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KANON 終わらない悪夢

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18真琴(本物)

 リボンの少女と交わって、休みながら寝転んでいた二人。幸せそうな表情で泣いているので、心配してやると良いのか、一緒に喜べば良いのか分からなかったが、涙を舐め取って頬ずりをしてみる。
『もう一度なさいますか? まだ一時間ほどですし、お若いですから何度でも出来ますでしょう?』
 祐一の髪や背中を撫でながら、うっとりとした表情で余韻を楽しむ少女。
「何回もしたら痛いだろう? もっとしたいけど今日はいいよ」
 そこで入り口のドアが開き、どやどやと人が入って来る音がした。
「えっ? 何だ?」
 祐一が身構えるより早く、ふすまがスパーンと音がするほど勢い良く開かれ、昨日の見舞客の残り三人が登場した。先頭の女はドッキリカメラのようにビデオカメラまで持って突入して来た。
「やいやい相沢っ、よくもお嬢を傷物にしやがったなっ? ああっ、避妊もしてないぞ、子供まで産ませようとしたな? それに腹にあるのは血印っ? 一生物の傷まで付けやがったな、もう許せねえっ!」
 余りにも芝居じみた、わざとらしい言い回しに、祐一は「美人局」と言う言葉を思いだした。女達の手口は理解したが、一応手近の掛け布団を取り、「お嬢」の体と、自分の下半身も隠しておく。
「相沢くん酷いっ、それって一生浮気しない誓いなんでしょ? お嬢は一生相沢くんとしかエッチできないし、もう温泉にも銭湯にも入れないのよ、責任取って!」
 血印だとか、その効果まで知っているようで、祐一も知らない事までペラペラとまくし立てるトイレの少女。語るに落ちるとはこの事だったが、特に証拠がある訳でもない、口答えもできず、いつもの言葉を漏らすだけだった。
「うぐぅ」
「あ、相沢、ココニ偶然、婚姻届がアル、これにナマエをカケ。オ前のアクジはコノビデオで全部録画シテアル!」
 三人目の背が高い女は、芝居が下手すぎて失笑物だったが、笑う事も許されず、婚姻届を受け取った。
 隠しカメラで録画されていたのには気付かなかったが、正直に「お嬢の初体験シーンはもう一度見たいので、是非ダビングして下さい」と思った。
『そ、それは後ほど……』
 ダビングのお願いは通ったようだが、現在、少女漫画かレディースコミックで言うと「ヤダ、センパイの家にお呼ばれして、ついにゴールインしたのに、センパイの友達が一杯来ちゃった。どうしよう、アタシセンパイの友達に輪○されチャウ」ぐらいのピンチに陥っていた。
『もう良いのですよ、途中、秋子様からお電話を頂き、お胤の持ち出しは禁止されましたが、相沢様とお付き合いして、子供を授かるのは禁止されませんでした、ですからもう良いのです』
 口に手を当て、少し笑いながら女達を制するお嬢様、女達も三文芝居を続けなくて良いので安心したのか、追求を止め、その場に座り込んだり、ビデオテープの交換を始めた。
「それにしても、血印とは思い切りましたね、相沢にも同じ血印をいれたのですか?」
『いえ、真名は書かせて頂きましたが、妊娠を望まない相手には、お胤を出さないで済むように細工させて頂いた程度です』
 枕元に置いていたブラウスに袖を通し、上半身を隠すお嬢。
「それでも「所有権」は設定されたんですよね? いつでも上書き可能じゃないですか? もうこちらの勝ちですっ」
『ええ、そうですね』
 顔を赤らめ、目を逸らしながらも、勝ち誇ったように笑顔を浮かべるお嬢。
「やったな、アタシらの勝ちだ、これで妹ちゃんにも勝てるぞ」
「おめでとうございます、これでもう、結婚以上の関係ですね」
「まあ、香里や名雪には悪いけど、勘弁してもらおうや」
 何やら盛り上がっている一同の中で(あの、所有権って何ですか?)とオットセイ君共々縮み上がっている祐一クン。
『あ、申し訳ありません、もうお互いの一部を所有しあっているので、こうやって心が通じて念話もできますし、お互いがどこにいて、何をしているのかも分かります。そうですね、運命の赤い糸が常時繋がっているとでもお考え下さい』
 腕を組んで頭をもたれかけて、嬉しそうに綺麗事で説明されてしまったが、要約すると「GPS付きのケータイで常時監視して通話状態にしてるからな? 浮気なんかしても全部お見通しだっ、他の女と寝ようとしたら、全員でカチこむからな、い~わね?」と言われているのと同然なので、身震いする祐一クン。
「まあ、そう言うことだ、手始めにこれに記入しておけ」
 再度婚姻届とペンを渡され、記入を急かされる。窮地に陥った祐一は、僅かな抵抗を試みた。

