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IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》

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【第551話】

 
前書き
短いけど 

 
 更に次の日の放課後、未だ襲撃の傷跡が残るIS学園だが順調に各アリーナが復旧しつつある。

 ヒルト達が回収した登録されていないコアも訓練機の数を増やすという名目でコアの初期化作業が開始された。

 無論これは学園上層部の判断かつ危険な独断だが、いつまでも各専用機持ちに防衛を任せるという体たらくも、あまり喜ばしくないからだ。

 それはさておき、生徒会室では――。


「本音ちゃん、此方の書類をファイルに纏めて棚に列べてくれるかしら?」

「はーい。 よ、いしょ……」


 危なげない手つきで書類を纏めていく本音、その横を虚が通り過ぎ、楯無にお茶を淹れた。


「どうぞ、お嬢様」

「ありがとう。 でも……お嬢様は――」

「うふふ」


 柔らかな微笑みを浮かべる虚に、僅かに頬を膨らませる楯無。


「……そういえば、【彼】来ませんね?」

「……ッ!?」


 ドキッと胸が高鳴ると共に過るヒルトの横顔――そして蘇る口づけの記憶。

 昨日あれだけ長くキスをしたというのに既に唇に寂しさを感じてしまう楯無。


「べ、別に私はヒルトくんが来なくても――」

「あら? 私はあくまでも【彼】としか言っていませんのに、お嬢様の頭の中にはヒルト君しかいないのかしら?」

「!? ~~~~~~ッ」


 顔を真っ赤にして虚を睨む楯無、それを見た本音は表情こそ変えないもののやはり面白くなかった。

 とはいえ更識家に仕えてる身故、表立って何かを言うつもりもなかった、あくまでも自分がヒルトにアタックすれば良いのだから。


「こほん。 それはそうと簪ちゃんは何処に居るのかしら?」


 咳払いして新たな書類に目を通しつつ、本音に訊ねる楯無。

 本音は纏めた書類を棚に戻しながら応える。


「かんちゃんなら、もう来るって~」

「そう。 せっかく生徒会に入れたんだもの、一夏君のスケジュール管理を行う通称【織斑一課】だからね」


 誰がつけたか謎の駄洒落、無論冷たい目で見られたことは言うまでもなかった。

 一方、そんな簪はというと以前のヒーローじゃない発言をちゃんと謝りたく、彼が通ると思われるルートを張っていた。

 一応今日は生徒会室に赴くという情報は本音から聞いている、だから多分一人で来るはず――。


「あれ、簪?」

「……!?」


 不意に声をかけられ、ビクッと反応した簪、声をかけた張本人のヒルトもそんな反応にびっくりしつつも、振り向くのを待っていた。


「ひ、ヒルト、くん……。 偶然だね」

「偶然? ……まあいっか。 てかこんなところで突っ立っててどうしたんだ?」

「あ、あの。 …………」


 スカートの裾をギュッと掴み、唇を真一文字に結ぶ。

 謝らなくちゃ……ちゃんと……!


「あ、あの! ヒルトくんっ! ごめんなさいっ!!」


 折り目正しく頭を下げ、謝る簪だが、ヒルトにしてみればいきなり謝るものだから訳が分からなかった。


「ちょ、ちょっと、急に謝るなんてどうしたんだ?」

「え? ……ヒルトくんに、ちゃんと謝ってなかったから……。 ……ヒルトくんの事、ヒーローじゃないって……言ったりして。 ……他にも、いっぱい酷いこと……言ったりしたりしたから」


 僅かに瞳が潤み始める簪だが、ヒルトは――。


「あぁ、そんな昔の事を気にしてたのか? 俺なら気にしてないから、簪ももう気にするなよ」


 実際問題、ヒルト自身そんな事は既に気にしていなかった。

 無論簪自身それを今まで心の奥底に秘めていたのも事実、きょとんとした表情のまま簪はヒルトを見つめていた。


「いつまでも気にしてたらさ、余裕なんか無くなるだろ? それに、下手に簪自身精神的ストレスを抱えたままってのもあれだからな。 ……何にしても、俺は気にしてないし、簪も謝る必要はない。 わかったか?」

「あ……う、うん。 ……ありがとう、ヒルトくん」


 憑き物がとれたような目映い笑顔を見せた簪に、ヒルトは小さく頷いた。

 そんなやり取りの中、場所は変わって生徒会室。

 最近襲撃等で悉く学園のイベントが中止になり、生徒一同もストレスが溜まっているのか陳情書が机にズラリと並べられていた。


「……うーん、イベント……かぁ」


 とはいえ専用機持ち限定大会は既に中止、各アリーナも完全復旧まではまだ間がある。

 ふと生徒会室の窓からグラウンドを眺める楯無、クラブ活動に勤しむ生徒の姿が見えた。

 それを見た楯無は閃く。


「……うふふ、今の時期ならちょうどいいイベントがあるじゃない」


 そう言い、部屋にいる布仏姉妹を見、何処からともなく取り出した扇子が開く。

 そこに書かれていた文字は――『勝負』。


「せっかくだし、体育祭――ううん、ISを用いた大運動会の開催、決めるわよ!」


 唐突に決まった大運動会の開催、それを聞いた虚は直ぐ様大運動会のスケジュールを組み、本音はのほほんとお菓子を食べ始めた。


「うん。 これならば皆のストレスも発散されるでしょう。 ……後で放送部に開催告知をお願いしましょう」

「わかりました、そちらは私にお任せください」


 生徒会にヒルト達が着く前に決まった大運動会――戦乙女が輝く戦場、その手に掴むは栄光かそれとも……。

 
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