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KANON 終わらない悪夢

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52委員長会議


 昼休みも結構過ぎ、会議室で待ちながら昼食を食べた連中は結構待たされ、やっと委員長やユリクマ会の連中が訪れて会議を始めようとした。
 立ち見の壁際には用務員の叔父さんや保健医、PTA会長である委員長の母も並び、天野、月宮、倉田の家から草入りしている学校側の連中、生徒として草入りしている連中までが集まり、入りきれない者は外で聞いていた。
『お待たせしました、重要事項ですので五時間目に入っても構わないと思います。終了まで聞いて下さい』
 委員長が教卓側に立って議事を進める。教師の大半は既に美汐の操り人形で、他も妖狐関係者なので結構な人数が五時間目をバックレても許可された。
『外部の方も連絡事項が多いので聞いて下さい』
 公安、自衛隊、中国公安、ロシアGRU、CIAなどなど、この場所を監視している人物にも連絡事項を伝えようとしていた。
 委員長には天使の人形の一部が入って知識を伝えているので、先程まで舞が「祐一の姉である終局の魔女」「仮のイザナミ」「この世を反刻の世界にして滅ぼそうとした終わりの非女」として周囲から殺害されようとした状況も覆し、現在の仮のイザナミである委員長が解決方法を提案しようとしていた。

『まず連絡事項として、二時間目の騒動もご存じの方も多いと思いますが、この地域の暴力集団の総長的な地位だった川澄さんから、その地位が1年の美坂栞さんに移譲されました』
 それだけでも大変な案件で、血みどろの抗争が起こって校内も大荒れするか、廊下をトライアルバイクかオフロード車が走って、金属バットで窓を全部割ったりするぐらいの騒乱も予想された案件が、軽い連絡事項として全員に伝えられた。
『川澄さんは「君臨すれど統治せず」と言われたように、直接関与してこず、この場所、学校の安全さえ守られれば不介入で、この学校の制服を着ていれば薬物の販売や、パーティー券の販売などからも守られ、夜の街を彷徨う女子も、援助交際していた女子も、暴力組織に監禁されてみかじめ料を要求されたりたり、ホスト店に連れ込まれて貢がされ、借金から風俗店に就職させられる状況からも保護されていました』
 無能な教師や校長は、そんな状況すら知らず、舞をただの「問題が多すぎる生徒」として扱っていたが、ここの生徒だけはレイプ被害や様々な誘惑から守られ、もし被害に会いそうなら、暴力集団自身から守られてしまう異常な事態が起こっていた。
 もちろん被害があれば、夜に見えない魔物に襲撃され、暴走族であろうが暴力団であろうが、命を食われて壊滅させられるので、自己防衛のためにも暴力集団がこの学校の生徒を守っていた。
『その二代目となる美坂さんは、今後積極的に生徒保護に関与し、他校の生徒の被害も防いでくれるそうで、校内のイジメなども解消するために活動して下さいます。ご了承下さい』
 もう舞の見えない魔物は夜の狩りに参加しないが、栞自身が管理売春の被害に会っている他校の女子や、この学校内で虐めの被害にあっている生徒を開放すると教頭にも宣言した。
 前任の校長なら、栞を退学にしてでも辞めさせる案件だが、教頭は栞や校外の暴力集団に屈し、その提案にも賛同したので本日からこの学校も他校の生徒も、大人の暴力やサディストの暴力から守られる。
 それには血の雨が振って、サディストの生徒や他校を仕切っている暴力組織が「始末」されるような事態になった。
 栞も一応妖狐の嫁なので、ものみの丘から舞の魔物より更に恐ろしい、見えない魔物が出張し、人非人を食い荒らす事件が多発する。栞本人の暴力に屈した方が安全で楽に死ねる。
 現在「楽」の感情を持つ魔物が支配する舞はヒキコモリニートとして何も言わなかったが、栞は「北海道統一総長」の特攻服を生徒にも見せ付けて、夜の街や校内にもタヒ体が並ぶのを悪魔の笑顔で予告した。