 選択肢
1,お前ら全員体が離れられなよう調教しちゃる、順番に直に種付けしてやるからケツ出して並べっ!
2,リボンロボの正体を探る。
3,三人の目の前でリボンロボにジャイアントバズーカ発射! 他のロボ?も各個撃破する。
4,秋子ちゃんと愛の逃避行。
 選択「2」

「じゃあ書くけど、「お嬢」も本名書いてくれる?」
『エッ?』
 子供の将来も考え、責任を取ったり、婚姻届に署名する覚悟もあったが、悪の秘密結社のリボンロボは、実名の署名に難色を示した。
「もう他人じゃないんだし、結婚以上の関係なんだろ? もう隠し事する必要もないし、子供だってできるんだ、幸せになろうよ」
 横から抱き締められ、耳元で低音で囁かれただけで、男に免疫のないお嬢は、全身の血が頭や顔に集まって来て、ゆでダコのようになった。
 既に美坂姉妹を毒牙にかけた「鬼畜姉妹丼男」で、従姉妹の幼馴染にも手を出し、同居した真琴も傷物にして、さらに血の繋がった叔母や、あゆ、美汐、佐祐理、舞なども狙っている鬼畜男子には、未通女いお嬢を操るなど赤子の手を捻るのも同然だった。
『あ、相沢様、それだけはご容赦を』
「様も禁止、もう苗字で呼び合う仲じゃないだろ? 君も相沢なんだから。ほら言ってご覧? ゆ、う、い、ち」
『ひっ、ゆ、ゆういち様』
「違うだろ? 様は禁止」
 もう耳を舐めるようにして、声で耳や頭の中をくすぐり始めると、お嬢はヌルヌルになって、祐一の腕の中でビクンビクンし始めた。
『祐一、さん……』
「はい、よくできました」
 ご褒美のキスをされ、友人達の目の前で達してしまうお嬢、人生初の昇天であった。
『はー、はー、はー』
「やっぱりジゴロだ、相沢っ、その汚い手をお嬢から離せっ」
 既に抱きすくめた両手で乳房を揉み、乳首も転がしているジゴロでホスト野郎。
「お嬢は嫌がってないよ。ねえ? 恋人同士が「お嬢」なんて渾名で呼ぶなんて、おかしいだろ? オ、シ、エ、テ?」
『あっ、下の、名前は、本名と同じです』
 耳元で囁かれ、再びビクビクと震えて目が上に上がり、半分白目を向きながら、ビデオカメラに向って「アヘ顔」を晒すお嬢。
「それ以上お嬢を汚さないでっ」
「汚れるも何も、そろそろ子供も受精しちゃうよね? お母さんの名前を教えて?」
 わざわざ聞かないと下の名前すら知らない祐一。そんな相手とパコパコ子作りして、友人達の前で3ラウンド目に突入しようとしている鬼畜野郎。
『ま、真琴…… といいます』
「え?」
 そこでクソ鈍い祐一も気付いた。リボンを巻いている普段のチャラい表情や語り口調では気付かなかったが、この真面目な態度と表情、真琴と言う名前から想像できるお相手は?
「沢渡、真琴ちゃん?」
『どうしてその名を? 確かに両親が離縁するまではその名を名乗っていましたが?』
「小学校のクラスメイトに、相沢祐一って奴はいなかった?」
『ああっ!』
 出会ってしまった運命の初恋の人、この状況は「風俗のお店に行ったら、偶然初恋の相手とバッタリご対面、まあごめんなさい、でも同窓会みたい、クラスのみんなには内緒よ(は~と)」でヤってしまったぐらいの出来事だったが、使用済み薬漬けのボロ雑巾ではなく、ファーストキスも初体験も自分が相手と申告が有り、乙女の印もしっかり撮影済みである。
「こんな偶然があるなんて……」
 もうこれは、現恋人の栞とか、ちょっと恋心を抱いた程度で体の関係だけの香里、名雪、真琴(偽)などはゴミ箱にポイ捨て、心の恋人秋子ちゃんを除いて、最上位に位置する恋愛相手と再会してしまった祐一クンであった。
『そうでしたか、誕生日を偽ってまで一つ上の学年で入学していましたが、今にして思えば、相沢様に合わせるために同じ学校に入学して、そうなるよう仕組まれていたのですね』
