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詩織の【温泉ですっぽんぽん】

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極楽マッサージ

余裕をもってチェックインしたから、ゆっくり湯に入れた。
露天風呂のある旅館だったが、混浴ではない。女湯は私ひとりだった。

湯からあがる。
彼からの要望は特にないので、新しい白いコットンのショーツだけをつけて、浴衣を着た。

部屋に戻ると、彼も浴衣だった。私を見て、座椅子からすぐに立ち上がり、部屋の入口でハグした。

やがて、私の背後にまわり、浴衣の上から、私をまさぐる。
彼の視線がわからなくて、ちょっと不安だった。

やっぱりというか、お尻はじっくり触ってくる。

下着の感触って、そんなにいいんだろうか。

名残惜しそうに、彼の手がのく。
ささやくように、下着をとってほしいと言う。

はあ、そうきますか。

彼にお尻をつきだすようにして、脱ぐ。
すぐに帯を解かれた。ショーツは帯と一緒に、下に落とした。

前が開いた、しどけない姿。

これだけは、いくらなんでも見られたくないな。

彼の手はそのまま前に回され、襟をつかむ。
浴衣が落ちて、一瞬で私は生まれたままの姿になった。

時間が止まったような気がした。

裸体の鑑賞タイムは一分間ぐらいだったらしいが、とても長く感じた。

不思議に、彼は触ってこない。
湯上がりの全裸、見るだけでいいの? 肌はすべすべだよ。
後ろだけでいいの? 前から見たくないの?

見られているという恥ずかしさに、肌がカッと赤くなるようだった。

当然、睦(むつ)み合うために裸にされたのだと思った。

違った。

マッサージしたいのだそうだ。
自信はあるという彼の言葉。

それなら、湯上がりの体をもっと気持ちよくしてもらおう。

夕食まで一時間あった。

座布団を並べた上に、うつ伏せで寝る。
全裸のままだが、お尻はタオルで隠された。


タンクトップのようなものがあるといいらしいが、用意してない。
そういうことなら、ショーツを穿いていてもよさそうだが、
「僕は見習いの素人だから」
という謎のいいわけで、着用を許してくれなかった。

そう、妹さんは盲人で、国家資格をもつプロだ。
兄は、練習台から弟子へと昇格し、見よう見まね、テクニックを盗んだというわけだ。

気になるのは、実技の時の二人の格好だが、
私にショーツを穿かせないぐらいだから……。

「あっ」

きた。気持ちいい。

背中にはツボが縦に2列並んで いる。
連続で押してもかまわないが、彼はツボを選んでピンポイントでくる。

気持ちいいから、声が出る。

それをきっかけに、タオルがはずされ、施術は脚から臀部に移った。

いやらしいとか、恥ずかしいとか、まったく感じなかった。

この時、ノックの音がした。

彼が返事をしたから、中居さんが入ってきた。

私が素っ裸なのにはさすがに驚いたようだったが、
浴衣の彼が何をやっているのか、すぐ理解したらしく、ポットと茶菓子を交換して出ていった。

あとから考えると顔が真っ赤になるが、その時はなんとも思わなかった。それほど施術が素人ばなれして気持ちよかったのだ。

下半身が終わり、丁寧に体を返された。

全然恥ずかしくなかった。

体幹よりも脚への指圧が多い。
経絡(けいらく)を意識した、プロの指圧だ。

さらに、
筋肉の動きを見るから、と言って、
片足ずつ、自転車こぎのようにゆっくりと曲げていく。
これはさすがに恥ずかしかったが、
左足が攣りやすいよね、と言い当てられたのだから、尊敬の念までいだいてしまった。

