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IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》

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【第564話】

 第二種目である玉打ち落としがスタートした。

 開始と同時に彩り鮮やかかつ様々な大きさのボールが吐き出された。

 空を舞い、放物線を描く玉もありそれら全てが重力には逆らえず、地表へと落ちていく。

 轟く轟音――落ちていく玉目掛けてショットガンの引き金を引いて先陣を切ったのはエレンだった。


「悪いが先手必勝といかせてもらおう」


 肩のシールド・ウィングが大きく展開され、空戦に適した状態へと移行された。

 散弾故に面制圧による圧倒的優位性に立ち、エレンのスコアが一気に加算されていった。

 だが他の面々が黙ってそれを見てる訳ではなかった。


「ハァァアアアッ!」


 展開装甲を起動させ、二対の刀で標的の玉を切りつつ、旋回上昇を続けるのは箒だった。

 エレンも負けじと撃つのだが、弾が切れ、リロードに時間が掛かっていた。


「開幕はやられたが、まだ点差は追い付く範囲内だぜ!!」


 そう叫ぶのは玲だった、ラファール・リヴァイヴを駆り、アサルトライフルで的確かつ高得点の玉を撃ち落としていく。

 一般生徒故のレート計算――高得点の玉が落とされる度にエレンのスコアに近付いていく。


「っ……やはり宇崎さんの射撃技術は脅威ですわね! ですが……!」


 周囲に展開されたブルー・ティアーズによる間断ない粒子ビームの雨が降り注いだ。

 排出され続ける玉は一切地表へと落下する気配はない――そして、最高得点である黄金玉が排出された。


「最高得点の黄金玉、逃しませんわよ!」


 ブルー・ティアーズの制御をしつつ、スターライトmkⅢで撃ち落とそうとセシリアが構えたその時。


「へへん! これであたしが一位よ!」


 黄金玉を切り裂く鈴音、一気にスコアが加算され、エレンの記録を抜いた。

 三つ目の小さな黄金玉を狙おうとした矢先――。


「させない」


 一陣の風が吹き抜ける――残った小さな黄金玉が一閃された。

 切ったのはセラ・アーカニアン、得点が一気に加算され、一位の鈴音をぶっちぎってセラが躍り出る。

 巻き起こる歓声、まさかのダークホースの存在に焦る鈴音だが、負けてはいられなかった。

 新たに大量に排出された玉――一網打尽にしようと衝撃砲を展開させた。


「まだ追い付くわ! 一網打尽に――」


 だが鈴音より先に撃ち落としたのはラウラだった、AICを使い、纏めて停止させて一発で大量得点を稼ぐその戦法は理にかなっていた。


「すまないが、ここからは私の独壇場だ。 己の無力、思い知るがいい」


 咆哮をあげ、レールガンの砲弾は玉を灰塵に帰した。

 加算されたスコアが二位の鈴音を抜き、セラへと迫る。


「凄い! 激しい激戦、繰り広げられる激闘! しかし、まだ競技は始まったばかり!!」


 実況をする楯無さんはヒートアップしていく一方、静かに状況を見守るのは簪だった。


「……マルチロック完了。 妨害したらダメってルールは……ない!!」


 一斉にアラートがなる各機体、打鉄弐式によるミサイルの一斉射撃だった。

 玉を撃ち落とすのに夢中だった一同、急なアラートにも直ぐ様対応するが、その間は無数の玉が空へと無造作に吐き出され、落ちていく。

 それを荷電粒子砲で撃ち落とし、スコアを加算していく――だが。


「マルチロックは、貴女だけの専売特許じゃないよ!!」


 突如美春がそう叫ぶ、細かく得点を稼いでいた美春だが八式・天乃御柱のレーザー砲口全てが開門された。

 重力に逆らえず落ちていく玉――それら全てを見逃さず、更に簪が放った一斉射撃全てを灰塵に帰していった。


「っ……まだ!」


 再度ミサイルの一斉射撃を行う簪、だが村雲・弐式の迎撃能力に隙はなかった。

 ミサイルが発射され、ある一定距離を感知するや直ぐ様レーザー迎撃され、派手に爆発、周囲に爆煙を残した。

 更に美春は手動でレーザー射撃を行い、玉を消していく。

 一方の美冬は苦戦していた、レーザー迎撃されてる今、ライフル射撃は全て感知される。

 接近戦で何とか玉を切っていくものの、明らかに他の面々より分が悪かった。