 もっと早く言ってくれれば、小学生の頃からエロエロな関係になって、捲りたくて仕方がなかったスカートやその中身までじっくり観察させて貰い、下着まで降ろしてベッドに座らせて、中までじっくり調査して舐めまわし、毎月のように全裸を写真に残して成長記録も撮り、現像には出さず自分で現像液を買って暗室まで拵え、体中も擦り剥けるぐらい舐めて味を確かめ、初潮が来たら経血も一滴残らず吸いだして、エロいお露が初めて出る頃までにはヤレる事は全部済ませ、休日には出掛けもせず一日中裸で抱き合って、ヤリ疲れた時だけお弁当でも作ってもらってピクニックに出かけて、明るい日差しが射す草原で抱き合って愛を語ったり、夏には吹き出す汗を体から直接舐め取ったり、汗だくの下着やブルマはビニール袋にしっかり保管して、廃棄する下着、靴下、制服、切った髪の毛や爪はキッチリ保管、時にはレンジでチンしてスーハーしたり直接巻き付けてオカズに使ったり、オカズを必要としないほど毎日ヤリまくって、秋冬には布団やコタツの中でエロエロ、足の指で股間を刺激したり、隣に入って家族がいる目の前で下着の中に手を突っ込んでエロエロ、真琴(本物)の両親が離婚して引っ越す前には結婚を申し込んで同居、「奥様は18歳」だとか中学聖夫婦?みたいな生活をして、うつみ宮土理さんに「誰かが私を呼んでいる~」などと言ってもらい、結婚生活がバレないように苦労してみたかった祐一だった。
「こうなるよりずっと前に言ってくれれば、小学生か中学の頃には結婚して、ずっと一緒にいられたのに」
 初オ○ニーから真琴ちゃん(本物)をオカズにして、今まで他のオカズでトイレやゴミ箱に捨てられた子種達を思い、こんな事なら一滴残らず初恋の相手の口の中から胃袋、気管から肺、目、鼻、耳、顔全体、髪の毛や頭の毛穴に刷り込むように、手、足、ふくらはぎ、脇の下、首と鎖骨の間、ちょっと難しいが胸の谷間、肘の裏、膝の裏で挟んで、うなじ、胸全体、へそ、腹の上、背中一面、肩甲骨の間、素また、尻全体、尻の谷間、(ピー)の中、子宮、卵巣、直腸、の体中の穴という穴や体全体の毛穴にまで、たっぷり出しておきたかったと後悔する。
『いえ、さすがに小学生の頃は何も教えて貰えず、中学生頃に母の実家に戻り、修行漬けの毎日を送っていた時、嫁ぐべきお相手として教えられました』
 もう祐一も我慢できず初恋の相手を抱き締めて、頬ずりしたり顔中にキスしたり舐めたりする。先程の劣情だけで結ばれてしまった行為にも後悔して、あれが今ほどの愛情を持って結ばれていたならどれだけ幸せだったかと思いを馳せ、それでも永年恋い焦がれていた運命の少女が自分の腕の中にいてくれて、その乙女も体も何もかも、自分に捧げてくれた幸せを噛み締めた。
「八年前からずっと好きだった、結婚しよう」
『えっ? ええっ? それは、本当? なのですか?』
 ようやく「愛人候補その一」程度に収まれた自分に対して、真剣なプロポーズをされて驚いて泣き始める真琴(本物)。
 祐一の方も、周囲にいた友人達はもちろんアウトオブ眼中で抱き締め、手の繋ぎ方も指を全部からめる「恋人繋ぎ」で、眼と眼で見つめ合うだけで幸せになり、触れ合う肌も細胞の一つ一つ、髪の毛の一本まで愛おしく感じられ、髪の香りや体の匂いまでがどんな香水よりも心地よかった。
 その頃には「今生のお別れに生で一発」「再会後、断られまくって、やっとゴム付きで4回」というサービスの悪い現婚約者の事など、銀河の彼方に葬り去っていた。
「相沢、調子の良いことばっかり言ってんじゃないよっ」
 友人が何か言っているように聞こえたが、もうそんな物は耳にも入らなかった。
「もう一度するよ、今度こそ、本気で愛し合おう、皆にも見せてやるかい?」
 誰にも恥じることのない愛の行為、それが真琴(本物)の友人だとしても構わない、敢えて本当の愛で証明してやろうとさえ思えた。
『ああっ、そんな、それだけは』
 先程から本気の告白まで受けて子宮の上を撫でられ、その手の上に自分の手を添え、腹筋がビックンビックン痙攣している真琴ちゃん。
「じゃあ、続きしようか? やっぱり二人っきりのほうがいい?」
「お願いっ、見ないで」

