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WHITE ALBUM 2 another story ~もう一つのWHITE ALBUM~

作者:冬馬 凪
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本編キャラSS
  かずさ生誕祭SS

※本作はCCで出会うはずのない2人が見つけてしまったifストーリーとなります。(あの伝説の選べない選択肢の時間軸)
原作ネタバレ&粗悪な改変をご了承の上、ご覧ください。



俺は冬馬曜子のコンサートに誘われたものの、結局行かなかった。
なぜ行かなかったのか、答えは単純だ。
”見つけてしまう”
もう、会わないと、会ってしまえば雪菜に見せる顔がなくなると。
あの日だって、見つけてしまったから。
だが、開桜社から出た俺は無意識のうちにコンサート会場の目の前まで足を運んでいた。
何やってるんだ俺は。
心の中で何度も復唱する。
だが一度、冷静になって考える。
別にあいつが見にきてる保証はないし、そもそもコンサートは既に終わっている。もし見に来ていたとしても、会うはずはない。
早く家に帰ろう。
俺はコンサート会場を見ることなく、視線は足元に向け、足早にその場から立ち去ろうとした。
ただあの日の出来事。空港での出来事が頭の中をよぎる。





私は母さんのコンサートが終わり、帰りが長蛇の列になっていたのでしばらくというか、係員に『出てください』と言われるまで居座り続けた。大した意味もなく、ただ人混みが嫌だったからにすぎない。
会場から出てちょっとすると携帯電話が鳴り始めた。相手は今日の主役からだった。

「はーい、もしもしかずさ?今日のコンサートどうだった??」

「流石だよ、母さん。やっぱり私のライバルはあんたしかいないや」

「ふふん、それはどうも♪」

彼女はかなり上機嫌だった。これは後で酒に付き合わされそうだ。

「で、要件はそれだけ??なら切るけど」


「待って、待って。かずさ。あなたの隣誰か来てなかった?」

私はとっさに答える

「いや、誰も来てなかったよ」

そう答えるとし彼女は先ほどの態度とは裏腹に暗い声で『そう』とため息混じりに声を漏らした

「彼は来てくれなかったか」

そのあと独り言のように言葉を残した

「誰か呼んだのか??まさか私の父親か」

「まあ、そんなところかしら」

言葉を濁した感じが私の気に少し触った。

「まあ、いいよ。今更、私の父親になんて興味はないし」

「そう・・・・」

「じゃあ電話切るよ」

「それとかずさ。ギターくんの所に行かなくていいの・・・??」

「何を今更、いいんだ。あいつにはぴったりの私の不倶戴天の君(しんゆう)がいるから」

「本当にそれでいいのね??」

「いいんだよ。これで。私とあいつはーーー」

その時、歩き電話をしていた私は誰かとぶつかってしまった。
私は手に持っていた携帯を落としてしまった。

「すみません」

ぶつかった相手が謝った。
すぐこちらも謝罪する。

「こちらこそすみません」

私は顔を上げてぶつかった相手の顔を見た。
相手と私は目があった。相手も私も目を逸らさない。

「なんで、お前なんだよ・・・!!」

私だって、その言葉をそっくり返したい。

「なんで、なんでここにいるんだよ・・北原!!」



携帯から聞こえる。
「かずさ?どうしたの?大丈夫なの?ねぇ・・・・かずさ!!」

だけど、私はその声に反応することはできなかった。



会いたくないなんて嘘だ。だけど会わなければよかったとは思う。お互いのために。






俺はぶつかった相手をニ度見してしまった。
なんで、こんなことになるんだよ。
自分自身に腹を立たせる。
俺は雪菜と歩み続けると決めたのに。
もう裏切らないと決めたのに。

「北原!!なんで、なんでお前が・・・!!」

「いいから、とりあえず通話終わらせろよ」

「久しぶりにあって、その態度か。相変わらずちっとも変わらないなお前は」

彼女はぶつくさ言いながら通話を終わらせた。

「で?なんで北原、お前がここにいるんだよ?」

「曜子さんにコンサートに誘われたけど、行けなかったから雰囲気だけ味わいに来たんだ」

なんだよ。『行けなかった』って。
『行かなかった』だけなのに。お前に会わないために行かなかったって言えばいいのに。
なんで嘘をつくんだよ俺。
まだこいつのこと割り切れてないのが明らかじゃないか。

