KANON 終わらない悪夢
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53会議(独演会?)終了
死者復活が許されない世界で、一度死んだにも関わらず復活しようとしている一弥。
魂は既に冥界へと送られ、怨霊として残っていた霊体と残留思念が天使の人形に奪われて同化された。
厳密に言えば佐祐理のお腹に宿った子は一弥ではない。
パーツを組み替えられて怨念も浄化され、転生した魂を無理やり召喚しているが、霊体はメイドの胸の中で崩壊した一弥とは全く別の物で、一時的に記憶を植え付けたとしても、生命誕生の万能性によって記憶も怨念も消される。
誕生後に下手に記憶のすり替えを行うと、魂を悪魔に売り渡した後に他人に成り済ました映画と同じく、悪魔が来て回収される。
佐祐理も栞も香里も舞も美汐も真琴も何度か死んでいるが、記録される前に巻き戻し、他人の命を盗んででも継ぎ足し、寄せ集めの汚い命のローソクが燃え続けている。
会議室
『まずこれで、日本の滅亡と人類の破滅は無くなりました。外部の方もご安心下さい。現在太陽と木星の周りに裂け目が出来ていますが、これも太陽系の周囲の定数が修正されて修復もされると思われます』
「「「「「「「「「「エ?」」」」」」」」」」
委員長の周りでも、妖狐関係者も、そんな観測機器を持っていない人物も「そんなの聞いてないよ~、殺す気か~、ヤ~~~」と思い、とんでもない災厄が起こっていたのに驚いた。
『これはビッグリップと呼ばれる現象で、宇宙が光の速さに到達したり、その時の宇宙の定数が-1.5を超えていると宇宙が裂けて原子まで分解されて終わる現象です』
ホワイトボードの「天孫降臨」から棒線を引いて「ビッグリップ」と書いた委員長。
天使の人形と会話した内容や以前の計画、新しく見つかった特異点は、雑談程度で議事録にも残さない、どうでも良い案件らしい。
『川澄さんがイザナミであった時には、宇宙ごと滅びるシナリオで、他にもビッグクランチ、宇宙の端が光速に達して、今までの世界が逆に巻き戻る世界になったはずです。死んだ人が生き帰り、老人が子供になって消える世界です。まあ時空ごと逆に巻き戻るので、私達も二酸化炭素を吸って酸素を吐いて、食べ物が家畜や植物に戻るので、もしかすると違和感なく受け止められるかも知れません』
光速を超えようとする衝撃波が宇宙を包み、終末のラッパのように鳴り響いて、死者が墓から復活して悔い改める世界が始まる。
普通の手順なら、こんな世界に下生させられ泣きながら生まれ、地獄を味わい尽くして穢れた老人になり、身も心も汚れ尽くして、罰を全身に受けて世界から消え、勘定を終えていない人物はまた現世にも地獄にも落ちる。
それが逆転して巻き戻り、分裂して粉々に壊れて行く世界が修復され、はじまりの時に戻るよう遡っていく。
アニメ版マジカノの最終回エンディングみたいに、口から素麺吐き出して、12話分逆戻りするような世界である。
もし可能なら七年の歳月が巻き戻った瞬間、その時空だけ切り取ってしまい、規模が大きすぎて難しければ、この街だけを切り取るか、あゆがいる場所、森の中だけを切り取り、世界は巻き戻るに任せる。
もしあゆが望むのなら、生きている母を過去の異世界からくり抜いて取り出し「あゆちゃんのゆめのなか」だけを世界にして、他は滅びるのを見ていれば良い。
『これも天使の人形君の計画の一部でしたが、その流れの中から個人を特定して取り出して、別の流れが起こっている世界に引き出すのは不可能です。物凄い勢いで押し流されている濁流から、子供だけ救うのが無理なように、瓦礫や倒木に邪魔され、自分も押し流されます』
天使の人形の計画は以上だったが、全て計算違いで的外れで、あゆを救ったり縁がある全員を救うこともできていなかった。