すべて終わると、少し汗ばんでいた。
そして、体が少し軽くなったような気がした。
思わず、全裸なのも忘れて立ち上がる。

鏡台で自分の体を見る。悪くないなと思う。

「ありがとう」
素直に彼に言えた。

生まれたままの姿でいることが、嬉しかった。

──そこへ、ノックの音。

「今度はだめ!」

あわてて、浴室へ飛び込んだ。
──────────

小宴会場での夕食でお酒を飲み、部屋でも少し飲んだ。

私は内風呂でかかり湯をし、控え目に香水をつけた。

きちんと下着をつけ、浴衣を着て、浴室を出る。

ぼんやりと灯る、ぼんぼり風のスタンドだけにした部屋。

私と同じ格好で、座椅子にいる彼。

彼は立ち上がった。

優しく抱いて、キス……。

甘い甘い、キス………。

目をつぶっている間に、手が胸に来ると思っていた。

そうはならなかった。

長いキスのあと、なんと、お姫様だっこで、布団に運ばれた。

「夜明けに抱くよ、いいよね」

いいよ……。

答えるかわりに、私の方からキスをした。

彼のほうが先に眠りに落ちた。
私はブラジャーだけ外して、枕元に置いた。
浴衣が少し乱れたが、かまわなかった。

約束通り、夜明けに抱かれた。

乳房を包む彼の手の感触で目が覚めた。

「あ、うう」

一日の始まりの声がこれだ。恥ずかしい。

夜明けというより、未明。
灯りは、ぼんぼりスタンドだけだ。
掛け布団はなかった。

帯を抜かれる。
彼も素肌に浴衣らしい。

昨日のように、立たされるなら、先にショーツを脱ぐべきだろうけど。

あ、違う。

寝たままで前を開かれた。ショーツ全開。暗くてよかった。

なんかこの旅行、ことごとく予想に反するよね、なんて思っている間に、二人分の浴衣は完全に脱ぎ去られた。彼は下着なしだったらしく、すでに全裸だ。

掛け布団はないから、彼の好きなショーツ姿をさらす私。

私が羞恥に震えるのを楽しんでいるような気がする。

横に寝そべる彼の手がショーツにかかる。
手を入れてくるかと思ったが、そのまま降ろすらしい。
私はお尻を浮かせた。

「すっぽんぽんにするよ」

す、すっぽんぽん!?

私、何歳だ?

思わずお尻を降ろしてしまった。

全裸。オールヌード。一糸纏わぬ姿。生まれたままの姿。
……すっぽんぽん。

今も、果てしない宇宙を旅する無人の船には、未知の生命体への手紙(金属板)が載っている。そこには男女が描かれていて、当然、すっぽんぽんだ。情報なのだから。

いま、私も裸という原点に帰っている。
全裸の私に全裸の彼がおおいかぶさっている。

マッサージのようなセックス?
セックスのようなマッサージ?

それからの二時間近く、私は極楽に遊んだ。

もちろんそれは羞恥と隣り合わせだが、どんな大胆なポーズも結局は快感になった。

「ああ、う、ぐふぅ、う、ううん、あ、あ、あ」

うつ伏せの基本的マッサージは、臀部への責めに移り、

「う、う、くぅ、あん、あ」

例の筋肉チェックのために、明るい室内灯の下で、脚を曲げらて撫でまわされ、

「いやー、いや、あ、あ、やめて、見ないで、あ、あん」

股間の会陰(えいん)というツボを刺激するために鏡の前でM字開脚させられた。

途切れることない刺激に喘ぎ、悶えた。

最後は、初体験の立位。

「うう、う、あっあっ、あー」

すっぽんぽんをすべて見られながら、後ろから貫かれた。

──────────

「なんだ、あったんだ」

宿の旧館には、混浴の露天風呂があったのだ。

朝食の場所を確認しようとして、「宿泊のしおり」で彼が見つけた。

あまり朝食まで時間がなかったが、行くことにした。


私は脱衣場にあった湯浴み着を着て、日本庭園を模した露天風呂に出る。

先に湯に浸かっていた彼は、全裸だ。

「いらないだろ、それ、脱げよ」

確かに、いまは他に誰もいないけど、

「だめ、いつ人が来るかわからないでしょ」

あ、それから、
湯浴み着って、絶対透けないんだよ。

知ってた?
──────────
(終) 
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