「私の隣の席ってもしかして・・・」

「なんか言ったか?冬馬」

「いや、ただの独り言だ。気にするな」

「そうか。」

少しの間の後、彼女は口を開く。

「そういえば、部長は元気か?あと水沢も、それに早坂、そして・・・・雪菜もさ」

俺は少し黙り込む。

「なあ、北原?返事ぐらいしろよ」

気付いた時は流石に驚いていた彼女も今は冷静に落ち着いた、変わらない口調で話す。

「なんで・・・・・・」

「なんだ?北原?」

「なんで、なんで平然としてられるんだよ!!」

俺は遂に三年間溜め込んでいた感情が溢れでてしまった。
彼女もこの言葉に対して気持ちを露わにする。

「何が、何が平然としてられるだ・・・北原。私がどれだけ苦しかったか、我慢してたか、辛かったか!!この三年間お前のこと忘れたことなんてなかったんだよ!!!忘れられなかったんだよ!!」

彼女の頬には目から流れ落ちた雫がさえさえと流れていた。

俺は彼女の言葉を聞いて呆然とする。

「なんだよそれ、なんでお前は昔からいつも」

結局、あいつも俺もお互いのことを一度たりとも忘れたことはなかったのだ。

「また説教かよ、北原」

掠れた声と涙目の聴き馴染んだ久しぶりの台詞、それに昂った気持ちのせいかこちらも涙が出そうになる

「そうだよ、あの時も今も俺はお前に怒ってる。だけどそれ以上に俺自身に腹が立つ。俺は馬鹿だから、相手の気持ちになんて気づけないから。そして誰かを傷つける.....」

「私だって、悪かったと思ってる。あの時、私が黙っていれば、綺麗にお前たちの前からいなくなれれば・・・・」

「そうじゃないだろ!!それは違う。俺が決め切れなかったから。割り切れなかった自分がいたから。2人とも傷つけた。そしてバラバラになった。」

「おい、北原。どういうとこだ。今、雪菜はどうしてるんだっ!!」

彼女はさっきまでの悲壮な感情とは違い怒りの感情が表れる。

「2年ばかり、俺は雪菜から逃げた。罪悪感からの逃避をし続けた。そして最近になって、俺は覚悟をしてやり直そうとした。
だけど、彼女に拒絶された。」

「雪菜がお前を拒絶するなんて・・・・」

彼女の怒りは治っていた。昔の彼女とは違い感情がすぐ出やすくなっていた。

「そう。俺がまだ冬馬のこと諦め切れてないって見透かされた。」

彼女はハッとして、驚く。

「どうするんだ、これから??」

「わからない。俺は何をして、どうすればいいのか」

「なら、私と一緒に行くか??」

その言葉は、何よりも重い言葉だった。なんなら彼女に軽蔑される方がマシなぐらいに。

「・・・・・」

俺は無言を貫く。

「おい?北原??」

「冬馬、いいや、かずさ。やっぱり俺は雪菜を裏切れない。今の雪菜を救えるのは俺しかいないんだ。」

俺は決断した3年前にはできなかった、成しえなかった選択を。

「そうか・・・お前は雪菜を選んだんだな」

渇いていたはずの彼女の頬に再び雨が流れる。
そして空からは雪が降る。
まるで、あの日の別れを意味するように。

「じゃあ、な」

俺は、別れの挨拶、いいや。もう会うことはないだろう。決別の意味を込めて。
俺は彼女に背を向けて、家へと向かい始めた。

「おい、春希」

彼女の呼びかけに振り向くと彼女はいつの間にか背後にいて、振り向き際の唇に
キスをした。
あの時の別れと変わらない口づけを。

「これは呪いだ、私のことを一生忘れなくさせてやる呪いだ」

「元気でな、甘いものばっか食いすぎるなよ。じゃあな。」

俺はただ親友と別れを交わすかのように去った。





あいつとの距離が遠ざかっていく。
なんだよ、元気でな。って
私の体はその場で崩れ落ちる。

最後の別れがそれかよ。
なぁ、春希。雪菜を幸せにしろよ。

離したくなかった。離れたくなかった。
ずっと大好きだった。だから今、失った痛みに耐えられない。
ただそばにいて欲しくて、あの退屈な話を聞きたかった。
もう、あの日々には還らない。

私は泣き止むことが出来なかった。


fin.
































 
 

 
後書き
かずさお誕生日おめでとう!!
ということで、SSかかせてもらいました!!
今回はあの伝説の選択肢の場面で出会えたらというifストーリーを書きました。
本当はかずさと春希がイチャコラしてるのを書こうと思ったらいつの間にか、
別れの話になってしまいました。
キャラの設定的にかずさはcodaよりも甘えがなく、昔に近い感じで、
春希もcodaよりもかずさ依存ではなく、雪菜への負い目を感じている。
となっております。

かずさと春希の一つの決着として書かせてもらいました。
この後は雪菜と幸せに暮らしましたさ。

というわけでご覧いただきありがとうございます。
0時にあげられなかったのが心残りです。
また、よろしくお願いします。 
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