 友人達は、ヌレヌレの涙声と熱い吐息の合間に懇願する姿を見せられ、思わず声を掛けてしまう。
「お嬢っ、しっかりしてっ」
 完全にジゴロ野郎の手に落ち、いいようにオモチャにされている親友を見て、涙ぐんでいる一同。しかし祐一の指でお嬢が湿った音を立て始めているのを見せられ、諦めて台所のテーブルに撤収した。
「入れるよ、真琴ちゃん」
「ああっ、いいいっ」
 痛みが引いたのか、秘薬で痛みがないのか、最初からいい声で鳴き始めるお嬢。もう術を掛ける余裕すらないのか、地声で発声している。
 別室で座って待っている少女達も、子供の頃から一緒に修行して来た少女の「メスの声」を聞かされ、足を組み替えたり、太腿を揃えて閉じたり、耳を塞いで動物のような喘ぎ声を聞かないようにしていた。
「ああっ、好きだっ、ずっと好きだったんだっ、真琴ちゃん(本物)」
「もっと、ああっ、ひいっ」
 グチュグチュと言う汚らしく生々しい音や、パンパンと言う肉と肉がぶつかり合う音、男と女の喘ぎ声、それよりももっと嫌らしい「交尾中の匂い」を嗅がされ、発情させられる一同。
 それも先程覗いていた「発情したオスに犯される友人」の声ではなく、「愛しあう恋人同士が本気で交接する声」を聞かされ、大事なお嬢の何もかもが汚されて行くようで、聞くに耐えなくなって来た。
「いやっ、もう聞いてられないっ」
 ドアを開けて一人が飛び出し、二人で顔を合わせるのも嫌で、もう一人もトイレに入ってヌルヌルを拭きに行く。
 やがて五分ほど経つと、祐一の切羽詰まった声が聞こえ、終わりが近付いたのが分かった。
「ああっ、もう行くよっ、真琴っ、一杯出すよっ」
「はいっ、どうぞっ」
「うううっ」
「ああっ、あああっ」
 声だけで親友が男の精を受けとめ、歓びに打ち震えているのが分かった。それ以降、急に静かになり、荒い息遣いしか聞こえなくなったので、行為が終わり、余韻に浸っているのも分かった。

