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IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》

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【第586話】

 次の競技の中止は直ぐにアナウンスされ、これから行われるヒルトと他の専用機持ち全員との戦いを告げられる。

 勿論、ヒルトの代表候補生昇進が掛かってるという事も告げられてだ。

 IS学園島を全体をアリーナとして見立てられた広大なフィールドが舞台となる。


「ねえねえ、有坂くん何処まで戦えると思う?」

「一応、一対一だし、そこそこは行けそうじゃない?」

「えーっ、私は瞬殺されると思うな」


 生徒各々が行く末が気になっていた。


「いやぁ、会長も人が悪いですな。 まさか有坂ヒルトに代表候補生になるには全専用機持ちと戦って勝てなどと……」

「いやはや、些か可哀想にも思えますな。 落ちこぼれが無様にやられる様を皆さんに見られる訳ですから」

「ハッハッハッ! せっかくですから、有坂ヒルトが何れだけ持つか賭けをしませんか?」

「良いですな!」


 反対派の連中皆が愉快そうに話している中、レイアート・シェフィールドはくすりと笑みを浮かべる。

 全員との戦いに勝つのは無理でも、いい線はいくはず――戦いを見れば、確実に評価が変わると。

 一方、ヒルト以外集められた専用機持ちは楯無によって説明を受けていた。


「つまり……これから、わたくしたちはヒルトさんと戦うという事ですわね?」

「んで、これにはヒルトが代表候補生になれるかが掛かってるって訳か」


 セシリア、鈴音の二人はそう呟くと、楯無は更に付け足す。


「ヒルトくんの代表候補生昇進が掛かってるとはいってもあなた達全員、手を抜いてもらったら困るから。 ――中止になってあやふやになった優勝したら願いを叶えられるという条件を、ヒルトくんに勝利したら願いを叶えられるという条件に変更します」