天使の人形自体が若すぎたり無能なのではなく、この世の法則すら知らない状態から、まるで手探りで何も見えない真っ暗な場所の中で、どうにか水道の蛇口やコップを探り当てて水を飲み、他の人物にも飲ませ、手の感触だけで部屋の構造を覚え、トイレの場所を探し、停電して照明がつかない冷蔵庫の中を漁ったり、食料がある棚を探って食べ、一つでも間違うと餓死したり枯れ死したり罠に嵌ってゲームオーバー。
また時間を巻き戻して、存在するのかどうかも分からない照明のスイッチの場所を探し続け、ついに外への脱出方法を探し当て、ようやく隙間から太陽光が差し込んでいるのが見えた状態になった。
時間はかかったが、それらは全て奇跡に近いような針の穴を通す作業で、よくあるゾンビ物のゲームで、多数の避難者を連れたまま、囲まれるとすぐに自殺する要救助者や、こっちに来いと言っても、必ず悲鳴を上げて明後日の方向に走って逃げて食われるマヌケ。
トイレの通路に誘導しても絶対に入らず、逸れたので外に出て探すと、必ずゾンビが多い方に向かって遥か彼方に走り去り、泣き叫んで食われる最低の低能を10人以上纏めて、やっとこの位置にまで到達して、要救助者を残らず連れて管理人室に迎え入れたような、何百回も奇跡が起こり続けて、ようやく、やっと辿り着いたトゥルーエンディングに入れるルートを見つけたので、天使の人形も泣いた。
委員長は天使の人形の失敗を全て追体験して、それでも心が折れずにゲームを楽しんだ変態なので、昔のクソゲーの数々のような地獄ゲー、自分のキャラがどれだけ無様に惨めに殺されて死ぬのかを楽しんで、それを嘲笑うマゾゲーを遊んだ。
ゲームバランスが完全に破壊されているインフェルノステージ。何一つヒントすら存在せず、攻略本も攻略サイト何も存在しない超クソゲーの鬼ゲーでも、別の学問の知識を総動員し、神や天使の思考になってプロファイリングして法則性を逆算した、ある意味キ*ガ*が仲間に入ったので問題の大半が解決した。
『他の「悲劇のヒロイン」の皆さんは、かなり救われていますね? 必ず自殺を成功させて自分を切り裂いて死ぬ川澄さん。後悔の念に苛まれて、いずれ力を使い果たして、どこにも誰にも救いを求められず自殺する倉田さん。病気が治らず、たった一つだけ使える「奇跡」を利用して生きている美坂さんの妹栞さん。その予備、相沢くんと結ばれれば死んだ栞さんを子供として召喚できる美坂さん。たった一ヶ月の逢瀬の後、子供を授かっていなければ泡になって消えてしまう沢渡真琴さん。魂まで呼び合う恋人を失い、心が折れてしまえば死ぬ天野さん。中々順調なようですが、奇跡でもあゆさんは復活できません。さあ、どうやって救いましょうか?』
救いに駆け付けてくれた感謝と共に愛しながら呪った実の姉。歌声と支配力によって、あゆから恐怖と苦痛を取り除いてくれた佐祐理。不自由な身体のまま、光の速さで駆け付けてくれて、残りの命を使って病院まで運んでくれた栞。「ゆうくん」がいなければ生きていけない美汐。あゆは救えなかったが、祐一の記憶を消して救ったが、天使の人形になる使い魔たちを祐一本体からも切り離した名雪。、
その中でもあゆを呪った舞と、記憶を消した名雪は殺しても足りない相手で、祐一本体からあゆの記憶を根こそぎ奪い取って、その記憶を持つ祐一の使い魔たちを舞の魔物のようにホームレスにしてしまった悪魔だが、天使の人形の全てを自分の身体に取り込んで、七年間生存と活動のエネルギーを供給し続け、縁のある少女達をこの地で救わせてくれた恩人でもあった。
実の姉も、命を使い果たした栞に命の補充をしてくれて、壊れたあゆの身体を修復してくれた本人でもあるので、自傷自殺しているのを見逃しても、命までは奪えなかった。
安楽にイク探偵さんは、教卓に肘をついて顎を持って灰色の脳細胞?で思考を巡らせた。
思考の大部分はピンク色の妄想とかに汚染されているので、下ネタの方が得意であった。
『明日、月宮教団に身体を持ち込んで、数千人の信者、モニター越しには数万の信者が祈る中で「この世の破滅を回避させる天使、56億8千万年の彼岸から、神人で現人神で未来仏を召喚する」と言うのはどうかしら?』
(そんなことができるのかい?)