 今度こそ正常位で交じり合い、下から「だいしゅきホールド」で固めて、外には出させなかった真琴(本物)。
 祐一も、ついに初恋の相手、運命の少女と結ばれて震えていた。相手の女性にこれほど喜んでもらえたのも初めてだったので、嬉しそうに泣いている女の子をしっかり抱きしめ、頭を撫でで可愛がった。
「あっ、幸せです、こんなに幸せなの、生まれて初めてです」
「ああ、俺もだよ、ありがとう」
 たっぷりと術をかけられ、八年間恋い焦がれた少女と結ばれてしまった結果、祐一クン的女性の序列は以下のように変更された。
 心の恋人秋子ちゃん、超えられない壁、真琴(本物)>>栞(婚約者)>>香里(一晩だけ)>名雪(2ヶ月間タップリ使用)>真琴(偽)(1回だけ)になってしまった。
 つい昨日、24時間以内に合意された栞との婚約は術の影響もあり「エ~? ソンナノありましたッケ~?」ぐらいの認識に追いやられ、栞の幸せは、悪の秘密結社が送り込んだリボンロボの魔の手によって、たった一日でブチ壊された。
 さらに大鉄人U1君ロボの放った「グラビトンアタック」(種付けプレス?)により恋愛脳に改造され、快楽落ちさせられたリボンロボは、ワンエイト(誰?)のようにU1に従い、悪の秘密結社に歯向かう存在となった。

 この采配に天使の人形が関わったかどうかは不明だが、祐一の思考の力は現実になる、因果律の歯車が脱線して複線ドリフトして、タンデムターンしながら再びエンゲージして、本物の沢渡真琴が召喚されるような事も、有ったりなかったりするかも知れない。

 その後、数分が経ち、喘ぎ声が話し声になり、楽しそうに語らっているのを聞き、友人達は再び寝室に入った。
「お嬢様、もう宜しいですか?」
 一応ノックらしきものをしてから入ったが、お嬢はブラウス一枚で祐一の膝に座って、全体重を預けて寄りかかり、普段は見せない表情と声で話していた。
「これ、相沢くんだよね、ヤダ、カワイー」
「これが真琴ちゃんだろ? やっぱり可愛いな」
 二人は小学生の頃の卒業アルバムを開いて、当時のお互いの姿を確認し合い、呆けまくっていた。お嬢はすっかり骨抜きにされ、キャッキャと騒ぎながら足をバタつかせ、歳相応の少女のように落ちぶれてしまった姿を見て、落胆する一同。
「んんっ、宜しいですか? 今後の方針について、話しておきたいのですが?」
 自分達が入ってきたのも、咳払いにも気付かず、歓談を続けている二人。
「え? ごめんなさい、何か言った? 聞いてなかった」
 行為が終わろうと、もう相沢に術を掛ける気すら無くなって地声で話し、自分達が声を掛けてもスルーされたので、恋愛脳には手の施しようが無さそうだった。
「今後の方針について話しておきたいのですが? 香里、栞を別れさせた訳でも有りませんし、他からも寄ってくる女共がおります、どのようにしましょう?」
「ええ? 別れさせるなんて言い方しないでいいでしょ? あの子たちも事件が解決するまで、暫くはそっとしてあげましょうよ」
 以前のお嬢なら、魔物の気配がする親友だった香里と栞でさえ始末して、もう敵ではない名雪にさえ容赦無い追い打ちをかけたはずなのが、ここまで堕落してしまい、驚きが隠せない一同。
「どうしちゃったの? お嬢、あんなにしっかりしてた貴方が?」
「だって、こんなに幸せになれるなんて、知らなかったもん」
 目の前のジゴロ野郎の毒蛇に股間を噛まれ、脳がヌルヌルのヌメヌメになっているのが確認された。
(ダメだ、こりゃ)
「ね? せっかく浮気禁止にしなかったんだから、みんなもしてもらいなさいよ、まだ時間あるでしょ?」
「は?」
 言葉の中の漢字の割合も極端に減り、IQもかなり下がっていると思われるお嬢。任務通り、全員に相沢に種付けさせて責任も取らせ、今の幸せを自分達にも分けてくれるようだが、以前のように命令口調で話してくれる方が安心できたのは間違いない。

 選択肢
1,お前ら全員体が離れられなよう調教しちゃる、順番に直に種付けしてやるからケツ出して並べっ!
2,予定通り三時間目には登校する。
3,急いで種だけでも搾り取って腹に詰める。
4,秋子ちゃんと愛の逃避行。
 選択「2」