「それって……ヒルトを倒したら、僕達が望む願いを叶えてくれるってこと」

「えぇ、そういう事よ」


 条件を呈示しなければ、ここに居る子の殆どは本気を出さずにヒルトくんに勝ちを譲る可能性が高い。

 優しいってのは悪くない、だけど手抜きされて代表候補生に昇進しても本当にヒルトが喜ぶかといえば絶対になかった。


「ふむ……。 勝てば願いを叶えられ、私が負けてもヒルトの代表候補生昇進……か。 悪くはないな」


 ラウラは小さく頷く、負けてもデメリットは無く、勝てばメリットの方が大きいからだ。

 無論ヒルトの代表候補生昇進は無くなるが、それは【今】昇進が無くなるだけで【これからも】昇進が無いって意味ではない。


「それなら、私は……受けるよ、お姉ちゃん……」


 納得した簪が手を上げた――というよりも、専用機持ち全員戦わないといけないから、出ないというのは正直困る。


「俺も出るぜ、専用機持ちって事は勿論俺にもチャンスあるって訳だし」

「勿論よ、一夏くん」


 楯無は微笑み、頷いた。

 一夏が勝つチャンスは無いものの、彼に勝つというのは意味合いとして遥かに大きいからだ。

 一夏の方が強いのが世間一般の認識、だけどヒルトが勝てばその認識は簡単に崩れ去る。


「そういえば、楯無さんも出るのですか?」

「私はミステリアス・レイディの修復がまだなの。 だから私だけは除外って訳」


 箒の問いに答えた楯無、本来なら楯無も出なければならないが無理をしてもいい結果にはならないことをレイアート会長は知っていたため、免除された。


「じゃあ問題なさそうね。 未来ちゃんや美冬ちゃん達は?」

「美冬は……やるよ? お兄ちゃんの評価、上がるかもしれないし」

「うん。 ……いつまでも、ヒルトが評価されないなんておかしいし」


 美冬も未来も共に問題はなかった。

 勝てばというよりも、ヒルトが代表候補生になれるチャンスがあるのが二人には嬉しかった。


「美春も大丈夫! だから、ヒルトと戦うのはイヤだけど、そこは我慢する!」


 グッと両手に力を込めた美春に、エレンも頷いた。


「私も問題ない。 彼と戦える場としては最高の舞台だ」


 エレン自身、今度こそヒルトと勝負して勝ちたかった――純粋な勝負で彼に勝つのが今の目標。

 全員参加が決まった一方、ヒルトは学園整備室に居た。


「ん……ヒルト。 新しい武装のインストール完了よ。 後は……装甲表面に流した電離分子によって少しは粒子ビームや熱線に対する防御力が上がったわよぉ」

「うん、ありがとう母さん」


 新たにインストールされた武装――否、元々最初から備わる筈だったプリセットだ。

 武装項目を確認――新たに【電磁投射小銃(ローレンツアサルトライフル)】の項目があった。

 そのまま俺は手のひらに意識を集中させる――新しい武装のイメージは小銃――粒子が像を結ぶと、俺の手には電磁投射小銃が握られていた。


「母さん、この銃ってアサルトライフルになるのか?」

「えぇ、そうよぉ。 ……というよりは、カテゴリー的にいえばレールガンにあたるのかしら」

「レールガン?」

「えぇ、そのレールガンを威力はそのままでサイズダウンに成功したのがその電磁投射小銃なのよぉ。 弾薬はタングステン弾、装弾数は小銃本体にISのパススロットを応用、従来のIS用の銃よりも遥かに上がってるわよぉ。 勿論、コストはその分物凄く跳ね上がってるけど……」


 手に持ち、俺はそれを眺める――見た目は他のIS用の小銃にしか見えなかったが、銃口部分は二本の伝導レールになってい、従来の小銃よりも銃身が延びている。

 開発費用に関しては聞く気になれなかった、多分俺なんかが見たことない金額なのは間違いないだろうし。


「母さん、後……装甲に電離分子流したって言ってたが?」

「うふふ、そうよぉ。 ……弐式の様なナノマシン修復型はどうしても再現できなかったのよぉ。 あれはヒルトが村雲・弐式で第二形態移行した結果から発展したから難しいかもしれないけど……。 だからイザナギには従来の分子結合殻に、更にその上に電離分子を流して対応出来ればと思ったのよ?」

「……ぶっちゃけ専門用語過ぎてわからん」


 事実、何を言ってるかはわからなかったが、防御力が上がったというのはわかった。

 昔は武器とかイヤだったが……これから背負う義務を思えばそんなことは言っていられなかった。

 そんな俺の考えを他所に、母さんは更に続けた。


「今回の電離分子……もしうまく装甲に定着してくれれば、少なくとも村雲や天照のアップグレードも可能になるんだけどねぇ」

「ん、そこは成るようにしかならないさ、母さん」

「うふふ、そうねぇ。 ……イザナギが、第二形態移行すれば……何て、そう簡単に移行してたら、皆苦労はしないわねぇ♪」


 最終調整も完了したのか、各部装甲に刺さっていたケーブルが音を立てて引き抜かれた。


「うふふ、今回の調整でイザナギに少し、機能を入れておいたわぁ」

「ん? 機能って……何のだ?」

「うふふ、それはぁ――ナ・イ・ショ♪」


 悪戯っぽくウインクする母さん――曖昧に俺も笑みを浮かべるだけにすると校内アナウンスが響き渡った。


『これより、有坂ヒルトくんの代表候補生選出を掛けた試合が始まります――』

「うふふ、ヒルト――行ってらっしゃい」

「あぁ。 ……何とかやってみるさ、母さん」


 俺はその場で高く腕を上げ、学園整備室、ISが出入り出来る大きな窓から空へと飛び立った。

 残された有坂真理亜は整備室奥の部屋へ向かう。

「……もうすぐよ、貴女の出番は」

『……はい』

「うふふ。 ……目覚めた感想はどうかしら?」

『……悪くないです、とはいえ……何だか、変な感じですが』

「そう♪ 直に慣れるわよぉ」

『は、はぁ……』


 有坂真理亜はISに触れながら誰かに話し掛けていた――それに応える様にISは答える。

 光の点っていないバイザーに、淡い蒼の光が点る。


「うふふ。 ……ヒルト、ビックリするわよぉ」

『そ、そうですね……。 ……主君』


 灯ったバイザーから新たにディスプレイが空間に投影される――其処に映し出されたのは――紅蓮の様な真っ赤な髪の少女だった。

 その名前は――雅。 
 

 
後書き
何気にイザナギ強化、んで次からは模擬戦 
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