『さて次に、現在「災厄」と呼ばれる事件(イベント)が起こっています。純血の妖狐が放った使い魔「天使の人形」と呼ばれる魔物が起こしている災厄です』
 普通のクラスの委員長や、一部の生徒会役員は意味がわからなかったが、草入りしている妖狐関係者には分かったので、妖狐が引き起こす災厄に震え上がった。
『今回のイベントは、この世界の法則を利用した「天孫降臨」のイベントです』
 まずホワイトボードの中心に、頭脳地図として「災厄」「天孫降臨」と書いて、その議題から外れないようにした。
 もちろんこの話題から外れられるマヌケは居ないが、一般生徒からの質問も捻じ伏せ、委員長の言霊で全員が頭に詰め込まれて理解させられた。
『幼かった相沢くんの使い魔が、幼馴染である人物を生き返らせようとして、様々な失敗の後、この世界を終わらせる時に必要とされる「終局の魔女」「破滅の天使」を下生させるのが目的です。現在は他人の命を狩って食べさせても、復活が許されなかった子を、この世界が必要とするように逆算され、復活を拒否されて来た世界にも必要とされるよう仕組まれました』
 佐祐理や秋子ですら理解していなかった状況を、明晰な謎脳と妖狐の知識で解説する委員長。更に今まで知られていなかった状況まで解き明かす。
『この災厄には数々の生贄が必要とされ、イザナミとして選ばれそうな人物が全員犠牲になる予定でした。まず相沢くんの妹として指名されそうだった水瀬名雪さん、その予備である秋子さん。もう一人の妹でもある沢渡真琴さん、その予備の月宮真琴さん。姉である川澄さんと、その予備である倉田さん。妖狐と心と身体と魂が呼び合う相手として呼んだ天野美汐さん。余命幾ばくも無い人、妖狐に救われたい女として呼びだした美坂栞さん、その予備である香里さん。全員が削除され、特に天野さんは念入りに始末されて、選ばれるはずがなかった月宮あゆさんを筆頭として、滅びの巫女として召喚します。勿論天孫降臨の儀式ですから、イザナミとイザナギ以外の日本人全員、もしくは全人類が犠牲になります』
 その場の全員が総毛立ち、人類滅亡を対価として、誰か一人を生き返らせる計画を知らされた。
 現在無力で何の力もない祐一は、犠牲にされる女達に袋叩きにされて血祭りにあげられても何も抵抗できず、文句も言えなかった。

「ああああああっ!」
 愛する「ゆうくん」から、いらん子として扱われ、あゆを復活させるための犠牲でエネルギー源の一人になるのだと気付かされ、始末される運命だと知った美汐が泣き叫び、頭を抱えて机の上に崩れ落ちた。
(僕の中の「仲間」に怒られてね、全員身体を失っても「精霊」として生きていけるようにしてあるよ)
 委員長に計画の全てを見抜かれたのは大して驚かなかった天使の人形も、美汐の嘆きには答えて、計画の修正部分を伝えた。

『祐一っ!』
 その計画は祐一の物ではなかったが、佐祐理や母まで殺されると聞いて激怒する姉。
 自分自身が半年後に生きていないのは知っていたので、それに関しては怒りが湧いて来なかった。

(一弥…)
 佐祐理本人は一弥が既に天使の人形の一部で分身だと知っていて、この子を殺すつもりは無く、自分も精霊や魔物で一弥の母として生かされ、一弥もあゆと同じようにこの世の悪、魔物として下生するのを知っていたので怒りは覚えなかった。

