IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》
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【第555話】
ラウラに連れられて入った先はゲームセンターだった。
入り口付近に設置されているUFOキャッチャーには様々な景品が並べられてる一方ではズラリと並ぶガチャガチャ、その奥にメダルコーナーがあり、様々なメダルゲームで遊ぶことが出来る。
更に向こう側には最新のビデオゲームから昔ながらのレトロゲームまで様々な種類のゲームが立ち並んでいた。
「ひ、ヒルト……ここはどういう所なのだ?」
瞳をキラキラさせて言うラウラに、俺は答える。
「ゲームセンターだな、昔は不良とかが居て治安も悪いってイメージだったけど今では子供から年寄りまで遊びに来るアミューズメントパークってイメージもあるかな」
実際の所、子供達が遊べる簡易遊戯場も見えた。
「そ、そういえばお年寄りの姿も見受けられるな。 小さな子供も親と一緒なのだろうな」
メダルコーナーで遊ぶ老人、遊戯場で遊ぶ子供達を見て呟くラウラ、ふと視線が隣にあるUFOキャッチャーに止まった。
犬やら猫のぬいぐるみがある中、黒ウサギのぬいぐるみが目を引いたのだろう。
ガラス越しに眺めるラウラ――。
「ラウラ、そのウサギが欲しいのか?」
「え? ……ぅ、む」
小さく頷くラウラ、欲には勝てなかったのか小銭を投入してゲームを開始した――のだが初めてで勝手がわからなかったのかボタンを押して直ぐ離した為、景品を落とす入り口付近を無情にも掬った。
「む、うぅ……や、やり方が悪いのだろうか……」
もう一度チャレンジしようとするラウラ、だがこのままでは無駄金を投入するだけだ。
誰かが言っていた――UFOキャッチャーは貯金箱だ――と。
「ラウラ、俺に任せてくれないか?」
「え? ……わ、わかった。 ヒルトに任せる」
既に投入を終えていていつでもクレーンが動く状態だ。
景品の状態は各ぬいぐるみ毎に間隔が開いているものの、どれも落とす入り口付近に近い。
タグはぬいぐるみの足にあるし、多分UFOキャッチャーのアームレベルは弱いままだろう。
頭部分をアームで上手く押せば落ちる可能性が高まるかも。
そう判断し、迷わずアームを動かしていく俺に、ラウラははらはらした様な表情で眺めていた。
目標のぬいぐるみ付近までアームを動かす――無論上手くいかない可能性も高かった、だが上手くアームがウサギの頭を押すような形で降り、入り口へと落下していく黒ウサギのぬいぐるみ――アームは無情にも空を掬うが、目的のぬいぐるみは既に落ちている為関係なかった。
取り出し口からウサギを取り出し、近くにある袋に詰めるとそれをラウラに手渡した。
「上手く落ちて良かったよ。 ほら、ラウラ」
「……あ、ありがとうヒルト。 ……大事にするから、な?」
嬉しそうにギュッと袋を抱くラウラに、俺は上手く取れて良かったと思った。
――と、入り口付近に聞き慣れた声が聞こえてきた。
「シャル、ゲーセンに来たかったの?」
真っ先に視界に入ったのは美冬だった、後ろ姿だがIS学園制服故目立っていた。
「うん。 こういったところって僕入った事無いから。 だから興味があったんだよ」
次に見えたのはシャルだ、美冬との会話に夢中らしい。
「私も初めて入るよ! 凄いなぁ……楽しそう!」
瞳をキラキラさせていたのは美春だ、キョロキョロと辺りを見渡し、何にでも興味津々といった感じだ。
「ふむ。 少し煩いが……故に活気があるのだろうな。 ……しかし、様々な種類があるのだな」
エレンの口調は淡々としつつも、何処か表情が楽しげに見えた。
四人は夢中になっているため此方に気付いていなかった。
――と、突如ラウラに引っ張られてボックス型のゲーム機――通称プリクラ内へと連れ込まれた。
「ど、どうしたラウラ? 急に引っ張ったりして」
「じ、邪魔されたくないのだ。 ……可能なら、二人きりで……」
そう告げるラウラ、軽く外を見るとシャル達はクレーンゲームをやっていた。
「そうだな。 てか折角だし、此をやるか?」
ラウラに言うや、当の本人は目をぱちくりさせて俺に訊いてきた。
「ヒルト、これはなんだ?」
「写真が撮れるんだよ。 そんでそれがシールになって出てくるんだよ。 昔から女の子には人気のやつだな」
「な、成る程……」
理解したのかしてないのか、とりあえず画面を覗き込むラウラに俺は――。
「やってみるか?」
「え? ――だ、だが私は今すっぴん――」
「すっぴん? 元が可愛いから大丈夫だって」
「か、かわっ!?」
一気に顔が真っ赤に染まるラウラ、その隙に俺は硬貨を投入した。
「んじゃ、先ずはフレーム選ぼうか?」
「わ、ど、どうすればいいんだヒルト! そ、それに急にか、かわ、可愛い等と――」
「ん? 可愛いから可愛いんだよ。 ……ラウラ、黒ウサギのフレームあるぞ?」
「う、ぅぅ。 ……そ、それで構わなぃ……」
今にも湯気が出そうなラウラを他所に、フレームを選ぶと今度はタッチペンで文字が書ける状態に切り替わった。
「ほら、ラウラ。 好きな言葉を書いて良いぞ?」
タッチペンを手渡すと、恐る恐る画面をなぞる様にペンを滑らせたラウラ。
あくまでも試し書きだろう、直ぐ様消すとラウラは俺を見上げた。
「ヒルト、ドイツ語で書いても問題ないか?」
「あぁ、構わないぞ?」
「う、うむ。 ……ところでヒルト、ヒルトはどれくらいドイツ語が分かるんだ?」
真っ直ぐ見上げるラウラに、俺は素直に答えた。
「いや、殆どわからないよ。 今の世界共通語が日本語だからな、勉強しないわけではないがやはり新たに覚えるのはなかなかキツい」
「な、成る程……では、文字は……これだ」
そう言ってタッチペンで書いていくラウラ、何を書いてるのかよくわからないが書き終わると機械音声が聞こえてきた。
『次はシャッターを切ります。 ――フレームから外れています、近付いてください』
指示され、フレームに収まるように身を寄せる俺とラウラ。
ラウラの白い肌が徐々に赤みを差していく――そして、撮り終えると二十枚綴りのシールが出てきた。
「ん、写真とか苦手だが……たまには悪くないかな。 そういや、前に約束してたよな、二人で撮るって」
「ぅ、ぅむ。 ……覚えて、いたのだな」
「わはは、一応記憶力は悪くない方だからな、俺は」
そう言い、出てきたシールを半分に別けてラウラに渡した。
二人が写ったプリクラに書かれていたドイツ語――『エーヴィゲ リーべ』――意味は分からないもののラウラの表情を見るに【愛してる】辺りだろうと思った。
その後、クレーンゲームで獲得した黒ウサギのぬいぐるみが入った袋を持ち、美冬達に見つからないようにゲーセンを後にし、軍手類等を発注をしにラウラと二人で回った――ラウラは終始顔が赤かったものの、笑顔を絶やさず、楽しそうにしていた。
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