「大好きな女の子の前で、そんな事できないよ」
「ヤダー、また太好きって言われた~」
 頬を押さえて顔を赤らめ、足をバタバタさせて喜ぶお嬢。全員、「リア充爆発しろっ」と思ったが、数時間後には自分達も同じ末路を辿らされるとは、思いもよらなかった一同。
「いえ、お嬢の予知通り、昼には何かが起こります、学校にいるべきです」
 自分達の股間もヌルヌルしている問題はあったが、栞を不利にさせる出来事が昼に起こると予知されていので、時間前には学校に居るよう提案しておく。
「そうですか、じゃあ帰ってから続きをしましょうか? 誰か、準備する間、お弁当詰めてくれる?」
「はい」
 二人ほど台所に向かい、鍋から野菜の煮物とか煮物とか煮物を詰め始めた。この家は宗教色がキッツイ所で、米・麦・粟・黍・稗の五穀断ちが行われ、タンパク質摂取に豆などは許されているが、お米も、肉、魚の生臭物が一切ない極端な弁当が出来上がって行った。

 そこで祐一は「弁当」と聞いてしまい、栞ロボの持って来る弁当と、リボンロボ側が出す弁当で「二大ロボ、春の大決戦」が昼休みに行われるのが予想され、「昼には何かが起こる」予知とやらが確実に実現されるのも簡単に予想がついた。
「相沢くん、これ、手作りのお守り、ずっと持っててね」
 幸運だか開運祈願の、普通に神社で売っているようなお守りを首にかけられる。
「え? ありがとう、手作りって、中身は何なの?」
「ヤダー、聞いちゃダメ」
 また先程のように顔を赤らめ、両手で顔を隠す真琴(本物)。お守りの中身は見てはいけないとか、西洋だとウサギの足が幸運のお守りと聞いていたが、中身を聞いてはいけない理由はわからなかった。
「どうして?」
「あの、昨日ね、むだ毛を処理したのね、ほら、まだ綺麗な体の女の子の「毛」って、幸運とかギャンブルのお守りになるって言うじゃない、キャーーッ!」
 祐一を軽く突き飛ばし、後ろを向いてモジモジする真琴(本物)、陰毛が少ないとは思ったが、これも相手を自分色に染める、マーキングの一環らしい。どこの毛か分かった祐一は、お守りを手にとってクンクンしてみた。
「ヤダー、匂いかいじゃダメッ、中も見ないでっ、落としてもダメなんだからねっ」
 行為前のお固い少女はどこに行ったのか? 回数が増えるごとに脳が破壊されて行くようで、残念な気もする祐一だった。

 やがて身支度も終わり、二人共シャワーも浴びず、相手の匂いを体中にタップリ付けたまま通学して行った。
「ほらほら~、相沢くん、生理用の下着付けても全然隠れないや、どうしよう~?」
 再びリボンを巻き、学校用の人格に入れ替わった真琴(本物)が、祐一に向かってスカートを捲り、大きめの下着の上からでも半分ほど見える「相沢祐一」と書かれた赤い痣を見せびらかした。
「それ、体育とか水泳の時、どうするの?」
 それを見た女子の間で話題になり、「この身は相沢様の所有物であり、誰にも触れさせないための刻印である」などと宣言された日には、隣のクラスの女子一同から袋叩きにされた上に、毛沢東語録でも持った紅衛兵によって吊し上げ集会が開かれ、首から「私は女の子の体に落書きして、刺青みたいに消えない痣にして自分の名前を書き込んだクソ野郎です」と書かれたプラカードを下げられ、人民裁判にかけられるのが予想できた。
「どうしようか~、正直に言っちゃおうかな~?」
「うぐぅ」
「うそうそ、術でも掛けて、『生まれつきの痣だ』って言い訳しておくから」
 軽い調子で言われたので、「私って生まれる前から相沢君と結ばれる運命だったのよ」とか「相沢くんの体にも私の名前の痣があるの」とか「小学生からの同級生で、お互い初恋の相手で、大好きだったのに告白できずにお別れして、ついさっき偶然再会して結ばれたばかりなの」などと宣伝しながら術を掛け、女の噂も利用して「奇跡の恋シーズン3」のヒロインの座に座ろうとするのでは無いかと思い始めた。