『皆さん落ち着いて下さい、この計画には根本的なミスがあるので成就しません。私は計画を再編して、全員が生き残れるよう、あゆさんも復活できるよう計画を練り直すために、現在イザナミとして選ばれています』
 特に祐一を独占するつもりも、正妻の座に付くつもりもなく、あえて愛人とかNTR要員、普通の人生を脱線して中卒子持ちバツイチという特殊な人生を経験したいと願っているヘンタイさんの委員長。
『まずイザナミとして選ばれた人物を、この世から消すのは無理でしょう。特に水瀬名雪さん、秋子さん、沢渡真琴さんといった純血の妖狐がこの星に守られた時、どんな破壊力を持った武器でも死は有り得ません。物理法則を捻じ曲げてでも、その事故は起こらず、起こそうとした人物が報いを受けます』
 舞ぐらいまでなら、どうにかして破壊するのが可能で、佐祐理自身から抜いた剣で切り裂くと、もし佐祐理がイザナミであったとしても斬り殺せる。
 一弥が佐祐理の外見を変化させ、舞の偽物だと見せかけて襲えば、親友を斬ってしまった舞は、必ず自分自身を刺してその生命を散らせる。
 各人とも「自殺」に追い込むことができれば、イザナミの地位は次に引き継がれるが、秋子と名雪と真琴なら、それすらこの星の法則に縛られて不可能になる。
 イベントが起こる前にこの三人を殺しておいて、次々に他の女を自殺させていれば可能だったかも知れないが、あゆの復活も法則のシステムによって妨害されてしまう。
 純血の妖狐が「イヤダ」と願ったので、あゆの身体は死なないが、この世の法則で死が確定して冥界に行くべき人物の命や霊体までは復活させられない。
 あゆは同じ法則によって、生きることも死ぬことも許されない人物として現世を彷徨わされている。
『その上、この世の法則で死が決定している人物を蘇らせるのも許されていません。もし生き返ったとしても、何かに命令されるように自殺を繰り返し、完全なはずの身体も崩れ落ちます。反刻の世が訪れて七年の時が巻き戻って再会できたとしても、普通の人間である月宮あゆさんは、その世界で生きて行くことすらできません』

(うああああああっ! あああああああああああああああっ!)
 今までのトライアンドエラーで、あゆの死だけは覆せず、どんな儀式でも、如何なる犠牲を払ったとしても、この世の法則に死の日時が定められてしまって、その事実がアカシックレコードのような星の記憶に書き込まれてしまった以上、書き換えが不可能なのを思い知らされていた天使の人形。
 委員長の指摘でそれが間違いないのだと教えられ、天孫降臨というイベントですら現実を書き換えられないのだと知って泣いた。
『他にもエネルギー量の不足、マイナスの感情が強すぎて、元の人格を保てなくなるなど色々な問題はありますが、「今回も」あゆさんの復活は出来ません。やり方を根本的に変える必要があります。例えば、あゆさんが生きていない状態にして、ただの人形に魂を定着させる』
(それはもうやったよっ、自由に動ける人形、動かない人形、色々やっても、もう死んでる人は生き返らないっ! 純血の妖狐との子として生き返らせてもっ、召喚で誰かと魂を載せ替えてもっ、その存在はもうあゆちゃんじゃないんだっ!)
 もう妖狐関係者どころか舞ですら話に付いてきておらず、秋子も天使の人形の過去や記憶には干渉できないので知り得る方法がなかった。
 普通人であった祐一は、七年前の事実を遡って書き換える方法がなく、力に目覚めた時空が突き当たりになって、それ以上の過去へは通行不能になっていた。
 そして誰かと魂や記憶を入れ替えると、別人になってしまって魂その物が失われる。重複登録を許さないシステムによって、携帯電話のコピーよりも厳重に、悪魔との取引をしてしまった人物を消して登録不能処置にし、転生して蘇ることすら許されなくなる。
『では七年前より過去に戻れる人物、秋子さん、川澄さんではどうかしら?』
(秋子さんと真琴は破滅の力しか持っていないよ、名雪は記憶を消す力、舞は半分人間だから未来と話せても過去には戻れない)
『じゃあ、ものみの丘から別の妖狐を呼ぶ』
(それもやったよ、あの場所には歴史を書き換えたり、死者を生者に書き換える能力を持った妖狐はいない)
 秋子ちゃん牧場計画で、種牡である祐一の所に丘の狐を毎月毎週呼び出し、取っ替え引っ替え種付けして、特殊能力を見極めても、この世を純血の妖狐で満たして現生人類を滅ぼし、妖狐として転生を願っても、それは不可能だった。
『一度、あゆさんの魂を手放して、冥界に送って転生を待つ』
(それはもうあゆちゃんじゃないっ! 組み替えられて別の部品や因子と組み合わされてしまって、記憶だけじゃないっ、存在そのものが書き換えられるんだっ!)
 肉体、霊体、魂、その三つが揃って始めて月宮あゆであり、神と(キリスト)と精霊ではない三位一体を必要としている天使の人形。
 一度冥界に送られた魂は、肉体に残っていた記憶も消され、霊体も分解されて失い、魂そのものも組み替えられ修復され、新しい霊体と身体で転生する。それはもう「月宮あゆ」ではない。
 自暴自棄になって追い詰められた天使の人形は、全人類の滅亡まで願って、あゆとの殉死を強いていたのかもしれない。

