか、迷子の犬がやっと見付けた飼い主に、全身でぶつかって来るのを受け止めるような物だったのか。祐一は心地よいような、恐ろしいような、奇妙な感触を味わっていた。
「ふっ、あふっ」
今度は祐一から舞に口付けをして、経験豊かな?所を披露する。舞に命令されたせいなのか、既にその脳裏には、栞も香里も、誰も思い浮かばなかった。
「…ねえ、これから、これからどうすればいいのっ?」
祐一の胸に顔を埋め、肩に爪を立てながら心臓の音を聞いている舞。今は胸の奥を掻き毟られるような感触と、運命の少年とようやく一つになれる期待感で、自分の心臓も早鐘のように鼓動していた。
「祐一クン、また浮気してる」
(いいんじゃない? みんなあの世へ行く前ぐらいは幸せにしてあげようよ)
「もうっ、そんな縁起の悪い話ばっかりしないでっ」
(話じゃなくて事実にしてあげるよ)
「だからダメッ」
嫌っている舞が幸せになろうとしていても、何故か見守っている天使の人形。舞ほど力が強い者が破滅すれば、あゆの復活は早まる。それも魔物が体に帰った状態のフルパワーに近ければ近いほど、命のエネルギーが高まる。所詮魔物達も天使の人形からすればその程度の存在だった。
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