 得点は引き離されてはいないものの、一歩前を進む皆に後れをとっていて内心焦り始めた。

 このままじゃ離されちゃう……。


 ふとハイパーセンサーでヒルトを見てしまった美冬、上空を見上げて競技の流れを見ている様だった。

 ……焦りは心の余裕を無くす。

 気持ちを落ち着け、冷静に周囲の動き、玉の挙動等を把握し始める美冬。

 そして――瞬時加速の体勢をとるや、装置が玉を排出する瞬間を見極め、瞬時加速――装置に迫る美冬に呼応するかのように一斉に玉が排出された。

 刹那、それら纏めて一刀両断――装置を破壊する事なく美冬は玉を切り裂き、大量得点で一気に巻き返した。


「成る程。 排出する瞬間を狙ったか。 ……流石はヒルトの妹といった所だな」


 エレンは一人ごちる、それと共に何と無く実況席のヒルトに視線が移ってしまった。

 私を見ている――ヒルト自身は全体を見ていたのだが、エレンは自分を見ているのだと勘違いしてしまった。

 スレッジハンマーを呼び出すと、豪快に玉を粉砕していくエレン、まだ射撃は美春の迎撃機能が働いてるため全く使えなかった。

 だがそれでも、各々が離されず、誰かがリードすればそれに負けじと追い付く。

 今、学園の空を支配してるのは彼女達未来のブリュンヒルデだった。

 競技も終盤、美春の迎撃機能は既に停止していてまた射撃でスコアを稼ぐ代表一同。


「オラオラオラァッ! まだまだ弾はあるぜェッ!!」


 玲はそう叫び、両手にサブマシンガンを構えて乱れ撃ちして落としていく。

 発砲音と共に排出される空薬莢、そして玉に当たればスコアが加算。

 既に桁が代表者のほぼ全員が五桁に突入していた。


「……まだ!」


 セラも片刃のブレードを巧みに使い、玉を切り刻む。

 手のひらで柄をくるくる回し、刃の向きを多彩に変えながら切り刻むその姿は鮮やかな手際だった。


「このままでは……!」


 混戦入り乱れた現状、着かず離れずの得点差で誰が勝つかもわからないのが現状だった。

 危険な賭けだが、箒は少し思案し、地表へと着地と同時に穿千の使用の為に腰を落として姿勢制御、そして肩部展開装甲が可変し、エネルギーの充填を始めた。


「埒があきませんわね……。 妨害、させていただきますわ!」


 得点差が開かないと判断したセシリアは、目に見える全員への妨害にブルー・ティアーズによる威嚇射撃で牽制した。


「うわっ!? あ、危ないじゃないセシリア!」


 緊急回避した鈴音、その先にいたエレンの機体と衝突した。


「……ッ、なんだ? ――しまった!?」


 ぶつかった拍子にスレッジハンマーを落としたエレン、その下に居た美春に――。


「にゅっ!? いったーい!!」


 スレッジハンマーが直撃、頭を押さえてる間八式・天乃御柱の制御を怠ったからか不規則な軌道を描く。


「え?」


 セラの行き先を阻む様に通り過ぎた天乃御柱の一基――それが向かった先は、簪のミサイル群だった。

 先頭のミサイルに突き刺さる天乃御柱、派手に爆発四散し、大きな爆風が巻き起こる。

 そんな中、爆風に背中を押されたのは――。


「くっ!? ば、爆風で妨害だと?」


 発射体勢になっていたラウラの大型レールガンが火を吹く。

 だが爆風で押され、射線軸がずれてしまった。


「な、何? わぁっ!?」


 ずれた射線上に居た美冬が直撃――体勢を崩し、地表へとくるくる落下していく――落下先には箒が居た。


「チャージ完了! 今が好機!」


 狙いを定めた箒――其処へ。


「わ、わぁっ!? 退いて退いてぇっ!?」

「な、何だ!?」


 墜落した美冬は、穿千を放とうとする箒と激突。

 その弾みで穿千の粒子熱線は射線が僅かに擦れ、フィールド中央の装置目掛けて突き進んだ。


「ちょ、ちょっとちょっとちょっと! その装置、高いのよ!? ヒルトくん! 何とかしてよ!!」

「えぇっ!?」


 何とかしようにも無情にも突き進む粒子熱線は、装置に直撃。

 それと同時に激しく爆ぜ、爆発音と共に爆散、破片がグラウンドに降り注いだ。


「チッ!」


 無事だった玲がすかさず破片の破壊を試み、被害を装置のみの最小限に抑えたのは唯一の救いだろう。

 突如終わりを告げた第二種目――重なった不運により、この競技の勝者は誰も居ず、ノーカウントとされたのだった。 
 

 
後書き
流れ自体は原作だけど、中身はうっすら違ってたり 
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