(もうこんな世界はいらない。決まりだの法則だの、禄でもない事ばかりだっ、さあ委員長、君にも改変できないなら、もう僕が終わらせるよ、新しい世界を作って新しい法則であゆちゃんを蘇らせる)
 何度やり直しても手詰まりになるソリティアでもやっているように、怒ってパソコンごと叩き壊して、新しい基盤とOSでやり直そうとした天使の人形。残り一手を追加しようとした。
 委員長に対してもチェックメイトを宣言して、この世界も終わらせてしまおうとしたが、まだ委員長は諦めていなかった。
『いいえ、異世界に繋がった特異点は、ものみの丘だけじゃないわ。座古さん、貴方の分身が他の特異点を探し当てたでしょ?』
「あ、はい、京都とか四国とか、結構ありますよ。九州も何箇所か、奈良の方は厳しすぎて近寄れませんでした」
(な……)
 天使の人形が始めて絶句して、舞の精霊にも、自分の分身にも、決して見つけられなかった特異点を、観葉植物になったザコが探し当てたと聞いて驚いていた。
『下手な鉄砲も数を撃てば当たるものよ、今まで宗教団体とか胡散臭い娘には手出ししないで、(えにし)がある女の子とだけ付き合ってたけど、自暴自棄で全員ヤっちゃったのが上手く行ったようね』
 異世界の門があれば、それだけ別の世界が存在する。つまり、この世の法則が適用されない場所が、ものみの丘以外にも多数あって、その中で何らかの儀式を起こせば死者でも復活が可能になる場所があるかも知れない。
『貴方はエネルギー源である名雪さんから離れられなかったけど、今なら相沢くんと一緒にどこにでも行けるわ。今回相沢くんや秋子さんと争わなかったのは正解だったわ。来週にでも私と二人で、京都か九州に浮気旅行にでも行きましょうか? うふふ』
 他の女がブチ切れて復活するのを待ったが、全員打ち拉がれていて、自分の肉体の所有者で、快楽堕ちさせられたご主人様である、祐一の霊力や妖力の根源となる天使の人形から見捨てられていた所からは、誰も立ち直れていなかった。
『まず明日は月宮教団に行って、好きなだけ信者の娘とか、青年部の女性もヤっちゃいましょうか。私も佐祐理お姉さまに変なスイッチは全部「オン」にして貰ってるから、女同士でもオッケーよ』
 天使の人形は真面目に話していて、真面目に考えているが、どうしても下の方に話を持っていこうとする委員長。

 聞いていた面々も「あ~、やっぱり倉田さんってガチなんだ」と思わされ、舞*香里、佐祐理*舞、舞*名雪、香里*名雪が確定したのは、倉田の家の長女の術が、ガチレズバリセメで、術を掛けられた女がガチレズバリウケにされるのも理解した。
 
 

 
後書き
以前も、日常お笑いパート+エロサービス部分、ストーリー進行、と重ねて一話ぐらいだったはずですが、2,3日寝かしたとは言え、ストーリー部分の整合性とか余り考えないで進めています。
書いている本人が全く知らなかった話で、この先もどうなるのか分かりません。 
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