もう誰も信用せず、他人の力を借りるときは、命を食い荒らして奪い、あゆの身体に食べさせてきた天使の人形。
変な宗教の狂信者を使って、怪しげでお綺麗な天使や未来仏を召喚するような、穢らわしい思考であゆを汚染するつもりは無かったので、そんな考えすら起こさなかったが、委員長の計算によればそれは可能らしい。
『ええ、呪いと苦しみと、怨嗟の声に溢れた身体は、あゆさんに食べられてしまった命と同じ地獄の底に引き込もうとしています。そのマイナス要因も失敗の原因で、どうしても貴方の計画を邪魔してきたようね』
命の遣り取りを、まるで足し算引き算のように計算してしまう委員長。
人々の「願い」を利用して、その力が重ね合わされた状態を想像して掛け算し、「終末の魔女」ではなく、信者たちが求めているような救いの天使、弥勒として召喚しようと考えた。
それには重大な問題があり、輝かしい存在となったあゆと、この世の悪を煮しめたような天使の人形は、今後近寄ることすら許されない。
会話するだけで消耗して打ち消し合い、反物質と物質のように対消滅して消えるので、遠くから見守る以外に救いの手すら差し伸べられない。
それでも、あゆと言う存在がいてくれれば、目の前で失われるはずだった、自分への罰が無かったことになるなら。誰かにあゆを託して自分は身を引いて、その存在だけを感じていられれば良いと決心し、その方法を受諾した。
『もし召喚に失敗したとしても、同じ機会はいくらでもあるわ。まず直近では香里さんの結婚式。細かい機会は何度でもあるから、織り交ぜて行きましょう』
(分かった)
天使の人形の重大な決意を感じながら、あゆを輝かしい存在として召喚し、人々の願いを叶える存在として現世、神々に罰を受けてこの世に下生させられた罪人が並ぶ場所に、苦しみの罰を与えるために天使や仏を顕現させる。
その苦しみを天上の存在に昇華(消化)させ、罪を消し、浄土へと導く存在へと置き換える。
既に常人では計算不可能な取引の全てを、頭の中で差し引きして、あゆと天使の人形が正しい存在として、正しく顕現できるように調整する。
委員長は、天使の人形も悔い改めさせ、あゆと同じ存在にする方法を早くも探し始めた。
『現状での報告、提案は以上です。では皆さん、次の災厄が素晴らしいものになるよう頑張りましょう。何か質問は有りますか?』
そんな「現状」を理解できた者は、秋子を含めて外部にも誰ひとりとして存在しなかったので、PTA会長の委員長の母だけが小さく拍手をして、娘が立派に議事進行して、現在抱えている問題を全て解決したのを喜んだ。
現時点の仮のイザナミによって、何故か世界の滅亡は回避された。
「それでは五時間目の最中ですが解散しましょう」
本日の五時間目のホットスポット?は、昨日香里や月宮真琴が引き起こした分かりやすい災厄とは違い、殆どの人間、現生人類には理解不能な計算の上に成り立っていた。
妖狐の妖力と天使の人形の十分の一を与えられた委員長は、その力を問題解決用の知力にボーナスポイントを全振りして、下半身を含めて「祐一に都合が良い女?」になろうとしていた。
「はえ~~、委員長さん凄かったですねえ、佐祐理、何が起こっているのかさっぱり分かりませんでした~」
「…私も」
現在「喜」の人格の舞も、以前と同じ話し方をして、取れてなくなったはずのイザナミの印を探って、もう頭の上には付いておらず、委員長の頭の上にあるのを見て、その差配、仕切りの上手さにも驚いていた。
後書き
老眼で目が悪く、24インチHDモニターでは大分拡大しないT文字が見えませんでしたが、オークションで出ている千円ぐらいの安っい32インチHDMI液晶テレビにすると、よく見えるようになって更新も捗ります。
サプリメントなど色々試しても無駄でしたが、学生さんが使うような「スマートドラッグ」と呼ばれる、集中力が増すADHD治療薬を試すと、食後や深夜でもSSが書けて、内容もダラけた内容になずにシャキっとするようです。
追記、舞の人格設定が間違っていたので修正しました
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