 学校にはすぐ到着したが、正門は閉じられて出入りできないので、目立たない裏の通用門に回り、まずは真琴(本物)が垂直跳びの要領で通用門の低い場所に手をかけて、ドアノブを蹴って飛び上がり、軽々と門の上に立って、スカートを翻しながら校内に降り立った。
(カッケ~~)
 自分の彼女ながら、余りの格好良さに惚れ惚れする祐一。しかし男女合同の体育では「鈍臭い」と有名だったはずの少女は、自分より遥かに運動神経が良かったのに驚かされる。
「オラオラ、相沢、何やってるんだ、鈍臭い」
 他の女達に馬鹿にされながら、ドアノブなどに足を掛け、後ろからも押してもらい、何とか門を超えて入る祐一。残りのメンバーも、一人を除いて軽快に門を超えて校内に侵入できた。
(インフォメーションアラート、アルファワン始動! VMAX発動、レンジ5,レンジ3、栞クロー射程内!)
 校舎から突然、栞ロボが急接近して攻撃を受けたが、普段は祐一クンロボのAIは、ウルズ6のM9と同じで「田村ゆかり」の声をサンプリングしたはずが、「原えり子」の声でアラートを受けた。
「祐一さんと、どこに行ってたんですかっ!」
 初手から全力の平手打ちを真琴(本物)に叩き込もうとした栞ロボ。

