IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》
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【第556話】
夜、時間は十時。
就寝時間とはいえこの時間帯に眠る女子は少ない――話に華を咲かせる者や、授業のお復習を行う者、携帯を弄る者等々。
そして、それはISコアも同様だった。
広い空間、突き抜ける様な空、コア・ネットワークとは思えないその場所に集まる少女達。
「むぅ、ナギちゃんはもうおねむなのですよぉ……」
眠たげにそう告げるのはイザナギのコアであるナギ、青い髪のサイドポニーが小さく揺れ、被っていたベレー帽が落ちかけていた。
「アハハ、時間も時間だしね。 ボクはわりと平気だけど――ナギ、寝てもいいよ?」
そう告げたのはシャルのラファール・リヴァイヴのコアであるラファだ。
活発な感じの彼女だが夜は少しだけ落ち着いた雰囲気を見せている。
「全く、まだ集まって一時間もたってないじゃん」
呆れたようにそう呟くのは甲龍のコアのシェン、元気があるらしく瞳が輝いていた。
「しかし、こうして集まるのは何時以来だろうか? ……とはいえ、来てるのは我々だけだが」
威風堂々としているのはシュヴァルツェア・レーゲンのコア、レーゲだった。
コアの総数は発表されてる限りでいえば467、だが今現在来てるのは僅かに五人という――とはいえ大半は量産機のコア、或いは試作機のコアだから自由に動けないという事情もあるのだが。
「仕方ありませんわ。 白さん、椿さんも今は忙しいらしいですし……。 それはそれとして、本日はどういった会合なのでしょうか?」
ブルー・ティアーズのコア、ティアがそう告げた。
集まったのがたった五人だと何を話すのかが未知数なのだろう。
「うーん。 ……せっかくだからボク達もどうすれば現実世界に身体を持てるか模索してみるってのは? ムラク――じゃなくて、美春が実体化出来たんだし、ボク達も不可能じゃない気がするんだ」
そう告げたラファに、眠気が飛んだのかナギが立ち上がった。
「それはナギも興味あるのですよぉ! 現実世界で自由に出来たらマスターと……でゅへへ」
何を考えてるのか分からないものの、顔が緩むナギに、シェンが突っ込む。
「そんな簡単にはいかないじゃん。 第一、美春が実体化した要因の一つのリムーバーだってもう数が少ない上に厳重に管理されてるって」
「そうですわね、それに……もし仮に実体化したとしても、わたくし達の身元を引き受けて下さる方は居ますのでしょうか?」
いきなり突き付けられる現実、美春はヒルトの母親に引き取られたものの他はそういう訳にはいかないかもしれない。
「むぅ……実体化しても問題は山積みなのですよぉ」
「そ、そうだね。 ……残念だなぁ。 ボクもヒルトと直接触れ合いたいって思ったのに」
ラファの言葉に、ナギが直ぐ様反応した。
「マスターはナギのマスターなのですよぉ! 取ったらダメなのですよ! プンプン!」
コロコロと表情が変わるナギ、独占欲が強いのだろう――と、レーゲが口を開いた。
「確かにナギのマスターではあるものの、私達が触れ合ってはならないという事にはならないだろう」
「で、でも……マスターは僕だけの――」
「あらあら、ナギさんは独占欲強いのですわね。 よしよし」
まるで子供扱いするように頭を撫でるティア、ナギは頬を膨らませるもその心地好さにうつらうつらと瞼が落ちかけていた。
「もうナギは限界っぽくない? もっと皆と話したいけど、流石に時間も時間だし、さ」
シェンが代理で告げる、空間に設置された時計は既に日を跨いでいた。
話の内容は他愛なくとも、彼女達が集まって話をするのは稀故に時間の過ぎる感覚が違ったのだろう。
「そうだね。 じゃあ今日の所は御開きで、今度は椿やシキも――あ、美春も勿論来れたらボクは嬉しいかな」
そう告げるラファに、レーゲは更に追加で告げる。
「【ムラク】もだ。 ……とはいえ、彼女は誘いにのるかどうか……」
「そうですわね。 ですが、次回は来るとわたくしは思いますわ。 それでは皆様、御休みなさいませ」
言ってからティアの前の空間に絢爛豪華な扉が現れた。
それを開くと目映い光を放ち、ティアはその扉の向こうへと消えていった。
「じゃあボクたちも帰ろっか」
「うむ。 ではシェン、ナギをよろしくお願いする」
「――って、あたしが面倒見るの!?」
シェンがそう言った矢先、二人はティアが出した扉の向こうへと消えていった。
残されたナギとシェン、既に眠気が限界のナギはヨダレを滴ながら眠りこけていた。
「全く……世話がやけるわね! ナギ、送ってあげるから感謝しなさいよね」
「むにゃむにゃ……でゅへへ……マスター……そこはダメなのです……よぉ」
「一体何の夢を見てるんだか。 ……ん、しょ!」
ナギをおぶったシェンも、皆と同様に扉の向こうへと消えた。
そして皆が集まった空間は徐々に崩壊の兆しを見せていた、突き抜ける様な空も、粒子が崩壊していき、その姿を保てなく、無へと変わっていった。
場所は変わり、1025室――日付が変わっていたものの、ベッドに横になったままヒルトは天井を眺めていた。
「……運動会か」
来週行われる運動会に思いを馳せるヒルト。
楽しみといえばそうなのだが、無事に終わるのかどうかも不安に思っていた。
身体を起こす、秒針を刻む時計の音だけが聞こえてくる。
「……んー、何か人肌恋しいと思ってしまうのは俺がそれだけえろいからだろうか……」
これまでの行為が蘇る――最近だとラウラと初めて最後までしたものの、大半は一回きりだった。
「……いやいや、むやみやたらに肉体関係結んでる俺がダメすぎだろ」
分かってはいるものの、三大欲求には勝てないのが人の性――。
「……寝ないと。 ……てか美冬、最近来ないな」
ふと過る美冬の顔――ヒルトは小さく頭を振ると、そのまま眠りについた。
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