 選択肢
1,この際、栞を叩き潰しておく
2,話し合って祐一を諦めてもらう
3,リボンロボが迎撃して、栞ロボと戦う
4,秋子ちゃんと愛の逃避行
 選択「1」

 取り巻きの一人が間に入って、ものすごい速さで突っ込んで来た栞を押し留めた。
「あれ? もしかして、人より早く動けるの、自分だけだと思ってない?」
(ベータツー、アルファワンと交戦開始、アルファワン、下腹部にダメージ)
 平手打ちを受け止められた上、前に出された膝に自分から突っ込み、ダメージを食らう栞ロボ。栞は妊娠はしていないが、もしお腹に子供がいれば、大変な事になったはずである。
「お腹に相沢の子供いたら、今のでダメになったんじゃない?」
 下腹部を押さえ、うずくまるようにして後ろに下がった栞を、あざ笑っているベータツー? 魔物に心を売り渡した栞は、躊躇無く殺人技を繰り出した。
「キエロ」
 栞は「アナザーディメンション?」を使い、自分の子宮を狙った相手を異次元の彼方に葬ろうとした。
 真っ黒な、光も指さない暗闇が近づく前に全速で逃げ出した女は、栞の腕の長さより遥か遠くで、見えない鞭のような物で足を掬われて転倒させられた。
「こいつっ、人間じゃないっ、夜の使い魔だっ」
「どの力も無詠唱だと? ふざけんなっ、どんなバケモンだよっ」
 魔物の存在を知っている真琴(本物)や、他の女も栞の異変に気付き、鞄や懐から装備を出して立ち向かおうとした。
(人払い、防御、牽制)
 お嬢から役割を割り振られ、術を行使し始める少女達。嫌な音を出す笛を吹き、嫌な匂いを放つ香を叩き付け、人が近寄らないようにし、転倒させられた女は立ち上がって栞の後ろに回って針を投げた。
「ユウイチサン、ドウシテソノオンナトイルンデスカ? コッチニキテクダサイ」
 栞も、女の人数分の暗闇を自分の周囲に出現させ、戦闘態勢を整えた。針はどことも知れない世界に消えて行き、栞本体に届くことは無かった。
 その隙に、お嬢と残りの一人は、指を噛んで血を出し、空中に何かを描いて印を結び、別の呪文を唱え始めた。
『我は疾風、山野を駆け抜ける風なりっ、何人たりとて我を捕らえること能わずっ、瞬動天足の術!』
「我は大盾、風雪に耐える大木なりっ、あらゆる物を防ぎ、異界に放逐されること無しっ、地根不動の術!」
 二人は自分の両足の太腿の辺りに平手を叩き込み、素足の脛に血印を描いた。お嬢の足には風が纏わり付き、もう一人が四股を踏むと、その一歩は地面に張り付いたようになり、栞の暗闇を受け付けなかった。
「どうしたんだよっ、やめてくれっ、栞、俺が悪いんだから俺を責めてくれっ」
「ワルイノハ、アノオンナ、ソレニ、ワタシノコドモヲ、コロソウトシタ」
 祐一は昼休みに開幕されると思っていた「春の大決戦」が予想よりも早く開催され、それも冗談で済むような戦いでは無く、「学園超常能力バトル物」になってしまった事実を受け止められず、栞に駆け寄って肩を揺さぶり、元の栞に戻そうとした。
「相沢、そこを退けっ、誰の使い魔に憑かれたか知らないが、そこまで堕ちた人間が助かった例をアタシらは知らない、その女はもう駄目だ、殺すしか無い」
「そんな馬鹿なっ? 栞を殺す? 何で?」
『相沢くん、お願い、諦めて。その使い魔は人の命を食らうの、祓わなければ誰かが犠牲になるのよ』
 今まで人の命と破滅を喰らい、あゆの新しい体の材料として供給して来た舞の右腕。この昼間の明るい場所に出現したのが仇となって、複数の術者に取り囲まれて祓われようとしていた。
「そんなっ、ありえないっ、こんな若い子を殺すなんてっ」
 自分で命を救った、若い命を散らす事など耐えられない祐一。それもこの少女は、自分の恋人で婚約者。多少恋心が薄れたとしても、その命を奪うのに加担するなど、あってはならない事態だった。
「相沢くん、私がそこに行くまでそいつを抑えていて、私が後ろから刺すわ」
 重い一歩を繰り返しながら、武器を持って栞に近付くトイレの少女。
「デキルノカ? ヤッテミセロ」
 二つの暗闇を薄く重ねた栞は、トイレの少女に向かって投げつけた。
「危ないっ、避けろっ」
 クリリンの気円斬がナッパを切り裂く前に、ベジータが叫んだように仲間が叫んだ。首や胴体が切り離されたまま別々の世界に送られると、例え帰って来ても元には戻らない。
 このメンバーの中で、ただ一人お笑いキャラの祐一は、少女を庇って栞の間に割って入り、両側から攻撃を受けようとしていた。
『やめてっ!』
 祐一も、栞が誰かを殺してしまうなら、それは自分の方が良いと思えた。栞をここまで怒らせ、追い詰めたのは自分。その制裁を受ければ、栞も元に戻ってくれるかも知れない。
「…バカなの?」
 そこで人払いの術を破って別の女が現れた。魔物が現れば必ず登場する、舞が木刀を持って薄い暗闇を打ち払い、暗闇は鉄製の門を切り裂いて消えて行った。
「舞? いつの間に」
 暗闇が当たる前に、疾風になった真琴(本物)が突き飛ばし、校庭に倒れていた祐一も舞に気付いた。
『…やっと見付けた、こいつは魔物、私が倒す』
 木刀を八相に構え、顔の右側から上に立てている舞。その殺気と声は他の術者をも押し留め、栞と対峙していた。
「禁忌を犯して、産まれてしまった忌み子」
『川澄…… 舞』
 他の女達も、舞を汚い物でも見るようにして、唾棄すべき名前を呼んだ。


(ごめん、あゆちゃん、栞ちゃんは助けられそうにないや)
「だめだよっ、ボクこんなお願いしてないのにっ! 栞ちゃんを助けて~~っ!」
 天使の人形に掴みかかり、どうにかして「栞を助ける」という選択肢を出させようとするあゆ、その願いは叶わなかったが、天使の人形の中でも猛烈な反発が起こり、その体を破ってでも外に出ようともがいていた。
 
 

 
後書き
オリキャラは苦手なのですが、沢渡真琴本人ということでご容赦ください。 
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